ユーミンら1970年代のアルファレコード作品を当時のディレクターと振り返る
Rolling Stone Japan / 2021年4月20日 12時40分
日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2021年4月はアルファレコード特集。第1週は、2015年に行われたライブ「ALFA MUSIC LIVE」の音源を聴きながら、元アルファレコードのディレクター・プロデューサー、現在は株式会社シティレコードのプロデューサー有賀恒夫とともに、1970年代のアルファレコードの作品を振り返る。
田家秀樹(以下、田家)こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」案内人、田家秀樹です。今流れているのは「WE BELIEVE IN MUSIC」。作詞が山上路夫さん、作曲が村井邦彦さんの新曲です。お聞きいただいているのは、2015年9月27、28日に渋谷Bunkamuraオーチャードホールで行われたライブ音源です。このライブのために書き下ろされた曲でした。歌っているのは小坂忠さん、小坂さんの娘・Asiahさん、ギタリスト大村憲司さんの息子・大村真司さん、ドラマー林立夫さんの息子・林一樹さん、村井邦彦さん、そして先日亡くなった村上"ポンタ"秀一さんです。今月の前テーマはこの曲です。
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WE BELIEVE IN MUSIC / 小坂忠、Asiah、他
今月2021年4月はアルファミュージック特集。当時24歳だった若手作曲家・村井邦彦さんが1969年に設立した音楽出版社アルファミュージック。その作家契約の第一号が高校生だった荒井由実さん。赤い鳥、小坂忠、細野晴臣、松任谷正隆、吉田美奈子、ガロ。色々な人たちを世に送り出し、新しい日本のポップミュージックの流れを作った会社です。1977年にはレコード会社アルファレコードも発足、そこからはサーカス、YMO、カシオペア、シーナ&ザ・ロケッツなども羽ばたいていきました。
お聞きいただいているALFA MUSIC LIVEは、村井さんが70歳を迎えた2015年に行われたライブでアルファゆかりのミュージシャンが大集結。夢の一夜を繰り広げました。タイトルの「WE BELIEVE IN MUSIC」は、アルファが設立された時のスローガン。今年の3月にこのライブの映像作品が発売されました。今月はそのライブ音源を使いながら、アルファレコードの功績を振り返っていこうという1ヶ月であります。今週と来週のゲストは、元アルファレコードのディレクター・プロデューサー、現在は株式会社シティレコードのプロデューサー有賀恒夫さん。鬼の有賀と呼ばれた伝説のディレクターです、こんばんは。
有賀恒夫(以下、有賀):こんばんは。
田家:「WE BELIEVE IN MUSIC」という曲名はスローガンだったと聞いております。
有賀:そうですね。当時からこの言葉は村井さんが大声で叫んでいたんです。どういう意味かというと、いい音楽は金に変わる、というのが根底にありまして。いい音楽は金に変わると信じて働いていましたね。
田家:経営者としてはそういうビジョンがないとやれないでしょうしね。実際、鬼の有賀と呼ばれながら働いていた頃は、こういうライブが実現する日が来る思われました?
有賀:当時はそんなことはまったく。振り返ってみると、こんなに偉大なアーティストたちを扱うことができたんだなと改めて思いましたね。
田家:それは当日現場で感じられたんですね。どの辺でご覧になっていたんですか?
有賀:僕は主に楽屋で……(笑)。
田家:なるほど(笑)。今回有賀さんにはこのライブの中で忘れられない思い出のある曲を選んでいただきました。1曲目はガロの大野真澄さんが歌っている「学生街の喫茶店」です。
学生街の喫茶店 / 大野真澄(GARO)
田家:この曲を選ばれた理由は?
有賀:この曲は、すぎやまこういちさんと山上路夫さんの作ったものなんですね。GAROのアーティストとしてのアイデンティティから考えると、他人の曲は歌いたくないというのがどこかにあるんです。それでTOMMY(日高富明)もMARK(堀内護)も自分で歌うのが嫌なもんだから、一番気の弱いVOCAL(大野真澄)が歌うことになった。でも、VOCALが歌ったGAROの曲が瞬く間にヒットしてGAROの中心になってしまうわけですね。それは”プロデュース”ということの顕著な例だと思うんです。だから私はこの曲がとても好きなんですね。
田家:当初はB面だった曲が、A面になって大ヒットしましたね。ライブでは、松任谷正隆さんが演出・構成されているんですが、素晴らしいと思ったのがプレゼンターが登場して出演者を紹介するという構成。オープニングはユーミンが出てきて、彼女が初めて書いた曲を歌う加橋かつみさんを紹介する始まりです。「学生街の喫茶店」の曲紹介をしたのは、GAROのプロデューサーだったミッキー・カーティスさんで。今、有賀さんが仰ったことを、ミッキーさんがご自身の口でお話されながら曲が始まるという。このミッキー・カーティスさんのプレゼンターとして紹介は長いので、番組ではご紹介しきれないのですが(笑)。
有賀:話し出すと止まらないんです(笑)。
田家:お聞きいただいたのは、2015年9月に行われたライブ「ALFA MUSIC LIVE」から、GAROの大野真澄さんが歌われた「学生街の喫茶店」でした。
プレゼンターMC(服部克久)
田家:ただいまプレゼンターとして登場されたのが服部克久さん。J-POPの父、服部良一さんの息子でありますが、服部さんにはどんなことを思われますか?
