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コロナ禍で中毒患者が急増、バイデン次期大統領を脅かす「薬物蔓延」の地獄

Rolling Stone Japan / 2020年12月3日 6時45分

2020年11月25日、米デラウェア州ウィルミントンのクイーンシアターで演説するジョー・バイデン次期大統領(AP Photo/Carolyn Kaster)

ジョー・バイデン次期米大統領は就任時に、2つの公衆衛生危機を引き継ぐことになる。ひとつは、全米中に拡散し入院患者があふれ続けている新型コロナウイルス。もうひとつは、アメリカの家庭を悩ませ続ける医療用麻薬「オピオイド」危機の再燃だ。

米国医師会は10月、「我が国のオピオイド危機はより複雑で、より深刻な過剰摂取危機へと拡大した」と警告した。合成オピオイドの一種フェンタニルが「違法に製造されて」出回っているのが主な理由だ。AP通信によると、今年アメリカでは薬物の過剰摂取が過去最多にのぼる可能性もあるという。専門家はパンデミックがオピオイド問題を悪化させていると指摘。大勢の人々が孤立し、失業して、多大なストレスにさらされているからだ。

【画像】「俺は注射器の奴隷だった」マイケル・ダグラスの息子が語る薬物依存の恐怖

「パンデミック以来、オピオイド中毒に歯止めが利かなくなっています」。国立薬物乱用研究所のナラ・ヴォルコウ所長は、バイデン次期大統領のオピオイド対策計画に注目したポリティコ紙の特集記事でこう語っている。「薬物に対する我が国の脆弱性は悪化の一途をたどるばかりです」

オハイオ州などでは状況はさらに悲惨だ。「まさか死亡件数が2017年のレベルにまで達するとは思っていませんでしたが、私の間違いでした」。薬物中毒者支援団体Harm Reductionオハイオ支部のデニス・コーション会長は、ポリティコの取材にこう答えた。「外では人がバタバタ亡くなっています」

バイデン次期大統領は最初の人事で保健衛生や薬物中毒の専門家を政権に迎え入れ、薬物中毒危機に対処する準備を進めていることを示した。上院議員時代からの方向転換だ。議員時代、彼は「犯罪には厳格に対処する」というスタンスを取っていたため、人種による刑罰の格差が生まれる結果になった。

70以上の保健団体が次期大統領に書簡を送り、ビル・クリントン元大統領やジョージ・W・ブッシュ大統領がしたように、ホワイトハウス行政府の国立薬物規制政策局(ONDCP)局長を大統領顧問と同じ立ち位置に据えるよう訴えた。麻薬取り締まりのエキスパートが大統領内閣に加われば、バイデン政権がオピオイド危機対策を最優先にしていることの表れとなるだろう。

今のところバイデン次期大統領は、ウェストバージニア州の公衆衛生局長だったラウル・グプタ氏をONDCP移行チームメンバーのリーダーに抜擢する考えだ。局長時代のグプタ氏はデータに基づく分析を行い、同州の過剰摂取による死者減少を実現した。またオバマ政権時の公衆衛生長官で、公衆衛生長官としては初めて薬物中毒の報告書を発表したヴィヴェック・マーシー氏を保健福祉局長官に任命しようと検討しているようだ。


息子の薬物問題

バイデン次期大統領のオピオイド危機撲滅計画から、この問題に対して彼が一歩前進したことが伺える。有効な予防・治療・回復サービスとして1250億ドルの資金援助、刑事司法制度を改革して麻薬使用者の収監の中止、薬物危機の原因および定着化に関する製薬会社の責任追及といった公約を掲げている。

おそらく、バイデン氏が180度態度を変えたのは個人的な経験も理由のひとつだろう。彼の息子ハンターも薬物とアルコール中毒の経験者だ。大統領選挙の討論会で、バイデン氏は切々とハンターについて語った。「大勢の人々、皆さんの家庭にいる多くの人々と同じように、私の息子も麻薬の問題を抱えていました。すでに克服し、今も努力しています。私は彼を、息子を誇りに思います」

だがハンター・バイデン氏と違い、あまりにも多くのアメリカ人がサポートや資金を受けられていない。手遅れになる前に、今こそ手を打つべきだ。

from Rolling Stone US

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