錦戸亮が語る「さすらいの道」
Rolling Stone Japan / 2021年3月14日 10時45分
錦戸亮(Photo by Seitaro Tanaka, Styling by Norio Honda, Hair and Make-up by Jun Matsumoto)コート ¥73,000、カーディガン ¥24,000/ともにNEIGHBORHOOD(NEIGHBORHOOD HARAJUKU TEL: 03-3401-1201)、その他私物
錦戸亮が2ndアルバム『Note』を引っさげ、全国10カ所12公演のホールツアーを4月からスタートさせる。歌い手としていま何を考えているのか、錦戸の心中に迫った。
前の事務所から数えると芸歴20年以上。表舞台に立つ錦戸亮のキャリアは一見眩しく輝いているが、ギターを手に活動していたグループ時代は派手なソロというよりサイドギターに徹することが多く、さらに自身の作詞・作曲もコツコツと地道に続けるなど、職人気質な一面もある。独立後、歌い手としてお客さんに何を届けられるか、どうしたら楽しんでもらえるか、そんな風に自問自答を繰り返しながらエンターテインメントの世界を漂う錦戸亮。そんな彼はこの先どこへ向かうのか?(Rolling Stone Japan vol.13掲載)
赤西仁との関係性
ー赤西仁さんとのYouTube番組『NO GOOD TV』や、2人の共同プロジェクト「N/A」のアルバム『NO GOOD』もそうでしたけど、ここ1年くらいの錦戸さんは新しい扉を次々に開いてるなぁと思うんですが、ご本人としてはどうなんでしょう?
錦戸:大きな会社にいてその中のグループに所属していた時は、役割分担みたいなものを考えたりしていて。いっぱい喋る人がおったら、全然喋らん人がいてもいいじゃないですか。だから自分は寡黙でカッコつけてる風に見られがちだったのかなと思います。仁の場合は元から完全にカッコつけてると思いますし、それが普通なんでしょうけど(笑)、自分の場合は喋らないようにしていたら、そういう風に見られてしまった……みたいな。素を出すことがいいことなのか、もっとミステリアスな感じの方がいいのかは分からないですけど、カッコつけることをカッコいいと僕は思ってこなかったので。
今は、自分の責任の下でいろんなことができるし、自分がどう見られようと自分次第。すごくやりがいも感じられるし、誰がどこで動いているかが見えやすくなりましたね。仁とはお互いに言いたいことを言える関係だと思います。フェアでいれるっていうか。いっつも飯奢ってる友達とかって、どうしても自分が優位に立っちゃうじゃないですか。だけど彼は毎回割り勘してくれるイメージ。あと彼と一緒にやっていて、音楽制作でも「ああ、そここだわってやるんや」って驚くことがあって。僕自身、彼とN/Aで一度制作できたことによって、今回の2ndアルバムを作る際、これまで気にしていなかったところにもこだわれるようになったかもしれないです。
ー今回の錦戸さんの2ndアルバム『Note』に関して、赤西さんは何か携わってるんですか?
錦戸:前作(『NOMAD』)の時は曲が出来上がる度にデモを送ってたんですけど、今回は一曲だけです。曲の英詞を手助けしてもらって。
ーN/Aでのコラボの影響はありました?
錦戸:結果的にキャンセルになりましたけど、もともと今年ハワイで2人でライブをする予定があって。2人でどうやって(ライブを)成立させんねやろっていうのを念頭に置いて作ったアルバムがN/Aの『NO GOOD』だったので、あまりそこからの影響はないかもしれません。やっぱり1人の方がラクっちゃラクやけど、自由がありすぎるし、どっちがいいのかはよくわかんないですけどね。
自分をさらけ出す音楽
ー10月の武道館の無観客配信ライブ、2日目ラストの「Tokyoholic」「ノマド」の並びが印象的でした。バンド演奏のエネルギー感で高まったかと思うと、最後の曲ではストリングスを入れたアンサンブルで壮大な響き、そして歌詞の「どこまでも行こう」の一節がこういう状況だからということもあり、心に刺さりました。錦戸さんにとっても特別なライブの締めくくりだったと思いますが、どういう意図でこの2曲を?
