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moumoon・YUKAと手島将彦が考える、アーティストが「悩みを相談できる場所」

Rolling Stone Japan / 2021年3月9日 11時30分

左からYUKA(moumoon)、手島将彦

2021年に入り、ますます重要性を増している「アーティストのメンタルケア」。日本では2019年、音楽学校教師で産業カウンセラーの手島将彦が、書籍『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』を上梓。洋邦問わず、ミュージシャンたちのエピソードをもとに、カウンセリングやメンタルヘルスに関しての基本を記し、アーティストやその周りのスタッフが活動しやすい環境を作るべきだと示した。そんな手島将彦とともに、アーティストとメンタルヘルスに関して考える対談連載。今回のゲストはmoumoonのボーカル・YUKA。

moumoonとして活動をする中で、自身や周りの人々が精神的トラブルを抱えた経験もあり、ミュージシャン業の傍らで大学院に進学、臨床心理の方面の研究を行っているYUKA。音楽業界の最前線で活躍してきた中での経験を元に、ミュージシャンの立場から感じたこと、これからの音楽業界に求められることを語ってもらった。

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ー今回YUKAさんが、手島さんの著書『なぜアーティストは壊れやすいのか?音楽業界から学ぶカウンセリング入門』をお読みになられたということでお声がけさせていただいたのですが、本を読んでみてどういった感想をお持ちでしたか?

YUKA:手島さんの本を見つけた時は、とても嬉しい気持ちになりました。「日本でこういう本見たことない!」と思って。ミュージシャンの方々の実際の語りや、具体的にどういうことで困っていたのかが明確だったし、読みやすいと思いました。「自分の好きなミュージシャンもこんなことで困っていたんだ」と、とてもリアルで。私も普段感じているようなことを書いてくださっているなと思いました。

手島将彦(以下、手島):めちゃめちゃうれしいです。ありがとうございます。

ー今はメンタルヘルスへの意識が重要視されつつある時代です。YUKAさんは、大学院で臨床心理士の勉強をされていらっしゃるんですよね。

YUKA:私はアーティストのメンタルヘルスの向上のために何ができるか? ということを大学院で研究していて。音楽の仕事をしている中で、自分でも身の周りの人でもメンタルのバランスを崩してしまった経験があったんです。そういう時に助けてくれる人が必要だと思ったけど、周りに相談できる人がいなかったんですよね。当時の自分はすごく心も孤独になっていて、人に打ち明ける心の柔軟さも失った状態で。それで心のことに興味を持って勉強し始めました。業界にこういう人がいないなら私がなってやる! ぐらいの気持ちで。アーティストのメンタルのサポートをする活動をしたいなと思って、大学院に入りました。

ー実際に大学院まで行って研究されるって、すごいモチベーションと行動力ですよね。一方、手島さんも音楽業界で悩んでしまうミュージシャンを見られてきたんですよね。

手島:そうですね。今思い返してみると、あいつはたぶんうつだったんだろうなとか、発達障害のこういう特性を持っていたんだろうなとか分かるんですけど、あの時これを知っておけばな、ということが今でもあるんですよね。アーティストやスタッフを具体的にサポートするということもしたいし、そういうことに携わる人がどんどん増えてくればいいと思うんです。それと同時に、まず多くの人に関心を持ってほしいなとも思っています。

ー周囲の人に知識や意識があるだけでも、心を病んでしまっている人に向けられる目や、周りの環境からの悪影響も緩和されるのかなとも思います。

手島:基本的な考え方があるにしても、メンタルの問題はその都度、その人に対して適切な一番良いやり方を考えていくことが重要なんです。専門的じゃなくても前提となる必要な知識の共有だけでも、周りや本人の想像力が働くようになると思います。

YUKA:言葉で伝えるのが苦手だったり、自分がなんで困っているのかさえ分からないこともあると思うんです。でも、そういったことで扱いづらいとか、困った人だなって思われちゃうのは、お互いにとって勿体ないことですよね。何に困っているのかが分かれば周りもサポートできるし、パフォーマンスが良くなって良い循環が生まれていくのかなと思います。

ー自分の身の周りのミュージシャンの方がと悩んでいた時に、事務所の人とかレーベルの人に相談したら、知り合いのカウンセリングを紹介されたそうなんです。でも、カウンセリングに行く一歩を踏み出すのも大変そうで。アーティストとして活動されていて、そういう不安とか悩みを持った時に、どんな人がどうしてくれることが望ましいですか?

