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高良健吾が語る、自由な生き方とこだわり 「ライフスタイルを作るってクリエイティブ」

Rolling Stone Japan / 2020年12月31日 16時5分

Rolling Stone Japan vol.11掲載/Coffee & Cigarettes 22 | 高良健吾(Photo = Mitsuru Nishimura)

音楽、文芸、映画。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。日本映画界を代表する俳優の一人、高良健吾。ロックやヒップホップも聴く彼は「どのアーティストも、自分たちの言葉や生き方に責任を持っているところが好き」と語る。そんな彼の自由な生き方とこだわりに迫った。

Coffee & Cigarettes 22 | 高良健吾

※本記事は、Rolling Stone Japan vol.11(2020年6月25日発売号)に掲載された記事です。

「もしスカウトされていなかったら、自分は地元から出ていなかったと思います」

まるで彫刻のように整った精悍な顔立ちが、一瞬ふっと和らいだ。熊本県出身の俳優、高良健吾。19歳で上京し、2006年に映画『ハリヨの夏』で銀幕デビュー。以降も映画『白夜行』や『横道世之介』『シン・ゴジラ』など多数の作品に出演し、今や日本映画界を代表する俳優として確固たる地位を築き上げた彼は、今も地元の九州に並々ならぬ思いがある。インタビュー前のフォトセッションでも、カメラマンが同じ熊本出身と分かるや否や、身を乗り出して地元トークで盛り上がっていた。

「九州、大好きですね。ちょっと『南国』っぽいというか、異国感があると思うんですよ。未だに上下関係が厳しいし、『男はこうじゃないとカッコわるい』みたいな美学を、男女とも持っている。それに見合わない男はモテないんですよね(笑)。『九州男児』という言葉が今も残っているのかは分からないけど、『男はこうあるべき』と女性が思っている土地って素敵じゃないですか。カッコつけるのってすごく難しいことだし、それを求められていることで、いい緊張感が保てていると思うんですよね」

昨今、インターネットやSNSを中心にフェミニズムをめぐる議論が活発化するなか、地元愛や男らしさについて、清々しいほど堂々と語る姿勢はかえって新鮮だった。もちろん、高良のいう「男らしさ」とは、所謂「マッチョイズム」とは全く違うもの。一つの物事に、ただひたすらストイックに取り組む「職人的な姿勢」というべきか。それを貫く人やモノに、彼は惹かれるという。
「死ぬまで真面目を貫くってすごいことだと思う。一つのことに打ち込んでいる人は、男でも女でも輝いていますしね。それは、僕が好きなファッション・ブランドもそう。カッコいい服を作っている人は、やっぱりカッコいいしこだわりを持っている。『こだわり』は自分の支えになると思うんですよ。それが人を喜ばせたり、人のためになっていたりするのであれば最高ですしね」


服を選ぶときはいつも、シルエットで決めているという高良。20代の頃からNEIGHBORHOODやTENDERLOIN、WTAPSなど、シルエットが好きな日本のストリート・ブランドを愛用しているそうだ。

「服に興味を持ち出したのは中学生の頃で、当時は裏原全盛期。『CHOKi CHOKi』という雑誌が大好きで、高校生の頃は”チョキチョキ系男子”に憧れて、腰にスカーフを巻いたりしていましたよ(笑)。でも、やっぱり一番カッコいいのはTシャツにパンツ、そこにシャツを1枚はおるくらいのシンプルな着こなしかな。そういう意味でもシルエットは大事。昔からゆるいシルエットが好きですね」

そう言ってタバコに火をつける。漫画『ろくでなしブルース』の前田太尊に憧れ、最初はラッキーストライクを吸っていたが、アメリカンスピリットを経て現在はピースを愛煙している。

「ピースに替えてから1年くらいかな。名前もいいし(笑)、香りも自分にあっている気がします。おじいちゃんがタバコを吸っていたんですよ。ハイライトを1日2箱吸うほどのヘビースモーカー。お婆ちゃんからは、しょっちゅう吸い過ぎをたしなめられていたけど、『吸いたいもんを吸ってなんが悪い!』と言って止めようとしなかった。それで93歳まで生きちゃいましたからね(笑)。好きなものを我慢することの方が、体には悪いと思って僕も吸い続けています。で、タバコといえばコーヒー。これはもう黄金セットですよね。朝、自分で煎れる時もあるし、いろんなコーヒーを試します。最近友達がプレゼントしてくれた、下北沢にある『筋金珈琲焙煎所』の豆がすごく美味しかったな。外で飲むのも大好きで、近所に朝7時からオープンしている喫茶店があるのですが、そこは毎日のように行っていますね。ほぼ日課になっています」