錦戸:正直、音楽で何かを伝えたいっていうのはあんまりなくて。雑な言い方かもしれないですけど、1時間半ライブを観ていたその「時間」が楽しかった思い出で終われたなら、もうそれが全てやと思うので。自分自身もリスナーとして思うんですけど、何かを感じたいからじゃなくて、直感的にカッコいいと思うものを聴いて、そこから先に意味を見いだすというか。だから、届けたいとかそういうことよりも、僕はこういうのがカッコいいと思うけど、どうですかっていう提案をしているだけですかね。僕自身、好きやからってだけで音楽を聴きますし。なんで好きかを言葉で説明しろって言われても難しいときももちろんありますし、「なんか好き」っていう感じさえ思ってもらえればいいかなって。
ー例えば、エド・シーランは「自分は皆が考えていることを歌っているだけで、自分の気持ちを歌ってるわけじゃない」っていうタイプの歌い手の一人だと思うんですけど、錦戸さんもどちらかというそういうタイプ?
錦戸:いやー、そんなカッコよくないです。もっとグラグラしてると思いますよ。シンプルに「僕は今こういう音楽が好きです! こういう音楽がカッコいいと思います!」っていうのを提案してるだけかもしれないです。アルバム作る時にコンセプトから決めて、それに沿って曲を作っていく人もいると思いますけど、僕はもっと自然な気持ちでやってるというか。そん時の自分をさらけ出す、みたいな感じに近いかもしれないです。
ー錦戸さんがその曲にどんな想いを託したのかは別にしても、曲を作る、歌う、楽器を鳴らすっていう、それ自体は錦戸さんにとってすごく大切で尊いものであるわけじゃないですか。
錦戸:そうですね。以前おった場所やったら、同じ日にバラエティやったり歌やったり、違うジャンルの仕事をすることもあって。だけど今って、アルバム出してツアーやったりファンミーティングやったり、歌の活動しかしてない。仕事という意味で、コロナ禍で自分に何かできることってなったら、曲を出して何か発信し続けんと、とも思えますし、今見せられる自分の表現としてはこれしかないわけですから、ここでできるもの全てを捧げるような気持ちです。
ビビりなんで、一回引いてしまう
ー音楽の領域だけにとらわれずに、本来はもっと幅広く活動していきたい気持ちはあるんですか。俳優業とか。
錦戸:どうなんやろ。でも、音楽を作ることは常にやっていきたいなってことですね。
ー武道館ライブやミュージックビデオのメイキングを見ると、カメラの位置や音出しのタイミングなど、お客さんにどうやって楽しんでもらうかという意識を常に高く持ってる人なのかなと思いました。
錦戸:そうですね。もちろんこうなったらよくなるんじゃないかなってことは提案しますし、逆にプロの方に提案されて、そっちの方がカッコいいなって思うこともあります。でも、自分が試してみたいことは全部言いますね。自分がどう見えるかよりも、全体として俯瞰で見た時に成立している方がいいかなと思います。主観だけで成立する強さもあるとは思うけど、僕はちょっとそのへんビビりなんで、一回引いちゃいますね。
ーでも引いた時に見えてくる「強さ」みたいなのもありますよね。前へ前へっていうだけではなく。
錦戸:たぶん性格でしょうね。あと、もしかしたら自分の中で確信に変わる何かがあったら押し通せるのかもしれないですけど、まだそこまで自分の中で軸になるものって見えていない。まだ独立して2年目なので、何を出して何を引っ込めればいいのかって、よく分かってないのかもしれないです。
ー武道館1日目のメイキングで「最初はルーパーを入れてやろうとしたけど、やるなら裸一貫でやらなあかん」って語ってましたけど、あの日は本当にギターと歌だけで勝負しましたよね。
錦戸:めちゃめちゃビビってましたから(笑)。まだ自分では映像で見れてないんですよね。「うわ、また間違えてる」とか、どっかで気にしちゃうと思うんです。別にお客さんからしたら少し間違えていようが、そこまで細かく見ないとは思うんですけど、自分的には「もっと練習しないと」って思うような内容やと思うんで、絶対。それは全然恥ずかしい時間でもないし、間違えたのも俺やし、そこはしょうがないって思ってるんですけど。アルバムが完成してからゆっくり(映像を)見るつもりです。
アレンジへのこだわり
ー武道館で無観客で1人きりっていうのは、メンタル鍛えられるでしょうね。
錦戸:はい。無観客ってことだけでも、メンタルちょっとグラっときますから。
ーリハの時点から寂しいって繰り返し言ってましたよね。
錦戸:寂しかったですもん(笑)。弾き語りと同時進行でバンドの方のリハもやっていて。とにかく一人だと不安でしょうがなかったですけどね。
ー不安はあるだろうなと感じつつ、歌っている間は楽曲に没頭してるなぁっていうのはすごく伝わりましたよ。
錦戸:あ、本当ですか。でも自分的にはそう見えていたならラッキーくらいですかね。
ー1日目は文字通り裸一貫でやりきったライブだったと思うんですけど、2日目のバンド編成はまた趣が全然異なるステージで。ストリングスの弦楽器隊もしっかりハマってて、「(ストリングスは)色鉛筆で言うと金色」って話してましたけど、アレンジには相当こだわったんじゃないですか?
