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アーティスト向け新サービス ストリーミング収入などが即時で受け取れるクレカが誕生

Rolling Stone Japan / 2021年2月4日 12時30分

Create Music Group

米音楽会社Create Music Groupは、”ミドルクラス”アーティストのエンパワーメントという目標に向けてユニークなクレジットカードサービスを発表した。「アーティストが起業家のように考え、ブランドを構築することが私たちのねらいです」と、同社のアレクサンダー・ウィリアムズCOOは語る。

音楽ストリーミングは、小切手で支払われたロイヤリティ(著作権使用料)が現金化されたときにしかアーティストに金銭的な価値を提供してくれない。そして多くの場合、小切手が現金化されるのは数週間後のことだ。米カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点とするCreate Music Group(以下、CMG)は、これを変えようとしている。現地時間2月2日、音源流通、音楽出版、音楽マーケティングといった分野で急成長を遂げているCMGは、Create Carbonというクレジットーカードのベータ版プログラムを発表した。Create Carbonはアーティストのロイヤリティ収入とダイレクトに紐付けられたクレジットカードで、稼いだ分の金額がすぐに使えるのが特徴だ。CMGは、顧客であるアーティスト100名にベータ版を提供し、今後数カ月にわたってさらなる新規顧客を獲得したいと考えている。

2019年以来、FlighthouseをはじめとするTikTokに特化したブランドを傘下に持つCMGは、ラッパーのテカシ・シックスナインなどの数多くのアーティストの音源流通を担当し、同社が提供しているリアルタイムのロイヤリティ回収サービスを売りにしてきた。このサービスは、アーティストの収入の全体像に対するさまざまな見方をアーティストとそのチームに提供するために開発されたツールだ。新しいクレジットカードサービスはこのコンセプトの一歩先を行くもので、これによってアーティストは最低1カ月という、小切手が現金化されるまでの待機期間から解放される。CMGの共同創業者でCEOのジョナサン・シュトラウス氏は、9時〜5時で働く一般的な会社員は定期的に給料支払い小切手を受け取るが、大手企業のパックアップがないインディーズ系アーティストは必ずしも毎月の支払日まで待てるとは限らない。たとえばマーケティングなどのサービス料を払うためにすぐに資金が必要になることもあると、本誌に語った。

「アーティストはForm 1099(訳注:米国で働く個人事業主が取引相手から受け取るフォームで、個人事業主はこれをもとに収入を申告する)を提出しなければいけませんから、ローンを組むのはハードルが高いのです」とシュトラウス氏は言う。「インディーズ系アーティストのすることには、即時的な行動が求められないものはほとんどないと言ってもいいでしょう。何らかのマーケティングキャンペーンに投資したい場合、2カ月も待っていられません。楽曲の一般的なライフサイクルを見てみると、それがピークに達して勢いがつく頃には、その収益をすぐに使える状況でなければいけません。アーティストがディストリビューション会社からレコードレーベルに移る理由はここにあります。ストリーミングプラットフォームでトレンドになってストリーミング再生数がアップしても、収益にアクセスすることができないのです」。

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CMGのCOOで共同創業者のアレクサンダー・ウィリアムズ氏曰く、クレジットカードはアーティストをより自立した、有能なビジネスパーソンにするための手段でもある。

「アーティストが起業家のように考え、ブランドを構築し、自分自身に再投資できるシステムを持つことが私たちのねらいです」とウィリアムズ氏は言う。「日々のロイヤリティを表示してくれるプログラムを構築したのは、こうしたデータに毎日アクセスできることがインディーズ系アーティストにどのような影響をもたらすかを長期的に検証するためです。このような形でロイヤリティを見たことがなかったときと比べて彼らのアウトプット量がぐんと伸びたのは、最大の発見のひとつでした。クレジットカードの場合も同じような結果になると予測しています。私たちは、継続してアウトプットするにはどうすればいいかという問題についてもっと考えてもらい、もっとも効率の良い方法で実行することを推奨する新しい時代を迎えようとしているのです」。

