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デイヴ・グロールが語る、ドラム・バトルで得た2020年最大のインスピレーション

Rolling Stone Japan / 2021年2月16日 18時0分

フー・ファイターズ(Photo by Danny Clinch)

通算10枚目となる最新アルバム『メディスン・アット・ミッドナイト』を世界同時リリースしたフー・ファイターズ。最新全英チャートではトップ10圏内のほかの9作のセールス総計を上回る売り上げで1位を獲得。全米チャートではトップ3に初登場。ここ日本でも発売当日のデイリーチャートで総合アルバムチャート1位を獲得するなど、世界的なロックバンドのアルバム・デビュー25周年という節目を飾る作品になった。

今回、デイヴのオフィシャルインタビュー完全版をRolling Stone Japanにて掲載。聞き手はライター・編集の大野俊也。

ーニュー・アルバムはめちゃくちゃノリがよくて踊れる、ロック・ダンス・アルバムに仕上がりましたね。2020年のフー・ファイターズのアルバム・デビュー25周年をお祝いするような意味合いもあるのですか?

デイヴ:このアルバムの曲作りを始めたのは、1年半前ぐらいなんだ。2020年はデビュー・アルバムの25周年イヤーになるし、俺たちにとってビッグな年になるはずだったんだよ。だから、今までにやったことのないことをやりたいと思ったんだ。それでいろいろ昔の音楽を聴いてみたり、ファストでヘヴィでハードなパンク・ロックやハード・ロックを聴いてみたり、アコースティックやオーケストラの入った素敵なバラード・スタイルの曲を聴いてみたりしたんだ。そこで気づいたのは、俺たちは今までにグルーヴをメインにしたアルバムを作ったことがないっていうことだったんだよ。グルーヴっていうのは、聴いた人が身体を動かしたくなったり、ダンスしたくなったりするようなビートのことだ。俺自身小さい頃から、ダンスしたくなるようなロックンロールを聴いて育ったんだ。スライ&ザ・ファミリー・ストーンとかデヴィッド・ボウイ、ローリング・ストーンズのような、ロックなんだけど、ファンクやダンスの要素が入った音楽を好きで聴いてた。だけど今までそういう音楽にチャレンジをしたことがなかったんだ。それで決めたんだよ。メロウで素敵な音楽を作るんじゃなくて、昔のロックのように、パーティのノリのアゲアゲの音楽を作ろうってね。それで2019年9月にレコーディングを開始して、2020年1月にレコーディングは終わってた。スゴくエキサイトしてたよ。さあ、これから25周年イヤーだ。パーティしよう。世界中を回ろう。スゴくデカいことになるぞ。……なんて思ってたら、すべてが止まってしまったんだよね(苦笑)。

Foo Fighters - No Son Of Mine (Official Video)


ー新型コロナウイルスのせいですね……。でも、この新作ではダンスしたくなるようなアルバムを作ろうという意図がハッキリとあったわけですね。確かに新作を聴くと、かつて人々がロックでダンスしていた時代の音楽を彷彿とさせます。60年代、70年代、80年代と、ロックはある意味最高のダンス・ミュージックだったわけですから。

デイヴ:ダンス・ミュージックの歴史を振り返ってみると、いつだって最初にダンスありきで、その音楽はミュージシャンが楽器をプレイして作ってたわけだ。ファンク、R&B、ソウルの始まりはバンド演奏だったし、60年代、70年代のロック・バンドはそこにチャレンジしてるんだ。何人か集まってみんなでグルーヴを生み出すのがバンドだし、俺はそれがスゴくエキサイティングなことだと思う。特にビッグ・コーラス、ビッグ・ギター、たくさんのエネルギーが入ると最高のものになる。俺はそういうのをずっとやりたかったんだけど、タイミング的に今だとは思えなかったんだよね。だけど今回、そのタイミングがやっと来たんだよ。このアルバムの曲にも、フー・ファイターズらしいメロディ、フー・ファイターズらしい歌詞はちゃんとあるよ。でも、テンポとグルーヴに関しては、今までにやったことのないことをやりたかったんだ。俺は元々ドラマーだから、音楽をリズムでとらえるし、打楽器を演奏するマインドでとらえるのが大好きなんだ。だから、どんな曲でも、ストレートなロックンロールの曲であろうと、グルーヴとフィーリングたっぷりの曲にすることができるんだ。だから今回はそういうことをやってみたんだよ。フー・ファイターズの音楽を違うリズムの音楽に変えてみたらこうなったって感じさ。