錦戸:僕、ストリングスの音ってなんか好きなんですよね。キーボードで鳴らす音とは違うわけじゃないですか。3ピースのバンド・サウンドもカッコいいとは思うけど、3ピースの一つを僕は担えないなって思っちゃうんですよね(笑)。今だって、自分を支えてくれるバンドの人たちがしっかりしてくれてるから、自分は一生懸命歌おうって気持ちになれる。あれ(弾き語り)やった次の日に、あんだけ凄い演奏をやってくれたら、もう心強くてしょうがなかったですね。
ーストリングスの有無もそうですけど、1日目と2日目って全然別物のライブになってましたよね。
錦戸:1日目はもうライブっていうか、発表会みたいな。それぐらいの気持ちで見てもらったらなと思って、だからファンクラブ限定だったんです。僕の甘えですけど。
ーでも両日とも錦戸さんの正しい姿だなって思いましたよ。バンド・サウンドを弾き語りでやってみましたっていうものではなくて、それぞれ別物として表現してた。
錦戸:そうです。キーもいっぱい変えたりして、いろんな検証して。ライブ前の2週間ぐらいは大変でしたね。でも無観客で武道館で弾き語りを経験してみて、良かったか悪かったかっていったら絶対良かったです。もうちょっと経験を積んでやっていたら、もっと手応えを感じられていたかもしれないですけど。これが今の僕ですし、今の世の中ですし、しょうがないというか。そこでどれだけ次のモチベーションにつなげられるかが大事かなと思います。
36歳のフィルターを通したらこんな感じになる
ーバンド演奏の話に戻すと、ストリングの人たちとのバランスも含めて、すごくいい空気感でしたよね。例えば今回のアルバムにも収録されている「Tokyoholic」や「スケアクロウ」は、錦戸さんが前にいたグループのライブでもやっていたわけで、それらが今錦戸さんのステージで鳴らされると感慨深いものがありますね。
錦戸:僕が作った曲に関して言うと、作り方は前とそんなに変わってないんです。デモの段階から自分が全部歌ってるわけですし、そういう意味でも自分の曲という感覚です。ただ、演奏する人が変わったとしても、作った人がまず一番上手くやるべきだろうとは思っていて。僕にとっては「原曲」みたいなイメージですかね。
ーライブを見てても最近の曲なのかなって思うくらい、違和感なく溶け込んでいるなと。でも「スケアクロウ」は2011年にリリースされた曲なんですよね。作り方は変えず、淡々と作ってきたものを、今一人で出してるっていう。
錦戸:僕、いま36歳なんですけど、36歳のフィルターを通したらこんな感じになるんじゃないですかね。
ーそれが錦戸さんの「味」になってる。
錦戸:恥ずかしいって思う気持ちがありながらも、歌えるというか。もちろん、曲によって歌えるものと歌えないものはありますし、もしかしたら数年後に今作ってるやつが全部恥ずかしくなるぐらいに思えたら、それはすごく成長したと言うのかもしれないですけど。
ー昔の曲と今の曲を並べても、ちゃんと錦戸さんの曲として成立しているということは、意識せずとも錦戸さんの音楽的な軸っていうのはあって、それはずっと変わってないのかもしれないですよね。
錦戸:ああ、かもしれないですね。根本ってことですよね。
ー2ndアルバム『Note』について、アルバム全体を通して聴くと、前作の表題曲「ノマド」級のキャッチーで掴みが強い曲が多い印象を持ちました。これは結果的にそうなったという感じですか?
