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全米1位のラッパーが「音楽業界のスティーブ・ジョブス」を名乗る理由

Rolling Stone Japan / 2021年4月4日 19時0分

24kGoldn:2020年12月、ロサンゼルスにて撮影(Photo by Samuel Trotter for Rolling Stone)

全米ビルボードチャート1位を累計8週獲得。Spotifyのグローバルチャートをはじめ各国のチャートを席巻。 「ムード」のヒットで知られるラッパー、24kGoldn(トゥエンティー・フォー・ケー・ゴールデン)はこう話す。「俺を型にはめることはできない。そのことを俺は何度も証明してきた」と。

Zoomでの遠隔インタビューの開始早々、筆者に促されるのを待つことなく、24kGoldnは自身のことを「今の音楽業界のスティーブ・ジョブス」だと形容した。昨年最大のヒット曲のひとつを生んだ若干20歳のアーティストによるその大胆な主張には、ほんの微かな皮肉さえ感じられない。しかし、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進するボーダレスなラッパーの自信家ぶりには根拠がある。

24kGoldnことゴールデン・ランディス・ヴォン・ジョーンズは、TikTokを起点にキャリアを築いたアーティストとしては、リル・ナズ・X以降最も大きな成功を収めた存在であり、同プラットフォームから複数のバイラルヒットを出した数少ない存在のひとりだ。彼は2019年に現在のレーベル(RECORDS)と契約していることを主張しつつも、事実上TikTokがキャリアのスタート地点となったことを認めている。チャートを制し2020年最大のヒットのひとつとなった「ムード」(盟友イアン・ディオールがゲスト参加)を含め、彼はこれまでに3つのRIAA認定シングルをリリースしている。同曲はローリングストーン誌の100 Songs Chartでも28週にわたってチャートインし、週を隔てて2度その頂点に立った。

「俺はこのゲームに革命を起こしてる」。Goldnは何のためらいもなくそう話す。彼はインタビューを通して、その野望をあたかも既成事実であるかのように話していた。彼は今後もナンバーワンシングルを出すこと、そしていずれ自身のレーベルを運営することを確信している。唯一彼が自信のなさそうな口ぶりになったのは、今日が何曜日かを思い出そうとしている時だった。ミュージシャンとしてのキャリアの追求に没頭するあまり、彼は曜日感覚をすっかり失ってしまったのだという(筆者は彼に当日が金曜日であることを伝えた)。

バイラルヒットを記録した後、「ムード」はメインストリーム向けにアレンジが施された。同曲はラジオチャートを制し、11月にはジャスティン・ビーバーとJ・バルヴィンという2人のスーパースターをゲストに迎えたリミックスが公開された。Goldn曰く、よりハッピーなトーンが成功の秘訣だったという。パンデミック、人種差別への抗議、国の分断を露呈させた大統領選に象徴された2020年において、リスナーと繋がろうとする多くのアーティストが生み出した作品からは、現在の状況を受け入れる、あるいは目を反らそうとする姿勢が感じ取れた。ビーチを連想させる陽気さ、ギターリフをちりばめたビート、そして軽快なメロディを特徴とする「ムード」におけるGoldnのアプローチは、紛れもなく後者だった。



「あの曲を作った時、俺たちはとことんいい気分だった。それが曲に現れたんだよ」。彼はそう話す。「リスナーがあの曲を自宅で独りで聴いていたとしても、俺たちが感じてたハッピーなヴァイブスを共有できるんじゃないかな。今の状況の対極にあるようなあの曲のムードが、多くの人を元気づけたんだよ」


「アーティストとしての観点とビジネスのマインドセットの両方を備えてる」

注目されることに慣れているというGoldnは、キャリアの早い段階でナンバーワンシングルを出すことに伴う不吉なジンクスを少しも恐れていない。「ゴールデンなんていう名前をもらった俺は、12歳になるまでずっと巨大なアフロヘアだった」。彼はそう話す。「俺はいつも目立ってたから、自然と自信がついたんだよ」

幼い頃から音楽の道を志していた一方で、Goldnは堅固な防御策も用意していた。彼は特待生として迎えられた南カリフォルニア大学で1年間学んでおり、ミュージシャンとして成功できなかった場合には、ヘッジファンドマネージャーや何かしらの起業家になるつもりだったという。彼は現在のキャリアにおけるビジネス的側面から学んだことが、いずれ自身のレーベルを経営する上での糧になると考えている。

「俺を支えてくれてるチームが持っているリソースや知識を、俺も身につけたいんだ」。Goldnはそう話す。「何かと非効率的なレーベルは多いからね。(RECORDSは)俺がヴィジョンを形にする上で必要だと思うことを自由にやらせてくれる。アーティストにそういう権限を与えるレーベルって少ないんだよ。ヒットを出そうと無闇にもがいてるだけでさ。アーティストとしての観点とビジネスのマインドセットの両方を備えてる俺は、誰よりもうまくやれるっていう自信があるんだ」

24kGoldnはTikTokラップシーンの中心的存在だが、彼は自身のサウンドがそう括られるのを良しとしない。より広義なカテゴリーさえも、彼にとっては窮屈でしかない。ラッパーとしてのイメージが強い彼だが、彼の名が知れ渡るきっかけとなった「ヴァレンチノ」と「シティ・オブ・エンジェル」の2曲のヴォーカルにはエモをの影響を感じさせる部分もあり、「ムード」は夏にぴったりのポップという表現の方がしっくりくる。

「高校生だった頃、誰もが俺のことをSoundCloudラッパーと呼んでた。でも今じゃTikTokラッパーってわけさ」。彼は微かに笑いながらそう話す。「そんな風に呼ぶ人のことを責める気はないよ。わかりやすい言葉で括る方が、独自のものとして受け入れるよりも簡単だからね。俺がいっときの流行りなんかじゃない本物のアーティストだってことは、時が経てば自ずと証明される」





24kGoldnの音楽的ルーツ

彼の幼少期の音楽体験は、カニエ・ウエストやブラック・アイド・ピーズ等に代表される2000年代のメインストリームのヒップホップ/ポップ系アクトや、マイルス・デイビス等のジャズアーティストの曲が好きだった両親からの影響が大きいという。中学から高校にかけてはよりラップに傾倒するようになり、プシャ・T、ヤング・サグ、チーフ・キーフ、リック・ロス等から影響を受けた。高校を卒業した頃から大学生活の始まりにかけては、主にロックやオルタナを聴いていたという。

マシンガン・ケリーのようなラッパーが純粋なポップパンクのアルバムを作り、故ジュース・ワールドがトラップビートに合わせてエモ風の歌詞を優しく歌い上げ、ポスト・マローンが全編ニルヴァーナのカバーのコンサートを開く今の時代において、Goldnは当然のように様々なスタイルを打ち出そうとする。

「俺を型にはめることはできない。そのことを俺は何度も証明してきた。俺はこれまでの人生で、世界が俺に追いつくのであって、その逆じゃないってことを学んだんだ」。彼はそう話す。「俺はラッパーだけど、ロックスターだったりR&Bシンガーだったり、その日の気分次第でなりたいものになるんだよ。俺は自分自身を型にはめたりしない。俺はただのGoldnさ」

<INFORMATION>


『EL DORADO | エル・ドラド』
24kGoldn | 24kゴールデン(読み:トゥエンティ・フォー・ケー・ゴールデン)
配信中
配信URL:https://lnk.to/24KGoldn_ELDORADORS

from Rolling Stone US

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