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森敬太、スカート・澤部渡、唐木元、西村ツチカらが、年忘れ大雑談!トーベヤンソン・ニューヨーク・アワード2020

Rolling Stone Japan / 2020年12月31日 16時30分

趣味のスーパーバンド、トーベヤンソン・ニューヨーク。各メンバーは、それぞれ本業と並行しながら活動を継続している。(Illustration by Tsuchika Nishimura)

トーべヤンソン・ニューヨーク(TJNY)のギタリスト、アートディレクター/グラフィックデザイナー森敬太による連載第9回は、毎年恒例の大雑談会。いつもと違う1年にも乱れることのない余談のキャッチボールが、年末の到来を告げる!(2020年11月23日、オンラインにて収録)

座談会参加者:森敬太(ギター担当、グラフィックデザイナー)/オノマトペ大臣(ラップ担当、サラリーマン/ラッパー)/西村ツチカ(ギター担当、漫画家)/澤部渡(ドラム担当、ミュージシャン)/唐木元(ピアノ担当、ミュージシャン)/玉木大地(キーボード担当、プログラマー)/金子朝一(ヴォーカル/ホイッスル担当、漫画家)/mochilon(ベース担当、ミュージシャン)

※この記事は2020年12月25日発売の『Rolling Stone JAPAN vol.13』に掲載されたものです。

・ボーン・アンダー・そういう星

唐木:地元にギャングみたいな釣り人っていうか、釣りもするギャングみたいなのがいるの。そいつらと揉めてて。

森:松方弘樹みたいなやつ?

唐木:最初から説明すると、先々月くらいから、俺半端じゃなく釣るようになったのよ。

澤部:導入からおもしろいなー(笑)。

唐木:釣りを始めたころは、見当違いのことやってるアジア人がいるなみたいな感じで、みんな心配して声をかけてくれたりして優しかったんだよ。

森:おいおい、そんなんじゃ釣れないぞって?

唐木:そうそう。でもね、俺が何をやっていたかというと、東京湾の釣りをやってたんだよ。

西村:ニューヨークと違うんですか?

唐木:道具も理論も全てが違う。こっちにはない釣りスタイルだから、みんな「何だあいつは」みたいな感じなわけ。でも、俺は確信があったんだよ。東京湾にほぼ同じ種類の魚がいるんだけど、東京湾の魚って何十年もずっといじめられてるから、めちゃくちゃ頭良くなってるわけ。

森:魚はそんなに長生きしないでしょ。

唐木:違うんだよ。イギリスのシジュウカラが牛乳瓶あける話知ってる? 動物も文字は持ってないけど、文化は継承するんだよ。東京湾の魚は他の地域より圧倒的に頭が良くなってる。

森:魚の歴史だって何億年かあるんだから、その理屈だと未だに地引網とかにやられてるのってチョロ過ぎないですか?

唐木:とにかくだよ。新しい釣り方が出ては魚に学習されて、通用しなくなっていくのを30年以上ずっと繰り返してるの。東京湾の釣りは他になく変態的な進化を遂げてるんだよ。それをニューヨークでやったらどうなるのかっていうのが俺のコンセプトなわけ。

玉木:コンセプト(笑)。

森:もっと気楽に釣りしてよ(笑)。

唐木:最初3カ月ほとんど釣れなかったんだけど、ある日を境に隣の人の10倍くらい釣るようになっちゃって。

金子:なんで変わったんですか?

唐木:それは俺が東京湾の理論とテクニックを完全に身につけたから。

澤部:今日なんかすごいね。大丈夫ですか?

森:強めのドラッグやってません?

唐木:その釣果をインスタに上げてたら目立っちゃって。

森:とんでもないアジアンがいるぞ、あれがカンフーだと。

唐木:そう。俺が釣りしてるエリアには3つの釣りチームがあるのね。さっき言ったギャング、ブルックリンのおしゃれチーム、そして美容師。

森:なんだよチームって。個人競技の極みでしょ釣りは。

大臣:おしゃれと美容師まとめたほうがすっきりして良くないですか?

唐木:で、ギャングのチームから勧誘されたの。最初見た時はバカだと思ってたけど、お前はすごいなって。

西村:すげー! 黒澤明の『用心棒』じゃないですか!