Photo = Mitsuru Nishimura

音楽好きとしても知られる高良。ライブハウスやフェスなどで、筆者もたびたび彼を見かけたことがある。最初に好きになったバンドは、中2の頃にバンドをしていたクラスメイトから聴かせてもらったGOING STEADY。当時、恋をしていた高良は彼らのロマンティックな歌詞世界に自分自身を投影させていたそうだ。

「バンドをしている友人が当時から多くて。地元のライブハウスに昼間から通っていました。僕ですか? 僕はバンドをやったことも、楽器を演奏したこともないですね。やろうと思ったことはあるけど、ただ思っただけ(笑)。あ、でもラップのリリックは書いていました。それを友人に送ったのは黒歴史ですね(笑)。最近よく聴いているのは、踊ってばかりの国やGEZAN。どちらもライブがめちゃめちゃカッコよくて。ヒップホップは、同い年のS.L.A.C.K.やC.O.S.Aをずっと追いかけています。どのアーティストも、自分たちの言葉や生き方に責任を持っているところが好きですね。たとえ自分とはかけ離れた世界の話だったとしても、そこに嘘がないから魅きつけられるし、共感するんですよね」


そんな高良に「ライフスタイルのこだわりは?」と聞くと、彼らしいこんな答えが返ってきた。

「ライフスタイルを作るって『クリエイティブな行為』だと僕は思うんです。要は、誰でも自分のライフスタイルをクリエイティブしている。『ものを作るって、どういうことなのか分からない』と言う人は結構多いですよね。そう言う人は、例えば映画鑑賞にしても読書にしても、『受け身』の行動だと思っている。でも、映画を観たり本を読んだりした前と後では、多かれ少なかれ『違う自分』になっているじゃないですか。洋服を選んだり、料理を作ったりすることも同じで、『どういう自分になりたいか?』をイメージしながら日々の生活を送ることは、それ自体が『ライフスタイルを作る』行為だと思いませんか? コロナによって自粛期間に入り、自分自身と向き合う時間や家の中のことをする時間が増えたことで、よりそんなふうに考えるようになりましたね」

19歳でデビューした高良は今年、33歳を迎える。30代になって初の主演映画『アンダー・ユア・ベッド』は、誰からも「いない存在」とされてきた孤独な主人公・三井が、妄想の果てに暴走していくストーリー。彼の行動は純愛なのか、あるいは狂った自己愛か、それともただの執着なのか。いずれにせよ彼を、「違う種類の人間」と簡単に断罪することは出来ない。


Photo = Mitsuru Nishimura

「どんなにモラルが外れている人間に対してでも、『共感』ではなく『理解』はできると思うんですよ。その行動に共感できなくても、理解できた瞬間怖くなることってあると思うんですよね。自分の中にも、同じ感覚があることに気付くわけですから。もっと怖いのは、人を善悪で裁く行為です。『こんなことをするなんて、人間じゃない』と言う人もいますけど、人間だからこそ過ちを犯すわけで。一度や二度の過ちなんて、人間らしいしやり直すチャンスくらいあげたらいいと思う。いや、『あげる』なんて傲慢だな、チャンスは『必要』だと思いますね」

そう話すと、再び表情を和らげた高良。年齢を重ねてきたことによって、彼の仕事の向き合い方はどう変わってきたのだろうか。

「昔はそれこそ『アンダー・ユア・ベッド』の主人公のような役でも、感情の赴くまま『自分の世界』で演技をし過ぎていたというか。若い頃はそれで良かったし、そういう演技が求められていたんですけど、無意識でやれていたことに対してずっと不安がありました。偶然や奇跡を『待つ』のではなく、自分から『呼び込んで』いかないと、30代40代になった時にキツイなと。自分の感情や体の動かし方をコントロールする術を学ぼうと思って、20代の頃から少しずつシフトしていきましたね」

ただがむしゃらに役へと没頭するのではなく、自分を俯瞰しコントロールすることで演技の精度を上げていく。そんなストイックな職人的姿勢は、九州男児としての矜恃といえるのかもしれない。

高良健吾
1987年11月12日生まれ。熊本県出身。O型。2006年、『ハリヨの夏』で映画初出演。出演映画に『蛇にピアス』『ソラニン』『横道世之介』『悼む人』『多十郎殉愛記』など。またドラマにも多数出演しており、NHK朝ドラ『おひさま』『べっぴんさん 』やNHK大河ドラマ『花燃ゆ』など、2021年にはNHK大河ドラマ『青天を衝け』、映画『おもいで写眞』(1月29日公開)、『あのこは貴族』(2月26日公開)、『くれなずめ』(GW公開)が控える。

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