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I Don't Like Mondays.が語る、パブリックイメージへのカウンターで生まれた5曲

Rolling Stone Japan / 2021年2月19日 17時0分

I Don’t Like Mondays.

I Dont Like Mondays.(アイドラ )は、2020年2月に『I Dont Like Mondays. "F U T U R E" TOUR』のツアーファイナルを東京・豊洲 PITで開催。その後、コロナの影響で予定していたアルバムのリリースが延期になったものの、8月から「モンスター」を皮切りに新曲5ヶ月連続配信リリースをおこなって、2020年12月30日には「ミレニアルズ 〜just I thought〜」を配信リリースした。今回は5作連続リリースの話はもちろんのこと、2020年の総括、今のI Dont Like Mondays.について話を聞かせてもらった。

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ー5ヶ月連続配信リリースをおこなって、どんな手応えを感じましたか。

SHUKI:1曲1曲に対してリスナーの反応が見れる時代だからこそ、アルバムよりも配信をやって良かったと思いますし、連続配信はこのバンドに合っているやり方だと感じました。その都度、僕ら側の解釈とリスナーさん側の解釈の違いを学んだり感想を楽しんだり。そういう新しい手応えを得られたのは怪我の功名というか、このタイミングだからできた試みだなと思います。

ー6年前に『PLAY』をリリースした時、YUさんは「このバンドは重苦しいメッセージを歌詞にするよりも、音に寄り添った歌詞の方が合ってる」と話してましたけど、今回は逆のアプローチだったんじゃないのかなって。

YU:確かに、これまでは4人で作り上げたサウンドをいかに曲として届けるかに注力していたので、言葉の持つ意味よりもサウンドにフォーカスしてきました。だけどコロナになったのを境に、リスナーは家で一人の状況で音楽を聴く機会が増えていく。だとすれば、今までのクリエイティブで良いのかな? と悩みました。人と会うことが難しくなったら、どうしてもメンタル的にもやられる人が多い。そういう時に聴く音楽って、歌詞が心に届きやすい。だからこそ「みんなで楽しむ音楽」よりも個人的なことだったりとか、人前で出せないドロドロした感情だったり、そういう人間の内側を描いた作品にトライするべきだなと感じて。まさに、そこに注力した5曲かなと思います。

ー12月30日に配信される新曲「ミレニアルズ 〜just I thought〜」の話を聞く前に、作詞について触れたいんですけど。今回、配信された5曲ってどれも冒頭に強い言葉を置くことに意識したと思うんですね。

YU:そうですね。

ー明確には言ってないですけど、「東京エキストラ」の出だしって男女が車の中でSEXをする描写から始まるじゃないですか。何が良いかって、ラブラブでSEXをしているわけじゃなくて、女の子は負の感情を紛らわせようと行為に及んでいるところなんですよね。ただ気持ちよくなりたくてSEXをするわけじゃない。あのブルージーな感じって、大人にならないと辿り着けない境地だよなって。



KENJI:歳を重ねないと、中々理解できないですよね。

YU:実を言うと「東京エキストラ」は5曲の中で最後に書いたんですよ。俺らって今まで恋愛の曲が多かったにも関わらず、今回の5曲でちゃんとした恋愛の曲は「東京エキストラ」だけ。今のモードで(恋愛曲を)書いたらどうなるんだろう? と自分でも楽しみにしながら書いたんですけど、まさかああいうものになって。先ほど仰った冒頭の言葉のインパクトに関して、これまで俺の作詞のスタイルって、いかに4人で作ったサウンドをキャッチーに聴かせるかを念頭に置いて、”サビの1行目”を重要視してきたんですよね。だけど、より人間の深い部分を表現するとなれば、今までのやり方に限界を感じていて。どうしたら良いか試行錯誤をする中で、思い切って出だしの1行目から書いてみようと思った。サビがどうなるか知りませんと。

ー結末を決めないまま、冒頭から歌詞を書き始めた。

YU:実は、今回の5曲は全てそのやり方なんですよ。結果どうなったのかというと、今までの俺では考えつかないような歌詞になったんです。そのスタイルの方が自分に合っているな、と思った。逆に言えば、他のバンドやシンガーじゃ歌えない”自分たちにしか描けない物語”を意識して作っていきました。