唐木:だけどギャングはめちゃくちゃなんだよ。立ち入り禁止のフェリー乗り場とか、埠頭とか、どんどん入る。鎖とかでっかいハサミで切ってさ、そんで何度も逮捕されたりしてるの。

もち:その人たちは趣味なんですか? その感じで。

唐木:みんな趣味なんだけど、遵法感覚がおかしい。立ち入り禁止はどんどん破壊していく一方で、勝手にフェンスにロックかけて、他の釣り人が入れないようにしたりするんだよ。で、最初に鍵渡されたの。これ何?って聞いたら、これは42番埠頭のキーだからお前は入っていいぞって。

森:バカから借りたRPGツクールに入ってたシナリオみたいだね。

唐木:いま次のビザの申請中だし逮捕とかありえないんで、インスタのDMで「俺は団体活動が得意ではないから、申し訳ないけど、君たちのチームには入らない」って送ったの。

森:気の毒……。アメリカまで来てそんな辛い文面を……。

唐木:そのときは「そうか残念だな」ってなったんだけど、1週間くらい経って「お前がインスタで釣果自慢したせいで俺たちの釣り場が荒れた。今後この辺で釣りできると思うな」って言ってきて。

澤部:唐木さんの釣りって何なの一体。

唐木:結局直接会って、インスタは凍結する、カギは返すって落とし所で和解したの。ところがインスタに凍結しますって書いたら美容師とおしゃれチームが「何か揉めてるのか? 助けてやるからうちに入れ」ってコメント欄で勧誘してきて、ギャングとおしゃれチームは敵対してるのね、「おしゃれチームに入ったらどうなるかわかってんな」って……。

西村:映画『用心棒』のセオリーでいくと、唐木さんはギャングチームとおしゃれチームの間をうまく立ち回って、2つを抗争させるんですよ。それが唯一の生きる道ですよ。

一同:(笑)。

森:めんどくせぇ釣りだな!

唐木:そもそも浮世から逃避したくて始めた釣りだったのに、超浮世になっちゃって。もう釣りやめたいよ。本当にやめたい。

森:やめりゃいいじゃん(笑)。なんだよその悩み(笑)。

一同:(笑)。

西村:YouTuberになって東京湾理論を伝道すればいいじゃないですか。唐木さんのチーム作れますよ。

唐木:それ頭撃たれるやつじゃん!

森:河に浮くやつ(笑)。

唐木:俺は一体何やったらいいんだろう……。サーフィンやっても釣りやってもこれだよ……。

森:ボーン・アンダー・そういう星ですね。

もち:グルになるしかないんじゃないですかやっぱり。

森:宙に浮くやつ(笑)。

・また来ちゃった

西村:大臣、Go To利用してそうですね。

大臣:2週にいっぺんくらいはGo Toトラベルしてますよ。

一同:(笑)。

西村:ゆとりありますねー。Go To楽しい話で埋め尽くしましょうよ。

大臣:そうですね。この間、葉山に行きまして、あまりにもパンが美味しかったんで、6日後にもう1回行っちゃって。

一同:(笑)。

玉木:すごい余裕だなー(笑)。

大臣:また来ちゃった、みたいな顔して。

唐木:なんてのんきなんだよ。ふるさと納税とかしてそうだもんね大臣は。

大臣:あ、きっちりやってます。5カ所分できるんで、全部やってます。

森:スゲー! 何がもらえるやつ?

大臣:再来週、しゃぶしゃぶセットが届きます。楽しみで仕方ないですよ。

一同:(笑)。

森:国の制度フル活用だな! 禍を満喫してるじゃん!

金子:西村さんは変わってなさそうですね。去年の年末と一緒の段ボールが積まれてる(笑)。

森:西村くんだけ違う時空間に閉じ込められてるみたいだね。その段ボールの後ろの棚には1年間触れる用事がなかったの?

西村:これを片付けるのは……来年以降でしょうね。

大臣:あえて年という単位で区切るならそうでしょうね。

森:西村くん、KIRINJIのグッズのイラスト描いてたよね。

澤部:あれ良かったですね!

森:あのグッズとスカートの10周年記念似顔絵入り丼を見比べて、なんでこうも違うんだろうと思ってたんだよ。

澤部:同じ人が絵描いてるのにね(笑)。

西村:もちろん僕も絵の描き方変えてますからね。相手見て変えてます。

一同:(笑)。


・もったいないチップ

金子:僕入院して手術受けたんですよ。急に痔ろうになっちゃって。

澤部:気の毒だけどやっぱりちょっと笑っちゃうなー。

森:Go To ベッド(笑)。1週間に2回葉山に行く人もいるのにね。

金子:みんな笑うけど、結局運が悪かったら誰でもなるらしいんですよ。痔ろうは。生活環境とか遺伝に何の原因もない人でも、なる人はなるんです。突然です。

もち:天罰みたいな言い方(笑)。

玉木:コロナ禍の入院生活どうだった?

