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Tempalayが語る、進化するビジョン「人類よ、いざ化けろ」

Rolling Stone Japan / 2021年4月30日 21時45分

Tempalay:左からAAAMYYY(Cho, Syn)、 John Natsuki(Dr)、小原綾斗(Vo, Gt)(Photo by Genki Ito for Rolling Stone Japan)

2020年12月にシングル「EDEN」でメジャーデビューを果たした3人組バンドTempalay。2014年に結成された彼らによる4枚目のフルアルバム『ゴーストアルバム』では、ポップとアヴァンギャルドの間を行き来しながらサイケデリアやオリエンタリズムを大々的に導入。他の追従を一切許さぬその唯一無二のサウンドスケープによって、日本の音楽シーンに揺さぶりをかけてきた。

作品ごとに大きな進化を遂げている彼らに兼ねてから注目していた本誌では今回、1万字のバンドインタビューをお届けする。

※この記事は現在発売中の「Rolling Stone Japan vol.14」に掲載されたものです。

瞬間的な怒りもあった。でも、「歌詞はユーモア」
 
ー今作『ゴーストアルバム』はいつ頃から作り始めたのですか?

小原 最初は昨年4月くらいにリリースする予定だったものが、コロナの影響で延期となって今のタイミングになったんですよ。なので、制作に取りかかったのは3月くらい。そこからしばらく空いて、11月にまた再開したという感じです。

Natsuki 「GHOST WORLD」や「ああ迷路」、「忍者ハッタリくん」、「EDEN」あたりは前半に録った曲で。

小原 次にリード曲「シンゴ」を作り、最後に録ったのが「ゲゲゲ」でした。





ーじゃあ、昨年2月にリリースされた「大東京万博」以外は、コロナになってから作り始めたと。

小原 そうですね、緊急事態宣言が出た後だと思います。

Natsuki コロナになったのは、「大東京万博」が出てすぐでしたね。一度だけライブをやって、そのときすでにお客さんは全員マスクをしていて。これからツアーが始まるというときにコロナになってしまいました。



ースケジュールもぽっかり空いてしまったと。その間、どんなことを考えていました?

小原 特に何も考えてないですね(笑)。普通に楽しく過ごしていました。その前からちょっと精神的に煮詰まっていたので、ちょうどよかったのかなという気もする。個人的には。

ーそうですか。

小原 もちろん、最初のうちは「瞬間的な怒り」みたいなものはありましたけどね。ここまで(コロナと)長い付き合いになるとは思っていなかったし。その沸々とした気持ちはプリプロの段階でもありました。ライブもなくなるし、それに対する補償もないし「なんで、こっちだけ損してんねん」という情勢に対する怒り。ただ、それをそのまま歌っても仕方ないと思うんですよ。その怒りを歌詞にして伝えたいっていうのはないし、それがTempalayでやりたいことではないので。

ー瞬間的な怒りが曲作りのモチベーションにはなっても、最終的なアウトプットではないと。

小原 基本的に歌詞なんてものは、ユーモアだと思っていますしね。どうでもいいというか、言葉遊びなんです。歌詞ってみんな「文章」としては拾ってないと思うんですよ。曲の中で飛び交っているワードをキャッチしているような感覚というか、それで各々が自由に解釈するところに少なくとも価値があると思っているので、そもそも最初から肯定したり否定したりしてしまうと響かないんじゃないかなと。もちろん、肯定的な歌詞に救われる人もいるとは思いますけど。僕は自分の考えを、たとえ肯定的であっても押し付けたくないんでしょうね。

ーNatsukiさんとAAAMYYYさんは、ステイホーム期間はどんなふうに過ごしていました?

Natsuki 予定が空いたことで、今まで忙しくてできなかったことに取り組んでいました。ドラムの練習をしたり、ソロで作っている曲を自分でミックスしてみたり。機材のこともいろいろ調べましたね。1日のスケジュールを自分で組むようにして、コロナになる前よりもしっかりした生活が送れるようになったかもしれないです(笑)。

AAAMYYY 私は、最初の方はかなりダウナーになってしまいました。スケジュールがパンパンに詰まっていたのが、いきなりゼロに近い状況になって、「自分は今まで何のためにやってきたのだろう?」とか考え始めてしまったんです。抜け殻みたいな日々が、結構最近まで続きました。でも、猫を飼い出したり、「自分を大事にしよう」というふうに考え方をシフトさせたりしたことで、結果的にはいい1年になったと思います。

ーネット上で意見の対立や分断が進み、世界を見渡しても香港デモやBlack Lives Matter、大統領選などいろいろなことが起きていましたが、そういうのを見て感じるところはありました?

小原 うーん、違和感を覚えつつも個人的にはノータッチというか。「いろんな考え方があるよな」と思って静観していましたね。あまり自分ごととは思えなくて。

Natsuki 俺はシンプルに、SNSとは距離を置こうと思いました。そもそもそんなにやりたくてやっていたわけじゃなくて、宣伝のために「やった方がいいんだろうな」くらいの気持ちだったんですけど、別にそこを頑張る必要はないかなと。今まで外側に発信することへの意識が向きすぎていた気もするし、もっとベーシックに立ち返って自分が納得するものを作りたいと思えるようになった。生き方もそう。自分が納得のできる生き方をしたいと思ったときに、SNSを覗くのは極力最小限でいいのかなと。

AAAMYYY 私は、最初の頃は世の中の情勢に対して積極的に発信していました。そうして生きるのが普通のことだと思っていたからなのですが、「果たして自分のスタンスは合ってたのかな?」とか「何もかも間違っているんじゃないか?」みたいになって、どんどん疲弊していってしまったんです。考えるのは人の自由だなと思ったので、しばらく私もSNSから離れていましたね。

 
自然界と人間の境界線。「化けろ」の真意
 
ーアルバムタイトルの「ゴースト」には、どんな意味が込められていますか?