ー「ENTERTAINER」の冒頭もインパクトがありますよね。どれだけ好きで付き合っていても、別れた途端に相手は淡白になるっていう。恋愛のロマンチックな面だけを描いてないのが良いなと思ったんです。他のバンドが「ENTERTAINER」のような曲を作ろうとしたら、おそらくキレイにまとめちゃうじゃないですか。

YU:そうなんですよね。今までの俺もそうだったのかもしれないです。メジャーからリリースされて色んな人に聴かれると思ったら、一歩踏み出せない自分がいた。これまでは陰と陽でいうと、陽の部分を中心に表現してきたんです。だけど陰にフォーカスを当てるようにしたら、そっちの方が自分だなと思ってしっくりきました。ただ、自分の愚痴だったりネガティブなものを吐き出すだけの捌け口にはしたくないので、聴いた人の気持ちをポジティブに変換できるようにするのが今、自分の目指したい形だなと思ってます。いやぁ……。そういう意味でも変革の年でしたね。



ーとはいえ、せっかくI Dont Like Mondays.が新しい試みをしても、メディアがちゃんとキャッチできてない気がして。先日、とある記事で「オシャレ系バンド・I Dont Like Mondays.」という見出しを見つけた時、すごく違和感を覚えたんですよ。アイドラってオシャレというか、ブラックミュージックに傾倒していたり、難解なコードを使っていたり、音に対するこだわりが強いバンドじゃないですか。それを「オシャレ」だけで括っちゃうのはいかがなものかと。

YU:いや、本当にそうで! 正直、オシャレと言われることにうんざりしてるし、糞食らえ! と思ってるんですよ(笑)。仰る通り、使っているコードとかリズムの跳ね方でオシャレと言ってるだけで、それはすごい浅はかな捉え方だと思っているんです。もちろん相手のライターさんもネガティブな意味で言ってるわけじゃないので、ありがたいなとは思いつつ……。全然理解されてないなとも思っていて、そこの葛藤はありますね。

ーアイドラってライブハウスとクラブの中間にいるので「陽なバンド」、「オシャレ」というイメージがついてた。だけど、今年配信した5曲は、そんな世間のイメージに対するカウンターだと思ってて。

YU:はいはい! 本当にその通りですよ!

ー一方で、歌詞のイメージをそのまま音にしたら、フォーキーだったり湿った音になると思うんですよ。でもアレンジによって暗いサウンドになってないのが良いところで。

SHUKI:そうですね。「東京エキストラ」関しては冬の曲をテーマにしてて。正直、ドラムとしては鈴の音を入れておけばクリスマスっぽくなるわけですよ。だけど、そういう小手先のやり方は本当にうんざりで、今回は意地でも入れないと思ったんです。最後にクリスマスっぽい観点とは違う意味で、タンバリンは入れたんですけど、それもラストサビだけですからね。今回はゴスペルでクリスマス感が増長させたのがポイントだよね。

CHOJI:あとコード進行も割と温かい感じにしてる。YUが内なるものを歌うとなった時に、僕らとしては良い意味でそっちに引っ張らないようにしたんです。あくまでアイドラらしくアレンジするのはすごく意識しましたね。

YU:俺らってバンドなので、ちゃんと役割分担ができるんですよ。メッセージありきで曲を作るとなったら歌詞の世界観に引っ張られすぎちゃうし、曲を作ったテンションのまま歌詞を書くとどうしても普通の曲になっちゃう。でも、作詞と作曲を切り離して作ることで良い作用を生んでいる。

CHOJI:ちなみに「東京エキストラ」のコード進行に関しては今回の楽曲で、割と多用しているんです。「ENTERTAINER」でも使ってるし、「MR.CLEVER」もアレンジする前はああいう感じだったので。

