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ファーストサマーウイカが語る、「何も極めていない」からこその強さと変わらぬ音楽愛

Rolling Stone Japan / 2021年2月16日 18時30分

ファーストサマーウイカ(Courtesy of Virgin Music)

ファーストサマーウイカが、2月22日にソロデビューシングル「カメレオン」を配信リリースする。

2013年にアイドルグループBiSに加入。BiS解散後には、BILLIE IDLE®を結成し2019年末まで活動し、現在ではテレビやラジオなどあらゆる方面で活躍するファーストサマーウイカ。そんな彼女のソロデビューを飾る曲「カメレオン」は、彼女が敬愛する阿部真央がウイカと何度も話し合いを重ねて書き下ろした楽曲である。

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そんなファーストサマーウイカにインタビューを敢行。デビュー曲「カメレオン」のことはもちろん、30歳を迎えてソロデビューで提示したいこと、これまでの音楽経歴の中に新たに刻むソロ活動への意気込みを訊いた。

ーこれまでもBiSやBILLIE IDLE®でも音楽活動をされてきたウイカさんが、もう一度音楽活動をするというのを知って素直に嬉しかったです。BILLIE IDLE®の解散が決まった当時は、自分がまた音楽活動をするかもしれないというイメージはあったんですか?

BILLIE IDLE®の解散前後の時期は、このままテレビの仕事がたくさん増えていったらいいなと思う一方で、中学生くらいからずっと何かしらの形で携わっていた音楽活動が無くなっちゃうのかなとも思っていて。音楽をやり続けたいなという想いはあって、またこういう道を選びました。その後、野性爆弾のくっきー!さんと遊びでスタジオに入らせてもらったことがあってすごく楽しかったんですが、スケジュール合わせるのが大変で、それもあって、音楽をやるにせよバンドやグループっていうのは今は違うのかなと考えました。ソロデビューは人生で1回もしたことなかったし、逆に言えば、テレビで名前を知ってもらえるようになった今だからチャンスでもあるかもしれないと思って、BILLIE IDLE®が解散する前後ぐらいからお話を進めさせてもらいました。

ーBILLIE IDLE®が解散する時点から動き出し、コロナ禍の中でもソロの音楽活動に向けて動いてたんですね。

先の見えない状況で、いつになったら以前のようにエンタメやライブができるか分からないけど、元通りになるのを待ってたら私は何歳になっちゃうんだろうなと思ったんです。できることからやっていけば、何かチャレンジはできるじゃないですか。私はまだ新人だからこそ、小規模でできることもたくさんあると思っているし、ライブハウスやエンタメシーンに少しでも還元できることをやっていきたいと思っています。

ーそういう中で、阿部真央さんがウイカさんのためにソロデビュー曲「カメレオン」を書き下ろしました。ウイカさんが考えていること、思っていることを阿部さんが汲み取って作られた曲だと思うんですが、阿部さんに楽曲制作をお願いされた経緯を教えてください。

私自身は曲も書けないし、歌詞を書いてもどこかでかっこつけたり、見せ方を考えてしまうと思ったんです。なので、どなたに楽曲提供していただこうと考えた時に、阿部真央さんは私が高校生の頃から好きだったし、抜群に歌が上手くて、ロックでかっこいいし、変わらず第一線でいい歌を書き続けている方で。阿部真央さんみたいに等身大で嘘がない曲を書ける人が、他己紹介的に曲を書いてくれたら、より私の本質が出るかなと思いました。

ー曲を作るにあたって、阿部真央さんとはどんなやりとりがあったんでしょう?

真央さんは取材のように一対一でヒアリングしてくださって。最初の顔合わせの時からメモを取りながら「こういう状況でウイカちゃんはどう感じる? どういう考え方なの?」と、細かいところまで見てくださいました。それ以降も2人でゆっくり話して、歌詞が書き上がってからもさらにディスカッションしたり、試行錯誤してくださいました。だから、今回の曲はかなり私のことを書いてくれたと思います。真央さん自身も「私とウイカちゃんは結構似てる部分も多いから、自分のことも書いちゃった」と仰っていて。私たち二人の歌詞でもあるし、皆が日常的に思ってること、秘めているようなこと。これは私の考察ですが、対人関係での多面性とか、上辺だけで判断されたりとか、SNSと現実での人格の乖離への思いなんかの要素も含まれていているのではないかと。大変興味深かったです。


ファーストサマーウイカ

ー実際、ウイカさんのイメージ通りの曲ができましたか?