有賀:まずこの雪村いづみさんの繋がりで言えば、『スーパー・ジェネレイション』という大きなアルバムがありまして。これは、服部良一さんの作品をティン・パン・アレーのリズムセクション、それと歌のしっかりした雪村いづみさんに歌っていただこうとという企画で、それをまとめていただくのはやっぱり服部克久さんにお願いしたという感じです。
田家:1974年に出たアルバムで、当時キャラメル・ママと名乗っていたティン・パン・アレイの演奏ですね。あのアルバムは細野さんがやりたいと仰ったんですか? 村井さんが?
有賀:僕のところには村井さんから降りてきたものですから、どちらがやりたいと言ったかは分からないんですよね。
田家:細野さんの才能をいち早く見抜かれたのが村井さんでもありますからね。細野さんと雪村さんという組み合わせを村井さんが描いたのは当然かもしれませんね。
有賀:そうですね。先鋭的なリズムセクションとしっかりした楽曲、アレンジ、歌ですよね。
田家:雪村いづみさんはユーミンの「ひこうき雲」を歌ったとお聞きしたことがあるのですが。
有賀:ありましたね。それも僕がやったんです。ユーミンが作家としてまず生きていきたいんだというのが当初にありまして、それじゃあこの曲を広めるのに雪村いづみさんに手伝ってもらおうとしたんです。ところが、歌ってもらうと、音程も正しいし感情もあるので歌としては申し分なかったんですけど、ユーミンの楽曲がこの歌で表現された時にどこか違和感があると思った。それで、僕なんかはこの曲は、ユーミンが自分で歌う方がいいんじゃないかと思っていたもので。結局、雪村さんが歌った「ひこうき雲」はお蔵入りです。
田家:ユーミンの話はまだこの後も続きます。そんな有賀さんが選ばれた雪村さんの曲で選ばれたのが次の曲「蘇州夜曲」。
蘇州夜曲 / 雪村いづみ
田家:1974年に発売の名盤『スーパー・ジェネレイション』の曲です。有賀さんがこれを選ばれたのは?
有賀:服部良一さんの曲は、コードの流れが実にジャズ的というか。すごく工夫に工夫を重ねて感情が出てくるようなコード進行なんです。それはとても尊敬しているところなので。
田家:J-POPの父と語られてきていますが、アルファミュージックの人たちにとっても服部良一さんは特別な方ですか?
有賀:特別です、本当に素晴らしい。
田家:そういう服部さんが日本の音楽でやろうとしたことを僕らも受け継いでいくという意識も当時ありました?
有賀:そこまで大きくは構えていませんが、他とは違うものをやろうとしていましたね。
田家:村井さんは慶應義塾大学の老舗ジャズクラブ「ライト・ミュージック・ソサエティ」のメンバーで、有賀さんもその後輩なんですよね。
有賀:そうです。でも、実は村井さんは僕の中学からの先輩でクラリネットなんかを習った記憶があります。
田家:その頃はまだ音楽出版社を作る方だと思っていなかった?
有賀:思ってなかったですね。大学を卒業して「今度アルファレコードっていうレコード会社始めるのでよかったら来たら?」って誘われたんです。
田家:その村井さんが見つけてきた高校生が荒井由実だった。この話はこの後お伺いしていこうと思います。有賀さんが選ばれた今日の3曲目「中央フリーウェイ」。
中央フリーウェイ / 松任谷由実(荒井由実)
田家:これも演奏はティン・パン・アレイですね。ライブでは「ひこうき雲」も歌っていましたが、有賀さんはこの曲で思い出されることがたくさんあるでしょうね。
有賀:当時はその素晴らしさにどこか嫉妬していたような気がしますね。「中央フリーウェイ」の素晴らしいところは、実は何回も転調してサビに入って、またAメロの戻る時に大きな転調があるものですからコードも含めて曲全体が素晴らしい。そして歌詞が素晴らしい。これは嫉妬以外ないですね。
田家:何回素晴らしいと言ってもキリがないほどに素晴らしいと。嫉妬の感情は、ディレクターとアーティストの間では微妙なものでもあるんでしょうね?
