w.o.d.が語るハイエナジーなロックの真髄「自分を救ってくれた存在に俺も近付きたい」
Rolling Stone Japan / 2021年3月24日 17時30分
神戸発の三人組w.o.d.が3rdアルバム『LIFE IS TOO LONG』 を発表した。今回もストロークス『ルーム・オン・ファイア』を手がけたことで知られるヨシオカトシカズがサウンド・プロデュースを担当。過去2作のレコーディングで得た経験を踏まえつつ、全編にわたってハイエナジーなロックンロールを展開している。とにかくスカッとくるロックが聴きたいなら、あなたが今手に取るべきレコードはこれだ。早速このアルバムについて、w.o.d.の三人に話を聞いてきた。
ーw.o.d.の作品は基本的にすべて一発録りですよね? そこにはどんなこだわりがあるのでしょうか?
サイトウ(Vo, Gt):単純にその方がいい音が録れるんやないかなと思ってるんです。なんていうか、うちらはキレイなテイクが録りたいんじゃなくて、部屋の空気感や匂いを残したいんですよ。もちろん重ね録りした音源ならではの魅力もあると思うんですけど、俺らの場合はそれよりも緊張感とか衝動を大切にしたいし、とにかくヒリヒリしたものが録りたいんですよね。たとえばジョイ・ディヴィジョンの良さって、演奏の上手下手とはまた違うじゃないですか。あの儚くて壊れそうな感じは、出そうと思ってだせるもんじゃないというか。
Ken(Ba):ジョイ・ディヴィジョンって、コピーしようと思っても絶対に無理なんだよね。
サイトウ:そうそう。俺らもそういう音が録りたいんです。自分の感情に響く音が聴きたいし、自分もそういう音が録りたい。クラウド・ナッシングスの『アタック・オン・メモリー』とか、ああいう音を自分たちは追い求めてるんです。
ー『アタック・オン・メモリー』のエンジニアはスティーヴ・アルビニでしたね。じゃあ、ニルヴァーナのアルバムではどれがフェイバリットですか? やっぱりアルビニ録音の『イン・ユーテロ』?
サイトウ:そうですね。今となっては『ネヴァーマインド』も好きなんですけど、やっぱり最初に聴いたときの衝撃でいったら『イン・ユーテロ』かな。あのアルバムって、特に音圧があるわけじゃないんですけど、デカい音量で聴くとものすごいんですよね。ホンマに音が刺さってくるというか、あの生々しさはやっぱりたまんないですね。
ー今作『LIFE IS TOO LONG』はこれまで同様に一発録りを基調としつつ、適度なオーヴァーダブが施されているのも新鮮でした。
サイトウ:過去2作で音作りや演奏する際の姿勢を学んできて、ようやく基礎ができてきたなと。逆にいうと、今まではちょっと頑固になりすぎてた部分もあったので、今回はいろんなエフェクトをかけてみたり、タンバリンやオルガンとかも重ねてみました。あとは曲づくりにも遊びが出てきて、たとえば「モーニング・グローリー」なんかはあからさまにいろんなリファレンスがあったり、そういうサンプリング的な作り方もしてますね。
ー確かに「モーニング・グローリー」はサンプリング的なセンスが発揮されていますね。まるでレッド・ツェッペリンの「グッド・タイムス・バッド・タイム」とケミカル・ブラザーズの「セッティング・サン」を合体させたような曲だなと。
サイトウ:あのイントロとAメロの展開はデモの段階で決めてたんです。あからさまなハードロックで始まって、そこからガラッと変わる感じにしたいなーと。それも変に馴染ませようとするとインパクトが弱くなるので、とにかくいろんな要素を勢いで詰め込んでみました。ギターにはヴァン・ヘイレンへのリスペクトも込めたつもりです(笑)。
三者三様のルーツと音楽観
ーお話を伺っていると、どうやらハードロックの影響もかなり大きいようですね。
サイトウ:自分は元々ギタリスト志向だったんですよ。それこそクリームとかジミヘンのコピーもやってたし、エクストリームのヌーノ・ベッテンコートとか、『プライド&グローリー』の頃のザック・ワイルドなんかも大好きなんです。
ーニルヴァーナとエクストリームがどっちも好きだという人は、けっこう珍しい気がします(笑)。
サイトウ:ニルヴァーナを知ったのはそのあとなんです。中学生の頃に初めてニルヴァーナを聴いて「こういうかっこよさもあるんや!」と。そこからいわゆるオルタナにハマったり、レディオヘッドなんかも好きになるんですけど、元々の始まりはレッド・ツェッペリンと、ガンズ・アンド・ローゼズですね。ギターも当時はレスポールを使ってましたし。
ーKenさんにはどんな音楽的背景があるんですか?
Ken:俺はちっちゃい頃からヒップホップとジャズのダンスをやってました。それこそ小学生の頃はエミネムとかをよく聴いてたので、いま思うと自分のリズム感はそこからきてるんやないかなーと。でも、そのダンス・スクールがなくなっちゃって。これから何しようかなと思ってたら、サイトウが声かけてきて「お前はベースやれ」と(笑)。
ーそれまで経験はあったんですか?
Ken:いや、それどころかロックもぜんぜん知らなくて。とりあえずYouTubeでベーシストを調べてみたらフリーが引っ掛かったんで、しばらくはレッチリをコピーしまくってました。それもあってベースはずっと指で弾いてたんですけど、このバンドが求める音を突き詰めていくなかで、これはピックで弾いた方がええなと。
ー元良さんはいかがですか?