アルバムを作る時に一番大切なのは「エネルギー」

ーデヴィッド・ボウイとローリング・ストーンズの名前が出ましたが、新作は彼らのダンス・アルバムとも言える『レッツ・ダンス』や『タトゥー・ユー』を彷彿とさせるところがありますね。

デイヴ:そうなんだ。デヴィッド・ボウイは、常に変化し、成長し、進化していったアーティストという意味で、良い例だと思うんだ。俺自身、初期のボウイが大好きで、スパイダース・フロム・マースも『ジギー・スターダスト』も「フェイム」も大好きだ。だけど『レッツ・ダンス』は別格で大好きなんだよね。『レッツ・ダンス』はスゴくシンプルなアルバムで、そんなにたくさんの要素が入ってるわけじゃなく、ドラム、ギター、ベース、ホーン、キーボードで作られてる、モータウンのレコードみたいな感じなんだけど、それをボウイは現代によみがえらせてる。シンプルなんだけど、新しいもの、カッコいいものとしてよみがえらせてるんだよ。だから、バンド・メンバーと話す時も、このアルバムを参考例として、「『レッツ・ダンス』みたいなアルバムを作ろう」、「今『レッツ・ダンス』みたいなのをやろうよ」って話してたんだ(笑)。

ーそれ、ヤバいですね。

デイヴ:ヤバいよね。まず何よりも、俺自身、エレクトロニック・ミュージックもディスコ・ミュージックも大好きだし、ファンクだって大好きなんだ。だから、フー・ファイターズが今までにやったことがないっていう理由だけじゃなかった。俺が好きな音楽はスゴく幅が広くて、アース・ウィンド・アンド・ファイアーも好きだし、プロディジーも好きだし、スクリレックスも好きだし、ケミカル・ブラザーズも好きなんだ。だから、身体が動くような音楽を作ろうってなった時に、オプションはたくさんあったんだよ。ただ、フー・ファイターズとして、俺にとって重要なことは、どうやって俺たちらしくやるかっていうことだったんだ。もちろん少しひねりを入れてなんだけどね。

ーそういうことだったんですね。確かに、デイヴの好きな音楽を反映して、いろいろな音楽の要素が入っていますね。タイトル曲の「Medicine At Midnight」にしても、ミディアムのダンス・ナンバーで、70年代のローリング・ストーンズらしさもあるし、ギターなんて『レッツ・ダンス』のスティーヴィー・レイ・ヴォーンを彷彿とさせていますよ。

デイヴ:そうそう(笑)。アルバムを作る時に一番大切なのは、エネルギーが間違いないっていうことなんだ。だから、レコーディングから感じるフィーリング、レコーディング場所から感じるフィーリング、すべての環境といったものが、音楽というアウトプットに影響を与えることになる。良い感じの場所にいて、良いエネルギーを持っていれば、それが自然と曲の中にも現れる。一方、暗い場所にいて、ダークなエナジーを持ってると、それだって曲の中に現れてしまう。だから曲をレコーディングする時に、徹底的に基礎から作っていこうと思って、まずはドラムから取りかかってみたんだ。リズムを決めて、こうやろう、こういうサウンドにしていこうって話して、そこからギターに取りかかって、最高のサウンド、最高のパターンを探し求めていった。そうやって基礎から積み上げて作っていくうちに、自分たちの音楽で自然と笑顔が生まれてきたし、バンドでグルーヴできるようになっていった。だから俺たちはそれをキープしたかったんだ。