錦戸:去年のアルバムの後からずっと書きためていた曲もありますし、このアルバムのために新しく書き足したものももちろんあります。いろんな受け取り方ができそうだなと思って、『Note』という名前にしたんですけど(笑)。使ってる音とかはそんなに変わってないと思うんで。流行りとか関係なく、奇をてらったわけでもなく、僕の中での直球というか。
錦戸亮の作曲スタイル
ー前作に収録されていた「オールドスクール」にはアイリッシュ・ミュージックっぽい風味がありましたけど、今回だと「I dont understand」はカントリー・ミュージックの郷愁のようなものがあったりして、そういう渋味も錦戸さんの音楽の特徴の一つですよね。ただの明るいポップスではないというか。
錦戸:武道館でやってみて、1人で弾き語りできるような曲を増やそうと思いました。大概いつもギターで弾いて一回歌ってはいるけど。
ーそういう意味だと「ハイボール」はまさにそういう曲ですね。「微睡」も弾き語りが似合いそう。
錦戸:実は「I dont understand」「ハイボール」「微睡」は武道館の後に作った曲です。1~2日くらいで書いて。
ーそういう時って歌詞も一緒に浮かんでくる感じなんですか?
錦戸:曲によりますね。それこそ「ハイボール」はすぐでした。歌いながら歌詞とメロ考えて。歌詞はスマホで入れて、コードはノートに書いて、みたいな。
ーその3曲が一気に降りてきたと。武道館後でインスピレーションが湧きやすい状態にあったんですかね。
錦戸:その日ははかどりましたね。そんな日ばっかりならいいのにって思いますけど(笑)。
ー赤西さんは「よし作ろう」って決めて曲を作るタイプだって言ってましたけど、錦戸さんはまた違いそうですね。
錦戸:そうですね。「よし作ろう」でちゃんとできた試しがないですね。何も考えてない時にできるか、死ぬほど締め切りに追われてる時か、どっちかですね(笑)。歌詞を悩んでる時って、自分自身と向き合う時間がめちゃくちゃ長くなるというか。これを伝えたいんだ!っていう大それたものがなくても、この言葉だけは絶対使いたくないなって部分はあったり。カッコいい言葉をカッコ悪く使ったり、その逆にカッコ悪い言葉をカッコよく聞こえるように使ったりすることも、前後の作り方次第じゃないですか。そんな風に言葉を選んで作る曲もあれば、素直に書いても全然恥ずかしくない曲もありますし。歌詞を考える作業は、「あ、俺ってこれは言葉にしたくなかったんや」って気づける場面でもあるんですよね。
でも最近、日常的に何かを言葉にする、つまり普段からアウトプットが上手じゃないと、曲を作ったりする時に時間が余計にかかるなってすごい思います。ただ、それができたら正解なのかっていうとそうでもない気もするので、何事もバランスですかね。
ーさっき言ったように1~2日で曲ができる時もあれば、いつまで経ってもなかなかできない時もあるんですね。
錦戸:あります。「若葉」がそうですね。はじめはこんなポンポン進むんやって思ったけど、歌詞書いてみようと思ったらどうしようかなって止まってしまって。もともと5、6年前くらいに作った曲なんですよ。歌詞の場合、ときを経て出てくるものもあるので、今回アルバムで使うことになって、一応書けたつもりではいるんですけど。それこそ去年作った曲でも、ちゃんと形になりきれてないやつがいっぱいありますし。でも過去に作った曲を肉付けするよりも、ゼロからパッと思いついたものをその時の熱量で作る方が早いんですよね。置いておけば置いておくほど、消化するのに時間がかかるというか。硬なってもうてるんでね。顎疲れちゃうんですよ。
吉幾三「と・も・子」のカバーについて
ー「コノ世界にサヨウナラ」の”いつかいなくなる事 分かってるけど 分かってたけど”の一節は、言葉とメロディが一体になってるからこそ響いてくる歌詞だなと。メロディだけがすごくよくても、そこにある言葉もちゃんと伴っていないとダメなんだなって。「ハイボール」もそうですけど、今回は孤独な想いをつのらせてる歌詞が多いですよね。
錦戸:ちょっと恥ずかしいですね(笑)。
ー「キッチン」では”後ろからこっそりお尻でも触りたくなってくる”とも歌ってます。
錦戸:そこに関しては全然恥ずかしくないです(笑)。だってお尻触りたいでしょ、みなさん。僕はただそれを言ってるだけなので。
ー錦戸さんの歌はやっぱり、ライブで吉幾三さんの「と・も・子」をカバーしていることからも分かるように、生活に根ざした庶民の歌っていう世界観なのかなと思うんです。
錦戸:そうですね。僕はトム・ヨークみたいな世界観の曲は一生書けないですし、現状を受け止める方が大事かなと。まあ、ちょっとくらいの背伸びならいいですけどね。足痛くなる前にやめとかんとと思っちゃいますから。
ー歌詞は原体験からインスパイアされて書いてるんですか?