金子:意外と忙しかったです。ご飯とシャワーの時間が決まってたんで。

玉木:最多で4件じゃん1日のタスク(笑)。

金子:入院前にPCR検査も受けましたよ。あれは痛いですよほんとに。感覚的には目の後ろくらいまで棒をガーッと入れられるんですよ。

もち:それロボトミーだったんじゃないの?

森:ほんとだよ。前頭葉を切除されたんじゃない? これを機に。

金子:機ってなんですか。

大臣:脳にチップ埋められたんじゃないの?

森:朝一にチップ埋めてもなー。なんかチップもったいなかったなって思うんだろうね埋めた人も。あんまり動かない画面を見ながら(笑)。

金子:そうやってうっすら笑ってますけどね、突然痔ろうになりますよみなさんも。後悔すればいい。

森:怖い、あまりにも顔が怖いよ。

・想像していなかった未来が

森:みんなで話すのも半年ぶりだしさ、どんな感じだっただろうと思って今日のためにこの前の録音を聞き直したんだけどひどかったよ。さすがに5時間とか話してたら話すことがなくなったんだろうけど、「全然溶けない飴がある。すごい」とかって話してんの(笑)。

一同:(笑)。

西村:その話してましたねー。大して盛り上がってないのに長々と。

森:30代が集まって夜中に飴の話してるなんてね。こんな未来想像してなかったよ。

澤部:想像していなかった未来っていうと、この前うどん屋入ったら、ごますり器があったんですよ。

森:あのハンドルをクルクル回すやつ?

澤部:そうかなと思ったら、ごますり器が電動式に進化してて(笑)。

森:つまんない技術導入したね(笑)。

澤部:僕が夢見たのはこんな未来じゃないよって! しかも遅いの。パラ…パラパラ……って(笑)。

森:あるよね、テクノロジーの方向性に憤りを感じること。

玉木:森さん前回(編註:2020年6月19日実施)はやよい軒のごはんおかわりロボに激怒してましたね。

もち:あれ、コロナ禍で結構活躍してるんじゃないですか?

森:言いっぱなしっていうのもなんか申し訳ないからさ、実際やよい軒行って使ってみたんだよ。そしたらけっこう良い感じで。ホワッとよそってくれてさ。テクノロジーに謝らないといけないと思ってたからちょうどよかった。

西村:「テクノロジーに謝る」。人間味極まった感じありますね。


・もう贖罪は終わってますよ

澤部:そろそろ振り返ればいいんじゃないですか?

森:振り返るか……。この座談会の下準備で、2020年のニュースを片っ端から見返してメモする作業に身を入れすぎたみたいで、この前仕事のメールで「どうもありがとうございます」って打とうと思ったら「ど根性大根」ってサジェストされて。心底嫌になったよ。

大臣:この忙しい年末に。こんなことをするために生を受けたのかって思っちゃいますねそれは。

澤部:この「JR大阪駅前にど根性大根生える アスファルトの隙間」っていうのと「JR大阪駅前のど根性抜かれ、代わりにワケギ置かれる」っていうニュースですね(笑)。今年2回出てきたから(笑)。

森:言うことあるわけないじゃんそんなニュースに対して!

大臣:驚くほど感情が動かないですね。

森:こうやって並べて見てみると、今年も軽率なニュースが目につくね。

唐木:俺はこれに揺さぶられたな。「つくば市郵便局員、14年間配達せず」。

西村:一貫してこういうの注目してますよね。

森:やっぱり世の中がどれだけ緊迫しても、気の緩みみたいなものを前面に押し出して生きてる人が好きだから。この人がすごいのはさ、未配の荷物を職場のロッカーに隠してたんだよね。職場のロッカーあけたら、見られちゃいけないゆうパックが山みたいにあるんでしょ。大変だと思うよ。開け閉め。それを14年間も続ける根性。本当すごいよ。見上げたもんだよ。

大臣:捨てずに置いておくっていうのはどういう気持ちなんですかね?

森:いつか配ろうと思ってたんじゃない? それもすごいわかるよ。

大臣:いい人じゃないですか(笑)。

唐木:わかる。本当にわかる。

森:結局こういった出来事の全ての根底にあるのは、今日さぼっても、明日2日分働いたらなんとかなるから寝ちゃおうって考え方なんだよね。

澤部:身を切られるようですね……。

唐木:共感性羞恥の波が押し寄せてきたよ。

森:14年間配達しなかったら、もうそれでいいじゃんってなるよ。荷物捨てずに取っておくなんて出来た人だよ。

大臣:もう贖罪は終わってますよ。

一同:(笑)。

金子:終わってはいないでしょ(笑)。始まってもない(笑)。

大臣:俺は許しますよ!

