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ザ・クロマニヨンズ、有観客ライブで示したロックの普遍性

Rolling Stone Japan / 2021年2月25日 18時0分

ザ・クロマニヨンズが、2021年2月20日に東京ガーデンシアターにて「ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 2021」を開催した。

2020年12月2日に14枚目のアルバム『MUD SHAKES』をリリースしたザ・クロマニヨンズ。ここ数年は年に1枚ずつシングルとアルバムをリリースしては全国をツアーで回ってきていた。新型コロナウイルスの影響で2019年から開催されていたツアー「ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020」(全国58公演)は、延期ののちに中止。今作『MUD SHAKES』リリース後もツアーは依然として開催できず、配信ライブで収録曲全曲を披露していた。

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そして遂に、久しぶりに有観客でのライブを行なう。ロックで、ライブで人々を燃え滾らせてきた甲本ヒロト、マーシー(真島昌利)、小林勝、桐田勝治の4人によるザ・クロマニヨンズのエネルギーは、この時世の中で一番欠けていたものかもしれない。ワクワクしたような笑顔で並ぶ会場前のファンを眺めてそう思った。

場内では、公演タイトルに合わせてなのか、タイトルに”SHAKE”の文字が入った楽曲が何曲も流れ続ける。前説で「人類のクレイジーロッケンロールピーポーの皆さん! 心の準備はいいですか? ロッケンロールの用意はできましたか?」と、観客を煽る。プリミティブなストンプサウンドと野生児の咆哮と呻き声がSEとして響き渡ると、ステージにメンバーが登場。演奏陣が一瞬のサウンドチェックをしている間にも、甲本ヒロトはスタンドからマイクをむしり取り、自分に搭載されたロックンロールのエンジンを煽るように、ヒロト独特のステップを刻み始めていた。

先述のSEを切り裂くように、「オーライ! ロッケンロール!」とヒロトが叫ぶと、1曲目「VIVA! 自由!!」からライブがスタート。”自由は最高!”と歌うサビ、そして、それに応えて拳を高く突き上げる会場の様子は、とてつもない力強さと一体感を感じさせてくれた。そんな会場に応え返すように、当日59歳の誕生日だったマーシーも久しぶりの有観客ライブを楽しんでいるようで、間奏中も何度も手を上げる。童謡ロックとも言えるようなキャッチーな楽曲の最後を”楽しいな”と歌い上げると、ヒロトは満面の笑顔で「よく来てくれた! 最後まで楽しんでいってくれよ!」と、大声で感謝を告げる。

そのままドラムビートが始まると、ヒロトの馬の嘶くようなハーモニカが炸裂し、「暴動チャイル(BO CHILE)」、「浅葱色」を披露。物凄い音圧のロックンロールが会場全体を大きく揺らす。コロナ禍で久しく生の演奏を体感していなかったこともあったかもしれないが、ザ・クロマニヨンズの持つロックのパワーに他ならないものとして伝わって身体が震えた。


小林勝(ベース,Photo by 柴田恵理)


桐田勝治(ドラムス,Photo by 柴田恵理)

さらにライブは、最新アルバムの収録順に進んでいく。同作には、コーラスが入っている曲が多く収録されている。「新オオカミロック」では、本来タイトル通り狼のように叫ぶこともできたかもしれないが、コロナ禍では観客たちは叫べない分、曲の合間合間にヒロトは"お前らの声は聞こえてるぞ"と言わんばかりに、会場一人一人を狙うように力強く指差す。

「ドンパンロック」を披露すると、ヒロトが「ありがとう! (アルバム)A面おーわり!」と、漫画『おそ松くん』の登場人物・イヤミのギャグ"シェー"のポーズをとり、思わず観客たちは笑ってしまう。会場からはしばらく拍手が鳴り止まない。「今日は精一杯楽しんでいってくれ。そして、皆は疲れなくていいから。俺たちがヘトヘトになるくらいやるから。皆楽しんで! 皆さんは全てのノルマを果たしてここまで来たんだから、楽しんでいってくれよな」と、当日何度目かの、会場に駆けつけてくれたファンへの感謝を述べる。と思えば、「(配信ライブ)ここに来てることがバレたらまずいっていう人もいるだろうから、(客席は)薄暗くしておきます(笑)」とジョークで笑いを誘う。しかし、ここでどちらも共通しているのはファンへの労いと気配りだ。それがしっかり届いているから、ファンも絶えず拍手をステージに送り続けようと思える。