YUKA:私もこの仕事を始めた若い時にカウンセリングに通ったことがあったんですけど、行かなくなっちゃった理由があって。その先生は私のことを理解しようとしてくださっていたんですけど、翌週行ったらmoumoonのCDを買ってくれていて、よければサインをくださいと言ってくださったんです。私が喜ぶかもしれないと思ってやってくれたことかもしれないですけど、求めていたのは、悩みを受け止めてもらえる感覚だと思うんですよ。つらいんだねと言ってほしかった。じゃあ自分はどんな人に話を聞いてもらったら楽になったかと言うと、相談できて頼れる友達に出会ったことが大きかったと思います。ステージがどれだけ怖いものかとか、曲を生み出すのがどれだけ大変なことかを分かって、受け止めてくれる人がいてくれればいいなって思いますね。

ーメンタルヘルスの問題って音楽業界に限らずあると思います。心を痛めてしまった方々の話を聞いた時に、やはり声を上げにくい、相談しにくいというのもやっぱりあるんですね。

YUKA:私の場合は、自分が止まってしまうと全てのプロジェクトが止まってしまうという大きな責任を感じてしまっていたんです。忙しい時になかなか弱音が吐けなかったり、プロジェクトが止まってしまうのが怖くて過剰に動いてしまうこともありました。相方(moumoonのメンバー:MASAKI)も、睡眠障害が原因でお休みをいただいた時があったんですけど、その時も自分が相方に対して、本当に理解をしてあげられていなかったなと思って。だから、私もこういうことを勉強しないといけないんだって感じたんですよね。そこからもっとお互いが活動しやすくなるような工夫や、どうやったら良くなっていけるか話し合えるようになって、良い方向に変わりました。

手島:正直、人と人が関わることなので、相性はある前提で考えた方がいいと思うんですよね。だから、カウンセラーでも色々な人が増えてくるといいんです。音楽業界が特殊な世界であることは間違いないので、ある程度事情を分かった人は必要だと思いますね。メンタルヘルスの基礎的なことを知っていて、音楽業界のことを分かっている人が増えれば、精神科やカウンセラーにかかる前の段階でも大きく変わるんじゃないかなと思います。

YUKA:言葉にできる相手がいたからお互い理解しあえたけど、そもそも誰にも言えないで苦しんでいる人もたくさんいらっしゃると思うので。その一歩を誰が受け止められるかというのは、すごく重要なところだと思います。

手島:連載でちょっと触れたことありますけど、身近な人ほど逆に助けてって言えなかったり、話しづらいこともあるんですよ。なので、YUKAさんとMASAKIさんのような関係性の中で話ができるようになったのは本当に素晴らしいことだと思います。それと同時に、周囲の空気感としても、助けてって言いやすい雰囲気になっていくことも大事なのかなと思いますね。まず知ることが大事だという話をしましたけど、知識を得たところでそれを言える雰囲気がなかったら何ともならないじゃないですか。まだ日本だと、こういうのが話題にしづらい感じは残っているのかなと思います。

ーここ数年メンタルヘルスに注目が集まって、関連イベントや番組にも手島さんは出演されてきました。YUKAさんの周りでは、メンタルヘルスに関する関心を持つ人が増えてきた実感を感じられますか?

YUKA:実際に助けが必要だと仰っている方も増えたように思いますし、そういったことに興味を持って勉強してみたいとか、本を読んでみたという話をしてくれる友達が音楽業界の中で増えてきたような気がしますね。

ーYUKAさん自身も関心を持って、大学院に行かれているわけですもんね。表舞台に立つミュージシャンという職業につきまとう辛さの原因もたくさんありますが、一番苦しむ人が多い要因はなんだと思いますか?

YUKA:ミュージシャンの大きな仕事としては、楽曲を作るのがマストじゃないですか。頭を使ってアイディアを出すということも大変だし、ツアーをしながら曲を作る人だっている。その両方が上手く噛み合わなくなっちゃう場合もあると思うんです。さらに、最近はSNS更新も義務みたいになってくると、24時間休みがないんじゃないかと思うんです。手島さんの本や連載でも出てきましたが、私は感情労働という言葉が気になっていて。頭を使ってクリエイティブな労働に伴う感情の部分。それと、お客さんと対面をしてライブをしたり肉体労働の間で不一致が生まれてしまうこともあると思うんです。自分の気持ちは今ハッピーじゃないけど、世の中が求めているハッピーなメッセージを発信しなきゃいけない義務感に駆られて、無理しちゃう人もいるかもしれないですし。色々なことの相互作用でストレスが大きくなっていっていると思います。