アルバムの最後の曲「Love Dies Young」が一番良い例なんだけど、あの曲を書いてレコーディングを始めた時、スゴくシンプルに「♪ナーナーナナナナーナ♫」って感じで出てきたんだ。それって、今までに俺たちがやったきたことと変わらないし、おなじみフー・ファイターズの曲っていう感じだったんだ。でもそこでみんなに「いつものフー・ファイターズのリズムでやらないで、ABBAのリズムでやろう」とか言ってみたんだ(笑)。そんなことは今までにやったことがないからね。そこからドラムのレコーディングをしたんだけど、もう笑ってしまってね。ギターにしても、ギャロップのリズムでクイーンの「Keep Yourself Alive」みたいに、ジャンジャカジャンジャカ弾いて、ビルドアップしていったら、終わりの方ではもうジョークみたいになってたよ。音楽だけで笑顔になるようなことができたんだ。俺はギターのパートを担当したんだけど、誰かがこの曲を聴いて笑ってくれるのが待ち切れなくてね。だけどそういうエネルギーこそが俺たちが求めてたものなんだ。ハッピーのエネルギーっていうか、いい気持ちになる感じさ。単に居心地が良いだけじゃなくてね。本当にやるべきことなのかどうかわからないことをやるのって、最高のフィーリングなんだよ。俺たちは今までにやったことのないことをやりたかったし、本当にやるべきなのかはわからないけど、たぶんやった方がいいんじゃないかってことをやってみたんだよ。


俺の人生の思い出のすべては音楽によって決まってる

ー一方で、「Holding Poison」という曲は非常フー・ファイターズらしい曲ですね。

デイヴ:そうだね。「Holding Poison」は本当にフー・ファイターズっていう感じの曲だと思う。この曲を書いてデモとしてまとめた時は、おなじみフー・ファイターズのサウンドでしかなかった。この曲を聴いたら、「ああ、フー・ファイターズね」ってすぐに感じるような曲だと思うよ。それでレコーディングがすべて終わった時、曲は全部で13曲ぐらいあったんだけど、いかにもフー・ファイターズっていう感じの曲が何曲かあったから、そういう曲はアルバムには収録しなかったんだよ。

ーそうなんですね?!

デイヴ:ファンに向けてだけでなく、自分たちに対してもサプライズになるようなアルバムにしたかったからね。「Shame Shame」をレコーディングした時だって、俺たち自身でもけっこう驚いたんだ。今までに全くやったことのないタイプの曲だったから、スゴくエキサイトできたんだよ。それで、アルバムに収録したのはそういうタイプの曲ばかりにしたんだ。「Learn To Fly」「Best of You」「My Hero」「Everlong」みたいな曲は今回は必要なかったんだよ。成長していく中でもハッピーであり続け、クリエイティヴのプロセスにおいてもエキサイトし続けるためには、少し自分のことをプッシュしないといけないんだ。俺たちはこのバンドをもう25年間もやってきてるし、俺自身はさらに長くバンドを続けてやっていきたい。だからプッシュし続けないといけないんだよ。

Foo Fighters - Shame Shame (Official Video)


ー同時にバッチリ楽しまないといけないですよね。

デイヴ:常にそうだね。何をやるにしても、仕事にしても、恋愛にしても、人生にしても、家族にしても、人生を上手く楽しんだ方がいいんだ。毎朝目を覚まして、今までとは違う新たなことを経験する。それで人間は前に進めるわけだから。それで俺たちの心臓は動くし、血液も流れる。それがクリエイティヴのプロセスにもなっていくんだ。

ーバンド活動が長続きする秘訣でもありますよね。

デイヴ:間違いないよ。俺はずっと変わらないようなバンドも好きだし、変わり続けることによって聴き手に考える機会を与えてくれるようなバンドも好きなんだ。俺たちはたぶんその二つの中間に位置するようなバンドだと思うんだ。