有賀:彼女の持ってくるものは全部素晴らしくて、駄曲っていうのがなかったんです。メロディも歌詞も完成度が高くて、どこもツッコミようがないくらいで文句を言ったことは一回もないくらいです。
田家:でも、ユーミンにビブラートを直せと言ったら彼女が泣いて、「ひこうき雲」のアルバムのレコーディングに一年もかかったと伺ったことがあります。それも有賀さんのディレクションだったんですよね?
有賀:というのは、彼女がもともと持っていた私のビブラートは、山本潤子さんのような綺麗で大きなビブラートじゃなくて、細かく震えているようなものをビブラートだと言い張ったものですから。それはちょっと違うなと思って、ボイストレーニングとか色々連れて行った。という風に彼女は私のことを言うんですが(笑)。そんな失礼なことあったかな? という感じで僕は忘れてましたね。
田家:今回の「ALFA MUSIC LIVE」は、Blu-rayとCDでそれぞれ二枚組で収録されていて。ライブ音源の曲はスタジオ盤のCDにもなっていますが、ライブでユーミンの「ひこうき雲」をずっとライブでご覧になっていて気づかれたことはありますか?
有賀:「ひこうき雲」は、彼女の特別な曲でして。彼女の大事な友達が亡くなったことを歌詞にして、それを曲にして歌っているものですから。後に色々な人がこの曲をカバーしたりしていますけど、何の意味があるのかと変な感じで聞いています。
田家:有賀さんが当時ユーミンと交わした約束があったと聞きました。
有賀:そうですね。レコード会社としては後に色々なコンピレーションアルバムを出すと思うのですが、この曲は収録しないでくれと彼女からの希望があって。私が在籍している間、「ひこうき雲」は一回もコンピレーションに入れずに、オリジナルアルバムだけ収録されているんです。
田家:そういうエピソードがあります。お聞きいただいたのは「中央フリーウェイ」、BGMでスタジオ盤の「ひこうき雲」でした。
プレゼンターMC(細野晴臣)
田家:今のプレゼンターは細野晴臣さんでした。細野晴臣さん、小坂忠さん、演出を担当した松任谷正隆さんの関係も強いものがありますね。この「ALFA MUSIC LIVE」が普通のトリビュートのスタイルとちょっと違うのは、当事者がプレゼンターとしてそれらの関係性を説明していく。ライブ自体が一つの歴史の証明になっていることですね。
有賀:この演出はとてもよかったし、流れがすごく自然なんですね。だから私がプレゼンしてるんだという気持ちがプレゼンターにあって、そこから導き出されるアーティストの関係性も垣間見えて楽しいですね。
田家:当時を知らない人にもつながりが分かるようになっていたと。細野さんと小坂さんも1969年にエイプリル・フールというバンドを組んでいましたが、小坂さんがロックミュージカル「HAIR」のオーディションを受けるのでいなくなってしまう。その後に細野さんが、大滝詠一さんを代わりに連れてきて作ったのがはっぴいえんどだった。ミュージカル「HAIR」を日本で上映したプロデューサーが、村井邦彦さんの盟友である川添象郎さんだった。川添さんと村井さんが作ったレーベルがマッシュルームレーベルで、そこから小坂さんもデビューしたと。有賀さんの中で、このマッシュルームレーベルとはどんな場所なんですか?
有賀:誰もが気づかないところで、すごいことが行われてるという感じですかね。
田家:川添さんと村井さんの関係性はどうご覧になってたんですか?
有賀:僕がアルファにいた頃は、川添さんも僕の上司でしたからね。その二人の関係は良く存じてましたけど、考えている方向が一方向といいますかね。いつでも他の人がやらないことをやろうとしていて。音楽的に正しくて説得力もあって美しいというものをいつも目指していたような気がしますね。
田家:上司としての川添象郎さんはどんな人でした?
有賀:普通のレコード会社の組織とは毛頭違うんじゃないかと思ったんです。会社員としては落第、でもそういう悪い点を私なんかが追っちゃったのかなと思います(笑)。僕もやりたくないものはやらないし、それが会社員として正しいかと言われれば、正しいとは無縁な存在だったんじゃないかと思います。
田家:川添さんは日本のサブカルチャーの生みの親と言ってもいい方であります。マッシュルームレーベルで発売された曲です、小坂忠さんの「機関車」。
機関車 / 小坂忠
田家:小坂さんは「機関車」と「ほうろう」の2曲を歌ってましたが、有賀さんはこの「機関車」を選んでおります。この曲のライブの演奏はティン・パン・アレイと高橋幸宏さんでした。これを選ばれた理由は?