手島:エンタメや音楽だと感情労働のウェイトはどんどん高くなってきているのに、それに対してのケアがまだ追いついていないのが現状だと思います。僕が個人的に音楽業界で危惧しているのが、最近は特にK-POPの成功もあって、SNSを駆使して強いファンの集まりを作って、そこにどんどん日常生活も切り取って出していく。ファンの人もUGCとして色々なものを作って、拡散していくのが一つのビジネスモデルとして上手くいった。それが正しいみたいな雰囲気があって。ビジネスの方法論としてはアリだとは思うんですけど、やはり大変なことなんですよね。YUKAさんも仰ったように、感情労働も含めて24時間ずっと仕事みたいな話にもなるでしょうし。なので、具体的なアーティストそれぞれに対するケアも大事だと思います。もし一緒に盛り上がっていくスタイルなのであれば、ファンの方と一緒にメンタル的なことも学んでいくというのをセットにすべきかな、と思っています。アーティストの方から、メンタルヘルスの大切さを発信して、リスナーの方と一緒に学んでいくことで良い空間を作ることを前提にやっていかないと、単にミュージシャンがつらいことになっちゃうと思うんです。ファンの方からも、メンタルヘルスの大切さが発信される空気を作っていければいいなって考えていますね。

ーミュージシャンは商品じゃないし、消費されないためにちゃんと発信していかないといけないんですね。

YUKA:先程私が話した、弱音が吐けなかった、走り続けなきゃいけないことについても思ったんですけど、「もしかしたら今自分は曲作りのために数ヶ月間休む必要がある」みたいなことを、海外のアーティストみたいに公言できるオープンな関係になれるというのは、すごく良いことなんじゃないかなと思います。

ー以前、台湾のあるミュージシャンに取材した時に、そのバンドが曲をリリースをして、半年間ライブ活動を休止しますということを言っていたんですよ。本人たちは大したことを言っているつもりはなくて、ちょっと休むだけで、誰かがつらいとか仲が悪いとかもなくて。そういう大事に捉えられるのは意外だって話してたんですよ。日本の音楽業界、ひいてはエンタメ内での捉え方って特殊なのかなと思ったんですよね。

YUKA:たしかに。リリースのスパンも早めて、SNSの更新も定期的に更新してっていう焦りがある気がするんですよね。その台湾のミュージシャンの方みたいに、ちょっと休憩が必要だったんだよって言えることは必要だと思います。リリースの間隔が空いて待たせてしまうけど、いいものを作ってきてねって言い合えるような関係ができれば、もっと豊かな音楽が生まれていくんじゃないかなって思います。私も活動をお休みさせてもらってたり作品を出せてない状況でも、「いつでもいいからね」って声をかけてくださるファンの方もいらっしゃるんですよね。そういった声にどれだけ励まされたことか。

ーレコード会社やレーベルに所属してリリーススパンの契約があるのは、ミュージシャン側にとっては、その期間に一定数の作品を生み出しなさいっていうプレッシャーにもなって、結果やりにくく感じる部分もあるのかなと思うんですよね。もちろんレコード会社もビジネスでやっているので、作品を出して利益を生んでくれないと困るというのも分かるんですが。

手島:僕は音楽を売る側としてもしばらくやっていたんですが、一定のテンポで活動しないといけないという定石というか慣例みたいなのはありますよね。一回飛び立ったら、ずっと羽ばたき続けるからこそ上昇できる、みたいな。でも、最近SNSとかでも良い面があって。数年前に発表した曲が突然ブレイクしたりすることもあるじゃないですか。どの時期に何をしなきゃいけないという縛りから外れる方向にもいけるんじゃないかなと。ビジネス的なやり方としても、先ずは良い作品をその人のペースで作ってもらう。そうすれば、ひょっとしたら3年後とかにドーンと注目されることもありえるかもしれない。例えば、シティ・ポップの作品が何十年も経ってから流行るみたいなことが今起きているのも、結局は作品の力があったからですよね。。目先の利益を追い求めて、結果的にどこかで破綻しちゃったら元も子もないので。持続可能なやり方を考えていく方が結果的に良いと思いますね。