私は最初、ポジティブなメッセージで会場が盛り上がるような曲、阿部真央さんの曲で言えば「モットー。」や「ふりぃ」みたいなイメージで相談させてもらったんです。でも、真央さんがヒアリングを重ねた後に「ウイカちゃんの曲を描こうと思ったら、こうにしかならなかった」とおっしゃって、私が思っていたのと真逆なちょっとダークで、心の内を激しく突きつけるような曲を作られたのは意外でした。もちろん、真央さんならオーダー通りに作ることもできたと思うんです。でも、真央さんが「ファーストサマーウイカ」という人間を掘り起こし組み立てたとき、この「カメレオン」の像が見えた、これを私に歌ってほしいと強く言ってくれました。その言葉が本当に嬉しくて、真央さんの気持ちと歌詞の力に、自然と涙が出ました。

ーウイカさん自身が描いていたイメージと、真央さんが客観的に捉えたイメージでは、生まれてくるものがだいぶ違ったんですね。

皆で元気になれるという私のオーダーは、結局上っ面で描くアーティスト像に過ぎなくて、ファーストサマーウイカの本質や気持ちを出す考えには至ってなかったなと思うんです。でも、真央さんは「自分の本質を出せないと、アーティストをやる意味ないじゃん」と仰っていて。元気な感じはラジオとかテレビでも出しているし、私という人間はどういう考えを持っていて、どういうことに頭を悩ませているかを吐露する機会はあまりなかったので。こういうインタビューで話すような内容を、曲に乗せて出すことがアーティストなんじゃないか? と、認識を変えてもらえたんです。嘘のないアーティスト人生を歩んできた阿部真央さんだからこそ、他の人にもそういう曲を書けるんだと思って感服しました。

ータイトルの「カメレオン」というのは、ウイカさんの色々な活動の側面を表しているのかなと思いました。

色々な状況に合わせて、その身を隠すこともあれば、状況を把握して誰よりも目立つ方向を考えたり、意図的に自分を変化させてきた私の性質を、一言で表すような言葉だと思いました。100%の自分を出しても世間やあなたは受け入れてくれるんですか? とか、自分が見たいところだけを切り取った編集点で判断されるでしょう、と、世間に対して突き付ける部分もあるけど、自分自身そうやって生きてる部分もあります。私は天才じゃないし何も才能がなかったけど、状況に合わせて、変幻自在にやり方を変えながら個性を出すことができるのも一つの特技だと、認めてくれるようなタイトルだと思います。かといって、私にしか当てはまらないような内容ではないんです。誰しもが持っている家族の中での自分、友人の中での自分、1人のときの自分、それぞれちょっとずつ違う。どれが本当でどれが嘘じゃない、というところにも当てはまるんじゃないでしょうか。

ー曲の雰囲気はJ-POPかもしれないけど、奥底にあるメッセージ性や最初の不協和音で始まる感じ、アートワークまで随所にエッジのある主張を忍ばせていると思いました。

編曲の時点で私からもかなり積極的に意見を言わせていただいたり、レコーディングでも編曲のakkinさんからたくさんアドバイスをいただいて。だんだん曲が形になる中で、闘うというテーマが明確になっていったんです。真央さんも、ママになられても音楽で闘い続けているように私は感じていて、私もさらに30歳でソロで音楽をやり始める。新しいことに手を伸ばす時は闘いが生まれていくから。その中で、闘う強い女性を表現することを軸に、アートワークの発想も広げていったんです。MVも闘う女性のイメージから監督とディスカッションして、カメレオンに合わせて一人二役の自分を戦わせて、さらにそれを俯瞰して冷静に見ている自分がいることで、多面性も表現しました。でもかっこつけすぎたくないから、おもしろ要素や私がやる意味もどんどんつけたくて、それらが予想以上に形になったMVになりました。



ー世の中では、どんどん女性の人が声を上げてアクティブに活動しています。そうした必然的な流れの中、ウイカさんのようにキャリアを築いてきて、新たにソロで音楽活動ができることを示す。なかなか同じような道を辿っている人はいないと思うんです。