錦戸:もちろんそういう体験もあるでしょうし、こんなのあったらいいなっていうのもありますね。
ー吉幾三さんのカバーについては、「吉幾三さんは演歌のフィールドでいろんな曲を作ってきた人だから、よかったら原曲も聴いてほしい」と武道館のMCで語ってましたよね。僕も原曲はじめて聴きましたけど、凄い曲でした。
錦戸:そうなんですよ!
ー「俺ら東京さ行ぐだ」の印象しかなかったので、こんな悲しいフォーク・ソングもあるんだ!って。
錦戸:しかも演歌の方たちって、作曲家の大先生から曲を提供してもらうケースが多いのに、吉さんは自ら作詞作曲していて。「俺はぜったい!プレスリー」とか「俺ら東京さ行ぐだ」みたいな曲を作りながら「雪国」みたい曲もあって。
ー錦戸さんのライブでは弾き語りのパートがひと段落して、そこから劇的に歌のパートに変わるじゃないですか。最初、この変わり方のアレンジは錦戸さんがやったんだろうなと思ったんです。それで原曲を聴いたら、同じようにガラっと変わってたので、そこにもビックリしました。吉幾三、凄い!って。
錦戸:そうなんですよ。でもあれは、知り合いの映画監督にダメ出しされました。語りのところにピークを持ってきちゃダメだよって。歌がピークじゃないとって。お前は弾き語りの前半部分で全部を届けようとしすぎて、重いんだよって言われましたけど(笑)。歌で一生懸命伝える方がいいって。
ーなるほど。でもまた一つ、新しい音楽を知った感じです。錦戸さんのカバーがきっかけで。
錦戸 カバーってセンス出ますよね。例えば、僕が「香水」とか歌っても別にって感じじゃないですか(笑)。
ー吉幾三さんのカバーは、そういう意味でもいいですよね。
錦戸:いいとこ突いたと僕も思ってます。
「やってみなわからんやん」
ーキャリアの原点に遡ると、錦戸さんは2003年当時に所属していたグループのコンサートで、同じ会場を使ってソロのコンサートもやらせてもらったんですよね。周囲から「ソロをやった方がいい」っていう期待もあったみたいですけど、そういう体験が今のルーツになっていたりしますか。
錦戸:でも正直、その時は分かってなかったです。なんでこんなことをやってるんだろうと思いながら……だって朝10時スタートの公演ですよ。その後にグループのコンサートが2回まわしでっていう、なぜ自分がソロ公演をやることになったのかという意図は分からないですけど、自分としてはチャンスだとしか思ってなかったし、いま考えると挑戦できる場所があったのは幸せやったと思います。
やってみなわからんやんっていうのもありますしね。やってみたうえで反省点があったら考えればいいし。例えばコロナ禍でファンミーティングを開催した時も、賛否両論あったと思うんですけど、結果的に感染者も今のところ出てないわけで。2020年ってほんまに全部コロナに持っていかれたじゃないですか。日本に限らず、世界中で起こってる出来事ですけど、争い事とかで誰か人を憎むんじゃなくて、ウイルスで逆にまだ良かったやんとも思っちゃいます。
ー10代の頃からエンターテインメントの世界に身を投じて、大きな舞台でたくさん経験を積んできた。本人は当時それがどんな意味を持っていたのかわからないにしても、何事にも物怖じしない強さやオーディエンスを魅了する「華」みたいなのは、自然と磨かれていくんじゃないかなと思います。赤西さんもそういうタイプですよね。
錦戸:どうなんやろな。僕、どっちかっていうと仁よりもビビリがちやと思います。でも仁がビビるところで逆に僕がビビらんこともあるかもしれないですし。それこそ、ほんまに育ってきたところがそういうところやったから、まずはやってみるってところがあるんだと思います。そういう意味での鈍感さみたいなものはあるかもしれないですね。
ーちなみに錦戸さんって、清竜人さんとか斉藤和義さんとかミュージシャンとの交流もあるんですよね。