有賀:もともと彼らも何回も録音してるんだと思うんですけど、アルファでも僕が一回担当したことがあって。この曲は好きでしたね。
田家:このライブ演出をされている松任谷正隆さんのプロデビューは、小坂忠さんのバックバンド・フォージョー・ハーフだったんですよね。
有賀:これは僕がビクターで小僧をやっていた時期がありまして、その時に子供向けのレコードを一枚作ったんですけど、その中に小坂忠さんと松任谷正隆さん、細野晴臣さんもいた気がします。「機関車」をやったかは覚えてないですけど、その時から小坂忠は知っていてとても素敵なボーカリストですね。
田家:小坂さんの1972年のアルバム『もっともっと』のバックで松任谷さんがデビューしたんですよね。フォージョーハーフは四畳半フォークの英語読みだったという。有賀さんはどぶ板フォークじゃない音楽をやろうとしたって仰っていたことがありましたね。
有賀:そんなこと言ってましたっけ(笑)。口が悪いものですからね。申し訳ないです。
田家:四畳半フォークって、そういう意味ではどぶ板フォークですね。
有賀:そうですね、フォージョーハーフとは全然違いますね。
田家:フォージョーハーフは四畳半と違うものをやるんだということで、ジョークで英語にした。そこにティン・パン・アレイになる林立夫さんがいた。ティン・パン・アレイの功績ってどう思われますか?
有賀:皆すごいですね。ミュージシャンとしては本当に尊敬しています。
田家:ユーミンのアルバムは彼らがいなかったら、あの形にはならなかった?
有賀:そうですよね。彼女は最初いかがなものかと思ったらしいんですけど(笑)。でも、ティン・パン・アレーはユーミンをすごく大事にしてましたね。楽曲を聞いて、自分らが演奏するに値する音楽だと最初から思っていたと思います。そういう意味の尊敬が根底にあったんじゃないかな。
田家:テイン・パン・アレイは当時『キャラメル・ママ』と言ってましたけど、彼らの起用は村井さんが考えて?
有賀:村井さんが皆考えて。私は補佐ですからね。
田家:村井さんが言い出したんですね。その時はどう思われました?
有賀:一番いいんじゃないかなと思いましたね。僕はブリティッシュとか拘らないタチですから。いいもんはいいもんだと思っていて。
田家:ユーミンは自分はブリティッシュだと拘ってましたね。でもそういう村井さんが起用される人たちは、売れているからというような実績で選んでいる感じはなかったですね。
有賀:実績は大して信用してないんです。自分で聞いて、このバンドが素晴らしいというのは彼が判断したんだと思いますよ。
田家:有賀さんもご自身の目でそういう風にミュージシャンをご覧になっていたんですね。お聞きいただいたのは、2015年の「ALFA MUSIC LIVE」小坂忠さんの「機関車」でした。
Mr.サマータイム / サーカス
田家:今流れているのは、3月に発売になった映像作品「ALFA MUSIC LIVE」からサーカスの「Mr.サマータイム」。有賀さんが本日選ばれた5曲目ですね。1978年のカネボウ化粧品のCMソングでミリオンセラーになりました。この曲は有賀さんが手掛けられたわけですよね?
有賀:そうですね。「Mr.サマータイム」っていうのは最初「Mr.メモリー」っていうタイトルだったんですね。竜真知子さんが作詞をされて、これはフランスのミッシェル・フュガン&ル・ビッグ・バザールが作った曲ですね。
田家:1972年の曲だそうですね。この曲をピックアップしたのはどういう経緯で?