「アルバム全曲やってもすぐ終わっちゃうから、次は何曲か皆が知っている、初めての人もいるかもしれない。俺たちも久しぶりにやる。この曲を聴いてくれ」と、近年のシングル曲「クレーンゲーム」、「生きる」、「ペテン師ロック」を披露。ベースの小林勝とドラムの桐田勝治は、ロックの地鳴りを作るようにグルーヴのあるリズムを作り上げ、会場と楽曲を持ち上げるように突き動かす。その上に、マーシーのギターは真っ直ぐに鳴り響き、ヒロトは一人一人に時には荒々しく、時には届けるように歌っていた。


真島昌利(ギター,Photo by 柴田恵理)

再びアルバムB面の曲に戻る前、ヒロトは「このツアー、今日が初日です。もしかしたら、最終日かもしれない。なかなか貴重なところに一緒にいてくれてありがとう」と話した。この不安定な情勢でライブをすることの意味を最も身に噛み締めているのは、ステージ上の彼らであろう。今日のライブを大事に、そして楽しみにしていたのだろう。「あー! 楽しいなー!」と曲の合間に何度も笑顔で叫ぶヒロト。

ライブ中盤のアルバムB面パートは、「妖怪山エレキ」、「メタリックサマー」と細かく刻むリズムからスタート。「ここから少しだけテンポが、数字の上では落ちるのですが、世の中数字で測れるわけではありません。ロックンロール爆裂させていこうと思います」と、ブルースロック調の「空き家」、「新人」、ミディアムなロックンロール「ふみきりうどん」など、ロックバンドとしての音楽ルーツも溢れる一場面となった。自分たちのやりたい音楽を目一杯楽しみ、皆にメッセージを言葉や音で真剣に伝えようとしている姿勢に改めてロックを感じる。このパートが終わった時、ヒロトは「いいアルバムだなあ!」と話す。自分たちでも自身のロックを感じながら曲を披露しているのだ。

アルバムの曲順で言えば、次の曲で最後になるはずだが「最後の1曲はもうちょっと後に取っておいて、少しパーッと盛り上がろう。今日はお祭りにしましょう」と、ラストスパートへ向けて「東京ブギズキ」、「エルビス(仮)」、「タリホー」などテンションの上がるアッパーなキラーチューンが続く。このパートでの「どん底」は特に"このままでは終わらない じたばたで どたばたで てんやわんや"、"どん底だからあがるだけ"と、コロナ禍とそれに渦巻く混乱にいる観客が勇気づけられる曲だ。当時を知らない世代の若者が、ザ・ブルーハーツやザ・ハイロウズの曲を今でも聴いて歌っているように、ヒロトとマーシーのやってきた音楽はいつも誰かの背中を押してきた。それはもちろんザ・クロマニヨンズでも変わらない。そしてそれは、ロックの典型的なイメージの反抗や社会への強いメッセージのみならず、曲を聴いてくれる人々が押しつぶされそうな時に寄り添う優しさを提示してくれた部分も大きい。そう感じた一場面だった。

このままアルバム最後の曲「かまわないでくださいブルース」でライブは終演するかと思いきや、「オマケ! オマケやります。今年最初のライブとっても楽しかった! ありがとう!」と言い、そのまま「エイトビート」、「ギリギリガガンガン」、「ナンバーワン野郎!」と最後にアクセル全開で駆け抜けて、ライブは幕を閉じた。最後まで「楽しかったー!」と笑顔で叫ぶヒロトの姿は脳裏に焼き付いて離れない。


甲本ヒロト(ボーカル,Photo by 柴田恵理)

気がつけば、公演タイトル通り、ライブ中ずっと自然と曲に合わせて身体全体が揺れていた。配信ライブでは久しく感じられなかったが、これが生の音が持つエネルギーであり、彼らのロックの力である。どんな社会状況でも彼らが鳴らすロックンロールは変わらずまっすぐ届いてくる。だからこそ、辛い時ほど彼らが頼もしく、力強く、心強く感じられる。彼らのロックは、まだまだ僕らには必要だ。


<公演情報>

ザ・クロマニヨンズ
「ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 2021」

2021年2月20日(土)東京ガーデンシアター
=セットリスト=
1. VIVA! 自由!!
2. 暴動チャイル(BO CHILE)
3. 浅葱色
4. 新オオカミロック
5. カーセイダーZ
6. ドンパンロック
7. クレーンゲーム
8. 生きる
9. ペテン師ロック
10. 妖怪山エレキ
11. メタリックサマー
12. 空き家
13. 新人
14. ふみきりうどん
15. 東京ブギズキ
16. エルビス(仮)
17. どん底
18. 突撃ロック
19. タリホー
20. かまわないでくださいブルース
21. エイトビート
22. ギリギリガガンガン
23. ナンバーワン野郎!

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