ー2020年は新型コロナウイルスの影響でライヴができなくなってしまいましたが、このアルバムの曲をライヴで実際に演奏したらめちゃくちゃ盛り上がりそうですね。

デイヴ:もちろん昔の曲を演奏するのも大好きだよ。「Everlong」は今でもやってて楽しいし、「This is a Call」も大好きだ。1stアルバムの曲をやるのも、他のアルバムの曲をやるのも、このニュー・アルバムの曲をやるのも、同じくらい楽しいんだ。それは音楽的にだけじゃなく、個人的にも、感情的にも何かを感じるから。俺自身、音楽に対して、個人的なつながりや感情的なつながりを求めてしまう傾向にある。だから、俺の人生の思い出のすべては音楽によって決まってるような感じなんだ。70年代の曲を聴くと、その曲を初めて聴いた時に自分がどこにいたのか思い出すし。ラジオでニルヴァーナの曲を聴くと、その曲をレコーディングした時にどんな服を着てたのかを思い出すんだ。フー・ファイターズの曲を聴くと、その曲を作った時の自分のヘアスタイルを思い出してしまうよ(笑)。

ー全部音楽とつながっているんですね。

デイヴ:そうなんだ(笑)。音楽とのつながりは不思議なものだし、エモーショナルなものなんだ。ライヴで10年前の曲、20年前の曲をプレイすると、オーディエンスの方も、それぞれがその曲に対する思い出を持ってるわけだから、みんなでシンガロングをする時には、その時代を祝福するような時間に変わるんだ。それって、バンドをやってて最高なことの一つなんだよ。フー・ファイターズは俺一人のバンドじゃなくて、みんなのものなんだ。だからそれをみんなと共有すると、俺たちは一つになれるんだよ。


ナンディとのドラム・バトルで気づいたこと

ーそれにしても、新型コロナウイルスの影響ですべての予定が狂ってしまいましたね。

デイヴ:本当そうだよ。2020年の3月の時点ですべての準備は整ってたんだ。アルバムは完成してたし、アートワークも出来てたし、Tシャツも作ってたし、機材の準備もバッチリで、ツアーもブッキングされてた。今後2年間の準備はすべて整ってたんだよ。でもそれが全部ストップしてしまった。その時、最初にみんなが取った行動は、友達、家族、みんなが無事かどうかの確認だった。その後は、こんな状況にも何となく適合できるようになって、すべてについて新たな視点で考えることになったんだ。何年もの間、俺たちのバンドの最も大きな部分を占めてきたのは、ライブ・ショーとツアーであり、ステージに上がってプレイすることだった。それができなくなった今でも、クリエイティヴであるべきだし、何かを作るべきだし、前に進み続けなければいけない。だけどすべてが変わってしまった今、何をしたらいいんだ?ってなるよね。だからこそ、新しいアイデアに自分たちを適合させなくちゃいけないのさ。実は今回、俺がスゴく影響を受けたことがあってね。それはイギリスの10歳の女の子と俺との間で繰り広げられたドラム・バトルなんだ。

【動画を見る】10歳のナンディと52歳のデイヴによる本気ドラム・バトル

ーInstagramで見ましたよ。ナンディという女の子ですよね。

デイヴ:そうそう。ナンディのおかげで俺はかなりインスピレーションをもらえたんだよ。彼女のことは、TVでニルヴァーナの曲「In Bloom」を叩いてたのは見たことがあってね。10歳なのにスゴいドラマーだと思ったよ。彼女のエネルギーと情熱、それにドラムを叩いてる時に叫ぶのにもヤラレてしまったしね。その女の子が俺にドラム・バトルで挑戦してきたんだ。俺は「OK。楽しいじゃん」って思ったよ。そこから交互に曲をプレイしてバトルをやったんだ。俺が1曲叩いてチャレンジすると、次は彼女が1曲叩いてチャレンジするっていう感じでね。ちなみに、彼女に会ったことは一度もないし、知り合いでもない。彼女と俺の住んでるところは6000マイルも離れてる。そんな俺たちがこれをやった唯一の理由は、楽しみたかったからだし、その楽しさをみんなと共有したかったからなんだ。そこで俺は「つまりそういうことなんだな」って思わされたよ。毎日パソコンやスマホを見てると、「今日もまたこんなニュースか」とか、「今日は一体どういう一日になるんだ」って思わされるよね。だけどナンディを見たら、3分もすれば笑顔になれるし、楽しい気持ちに満たされるはずだ。俺はそこにスゴくインスピレーションを感じてね。音楽っていうのはこういうことのためにあるんだって、改めて思わされたよ。