森:実害ないから、そりゃ許すだろうよ(笑)。「佐賀市郵便局員、ほこらの下にゆうメール556個隠す」。これもあったね。

澤部:ほこらって意外に収納力高いんだっていう発見がありましたね。

大臣:アライグマとかの発想ですよね。

森:横領するとかじゃなくて、ただただ早く帰りたかったっていうのがすごく正直でいいよね。

金子:「三重大准教授、ドア23枚叩き壊す 職場に不満」。パンチ効いてますね。

森:23枚って建物1棟のドア全部だよね。要するに。

玉木:1階から4階まで全て破壊したらしいです。

森:人間が出来てるよね。建物のドア全部壊すくらい怒ったら、普通は途中で人殴っちゃうよ。

大臣:生真面目ですよね。

唐木:検索してみたけど、弁償したんだねこの人。

澤部:ちゃんとしてるなー! 本物の人格者じゃん。

森:建物に対して誠実だよね。

西村:さっきからハードル下がりすぎでしょ、いい人の。コロナ禍といえども。ちゃんとした人は1枚もドア壊さないですよ。

森:ハッとすることを言うね西村くんは。

澤部:そんななか、「『噂の東京マガジン』終了発表」。

もち:やっと終わってくれるよ!

森:ついに落ちたね、イービル・エンパイアが。

一同:(笑)。

澤部:「やって!TRY」は悪夢ですもんね。

森:あんなにひどいもんないよね。道通ってる人に突然、カニクリームコロッケ作れって。広義の傷害行為でしょ。

もち:父親があの番組大好きで辛かった……。

一同:(笑)。

唐木:ブックオフの人まだ出てるの?

森:清水国明でしょ。

大臣:ブックオフもコンタックも出てますよ。

金子:テイク・ア・チャンスも。

森:なんでみんな出演者の名前を口に出すのを避けるんだよ。怖いよ。

澤部:避けたくなる気持ちはわかります。

森:ブックオフの店内で流れる曲あるじゃん、あのねのねのやつ。あのCDを大学4回生の時に10円で買ったんだよ。で、iTunesに読み込んだら、ジャンルが「BOOK」って出てさ。悪いやつがいるなと思ってたら、段々記憶が蘇ってきたの。それ大学2回生のときに俺が入力したやつだったんだよ! 背筋が凍ったね。

西村:全部一人でやってる(笑)。

大臣:ひどいタイムカプセルがあったもんですね。

・数え直したんですけど

森:来年こそはトーベヤンソン・ニューヨークで音楽活動をしたいという気持ちはあるよ。

澤部:毎年思うんですけどねー!

森:あれ? もしかしたら2021年は結成10周年の記念すべき年なんじゃないですか?

西村:ベスト盤出しましょうよ!

森:グレイテスト・ヒッツね(笑)。

大臣:ファンが選ぶベスト盤作りましょう!

金子:シングル1枚、アルバム1枚しか作ってないのに(笑)。

森:なんかやる気が出てきたね! 来年こそはやるぞ音楽活動!

玉木:数え直したんですけど、2021年は結成11年目です。10年目は今年でした。あと1カ月で終わります。

一同:……。

座談会を2回やっただけで結成10周年のアニバーサリーイヤーを無自覚に通過したTJNY。こんなはずではなかった、こうなる気がしていた、全てが思い通りになった、3つの感情が高度に混ざり合い、前代未聞の感慨となって机を照らす。バンドの初顔合わせなのに楽器も持たずに集まって、漫画の話題で最初の余談の口火を切った御茶ノ水のパスタ屋から10年。生活と物語を抱えて、ワイルドサイドを歩きスマホで共に蛇行した10年。ディスプレイに反射した自分はあの週末よりも若く、悪い予感のかけらもない。TJNYアワード2020を受賞したのは、全然溶けない飴、「梅ぼしの種飴(ノーベル製菓)」です。(森 敬太)

Illustration by Tsuchika Nishimura

森 敬太
京都府生まれ、デザイナー/アートディレクター。小説、コミック、CDなどの装丁を手がけながら、2011年から自主制作漫画レーベル「ジオラマブックス」を主宰、漫画誌「ユースカ」を発行。2017年、合同会社飛ぶ教室を設立する。Instagram : @m_o0_ri

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