確かにSDGsの中にも女性の社会進出っていうのがテーマの一つとしてありますよね。今回フジ、BSフジ、ニッポン放送のSDGs3波連合プロジェクトのアンバサダーに就任させていただいたんですが、今は取り立てて女性○○って言う必要のないぐらい、当たり前に一線で働き続けている女性がいっぱいいると思うんです。特にバラエティ番組の現場は男社会のイメージが勝手にあったけど、現場に行ってみたら女性プロデューサーとかスタッフもとても多いんです。私も30歳になって今更何かできないとか、ちょっとイタイかな? とか考えてしまう瞬間はあるけど、頑張って第一線を走っている人を見ると元気や自信をもらえる。アーティスト活動は強さも脆さも表現できる。色々な面を見せられる、正にカメレオンみたいな職業だから、あまり気負わないでやれたらいいなと思っています。30歳からメジャーデビューしても全然遅くないよとか、挑戦することに対しての恐怖心、女性であることが足かせになることはないということも体現したいです。それを前面に出したいわけじゃないけど、付加価値として、そういう側面も感じてもらえたら嬉しいですね。

ーBILLIE IDLE®は1980年代がコンセプトのグループでしたが、今考えると少し早いグループだったのかなと思うんです。最近は1980年代のシティ・ポップが海外で人気ですけど、それはBILLIE IDLE®がアプローチしていた部分でもあるなと思って。

BILLIE IDLE®がそれをやりだしたのは5年前くらいですね。そこから2、3年経ってからアイドルシーンやポップスシーンでも80sっぽい音楽とか、VHSみたいな映像が増えてきて。BILLIE IDLEのプロデューサーのNIGO®さんは、常に時代の先を行ってシーンを作る人だったけど、でも消費者は同じ速度感で動いていないわけですよ。だから、私たちがやってたことは間違ってないと思うし、第一期BiSもBiSHがあれだけ売れたのを考えると、やらせてもらっていたことはやっぱりどちらも全く間違ってなかったと思うんですよね。それを先に体験させてもらったと思うとすごく貴重なことだし、皆の記憶の中でも廃れることがないと思うんです。

ーそうやって、ウイカさんの活動のルーツにもなっていたわけですよね。

自分がソロで歌ったりと音楽を続けることによって、自分のルーツとしてBiSやBILLIE IDLE®を辿ってくれる人がいてくれれば、BILLIE IDLE®はあの時代でこんなことをやってたんだ、BiSってBiSHが出てくる前からこんなことやってたんだって、あの時の輝きが残り続けるから。自分が何か発信し続ける、進み続けることによって、歴史も脈々と息が続いていくんじゃないかな。それも音楽を続ける一つの意味だと思います。



ーファーストサマーウイカという看板でやってきたことは、変わらないままですもんね。

そうですね。バックボーンを辿っていくと、私がファーストサマーウイカを名乗る前は役者をやっていて、そのときの劇団にもまだ籍を置かせてもらっているんです。でも、私を知った人が、私を辿ってくれたときに、その劇団にも興味を持って見に行ってみようかなって思ってくれたら、それだけでも何か還元できると思うんです。ファーストサマーウイカという名前でメジャーデビューさせてもらって、そこからちょっとずつ裾野が広がっていったんで。せっかくだったら原点まで辿っていって、いろんな広がりも持ってくれたらいいなと思いますね。私は肩書きが何でもない人だから、ファーストサマーウイカがその役割を担ってくれたらそれでいいかなって。

ーさっき言ったポップなセンスの部分も、そういうバックグラウンドも、ウイカさんのソロ音楽活動の武器になるのかなと思うんです。

今やってることはカルチャーを作ろうとか流行らせようというよりも、これまでの活動を経て、今の私が、自分が素敵だなと思う誰かと作り上げるもの、私の等身大からできる私の作品が作れたらいいなと思っているんです。そうやって今活動しているところが、今までとは違うかもしれないですね。

ー私の作品、というのはすごく素敵な言葉だと思うんです。ウイカさんがBiSで活躍されていた同時期だと、元でんぱ組.incのねむきゅん(夢眠ねむ)も、今は夢眠書店という本屋さんをやっていて。そうやって自分の場所を大事にしていく傾向ってすごくいいなと思うんです。人生って長いから、ある一瞬だけで終わるわけではないですし。

そうですね。私もアイドル時代からねむきゅんのプロデュース能力や、セルアウトする力みたいなものを感じていて。やっぱりアイドルとしてある種の頂点まで上り詰めて、そこから本屋さんという全く違う業種にシフトしたのは、私もとても力をもらったんです。私は何も極めていないし、今後も頂点に立つことはない気がするんですよね。私は固まった肩書きがないし、何でもやるけど、一方で、何でもない人だなという感じもするんです。だから、挑戦し続けて、何を成し遂げられるのかわからないけど、その姿を見た人がもう一回挑戦してみようかなとか、クヨクヨしてるものが吹っ飛んでくれたらいいなと思って。私はそういう先輩たちから力をもらったので、それをまた次の世代に返していけたらいいなと思いますね。

ーこれまで一人でバラエティや演技もしてきて、ようやくソロデビューで音楽のピースも埋められたと思います。あとは本当コロナの状況次第だとは思うんですけど、今後は音楽アーティストとしても、積極的にやっていこうとお考えですか?

