バイデン政権の約200兆円経済対策、困窮するライブハウスへ救いの手
Rolling Stone Japan / 2021年3月18日 20時0分
バイデン政権は、ライブハウス支援のために設けられた「閉鎖店舗運営補助金受領者(SVOG)」プログラムに12億5000万ドル(約1360億円)を追加投入する一方、独立系ライブハウスのオーナーによる給与保護プログラム(PPP)ローン申請を認めると発表した。
米現地時間3月10日、バイデン大統領が推進する「アメリカン・レスキュー・プラン(米国救済計画)」こと、1兆9000億ドル(約200兆円)規模の追加経済対策法案が上院と下院で可決され、11日に大統領に署名された。これによって苦しい状況に立たされている全米のライブハウスは、頼みの綱となる追加支援を得られることになった。
今回の追加経済対策には、昨年の救済計画の一環としてライブハウス支援のために設立された「閉鎖店舗運営補助金受領者(旧Save Our Stages Act、以下SVOG)」プログラムへの12億5000万ドル(約1360億円)の追加支援も含まれる。さらには、上院での過半数獲得の立役者となったチャック・シューマー上院議員が導入した重要な修正案も盛り込まれており、依然として開始の目処が立たないSVOGプログラムの準備に連邦中小企業庁(SBA)が取り組むあいだも、ライブハウスのオーナーは連邦政府にさらなる援助を求めることができる。
当初SVOGは、有資格者が補助金と給与保護プログラム(PPP)ローンの両方に申し込むことを禁止していた。修正案からはこうした条項が削除されており、これはSBA(SVOGの監督機関に任命されている)のプログラムの開始をいまも待ち続けているライブハウスオーナーたちにとっては朗報だ。それに加えて、ライブハウスを経営する事業者がPPPローンに申し込んだ場合は、最終的にSVOGの補助金の合計金額からPPPローン分が差し引かれる。
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「修正案のおかげで、数え切れないほどのライブハウスが倒産を免れるでしょう。SVOGの補助金が受け取れるまで、PPPローンによる現金でなんとか持ちこたえられますから」と、National Independent Venue Association(NIVA)の委員長とミネソタ州ミネアポリスの独立系ライブハウス兼プロモーター・First Avenue ProductionsのCEOを兼任するデイナ・フランク氏は、修正案の成立発表と同時にコメントした。
数週間前は、倒産という苦しい選択を迫られていた無一文の多くのライブハウスオーナーにとって今回の修正案は思いがけないチャンスだ。ライブエンターテインメント業界のニーズに特化してはいるものの、いつ受け取れるかわからないSVOGの補助金を申請するよりも、3月31日までにPPPローンに申し込めばすぐに現金が手に入り、経費に当てられるのだから。
やきもきさせられるのは事実だが、SBAがいまだにSVOGプログラムをスタートできていないのも無理はない。SBAが営利目的の事業者に補助金を直接給付するのは今回が初めてであることに加え、SVOGはまっさらの状態から始まったプログラムなのだ。同プログラムが法律を順守していることはもちろん、ライブハウスのみならず、SVOGの管轄下にある独立系映画館や博物館といった全事業者に合ったガイドラインや不正に対する防衛手段を設けなければいけない。
「SBAに対して公平を期すためにも言わせてください。SBAはあくまで貸し手であり、連邦政府に代わって補助金を分配する機関ではありません」と、コロラド州デンバーのレヴィット・パヴィリオンの創設者・運営者であり、NIVAの会員でもあるクリス・ザッハー氏は先日メールでのインタビューに応じた。「補助金を分配する手段を確立するのは、時間がかかります。組織に経験がなければ、それだけ実施に時間を要するのです。SBAは、すべてが正確に機能していることを保証すると同時に法律も守らなければいけません。これは、かなりの大仕事です。その一方、人々のいらだちも募ります。典型的な”鶏が先か、卵が先か?”の状態なのです」
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さらに事態を複雑にしているのがSVOGの優先順位づけだ。SVOGの規定によると、プログラム開始から14日以内に申請できるのは収益が90パーセント以上減少した事業者のみだ。収益が70パーセント以上減少した事業者の申請期間は次の14日間で、25パーセント以上減少した事業者が最終的に申請できるのは、プログラム開始から28日後だ。この優先順位づけは、もっとも打撃を受けた事業者が優先的かつ確実に支援を受けられるようにと設けられたものだが、優先順位が2番目、3番目の事業者も何もできないままPPPローンの期日だけが過ぎ、SVOGに申請しても資金不足を理由に断られるという窮状に容易に陥る可能性もある(現時点では、162億5000万ドル[約1兆7700億円]がSVOG用に確保されており、必要としている人々を助けるのに十分な金額だと言われている一方、大勢が応募することが予想されるため、この資金もすぐに枯渇すると懸念されている)。
コロラド州デンバーでモンキー・バーレルという小さなバー兼ライブハウスを経営するジミー・ニッグ氏もこうしたジレンマに悩まされていた。シューマー上院議員の修正案が発表される数日前、ニッグ氏は本誌のインタビューでビジネスパートナーと家主からPPPローンに申し込むようプレッシャーをかけられていると明かした。ニッグ氏本人は、SVOGが懸命な選択肢だと確信している。SVOGの補助金があれば、家賃と従業員の給料が払えるだけでなく、対面式のイベントの安全性が確保され次第、アーティストをブッキングするための資金に回すこともできるのだから。
「事業を通じてリアルな”ディール・オア・ノー・ディール”ゲームに参加しているような気分です」と氏は話す。「それに、お金を受け取ることもできなければ、『ノー・ディール(取り引きしない)』とも言えない状況です。私はこの仕事が大好きですし、SVOCプログラムと補助金を信じていますから、どうにかして補助金を受け取りたいとしがみついています。銀行には勝手にしてくれ! と言っています」
追加経済対策法案が下院を通過した直後に送ったフォローメールに対してニッグ氏は次のような返事をくれた。「私たちは、強制退去させると脅され、借金まみれになり、いまはごく少数のスタッフだけで運営しています。この修正案はすぐに資金が手に入ることで私たちにとっての命綱となるだけでなく、いつの日か満員のお客さんの前でライブ音楽が披露できるかもしれないという希望を与えてくれます」
From Rolling Stone US.
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