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UFC、1万5000人動員の有観客試合ができた理由

Rolling Stone Japan / 2021年4月29日 8時45分

現地時間24日、米フロリダ州ジャクソンビルのVyStarベテランズ・メモリアル・アリーナで行われたUFC 261(Photo by Alex Menendez/Getty Images)

米フロリダ州ジャクソンビルで現地時間24日に開催された総合格闘技「UFC(Ultimate Fighting Championship)」の大会「UFC 261」。会場となったVyStarベテランズ・メモリアル・アリーナには1万5259人のUFCファンが詰めかけた。2020年3月にCOVID-19が全米で猛威を振るって以来、満員御礼で行われる米国初の屋内イベントとなった。

【動画を見る】大歓声に包まれた客席の様子、マスクを着けてる人はほとんどいない

ワクチン接種率が上がっているとはいえ、当然ながら、早すぎはしないかという疑問が持ち上がった。だが批判する人々の抵抗をよそに、UFCダナ・ホワイト代表は断固開催する意思だった。これ以上引き留める危険はない、というのが代表の意見だった。

来場者は全員CLEAR(空港やイベントでセキュリティチェックやチケット確認を迅速化するアプリを扱う安全識別プラットフォーム)が作成したアプリをダウンロードして質問票に記入し、コロナウイルスの症状の有無に関する質問に回答するまでは、観客席につくことができない。それに加えて各人は、万が一ウイルスに晒される事態になった場合でもUFCは健康上の問題に一切責任を負わない、という免責事項に署名しなくてはならない。

世界が経済を再開する中、この手の免責事項は日常茶飯事となりつつある。ホワイト会長が判断するかぎり、予防措置によって「安全な」環境が確立された。

「COVID-19を乗り越えて、安全に事を進め、真っ先に再開する。そして今夜、満員御礼の会場でこれをやることがすべて(ひとつの大きな節目だ)」。UFC 261の試合後の記者会見で、ホワイト代表はローリングストーン誌に語った。「今週はずっと選手や我々(スタッフメンバーおよびメディア)にCOVID-19検査を行った。私も今週ずっとCOVID-19検査を受け、全員大丈夫だったし、念には念を入れた。そろそろ通常営業に戻るときだ。君たちメディアの連中は、いろいろな点で俺と同じ意見じゃないのは分かっている。だが、今週フロリダに来て、前と変わらない状況で最高に気分がいいのは否めないはずだ」

アメリカの大多数の州では、こうした状況下でUFCを進んで支援しようとはしていない。だがフロリダは違う。共和党のロン・デサンティス州知事はパンデミック初期の2020年5月、UFCにアリーナでの無観客イベント開催を3回も許可した。それからほぼ1年後、今度はUFC 261に門戸を開いた。

物議をかもしている人物ではあるものの、デサンティス州知事もジャクソンビルのレニー・カレー市長もホワイト代表おの考えに同調している。フロリダには他の州が抱える懸念は存在しない、というメッセージを発信したがっているのは明らかだ。

「フロリダへようこそ。自由のオアシスを求めてやってきたのは皆さんだけではありません」。UFC 261試合前の記者会見でデサンティス州知事はファンにこう語った。「このイベントはCOVID-19に見舞われて以来、アメリカで初めて、屋内で、フル稼働で行われるスポーツイベントです。当然でしょう。安全には配慮してきましたが、メディアやソーシャルメディアからはいろいろ言われています。中には対応したがらない人もいるでしょう。ダナ・ホワイト代表はものおじせず立ち向かっています」


観客のうち半分はフロリダ州外からの来場者

24日のイベントでは空席は一つもなかった。UFCスタッフがローリングストーン誌に語ったところでは、UFC 261に集まった1万5000人以上の観客のうち50%強は、フロリダ州外からの来場者だそうだ。