俺たちは他の人たちに聴いてほしくて音楽を作るし、他の人たちに歌ってほしくて音楽を作るし、他の人たちに踊ってほしくて音楽を作ってる。それがフェスであろうと、5000人規模のライヴ会場であろうと、一人でいる自分の部屋の中であろうと、ワインを飲みながら踊ってる場面であろうと変わりのないことで、音楽を通してそういう楽しさを共有することこそ、俺たちがやるべきことなんじゃないかって思ったんだ。ナンディとドラム・バトルを始めてすぐに、俺たちのアルバムを出さなきゃってことに気づかされたよ。「OK、今すぐにアルバムを出さなきゃ」ってね。みんなが必要としてるのは、現実から逃避すること、解放されること、幸せを感じること、喜びを感じることで、音楽はそのためにあるわけだし、俺たちはそのために音楽を作ってる。この気づきこそが、2020年にもらった最大のインスピレーションになったね。


希望が最も大切なエモーション

ーちなみに、ドラム・バトルで叩いたドラムセットは娘さんから借りたものですか?

デイヴ:そうそう!(爆笑) 俺には11歳になる娘がいて、ナンディほど真剣にドラムをやってはないんだけど、ドラムは叩いてるんだ。AC/DC、ラモーンズ、クイーンあたりをレパートリーにしてるよ。娘のドラムセットは11歳向けのもので、俺の普段のデカいドラムセットに比べるとかなり小さい。51歳の大人が子供用のドラムセットでドラムバトルに臨んだら面白いと思ってね(笑)。俺には3人の娘がいて、14歳、11歳、6歳なんだけど、娘たちにとってナンディは同世代のヒーローなんだよ。ナンディが自分の好きなことを一生懸命やってるのを見て、自分たちにも何かできるんじゃないかと思ったみたいなんだ。ドラム・バトルをやったことによって、娘たちもインスピレーションをもらえたんだよ。

ーコロナ禍の状況だからこそアルバムを出さなきゃってなったという話も出ましたが、アルバムの内容も楽しくてダンスできるようなものになったからこそ、余計に今の時代に出す意味も大きくなったように思います。

デイヴ:俺自身、このアルバムは何度も何度も聴きまくるほど大好きで、すぐにまた聴きたいなって自分でも思ってしまうくらいなんだ。車の中で聴いて仕事に向かうし、仕事の後に車に乗った時もまた聴いてる。家に帰ってディナーを作る時もまた聴いてるんだ。聴いてると、新しさとかうれしさ、楽しみな気持ちが湧いてくるんだよね。音楽には信じられないほどのエモーショナルなパワーがあって、その中でも特に音楽からもらえる最高の贈り物の一つが希望だと思うんだ。特に2020年は厳しい年になったから、希望が最も大切なエモーションとなったと思う。ギブアップしないように頑張って闘わなきゃいけないし、自分のエネルギーをずっとポジティヴにキープしていかなきゃいけない。これってスゴく大変なことだよね。俺自身もこの状況には食らってしまって、かなり落ち込んでたんだ。だけど自分自身を奮い立たせて、希望を見出して、トンネルの先にある光を見つけようと思ったんだ。でも実際、その希望は存在するんだよ。しかも毎日少しずつ近づいていってるんだ。毎朝目を覚ました時に、希望から離れることがないよう、そして希望に少しでも近づいていこうと思ってるね。


Photo by Danny Clinch

ー11月24日にLAのロキシーを会場にして、ライブ・ストリーミングを行いましたよね。今後、このようなオンライン・ライブをやっていくのでしょうか?