錦戸:あるっちゃあるけど、今はそんなにたくさんあるわけじゃないですね。清竜人さんって、1人でやってきていろんなことを試して今の彼がある、それが彼の音楽活動から見えるわけじゃないですか。でも僕って、「あ、そんなに音楽が好きなんや」って言われることが結構多くて。それプラス僕が音楽を作ってることを知ってる人と知らない人でいったら、知らん人の方が全然多いと思うんですよね。今までの僕は、歌でどうこうというよりも、お芝居してる時の方が評価されることも多かったので。だから現状を変えられるような、自分の錦戸亮っていう名前で代表曲みたいなものを一発絶対に作らないけないなとも思いますし。前の事務所で育ててくれた名前があるわけで、そのままで終わるのか、それとも変えていけるのかは自分次第だなって。
だからミュージシャンの友達から話を聞いたりしても、自分はやっぱりまだ2年目っちゃ2年目なんで、一緒に話するのは恐れ多くもありますし。それこそ大先輩の斉藤和義さんに会って話すと、いつもギターを見せてくれたり、おすすめの曲を聴かせてくれたり、毎回すごく刺激になります。ミュージシャンって自分のことを言葉ですごく丁寧に説明する人もおれば、それができひんから歌で届けるって人もおるし、いろんな考え方をする人がいて面白いです。でも、僕はそういう交友関係を広げたいとは思っていなくて、自分が好きな人の音楽だけ聴ければいいかなと。
ー別のインタビューで「今はある程度、自分の采配で曲を作ってリリースすることが可能な状況だから、そこから派生していけることだったり、何か余白があるところはどんどん伸ばしていきたい」と語っていましたけど、その余白というのは音楽もそうだけど、音楽以外の領域のものも含まれてますか?
錦戸:そうですね。そういうお仕事どうですかって言ってくれる人もいるんですけど、案外うまくいかないことが多くて。難しいなって。
ーでも今、赤西さんとやってるYouTubeもそうだし、自然と派生していく下地は既にありますよね。
錦戸:それちょっと、希望ですね。
Photo by Seitaro Tanaka, Styling by Norio Honda, Hair and Make-up by Jun Matsumoto
ワンスターライダース ¥119,000/Schott(Schott Grand Store TOKYO TEL: 03-3464-1913)、シャツ ¥89,000/GREG LAUREN(NUBIAN HARAJUKU TEL: 03-6447-0207)
【INFORMATION】
錦戸亮 LIVE TOUR 2021 ”Note”
4/15(木)東京・中野サンプラザホール 18:30
4/18(日)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール 17:30
4/20(火)大阪・フェスティバルホール 18:30
4/22(木)東京・LINE CUBE SHIBUYA 18:30
4/23(金)東京・LINE CUBE SHIBUYA 18:30
4/29(木)愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール 17:30
5/1(土)広島・広島文化学園HBGホール 17:30
5/7(金)埼玉・大宮ソニックシティ大ホール 18:30
5/8(土)宮城・仙台サンプラザホール 17:30
5/15(土)京都・ロームシアター京都メインホール 17:30
5/16(日)兵庫・神戸国際会館こくさいホール 17:30
5/23(日)神奈川・よこすか芸術劇場大劇場 17:30
https://www.ryonishikido.com/news/detail/157
『Note』
錦戸亮
NOMAD RECORDS
発売中
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