会場は第1戦から大盛況だった。州の規制が緩いため、マスクやフェイスカバーの着用は観客の任意に任されていた。大勢の人々が着用しないほうを選択していた。本誌記者が何度か観客席を目視したところでは、ひいき目に見ても顔を覆っているしている人は25%というところだった。

フロリダ州オーランドから車を飛ばしてやってきたカイル・ラモニカさんは、マスクを着用していたうちの1人だ。

「僕自身すでに予防接種を完了していますが、個人的にはやっぱりマスクは着けたいですね。万全を期しても、誰かに迷惑がかるわけじゃないし」とラモニカさん。「あとで後悔するよりも、安全に気をつけていたほうがましですよ。この国では、自分の行動を自分で決めることができる。マスクを着けたからって誰の迷惑になるわけじゃないし、僕自身も全く困らない。だったら、少しばかり安全に気を付けていたほうがいいでしょう」

ボストンから来たボビー・キャリーさんの意見は違った。彼は生まれて初めてUFCを生で観戦するために、はるばるボストンから飛んできた。マスク着用を選んだ人に文句はないが、自分はマスクを着けない権利を行使する、と彼は言った。

「オプションにすればいいんだよ」とキャリーさんは言う。「着けたければどうぞご自由に。着けたくなければそれも結構。現時点では選択できるようにするべきだ。もう1年以上もこういう状況を経験してきて、俺に言わせれば、マスクは大して役に立たないことも証明されている。着けたくないなら、着けなくてもいいはずだ」

会場内から見た限りでは、マスクを着けていた人と着けていない人の間で何らかのいざこざが起こった様子はなかった。誰もが、UFC史上に残る名勝負となったショーを楽しんでいた。

王座をかけた3大タイトルマッチは、いずれも見事なKO勝ちだった。メインイベントではウェルター級王者のカマル・ウスマンが対戦者ホルヘ・マスヴィダルをKO。女子ストロー級の試合では、挑戦者ローズ・ナマユナスが王者ジャン・ウェイリーを第1ラウンドでノックアウトし、王座を奪還。女子フライ級王者のヴァレンティーナ・シェフチェンコはジェシカ・アンドラージを破って連覇を達成した。

会場で試合をじかに観戦した人はみな、きっとこの日の出来事を忘れないだろう。特別な一夜という雰囲気だった。

だが、はたしてその影響はいかに? 時間が経たないとわからないが、スーパースプレッダーの可能性を懸念するのは当然だ。アリーナ内に広まったウイルスが複数の人間――ひょっとすると数千人――に共有され、彼らを介して全米各地に広まってしまうかもしれない。

それが実際に試合当日に起きたかどうかは、しばらく様子を見るしかない。だがホワイト代表は、ジャクソンビルでの歴史的な夜(意見は分かれるかもしれないが)を飾ったと信じ、さほど心配の色を見せていない。

「マスクを着けたければ着ける――着けたくなければ着けない」とホワイト会長。「マスクを着けている人を見ても、私は何も言わない。マスクを着けていない人を見ても、誰も文句は言わない。みんな自分のことは自分で世話している。何よりも、他のクズみたいな州にいるよりは、みんなフロリダにいる方がずっと幸せそうじゃないか」

「ここでは誰もが自分のことは自分で管理し、それぞれ自分の生活を送っている。本来そうあるべきだ。今日はいい気分だった、市長がいて、州知事がいて、一緒に働く仲間とともに安全なイベントを開催して、みんなが集まって楽しんでくれた。最高じゃないか。文字通り、これ以上ない出来だった。イベント開催も計画も、これ以上ないくらいよくやった」

from Rolling Stone US



Nothing like the roar of a crowd

We missed these moments. #AndStill pic.twitter.com/ns1Yt3BoHo — UFC (@ufc) April 25, 2021

A look at the crowd at #UFC261

Its the first event the UFC has held with a capacity crowd since before the COVID-19 pandemic in March 2020, with 15,000 fans. pic.twitter.com/pWmg1K6XCk — ESPN (@espn) April 25, 2021





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