ーそういえば「MR.CLEVER」、「ENTERTAINER」、「東京エキストラ」も含めて、歌謡曲っぽいコード進行ですよね。

KENJI:そうそう。洋楽っぽい楽曲をやりたいと思ってアイドラを組んだので、歌謡曲っぽい進行って、ちょっと避けてきたんですよ。でも、このタイミングであえて挑戦しようと。それをいかにアイドラっぽくするかはすごく考えながらやったのが功を奏したのかなって。ちょっと哀愁があるけど、あんまり邦楽になり過ぎないようにしましたね。



ーどうやって邦楽らしさを抜いたんですか。

KENJI:音を詰め込んで派手にしていくのが、日本の商業音楽だと思うんですよ。だけど音を削ぎ落として、いかに隙間を作って気持ちよく聴かせるかが僕らの醍醐味だと思うので、そこは気をつけました。

YU:あとはメロディのリズムじゃないですかね。表よりも裏を感じるような拍子の取り方でメロディを作っていくこと自体が、あんまり邦楽っぽくない。それは4人とも洋楽がルーツなことも大きいです。だからこそアイドラのサウンドが出来上がっていると感じてます。

SHUKI:あと今年の楽曲で僕らがチャレンジしたのは、コード進行とメロディのバランスですね。目標とするキャッチーさが100として、コード進行が80でメロディも80だと160になっていき過ぎちゃう。メロディが良かったら、トラックやコード進行をもうちょっとキャッチーじゃないようにして、安っぽくなり過ぎないように意識した。こっちを強くするならあっちは弱くする、とバランスを気をつけて取り組みました。それによって「何回も聴きたくなる楽曲」になっていると思います。

ー「何回も聴きたくなる」というのは、僕もまさにそうでした。あとリリースした順番に聴くのが、すごいしっくりくるというか。

KENJI:そこは狙い通りですね。「東京エキストラ」を出した時って、最初は別の曲にしようとしてたんです。だけど5曲目「ミレニアルズ 〜just I thought〜」が出来た時に「もっと良い流れがあるんじゃないか」と順番を考え直したんです。

ーじゃあ「ミレニアルズ 〜just I thought〜」の存在が大きかったわけですか。

YU:うん。それはコロナになったことが大きいですね。いつもなら4人で集まって、その場で音を鳴らしながら曲を作ってきたんです。だけどコロナ禍になって、どうしてもリモートで曲作りをせざる得なくなった。「ミレニアルズ 〜just I thought〜」は手初めてとしてリモートで曲を作ろうと完成させたものだったので、もしかしたらコロナがなかったら全然違う形になっていたかもしれないですね。

SHUKI:このメロディがなかったら、この歌詞にもなってないしね。

YU:本当に色んなことが重なってできた曲だと思います。「ミレニアルズ 〜just I thought〜」は環境問題について歌っているんですが、僕自身が日々生きている中で環境について熱心に考えているのかと言ったら、そうではなくて。むしろ普通の人が持っている知識と同じくらいなんですよ。まさか自分が環境問題を考えなければいけない曲を書くなんて、夢にも思ってなかったです。



ーどうして環境問題の歌を作ろうと思ったんですか。

YU:曲を聴いた時に映像が見えたんですよ。環境のこと、地球のこと、人類のことを歌わなきゃいけない時が遂にきてしまったかと思いましたね。

ー音に導かれて歌詞の着想が浮かんだと。

YU:そうそう。とはいえ自分はドライな人間なので、押し付けがましい歌詞は嫌いだし、「もうちょっと考えなさいよ」と言われたくない。自分のような考え方の人が、俺と同じように考えてくれたら良いなって思いで仕上げた曲ですね。

ー去年『FUTURE』をリリースした時に「僕らはおじいちゃんになっても、若い女の子が踊っているような曲をやりたい」と言ってましたけど、この曲は真逆じゃないですか?