ー目先の利益より、広いスパンで見た上でのミュージシャンとの接し方も必要なんですね。

YUKA:以前の手島さんの対談の中で、アーティストの生き方そのものが作品になっていくという言葉があって。長い目で見た時に、この人はこういう人生歩んできたんだっていうのも一つの作品だという考えに私も共感しますね。長くいいものを作れる環境を整えていくことが大事なんだろうな。一筋縄ではいかないのも重々承知しているんですけどね。

ーエミネムのクリエイティブのルーティンとして、朝9時からスタジオに入って夕方5時には切り上げて無理はしないというニュースも以前ありましたよね。皆が無理なく自分のペースで活動できればいいなと思います。

手島:なんであれ、その人らしくやれればいいと思うんです。夜中まで仕事をして、翌日の朝に寝るリズムが合っている人なら、そういうやり方でもいいのかもしれないですし。小さい時から子どもらしくとか、なんとからしくみたいなことを言われて育ってくるじゃないですか。ミュージシャンらしく、アーティストらしく、そんな雑な何かのカテゴリで個人は理解できないですよね。あくまでその人らしくあれればいいというのが、原則だと思います。

YUKA:そうですよね。例えば事務所やレーベルに求められるペースにのっかるんじゃなくて、自分で時間だったりをコントロールできているということ。エミネムさんの話だと、朝9時から夕方5時で今日はやりきったと思える自分らしいルーティンを作っていくこと。そこで自己効力感が上がっていったり、良い循環から良い作品が生まれていくことが大事なんじゃないかなと思います。

ーYUKAさんご自身、もしくは周りのミュージシャンの方とかを見ていて、自分の得意なペースで活動できる音楽業界の環境になりつつある実感はありますか?

YUKA:今私の周りには、むしろそういう人しかいないかも。皆とても自由だけどやる時はやるし、しっかりするとこはしっかりするというか。ものすごいエネルギーを注ぎ込んでやるんだけれども、それ以外の時はのんびりしているんですよね。そういう緩急の付け方がすごく上手だなって、周りを見ていて思いますね。

ー以前、starRoさんと手島さんの対談の中で、これからミュージシャンとレーベルや事務所の関係が変わっていくんじゃないかっていう話題も出ていて。今までみたいにレコード会社にミュージシャンが所属するというのではなくて、ミュージシャンとエージェント契約のような形で対等な関係性が築ける、そういう環境が必要になってくるんじゃないかと。YUKAさんは今後、業界の働きやすさや環境がどう変化していくと思われますか?

YUKA:対等であることはマストだと思います。エージェント形式で契約するにしても、自分一人ではできないことをお願いするからこそ、そこに意味があるのであって。自分にはできないマネジメントをお願いするというのが事務所にいる意味だと思うんです。お互い対等で、自分の主張をしっかりできるパワーバランスは大事ですよね。ミュージシャン側がどこかで申し訳ない気持ちでいたりすると、どんどん主張ができなくなっていったり、逆にミュージシャンの発言権が大きいと会社が我慢することになってしまう。バランスの良いところを探っていかないといけない、というのはずっと感じています。

ーある程度メンタルヘルスの基礎知識は知った上で、かつ音楽業界だったらスタッフが各ミュージシャンにそれぞれの人に合った接し方ができればベストだし、そこから対等な関係も生まれてくるかもしれませんね。

YUKA:音楽業界こそ、そういう部分がフレキシブルであってほしいし、そこが変わっていったら違う業界にも大きな影響がありそうな気がします。

手島:本当にそう思います。前にピエール中野さんと話した時も、他人って最強ですよねって仰っていて。他人だからこそ逆に相談しやすかったりとかするんですよ。今後は、レーベルとかがその役割を担っていけるといいんだろうな、という気がします。あと、音楽産業ってそもそもの産業規模は大きくないんですよね。2019年だとライブ・エンタテインメント産業の売り上げが6295億円で前年の缶コーヒーの売り上げと同じくらい、音楽ソフト・配信の売上と合わせても7822億円で、ゴルフ場の売上8540億円より少ないくらいなんです。でも、音楽産業はその産業規模の金額だけでは測れない、世の中や人生に影響を与える大きな力を持っていると思うんです。むしろそこに大きな価値と意義があるとも思います。世の中に対して良い影響を与えることも絶対できるはずなんです。

YUKA:たしかに音楽業界はとても豊かなことをやっているけど、意外と見返りが少なかったり、皆が身を粉にして働いているけれども、どうして音楽の業界がもっと豊かにならないんだろう? って皆が思っていると思うんです。そこがもっと自由で、多様性が認められたりとか、困ってる人にちゃんと手が差し伸べられる。そういう業界に変わっていくということがの世の中への大きなメッセージになるような気もしますね。

ーYUKAさんは大学院でも臨床心理士の勉強をされていて、今後どういった取り組みをされていきたいと考えていますか?