今後数カ月にわたってベータ版Create Carbonがさまざまな課題に取り組むことで、同社はより強固なクレジットカードシステムを構築するだろう。米MasterCardがCreate Carbonの支払いネットワークを担っているため、MasterCardが使える場所であれば、Create Carbonも使用可能だ。さらにCreate Carbonユーザーの手元には、黒のチタン製のカードが届けられる。テーブルの上で落としたとしても、ラグジュアリー感あふれるチタン特有の重厚な音のおかげで金持ち気分が味わえるというわけだ。CMGは、6カ月間で同社独自の銀行口座にユーザーを移行させようと計画している。こうした銀行口座を通じてユーザーは信用取引の実績を積み、より一般的なローンを組むための底力を強化できる。それに加えて、ほかのクレジットカード発行会社同様、CMGは顧客である音楽クリエイターに特化した報酬システムの実現にも取り組んでいるが、参加企業や小売業者の詳細に関するコメントは控えた。

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CMGのCreate Carbonパイロットプログラムには、ラッパーのフューチャーとテカシ・シックスナイン、DJのファンクマスター・フレックス、さらにはポップデュオのサーフェシズやLARRYなどのアーティストが所属するマネジメント会社Homemade Projectsが顧客として名を連ねる。CMGとElliot Grange率いる10K Projectsは、2019年にHomemade Projectsに投資している。「Create Carbonは、インディーズ系アーティストにとってとてつもなくパワフルなツールです」と、Homemade Projectsの共同創業者のザック・フリードマン氏は声明を発表した。「ロイヤリティが支払われると同時にそれにアクセスできるおかげで新しいプロジェクト、マーケティング・イニシアチブ、ツアー活動を資金面でサポートし、前払いのために何度も交渉したり、厄介なローンを背負いこんだりする必要もなくなります。このツールは、CMGによる画期的なイノベーションです」。


Create Carbonがインディーズ系アーティストに与える影響についてシュトラウス氏は強気と言えるほどの態度を示す一方、もっとメジャーなアーティストにも同じようなメリットがあると氏は語る。「莫大なマーケティング予算を承認することができます。それも送金といった手間のかかる作業もいりませんし、カード一枚ですべてが叶うのは素晴らしいことです」と述べた。「(ロイヤリティを)毎日支払ってもらうためにこのシステムを使う人はいないかもしれませんし、多くの人にとってはマーケティング使用がメインかもしれません。でも、それでいいんです。収入と支出という日々のお金の流れが把握できるのですから」。

CMGの新たなクレジットカードサービスは、音楽業界において異色だ。だが、業界関係者以外の人たちが思うほど無謀なものでもない。機能という点で音楽会社は、アーティストの作品に対して融資を支給する投資銀行的な役割を長年果たしてきた。こうした融資は、作品による収益を通じてあらかじめ定められた期間内に返済されてきたのだ。

シュトラウス氏は、CMGのクレジットカードが”ミドルクラス”アーティストのサポートとなり、ストリーミング収入をレコードレーベルから渡された小切手に書かれた数字ではなく、自身のツールとして考えられるよう、彼らの地位向上に貢献したいと期待を寄せている。

「いままでは、ビッグになるか、無名のままでいるかでした。その中間というものは存在しなかった。でも毎月8000、9000ドルを稼ぐアーティストがいたっていいじゃないですか」とシュトラウス氏は話す。「中産階級によるアメリカという、何百万もの人たちがこうした方法でロイヤリティを稼ぐ全体的なシステムがあってもいいと思いませんか? 個人的には、かなりクールな仕組みだと思います。そこまでの道のりは長いです。Create Carbonはこうした問題をいますぐ解決してくれるわけではありませんが、難題を解くための鍵にはなるでしょう」。

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