有賀:サーカスの前に私はハイ・ファイ・セットというグループをやっていて。ハイ・ファイ・セットは3人組で山本潤子が女性一人で、男が二人だったんですけど。レコーディングする時には、山本潤子に2ndをもう一回歌ってもらって四声にしてミキシングしてたんです。でもライブをやるとなるとハーモニーがちょっと未完成なところもあったんですが、サーカスは元々4人ですからハーモニーとして充分な声量が出せるんですよね。それで、この「Mr.サマータイム」は「Mr.メモリー」としてレコーディングして完成していたんですけど、キャンペーンの謳い文句が「Mr.サマータイム」なので、今から変えてくれと言われて。全部歌い直したんですよ。
田家:アルファレコードの中にはシンガーソングライターの流れ、ジャズフュージョンなどインスト主流の流れ、そして赤い鳥やハイ・ファイ・セット、サーカスとコーラスワークの美しいグループの流れと、それぞれのスタイルがありましたよね。
有賀:そうですね。ソロアーティストもいいんですけど、ハーモニーを出すというのが私の好きな分野だったのかな。何かとユーミンの作品でもコーラスを山下達郎さんに頼んだりしてましたね。
田家:サーカスは3人姉妹と従兄弟というファミリーのグループでしたが、こういう大人のコーラスをやるファミリーはいなかったですね。
有賀:ファミリーだといい点は、たくさん家で練習できるんですよね。練習すると、ハーモニーを作る声の出し方とか圧力が身についてくるんですよ。上手い人だけ集めてその場ですぐできるかと言うと、なかなかそうもいかない。だからハーモニーはチームワークが大切じゃないかな。
田家:有賀さんが選んだ本日最後の曲です。2015年の「ALFA MUSIC LIVE」から「アメリカン・フィーリング」。
アメリカン・フィーリング / サーカス
田家:作詞は竜真知子さん、作曲が小田裕一郎さん、編曲が坂本龍一さん。1979年のJALのキャンペーンソングでした。これもエピソードがありそうですね?
有賀:JALに選んでもらったのはありがたいのですが、選んでもらったのはサビの部分なんです。Aメロがないので、小田裕一郎さんにAメロも作ってくださいって頼んでできたものがよくなくて。グッと来なくて、とてもサビまでもたないんです。それでもう一回やり直してもらったんですけど、やっぱり良くない。彼は「僕はこれでいいと思います」と言ったんです。そうじゃなくて、私が判断する立場なので。どういう風に良くないかというのを細かく説明して。サビが映えるようにするAメロが必要なんだと伝えて、3回目に持ってきたのが今流れているAメロです。
田家:なるほど。鬼の有賀に鍛えられた小田さんは、1980年代に松田聖子さんの一連のヒット曲で開花するわけですね。有賀さんの中で「アメリカン・フィーリング」という言葉に対する思い入れはあるんですか?
有賀:変な英語だったから(笑)。変な英語でしょう。
田家:(笑)。でも1979年当時はアメリカっぽさがトレンドになってましたもんね。アルファレコードはアメリカ的な何かが一つの目指すものになっていたんでしょうね。
有賀:そうですね、特にこの曲は西海岸っぽいですよね。空が青そうで。
田家:そのアメリカの話はまた来週。ここまでがDisc1の話で1970年代ですね。来週はDisc2、1980年代の話です。来週もよろしくお願いいたします。
有賀:よろしくお願いします。
田家:FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」アルファミュージック特集Part1。日本のポップミュージックの流れを変えた音楽制作会社アルファミュージックの特集。2015年のライブ「ALFA MUSIC LIVE」の映像作品が今年3月に発売されました。それを使いながらの特集です。ゲストには、元アルファレコードのディレクター・プロデューサー、現在はニューヨークに拠点を置く株式会社シティレコードのプロデューサー有賀恒夫さんをゲストにお送りしました。流れているのは、この番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説(レジェンド)」です。
歴史というのは一人の人間の力で変わることはない言っていいと思うんです。どんな英雄が登場しても、それを支えるたくさんの名もない人がいて英雄が英雄になる。そうやって歴史は変わっていくものですが、音楽はそうじゃない。これが面白いですね。一人の才能や突出した個人がいて流れが変わっていく。
アルファミュージックは、作曲家で当時24歳の村井邦彦さんが作ったもの。僕らが村井さんの名前を見たのは、ザ・モップスの「朝まで待てない」とかザ・テンプターズの「エメラルドの伝説」ですね。彼が音楽出版社を作って、そこに賛同した山上路夫さんも当時頭角を現してきた作詞家。そして、そもそもの発端、六本木の伝説のレストラン「キャンティ」のオーナー川添象郎さんは、ロックミュージカル「HAIR」を日本で上演した人です。そういうサブカルチャーのレジェンド3人が新しい何かを作ろうと始まったのがアルファミュージック。そこから歴史が始まった。そうやって始まった流れに参加した、誘われた、そういう若いアーティスト達が一堂に会したのが「ALFA MUSIC LIVE」でした。もし、村井邦彦さんがいなかったら、ライブに参加した人たち、あの頃の音楽ファンの人生はどうなってただろうな? と思いながら、今月も聞いていただけると嬉しいです。
<INFORMATION>
田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp
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