私は音楽の知識もそれほどなければ、音楽がないと生きていけないというほどじゃない気がするんです。もちろん音楽が大好きだけど、音楽とかエンターテイメントを作る構成、過程、そして結果を見て皆で喜びを共有したりとか、感動した、楽しかったっていう皆の反応のリターンを見ることに喜びを感じていて。私のやることが誰かの力になれたという実感、それが全てなんですよね。例えば、私にすごく画力があったり、絵を描くことが好きだったら画家でもよかったと思うんです。でも、ステージ上でのパフォーマーとしてでしか私は楽しい工程を達成できないと思って。私はステージに立ち続けることでしか自分を幸せにできないし、人に幸せを与えることもできないかもしれないって気づいたんです。今後も、音楽シーンの中で私がやる意味を探しつつ、私がいたからこそ生まれた音楽にアイデンティティを感じて、誰かと曲を作ってたりして、音楽シーンで何かを作っていけたらいいなと思いますね。私は何でもないからこそ、変にこだわりを持ちすぎず、フットワーク軽く楽しんで音楽をやりたいです。

ーエンターテイメントの真髄ってそういう部分ですよね。音楽性が大事なことももちろん、エンターテインメントの側面からもどう楽しんでもらうのかという意味で言えば、ウイカさんが今置かれてるポジションはそれを最大限活用して広げられると思うんです。ジャスティン・ティンバーレイクだって、アイドルからスタートして、ソロでアーティストデビューして、映画もバラエティにも出る。そうやって活動していくとエンターテインメントは面白くなっていくし、色々な分野の人がもっと行き来したら楽しくなりますよね。

バラエティに出るようになって思ったんですけど、バラエティは刹那的だと思うんです。つまり、その2時間くらいの間、自分は面白いものを作るためだけに尽力するわけですよ。できたものに対して最大限の力を発揮するのも、私は楽しいんですけど、世間からすると消費されていくような感じもあるんじゃないかな。だんだん鮮度が落ちて、それに合わせて質も落ちたらもう完全に終わっていくような気がするんです。でも、アーティストは積み上がっていくもの、売れてる売れていないに関係なく、年輪のようにその人に刻まれていく。それが深ければ深いほど、音楽としての背景や感じ方も深まっていくんじゃないでしょうか。

ーなるほど。

メジャーシーンじゃなくても、めちゃくちゃかっこいい音楽をする人。例えばクリトリック・リスが、ゴールデンタイムの音楽番組で酒相撲をする日は遠いかもしれないですけど(笑)。でも、スギムさんのかっこよさで私は何度も涙したことがあるし、メジャーで売れることだけじゃないものが、音楽にはいっぱいあることを知って。でも、マスの世界で売れてる第一線の旬な人たちのすごさも今は分かるし、結局どっちも素晴らしいんです。でも、特に音楽シーンは、その両方を体験できる人は一部の人間だろうと思ったので、自分のこれまでの経験を生かしたい。売れる売れないだけじゃないもの、ちゃんと年輪として刻まれていくものを大事にしようと、先輩方の背中を見て強く感じました。どんなに懐かしい曲でも、聴いた瞬間に思い出が蘇ったりとかして、それは色褪せないじゃないですか。バラエティみたいな刹那的なメディアだと、色褪せて懐かしいね、で終わっちゃうのが、音楽作品として残せるというのは、アーティストの強みだなと思うんです。自分もそういう風に、今の自分をタイムカプセルみたいに、その時々に凝縮して置いていきたい。それをBiS、BILLIE IDLE®と続いてきた自分の音楽遍歴の中に、ちゃんと残していきたいと思っています。

Edited by Kohei Ebina(SW)


<リリース情報>



ファーストサマーウイカ
デビューデジタルシングル「カメレオン」

発売日:2020年2月22日(月)
作詞・作曲:阿部真央
編曲:akkin

ティザーサイト:http://firstsummeruika.com/
YouTubeチャンネル:https://smarturl.it/fsu_qr


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