YU:そうですね。俺はパーティも好きだし、女の子も好きだしというのはあるけど、一人で考えにふけるのも好きなんです。今まで自分が持っている一部の面しか、このバンドで表現してなかったんですよね。で、今回は思い切って書いてみた。それは5曲ともそうで、特に「モンスター」なんて今までの俺では、あり得ないような歌詞の作り方だったんです。だけどみんなが「良いじゃん」と言ってくれたことによって、これもアリなんだと思って。そこに拍車がかかって「ミレニアルズ〜just I thought〜」もそういうスタンスで作ったんですね。

KENJI:僕は、おじいちゃんになっても出来る曲になったなと思いますね。決してストーリミングで訴求力のある曲ではないと思うんですけど、長い時間をかけていつまでもやれる曲を作れたことはすごく嬉しいです。

YU:KENJIが言ったように、「ミレニアルズ〜just I thought〜」はこの時代にそぐわない曲の作り方というか、イントロからサビまで相当長いし間奏も長すぎるので、今の若者が聴きやすいサウンドなのかと聞かれたら、そうではないと思う。だけど、音楽が消費されるスピードが速い現代で、むしろ一番そういうことをやってそうなアイドラが真逆なことを試せるのは、自分としては音楽の業界に対する反骨精神を提示できる良い機会だなと思ってます。しかも、こういう重いテーマを訴えかける曲をロックバンドがやらずして、誰がやるんだろうと。12月30日というリリースの時期もそうですし、テーマや作曲の仕方も含めて、今までで一番アート性が高い曲になったと思います。

ーアート性の反対って大衆性だと思うんですね。つまり、いかに大勢の人に好かれるか。

YU:俺らってパッと見もチャラいし、サウンドもチャラいし、そう思われているバンドがこういう曲を歌うって個人的には「見たか!」という感じなんですよ。

ーパブリックイメージとの闘いってことですよね。

YU:そうです。

ー以前、YouTube配信で「どうやったら自然とSEXに誘えるか」を4人で話してたじゃないですか。ああいう面を見せなければ、軟派なイメージはつかないんじゃないですか。

YU:ボーイズバンドとかボーイズグループもそうですけど、そういうところを見せない社会的傾向があると思うんです。ただ腐ってもロックバンドなので、エンターテイメントとして俺らみたいなバンドがいても良いのかなって。

ーメディアの露出の仕方ってどう考えてます?

YU:出る雑誌や番組を絞った方が良いんじゃないか? という時期もあったんですよね。だけど変に絞るのも俺らっぽくないし、今さら「バラエティに出ません」というのも寒いなって。結局はやり方次第だなと思いますね。

SHUKI:ブランディングって絞れば絞るほど作りやすくはなるんですけど、一番の理想はどこに出ても揺るがないことだと思うんですよ。Appleなんて良い例で、家電量販店にもコーナーを作っているんですけど、自分たちのスペースを作らせることによってもどこに出しても大丈夫。やっぱり、それってやり方なだけなので、そのやり方さえ考えればどこでやっても大丈夫じゃないですか。

CHOJI:そうだね。

YU:とはいえ、こんなにバンド経営が難しいと思ってなかったんですね。どうやって自分たちをブランディングしていくのかは曲も歌詞もそうですけど、メディアの出方やインタビューも含めて考えなければいけない。思った以上にこの仕事は大変だなと思いますね(笑)。

ー良い音を作るだけじゃないっていう。

YU:そうなんですよね。最近この人ってすごいんだなと思ったのが、King Gnuの常田(大希)くん。「音楽って抽象的な世界だから、田舎から出てきた人間が”これがカッコイイ音楽だ”と言っても相手にされない。でも、東京藝大出身っていえば聴いてもらいやすくなる」と話しているインタビューを見たんです。すごい打算的ですよね。確かに、みんなバイアスがかかって音楽を聴くので「あ、これがカッコいいんだ」と自分の感覚だけで判断できる人ってごく僅か。ほとんどの人は「世間でこれがカッコいいと言われているからカッコいいんだ」って、社会はそういうものじゃないですか。つまりバンドマンだから曲のことだけを考えればいいでしょ?というのも違うんだなと。どうやって届けるかも、俺らが意識を持たなければいけない仕事だと毎日考えてますね。


<作品情報>

I Dont Like Mondays.
MBSドラマ特区『西荻窪 三ツ星洋酒堂』オープニング主題歌「ENTERTAINER」

配信中
配信リンク:https://avex.lnk.to/ENTERTAINER​
『西荻窪 三ツ星洋酒堂』公式HP:https://www.mbs.jp/3boshi_youshudo/

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