RADWIMPSが鮮やかに体現「2020年のアリーナライブでできること」
Rolling Stone Japan / 2020年12月10日 23時25分
RADWIMPSがメジャーデビュー15周年を記念して開催した「15th Anniversary Special Concert」。11月22日・23日に開催された横浜アリーナ公演。現場に密着した公式ライターの三宅正一が見た、RADWIMPSの新たな世界とは?
RADWIMPSにとって、その音楽で表現しようとしているものの原点と核心、そして新たな可能性を得たライブだった思う。インディーズ時代から野田による独立した哲学性を貫くソングライティングと、衝動というものが瑞々しく表出したダイナミックなバンドサウンドはあきらかに特別な求心力を放っていた。
それは、たとえば野田が描く至極個人的なラブソングをバンドで鳴してみると、世界の真理が浮き彫りになるような、そんな音楽像を最初からまとっていた。ロックのみならず、ヒップホップ、ファンク、ジャズなど野田洋次郎の音楽的なアンテナは全方位に張り巡らされ、また現在のRADWIMPSの楽曲やライブにおいて”合唱”がもたらしているものはどんどん大きくなっている。それはヒップホップをはじめ海外で一つの潮流となっている”ゴスペル”の要素に近いものも感じる。
昨年、野田洋次郎にインタビューした際にも「最近の曲作りおいても合唱の力みたいなものはすごく信じているし、今後もより明確に形にしていきたいと思ってます。ライブでもRADWIMPSのお客さんの声はすさまじいって感じるんですよね」と彼は言っていた。さらには「間違いなくこれからも残っていくのは人の声であって、つまり、生音が人の声とどんどんイコールになる。だからこそ、生の声にどんどんフォーカスを当てているし、それが集まったときのパワーを信じているんです。そのパワーには俺がたった一人でどれだけがんばって歌おうが勝てない。でも、ゴスペルや合唱ってそもそもあるものだから。日本でも校歌があって、自分のチームを応援するときにもつねに歌が先頭をきってきたわけで。そこに今一度回帰しているのかなと思うんですよね。ポップミュージックよりはるか昔からあった合唱というものに」とも。
そのオーディエンスたちの声の重なりを封じ込めざるを得ないコロナの時代のライブはRADWIMPSにとってあらかじめ大きなピースを失うことを前提に臨むものだった。
メジャーデビュー15周年の今年、RADWIMPSは3月から初のドーム公演を含む「こんにちは日本~KONNICHIWA NIPPON~ TOUR 2020」、さらには北米、ヨーロッパ、アジアをまわる予定だったワールドツアーを開催予定だった。しかし、言うまでもなく新型コロナウイルスの影響によりそのすべてが中止となってしまった。コロナの時代によってかかった負荷により消滅してしまったさまざまな周年のトピックスと出来事。それらを受け止めながらしかし、RADWIMPSはそれでも今やれること、やるべきことに最大限の熱意と創造性を注ぎ、また新型コロナウイルスに細心の注意を払うことで横浜アリーナにて有観客と配信のハイブリッド方式の特別公演「15th Anniversary Special Concert」の開催を決意した。
歌と舞踏のシアトリカルな融合
今回のライブはアリーナのど真ん中にメンバーが立つフロアライブ仕様で実施された。映像もスクリーンを使用するのではなく、フロアに投影することで、メンバーと実写やモーショングラフィックの演出が緊密に一体化しながらライティング効果も果たし、現場にいるスタンディングのオーディエンスと配信視聴者の視覚を同時に満たしてみせた。
Photo by Takeshi Yao
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【写真ギャラリー】昨年8月以来のライブとなったRADWIMPS
50人弱のダンサーを起用し、ときにミュージカルの様相を見せたのもまた今回のライブならではのパフォーミングアーツであった。
Photo by Takeshi Yao
オーディエンスの声を失った代わりに、バンドは寡黙な身体表現が持つ底知れなさに目を向けた。中でもステージチェンジのインタールードとして流れた「花火大会」におけるコンテンポラリーダンスによる花火の体現、「棒人間」の歌と舞踏のシアトリカルな融合はじつに見事だった。
それにしても野田洋次郎、桑原彰、武田祐介、サポートドラマーとして迎えた森瑞希と繪野匡史のツインドラムから成る5人編成のアンサンブルはじつに活き活きとしていた。1年と少しぶりにライブができる喜びを噛み締めながら、あらためてRADWIMPSの楽曲がたたえているサウンドプロダクションと歌の独創性を実感したのではないだろうか。やはり彼らの音楽性は並びないし、今もなおロックバンドの領域をどんどん拡張しようとしている。そして、野田洋次郎というリリシストはいつだって諸行無常なるこの世界の実相をつかみ、対峙しようとしている。
Photo by Takeshi Yao
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Photo by Takeshi Yao
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だからこそ、たとえばこの日の「グランドエスケープ」、映画『天気の子』のために生まれたこの曲が、まるで今の世界の有様に対してRADWIMPSが物語の続きを提示するように迫ってきたわけだが、間違いなくこういう強度は特別なバンドでなければ得られない。
まず尊い個があり、個と個はいかにして互いに理解し、ときに親密に重なり合いながら、この世界と対峙できるのか。本編ラストブロックの「トレモロ」、「有心論」、「ます。」、「バグッバイ」の流れに顕著だったが、RADWIMPSはずっとそういうことを描き続けてきたし、描き続けるのだろうということを今回のライブであらためて強く感じた。そして、そういう歌だからこそ、多様な音楽ジャンルのエレメントが折り重なりながら、まったく新しい息吹を感じられるサウンドを必要としているのだ。そういう音楽を生み出すためにはときにメンバーの担当パートが解体されてもいい、というあり方で近年のRADWIMPSは音楽制作と向き合っている。野田はMCでこう言った。
「僕らはそのときどきの時代、人間に、空気に反応しながらこれからも音楽を作っていくと思います。たまには耳に痛いことを言うかもしれないし、でも優しい心を持って、この世界にはまだない新しいメッセージを残していきます」
今年の5月に配信リリースし、”新型コロナウイルス前の世界”と”新型コロナウイルス後の世界”を真っ向から見つめ、その相違をあぶり出しながら新しい扉を開ける意志を込めた「新世界」もそういう楽曲だった。次に「新世界」の向こう側にある新しい音、新しい歌、新しいメッセージが彼らから届く日はそう遠くないのではないかと思う。
Photo by Takeshi Yao
■RADWIMPSストリーミング配信まとめサイト
https://radwimps.jp/subscription/
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