デイヴ:まず言っておきたいのは、無観客でライブをやるのはスゴく奇妙な感覚だったっていうこと(笑)。もちろんバンドだけで練習するのは当たり前にやってることだよ。メンバーだけでやってると楽しいし、居心地もいい。でもステージに立って、照明が当たる中、マイクが立ってて、PAシステムも整ってるのに、誰もいないっていうのはかなり変な感じだったね。ただ、それほど楽しめるものとは思ってなかったし、「OK、やらなきゃな」って感じだったんだけど、実際にやってみたらかなり良かったんだよね。メンバー以外で会場にいたのはローディが6~7人いただけで、拍手してるのは彼らだけだったんだけど(笑)。オンライン・ライブは今後もっとやっていくつもりだよ。同時に、ライブの新しいやり方も考えないといけない。やるからにはスペシャルなものにしたいからね。ちょうど今日、2021年のスケジュールについてミーティングをやったばかりなんだけど、普通のオンライン・ライブをしょっちゅうやるのではなく、スペシャルなものをやるべきなんだっていう話になったんだ。再び安全な状況になって、普通のライブができるようになるまでは、そういうことをやっていかないといけないと思ってる。


刺激的なプロデューサーの存在

ー今回の新作で再びプロデューサーのグレッグ・カースティンと組んでいますよね。グレッグとは前作『Concrete and Gold』が初仕事で、その時は全く新しいサウンドを追求していましたが、二度目となる今回はどうでしたか?

デイヴ:グレッグ・カースティンは天才なんだよ。本気でそう思ってる。彼は音楽の博士だし、ありとあらゆる楽器に精通してるし、自分が今までの人生で出会ったどんな人よりも、ハーモニー、メロディ、アレンジのすべてを深く理解してるよ。ジャズもファンクもレゲエもパンク・ロックも何でもこなせるんだ。ファッ◯ン・天才なんだよ。彼はアデルやシーアといったポップスのプロデューサーとして有名なんだけど、彼のハートにはバンド・スタイルのライブ・ミュージックがあるんだ。元々俺は彼のことをプロデューサーとしてよりも、ミュージシャンとして好きだった。彼はザ・バード・アンド・ザ・ビーというバンドをやってて、俺は1stアルバムが大好きすぎて、その時から彼のことを天才だと思ってたんだ。もしビーチ・ボーイズがブラジル出身で、シンセサイザーを使って、プロデューサーがジョージ・マーティンだったらこうなるんじゃないかっていうサウンドで、とにかくスゴい。

それである夜、たまたま彼のことをレストランで見かけたんだ。まだ知り合いじゃなかったんだけど、彼が家族と一緒にいる席に行って、「お邪魔してすみません。あなたは天才ですよ。大ファンなんです」って言ったんだ。そこから友達付き合いが始まって、何年かしてフー・ファイターズのプロデュースをお願いすることになった。前作の『Concrete and Gold』は、グレッグにとっては初めてのハード・ロック・バンドのプロデュースとなったんだ。だから彼にとっても、俺たちにとっても、いい勉強になるような経験になったね。彼からはスゴく多くのことを教えてもらったよ。今では彼も近所に住んでるから、さらに仲も良くなった。だから、彼と仕事をすると、プロフェッショナルな関係という感じはなくて、友達が普通に一緒にスタジオにいる感じなんだ。でもそれがまたいいんだよ。今回の話をするとね、アイデアがあって、そのアイデアはまだ自分たちがやったことのないものだったんだけど、グレッグが俺たちの手を取って、一緒に歩いてくれて、俺たちの行きたい場所に連れていってくれたから、困難なことなんて全くない、そんな感じだっんだ。それが可能となったのも、彼が何でもできるからなんだ。


フー・ファイターズでの25年を振り返って

ーグレッグ・カースティンとの仲の良さは、二人でYouTubeにアップした「ハヌカー・ セッション」の動画シリーズを観ても伝わってきますよ。いろんな曲を二人でカバーしていますが、デイヴがドラムを叩きながら、いきなり「Suckin on my titties like you wanted me」ってピーチズの曲を歌い出した時は思いっきり吹いてしまいましたが(笑)。