YUKA:私は悩みを抱えている人が話せる場所を作りたくて。以前の手島さんの対談の冒頭にも書いてあったんですけど、海外では電話でカウンセリングができたり、アーティストに向けたサポートが生まれてきていて。アーティストだけじゃなくても、マネジメント業務をやってる人、制作に携わってる人にも、匿名じゃないと話せないような悩みってたくさんあると思うんです。そういう悩みを相談できる場所を作りたいんですよね。絶対必要だと思うんです。

手島:ヨーロッパやアメリカで作られているシステムをそのまま日本に持ち込んでも、上手くいかないだろうなという感じはあるんです。参考にはできるけど、そもそもの土壌が違うというか。イギリスなんかだと、ミュージシャンの労働組合的なものが全部そういう問題を引き受けているケースもありますし、お金に関することや啓蒙活動などに関しても、例えばエド・シーランに協力してもらうんだ、みたいなことがあるわけですよね。成功しているミュージシャンがメンタルヘルスに関心が高く、チャリティーなども含めて協力的です。お金のないミュージシャンでも24時間無料でカウンセリングが受けられるんだよっていうのは、メンタルヘルスへの意識の高さと、ミュージシャンにはそういうケアを受ける権利があるのだ、という強い認識があるからでもあって。でも、今すぐそれと同じことを日本でやるのは難しいんだろうなと思った時にどういう形がいいんだろう? と思いますけどね。

YUKA:そういったことをやりたいと思っている人たちが、それぞれ立ち上がって一緒に取り組んでいける場所ができたらいいんだけどなって思っています。

手島:特に今はコロナ禍ということで、ミュージシャンに限らず皆がつらい中で頑張って生きている人って多くなっているじゃないですか。この前、業界の方とそういう話もしていたんですが、こういう世の中の状況に対して、音楽業界一丸となって何かメッセージを出してみたらどうかなと思ったりはしています。チケットの違法売買に対しても、大きなメッセージを出したじゃないですか。あれで一気に変わった面もあると思うんですよね。枠組みとか対策はないけど、まず言ってみるっていうのが意外といいことっていうのもきっとあって。例えばですけど、[メンタルは大切ですよ、音楽はいつもあなたの心に寄り添っています]、みたいなベタなことでいいので、業界としてそういうメッセージをバーンっと打つ。そうすれば、急に動き出したりとかする部分もあるのかな、とか思ったりしてますけどね。

YUKA:一つコピーを考えて打ち出してみて、それが広がっていくことで少しずつ意識が変わっていくというのはかなり効果があると思いますね。

手島:僕らが一番得意でできることって、何かを発することだと思うんですよね。具体的なメッセージじゃない場合もあるかもしれないけれども、何かを世に問うことで、何かが動き出す。そういう大きな力があると思うから。漠然としていて申し訳ないんですけど、意外とそういう何かメッセージを出す方が合っているんじゃないかな。せっかくそういう発信力を持っている人たちなので、産業として言ってみたらいいのにな、と思います。

YUKA:心の悩みを抱えていたことをオフィシャルで言うミュージシャンも少しずつ増えてきているじゃないですか。もっとオープンに言えるようになることで、ひっくり返る可能性はありますよね。とりあえず言葉に出してみることが大事だというのが、手島さんが本を書こうと思ったきっかけというところでもあるんですか?

手島:それはありますね。極力分かりやすく書こうと思いましたし、アーティストっていう言葉に引っかかって、色々な人が読んでくれたらいいなとも思いました。僕は別に精神科医ではないですし、高度な専門知識とか技術を持っているわけではありません。ただ、基本的なことがまだまだ知られていない状況ですので、まずは多くの人に基本的なことを届けたい、僕がやりたいと思っていることを届けたい、それしかないんですよね。

YUKA:それを書いていただいたおかげで、私もとても勇気をいただきました。そういうアーティストや読者は他にもいっぱいいると思うので、一つ一つ自分の得意な形で発信していくことが大事なんだってすごく思います。


<書籍情報>



手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』

発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029

本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。

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