初代ダース・ベイダー役デヴィッド・プラウズが逝去
Rolling Stone Japan / 2020年11月30日 19時15分
『スター・ウォーズ』旧3部作で悪役ダース・ベイダーを演じた英国の俳優、デヴィッド・プラウズが85歳でこの世を去った。ルーカス監督が「チューバッカかダース・ベイダー、どちらか好きな役を選んでいい」と聞かれた日から、監督と不仲になるまでーー。プラウズがベイダーとして生きた人生を振り返る。
英現地時間11月28日、プラウズのエージェントは、短い闘病の末にプラウズが亡くなったことを英BBCに明かした。「私たちのクライアントであり、大英帝国勲章(MBE)受章者であるデイヴ(デヴィッド)・プラウズが85歳でこの世を去ったことは、私たちと世界中の何百万人ものファンにとって痛恨の極みであり、その悲しみは計り知れません」とプラウズのマネジメント会社・Bowington ManagementがTwitterに投稿した。さらにプラウズの公式サイトは、「この素晴らしい人物と共に長年仕事ができたことは、喜び以外の何物でもありません。プラウズさんは、本当に心優しい巨人で、人生で出会うセレブリティのなかでももっとも親切な人のひとりでした」とツイートした。
「デヴィッド・プラウズが亡くなったと聞き、とても悲しい」と『スター・ウォーズ』旧3部作で主人公ルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミルはツイートした。「優しい人で、ダース・ベーダーよりずっと大きな存在だった。彼は、俳優、夫、父親、大英帝国勲章の受章者、英ウェイトリフティング選手権を3回制覇したチャピオン、Green Cross Code Man(訳註:交通安全の啓発運動のために作られたキャラクターで、緑色のクロスがトレードマーク)の交通安全アイコンだった。彼は、ファンに深く愛され、同じくらいファンを深く愛した」。
C-3PO役のアンソニー・ダニエルズは、次のようにコメントした。「デイヴが死んでしまった。カーボンフリーザーの中で(チューバッカの)の肩に乗せられていた、残骸が入った袋を除いて、C-3POは、撮影現場でダース・ベイダーの圧倒的な存在感を直に感じることはなかったかもしれない。でも、デイヴのアイコニックなキャラクターは完成した77年の映画において卓越した存在感を放ち、それ以来、ずっと映画を支配し続けている。その存在感は、今後も失われないだろう」。
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身長6フィート6インチ(約198センチ)のプラウズは、もともとはボディービルダーおよびウェイトリフティングのチャンピオンだったが、その堂々とした体格がキャスティングエージェントの目に留まり、『フランケンシュタインと地獄の怪物』(1974)の怪物役や悪役などに度々抜擢された。1971年にプラウズは、スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』でボディーガードのジュリアンという端役を演じた。
ジュリアン役を演じるにあたり、プラウズは重いものを持ち上げ、マルコム・マクダウェル扮する主人公アレックスを抱えて階段を降りなければならなかった。その結果、プラウズはジョージ・ルーカス監督のレーダーに引っかかる。ルーカス監督は当時、映画『スター・ウォーズ』のロンドンでの撮影に向けて準備をしていた。
キャスティング中、ルーカス監督はプラウズにチューバッカかダース・ベイダー、どちらか好きな役を選んでいいと言った。プラウズは、悪役を選んだ。スクリーンの中ではプラウズがダース・ベイダーを演じているものの、ジェームズ・アール・ジョーンズがシス卿の吹き替えを担当していることは明白だ。だが、これは製作段階から企画されていたことではなかった。
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「私は、映画の終わりまで自分の声で(ダース・ベイダーを)演じた。ルーカスには『声はどうするんだ?』と言い続けていた。だって、(マスクをかぶっているせいで)どう考えても再生には不向きだったから。するとルーカスはこう言った。『大丈夫さ。録音スタジオに行って、そこで君の会話を全部きちんと再録音するから』」とプラウズは2016年のFilm Fadのインタビューで語った。
プラウズの話によれば、製作が終わり、ルーカス監督がアメリカに帰国したとき——映画の大部分はロンドンのスタジオで撮影された——監督は、プラウズの会話の部分を再録音するのを忘れていたことに気づいた。プラウズをハリウッドまで来させると、予算ギリギリの映画のコストが高くなるため、監督は声優にジョーンズを起用したのだ。「(ジョーンズは)素晴らしい仕事をしたと思う。でも、チャンスさえ与えられていれば、私だって同じくらいいい仕事ができたはずだ」とプラウズは言った。
(『スター・ウォーズ』の音声解説の中でルーカス監督は、ダース・ベイダーの声優の第一候補にオーソン・ウェルズを挙げていたことを明かした。さらに、故キャリー・フィッシャーは、1980年の本誌のインタビューで次のように語っている。「ダース・ベイダーが登場するシーンのほとんどは、笑ってしまうほど可笑しかった。だって、体型はコーンウォールだかデヴォン出身のムキムキ俳優のデヴィッド・プラウズだったから。それに、プラウズにはデヴォンの農夫みたいな訛りがあった。彼のことをよく”ダース・ファーマー”って呼んでいたの!」)
プラウズは、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(1980)と『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)でふたたびダース・ベイダーを演じたものの、ライトセーバーを使ったバトルシーンを上手く演じることができなかったため、スタント役の故ボブ・アンダーソンとダース・ベイダーのコスチュームを共有しなければならなかった。ダース・ベイダーの素顔がようやく暴かれる『ジェダイの帰還』の場面でルーク・スカイウォーカーと言葉を交わしているのは、アナキン・スカイウォーカーを演じた英国人俳優のセバスチャン・ショウだ。
ジョーンズ、ショウ、故アンダーソンがダース・ベイダー俳優の仲間入りを果たす一方、プラウズは、ダース・ベイダーはルークの父親かもしれないと1978年にうっかりネタバレし、ルーカス監督と不仲なまま3部作から退いた。プラウズはファンの間では常に話題にのぼる人物である一方、スター・ウォーズ・ファミリーとは二度と再集結せず、毎年恒例のファンイベントのスター・ウォーズ セレブレーションからも”出禁”にされていた。
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のちにプラウズは、シリーズ続編のプロモーション活動の場でダース・ベイダーのコスチュームに身を包んだものの、悪役が単独で登場する場面では、続編の第2作と第3作でアナキン・スカイウォーカーを演じたヘイデン・クリステンセンがトレードマークのコスチュームをまとった。
2015年にプラウズは、『エルストリー1976 新たなる希望が生まれた街』と『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』という『スター・ウォーズ』関連ドキュメンタリー2作に出演。『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』では、他のダース・ベイダー俳優たちに譲ったシーンを演じることができた。
2016年10月、プラウズは『スター・ウォーズ』のプロモーション活動からの引退を表明した。「とても残念ですが、世界各地で行われる上映イベントからこの日を境に引退することを発表します。世界中の数多くの素晴らしいファンと出会い、最高の時間を過ごすことができました。あなたたち一人ひとりの応援と、これほど多くの人々に出会えたことに心から感謝します」とプラウズは公式サイトに綴った。「フォースと共にあらんことを」。
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