デイヴ:ヤバいよね(笑)。あれも音楽を通してみんなと楽しさを共有するっていうことの良い例だと思うんだ。ステージに上がれないし、スタジアムでもプレイできないし、ライブなんてできない。なんだけど、音楽の楽しさを共有する方法はまだあるんだ。あのアイデアは3カ月前に浮かんで、最初はフー・ファイターズでカバーを8曲、ハヌカーの時期に合わせてやろうと思ってたんだ。ハヌカーっていうのはユダヤ教のお祭りなんだけど、バンド・メンバーでユダヤ人なのはラミ・ジャフィー一人だけなんだ。だけど、クリスマスの曲をやるよりも面白いと思ってね。ただ、メンバーそれぞれいろいろやることがあって、バンドで揃ってやる時間がなかったんだ。それで、1週間前にグレッグと一緒にいた時に、このアイデアを彼に話したところ、ユダヤ人の彼は、「面白いね」って言ってくれて。あっという間に2日半で8曲をカバーしたんだ。あのアイデアを形にした唯一の理由、そして受け取った唯一のご褒美は、自分たちがハッピーになれて、他の人たちもハッピーになれたということなんだ。それこそが俺が一番やりたいことだしね。もちろんライブをやるのが一番やりたいことには変わりないよ。だけどシンプルなことをやってハッピーになれるのであれば、最高だと思うんだ。

Foo Fighters - Kurstin X Grohl: The Hanukkah Sessions: Night Four


ーハヌカーに合わせて、ユダヤ人の曲をカバーするというのがテーマでしたが、まさか最初にビースティ・ボーイズのカバーをやるとは思っていなかったです(笑)。

デイヴ:(爆笑)1日目にグレッグの小さなスタジオに入ったんだけど、すでにドラムセットとキーボードがセッティングされてて、「1、2、3」ってカウントを取った瞬間、「Sabotage」のイントロが始まったんだ。もう最初から最高だったから、二人とも大爆笑してしまったね。それでもう一度カバーをやったらさらに良くなって。実際にアップしたのは3テイク目のものなんだ。あの企画は最高に楽しかったよ。

ーフー・ファイターズのこれまでの25年を振り返ってみて、この25年をひと言で表現するとしたらどのような言葉になりますか? またバンドの未来のビジョンについても聞かせてください。

デイヴ:25年という年月はあっという間でもあったし、長い年月でもあった。大変なことよりも本当に素晴らしいことの方が多かった。この25年を振り返ってみると、これって俺の人生の半分に相当するんだよね。自分の半生をパット、ネイト、テイラー、ラミ、クリスと過ごしてきたわけだ。だから単なるバンド以上の意味があるよ。人生でもあるし、ファミリーでもあるし、親友でもある。25年前の自分たちの写真を見ると、ただのクソガキなんだよね(笑)。当時、このバンドがこれほど長く続くなんて正直思ってもみなかった。だから、夢が実現したような感じなんだ。バンドの未来についてはね、わからないな。でもそれが最高なんだよ。俺は常にこんな風に思ってる。自転車に乗って、長い丘を登ってる時って、丘の頂上のことは考えないよね。自転車の前輪を見て、ひたすら自転車をこぎ続けるだけだよね。最終的に丘の頂上にたどり着いたら、休憩できるわけだけど。だから、今の俺たちは丘の頂上に向かって、まだ自転車をひたすらこぎ続けてる状態なんじゃないかな(笑)。

ーワールドツアーが行えるようになったら、また是非日本にも来てください。日本で何かやりたいことはありますか?

デイヴ:何だろう……。日本の女の子とのドラム・バトルかな(笑)。

Foo Fighters - Waiting On A War (Official Video)


<INFORMATION>


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フー・ファイターズ
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 Foo Fighters × TATENOKAWA

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オリジナル日本酒”半宵・銀と碧”に聴かせたプレイリスト
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