元良(Dr):僕も元々ハードロックが大好きで、ドラムでいうとグランド・ファンク・レイルロードのドン・ブリューワーの影響がでかいですね。ただ、今までいろんなバンドで叩いてきたんですけど、自分のスタイルにフィットするバンドがなかなかなくて。そこでようやく出会えたのがw.o.d.だったんです。
サイトウ:俺、生ドラムはサウンドありきやと思ってるんです。要はどれだけ鳴らせるかってことですね。それこそボンゾの「ズドーン!」みたいなドラムが好きやし、何よりも8ビートをかっこよく叩けることがドラマーの最低条件やと思ってて。
元良:その”どれだけ鳴らせるか”っていうのも、力強く叩けりゃいいって話じゃないんだよね。それよりも俺はニュアンスとかバランスのほうが大事だと思ってて。アルビニの録音もそんな感じですよね。ドラムの音を録るというより、ドラムが鳴っている空間をレコーディングしてるというか。
サイトウ:今回のアルバムには収録されてない「PYRAMIDS」という曲のドラムは、スネアとハイハットを退けて、マイク2本で録ったんですけど、やっぱり生楽器ってマイクを1センチ動かすだけで音がぜんぜん変わるんですよ。あの時は「空間を録るというのはこういうことなんやな」と思ったな。
「こんなやつがいてもええやろ?」みたいな気持ち
ー今作のサウンドはどことなく『エクスターミネーター』期のプライマル・スクリームも想起させます。
サイトウ:そこはめっちゃ影響受けてると思います。ていうか、あの頃のプライマル・スクリームは世界一ですよね。ケヴィン・シールズがギター弾いて、マニがベース弾いて、ボビーは歌ヘタなんやけど、めちゃくちゃセクシーで。あれはマジで最強のロック・バンドだと思う。
ーベースの叙情的なフレーズで始まる「relay」も、過去2作にはなかった新機軸ですね。
Ken:あの曲はベースラインから作り始めたんです。サイトウから「何かかっこいいベース弾いて」と言われて、そこで俺がなんとかフレーズを絞り出したところから徐々に発展していったんだよね?
サイトウ:「relay」はメロディもあのベースラインありきで考えたからね。あと、『モーニング・ビュー』あたりのインキュバスもちょっとイメージしてた。構成としてもスタンダードな曲なので、エモーショナルになりすぎず、かといって丁寧にもなりすぎず、その絶妙な塩梅を突きたかったというか。年齢的にも技術的にも、今の俺たちだからこそ出来た曲だと思います。
ーリリックに耳を傾けると、今作には日々の憂鬱なフィーリングがいくつも捉えられていますね。これもサイトウさんの感情から切り取られたものなのでしょうか?
サイトウ:歌詞に関しては、そのときに思ってることをそのまま歌えばいいと思ってます。逆にいうと嘘はつけないので、どうしても自分の歌詞は真顔な感じになっちゃうというか。俺自身はただ毎日楽しくやっていきたいと思ってるだけなんですけど、実際は生きてると楽しくないことの方が圧倒的に多いし、やっぱりそこは無視できないんですよね。それにニルヴァーナとかローリング・ストーンズも、歌詞は基本的に文句ばかりやないですか。あれは誰かを救おうとしているような言葉やないと思うんですけど、実際はそれで救われている人がいっぱいおるわけで。ロックってそういうもんだよなと、俺はどっかで思ってるんですよね。
ー自分が吐き出した言葉に救われる人もいるかもしれないと。
サイトウ:それこそニルヴァーナとかBUMP OF CHICKENみたいな、自分を救ってくれた存在に俺も近付きたいと思ってるし、今回のアルバムは「こんなやつがいてもええやろ?」みたいな気持ちで歌ってたところもあるんです。なんていうか、俺はでかい声で諦念を口にするやつがいてもええと思うし、そこにメッセージ性がなくたって全然ええやんと。たとえばクエンティン・タランティーノの作品はそんな感じですよね。自分の好きなものばかり並べて「どう? これかっこいいっしょ?」みたいな(笑)。ああいう作品がずっと俺の指針だったし、自分もただ歌いたいことを歌って、かっこいいものを作るだけだと思ってます。あとはとにかくライブ。昨年の秋冬に東名阪で久々にライブやったんですけど、その時がもうホンマに楽しくて。こんなに細胞が沸きたつことってあるんかと思いましたね。
元良:久々だったのは俺らだけじゃなくて、お客さんもそうですよね。自分が求めてたのはこれだってことを、お互いに感じられるライブだったな。
サイトウ:これはやっぱりライブやらなあかんなとあの時は思いましたね。マジで人生が変わるくらいの体験やったし、今度のツアーは毎回そういうライブにします。あんなに楽しいことはまず他にないですから。
w.o.d.
『LIFE IS TOO LONG』
2021年3月31日リリース
視聴・予約:https://ssm.lnk.to/LIFEISTOOLONG
ONE MAN TOUR ”バック・トゥー・ザ・フューチャーIII”
2021年5月7日(金)千葉県 千葉LOOK
2021年5月9日(日)埼玉県 西川口Hearts
2021年5月16日(日)岡山県 PEPPERLAND
2021年5月22日(土)長野県 LIVE HOUSE J
2021年5月28日(金)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
2021年5月30日(日)北海道 Crazy Monkey
2021年6月11日(金)福岡県 INSA
2021年6月13日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
2021年6月19日(土)香川県 高松TOONICE
2021年6月20日(日)愛知県 ElectricLadyLand
2021年6月25日(金)東京都 LIQUIDROOM
チケット一般発売 4月3日(土)10:00より
イープラス / ローソンチケット / チケットぴあにて発売開始
w.o.d.公式サイト:http://www.wodband.com/
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