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パンデミックとBLMの2020年、世界のメディアが選んだ年間ベストから見えてくるもの

Rolling Stone Japan / 2021年1月29日 17時45分

テイラー・スウィフト

音楽メディアThe Sign Magazineが監修し、海外のポップミュージックの「今」を伝える、Rolling Stone Japanの人気連載企画「POP RULES THE WORLD」。ここにお届けするのは、2020年12月25日発売号の誌面に掲載された、欧米メディアによる2020年の年間ベストの結果を集計/考察した記事。果たしてどのアルバムが2020年を象徴する作品として支持を集めたのか? そして、その傾向から見えてくるものとは?

当然のことながら、2020年の年間ベストでは世界中を襲った未曽有の事態であるCOVID-19パンデミック、そして構造的な人種差別に抗議するBLMの再燃にどのようにアーティストたちが向き合ったか?ということをほぼすべてのメディアがポイントとして挙げている。そのような意味では、世界中のアーティストやメディアが大きなテーマを共有していた稀有な年だったと言っていい。

ただ同時に、米公共ラジオ局NPRによるこのような指摘も説得力を持っている。

「振り返ってみることでこの一年に形を与えることが出来るだろうか? 頭上に土が降りかかって積み重なるかのような、恐怖、怒り、フラストレーション、混乱、高揚感、疲弊感の幾つものレイヤーに意味を与えることが出来るだろうか?」

いまだ終わりが見えないパンデミックや、解決の糸口にすら辿り着いていない構造的差別に対して、そう簡単に答えを出したり総括したり出来ない――そのような実感を誰もが持っているのも確かだろう。それゆえに、各メディアの年間ベストにはある程度の共通項がありながらも、それぞれに苦労の後が滲んでいる。

では、そんな中でも特に目立った評価を得た作品は何だったのか? もっとも多くのメディアで1位を獲得し、軒並み上位に食い込んでいるのは断トツでフィオナ・アップル『Fetch the Bolt Cutters』だ(21媒体で1位。以下、媒体数のカウントはalbumoftheyear.orgを参照)。

Fiona Apple - Fetch the Bolt Cutters


評価のポイントとされているのは、やはり圧倒的に自由な発想力で定型を打ち破っていく演奏と歌唱。これはパンデミック以前に作られたアルバムではあるものの、ほとんど自宅でレコーディングされたDIY作品なので、奇しくも多くの隔離アルバムと制作条件は同じ。しかし、それでもここまでクリエイティヴなものを作ることが出来るのだ、と証明してみせたことも評価につながった一因ではないだろうか。

また、今年はテイラー・スウィフトが批評的な評価においても「復活」した年だった。『folklore』はRolling StoneやTIMEなど8媒体で1位を獲得(しかも12月11日にはその姉妹アルバム『evermore』をリリース)。現時点で計15媒体でトップ3入りを果たしている。

Taylor Swift - folklore


もちろんテイラーは過去二作も決して悪い評価ではないのだが、ここまで上位を占めるのは彼女による完全ポップ宣言だった野心作『1989』以来。言うまでもなく、『folklore』に対する評価のポイントは、パンデミック以降の状況に向き合いつつ、『1989』以来の音楽的冒険に成功したことだ。


BLMに呼応したラン・ザ・ジュエルズ『RTJ4』

BLMに呼応した作品としてもっとも評価が高かったのはラン・ザ・ジュエルズ『RTJ4』。BLM再燃の真っ只中に発売日を前倒して緊急リリースされ、警察の暴力や構造的差別のシステムを糾弾した本作が2020年を象徴する一枚であることは疑いの余地がない。これはNMEなど5媒体で1位を獲得した。

Run The Jewels – RTJ4


また、イギリスからのBLMに対する応答と位置付けられるSAULT『Untitled (Black Is)』も高い評価を得た。イギリス発のブラックミュージックはなかなかアメリカで評価を得るのが難しいが、このアルバムはRough TradeやBBC 6 Musicといった本国イギリスのメディアだけでなく、アメリカのNPRも1位に選んだことは特筆に値するだろう(計8媒体で1位)。

SAULT - Untitled (Black Is)


インディロックのアーティストに目を向けると、今年はフィービー・ブリジャーズ『Punisher』が圧倒的な高評価。11媒体で1位を獲得し、さらにはPitchforkで4位、NMEやThe FADERで5位と有力メディアからも推されている。ローリングストーンが評するところの、「内省的で荒涼とした、20代特有の心象風景を描くソングライティング」が多くのメディアで支持された形だ。

Phoebe Bridgers – Punisher


それ以外だと、フリート・フォクシーズ『Shore』やワクサハッチー『Saint Cloud』など、アメリカーナをモダナイズしたサウンドを打ち出してきたアーティストも上位にランクイン。今年はUSインディが批評的にも作品のクオリティにおいても復調を見せた年だったと言えるかもしれない。

Fleet Foxes – Shore


Waxahatchee - Saint Cloud


ベテランでは、ボブ・ディラン『Rough And Rowdy Ways』が圧勝。UncutやMojoといった読者の年齢層が高いメディアで1位を取っただけではなく、Rolling Stoneで4位、Pitchforkで6位など主要メディアでも評価が高い。やはり世界中がパンデミックで混沌を極める中、唐突に(思える形で)63年のケネディ暗殺事件についての曲を放り込んで人々に考えさせたのは、あまりにディランらしい鮮やかさだったのだ。

Bob Dylan - Rough And Rowdy Ways


Edited by The Sign Magazine

【画像を見る】ローリングストーン誌が選ぶ、史上最高のベーシスト50選(写真50点)

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