小原 単純に、生きているか死んでいるか分からないような1年だったというのもあるし、「死んだ気になって踊ろうよ」という意味もある。ゴーストのような、目に見えないものについて描きたいという気持ちもありました。「ゲゲゲ」でも歌っていることですが、僕らの知らないところで大変な思いをしている人、もう亡くなってしまった人はたくさんいると思うんですよね。未だに怒りを抱えている人も、順応していく人もいる。だったらもう、みんないっそ「化けて」しまえよと。

【画像を見る】Tempalayが『ゴーストアルバム』制作中に刺激を受けた作品

ー「ゲゲゲ」には、”おいも若きも世のため人のため 化けろ化けろ化けらにゃ損損”というラインもありますね。

小原 「ゴースト」って一般的にはネガティブなイメージですが、なってしまえばこっちのものだと思いませんか? みんな、不安で分からないから怖いし、怖いから憤りを持つと思うんですよ。何が不安なのかもよく分からないけど、でもなんか不安なんです。だったら「死んじゃえよ」っていうアルバムですね、これは。



ー(笑)。

小原 死は「向こう側」というけど、それはどっち側に立つかだけの話で。自然界と人間界の「間」とも言えるのかなって。そういうことをこの1年でたくさん考えました。

ー「生と死」だったり、「自然と文明」だったり、ある意味「境界線」とも言えますね。以前、綾斗さんにインタビューしたとき、「死」に取り憑かれるようになった幼少期の体験について話してくれましたが、今作はそこに焦点を当てたアルバムともいえますか?

小原 かもしれないですね。なぜなら「死」に対して、どうしたって向き合わなければならなくなってしまった1年だったわけじゃないですか。やっぱり今まではどこか他人事だったと思うんですよ。どこかの国で紛争や災害が起きても責任を負えないし、BLMにしてもそう。でもコロナに関しては、全員が向き合わなければならなくなってしまった。他人より自分と向き合わざるを得ない事態となり、みんなこの1年で自分のことを知ったんじゃないですかね。僕も、自分に降りかかってくる問題じゃないと歌えないし、自分のこととして発言できないなと再認識しました。

ー「春山淡冶にして笑うが如く」と「冬山惨淡として睡るが如し」は、曲名が山水画家・郭煕の俳句から引用したものですが、どういったインスピレーションを受けたのでしょう?

小原 郭熙はまさしく、自然と人間界の「間」をアルバム1枚通して表現したいと思ったときに、インスパイアされたアーティストの一人です。彼の描く山の絵は、ものすごくデフォルメされているんですよ。「その位置で山を見たら、そんなふうには見えないだろ?」っていうくらい。それって郭熙の心象であり「存在しない山」なわけだけど、でも彼にはそう見えたのかなと思うと面白いですよね。



ー同じ山でも、人によって見え方は当然違うわけですしね。

小原 しかも、ひたすら山を描き続けて生涯を終えるというのも、すごく憧れる。『ゴーストアルバム』のアートワークを手がけてくれたジョージ3さんも、かれこれ30年くらいマジカル・アイを毎晩朝まで描いているらしいんですよ。その創作意欲って一体どこから来ているんだろう、なぜそこまでマジカル・アイに取り憑かれたんだろうと思うし、そういうエネルギーを作品から感じるのは楽しいことでもありますね。

ーサウンド面に耳を向けると、「大東京万博」あたりから内包されていた「オリエンタリズム」が、今回のアルバムにもふんだんに入っています。

小原 結構それ、いろんな人に言われるんですけど、自分ではあんまり意識していなくて、使いたい楽器を重ねていった結果なんですよね。ただ、この1年間いろんなところを旅してみて、行く先々で目にした自然の姿、コロナとは全く関係なく存在しているその様子に驚愕したというか。これだけ世界中が大騒ぎになっているのに、もう全く無関係にそこにあるもの。それを目にしたときに、自然界と人間界の「間」にあるものを作品にしたいと思うようになって。それを追求していくうちにオリエンタルなサウンドになったのかも知れないですね。

ー「自分が使いたい楽器を重ねていった」とおっしゃいましたが、たとえばどんな楽器を入れたのですか?

小原 二胡とか。僕、二胡がめっちゃ好きなんですよ。二胡だけじゃなく、アジアの楽器全般に興味がある。なんか高揚するんですよね。ノスタルジックな気持ちにも、センチメンタルな気持ちにもなる。「すげえいい」としか言い表せないんですけど。

AAAMYYY 沖縄へ行ったときとかすっごい楽しそうだもんね。

小原 そうそう、三線も大好きですし。

Natsuki 弦の響きが「直」だからなのかな。ああいう楽器って、確かに弦が「揺れている」音が聞こえるもんね。

ー倍音が多くてピッチが不安定なところも心を揺さぶりますよね。12音階では割り切れないというか。

Natsuki ああ確かに。それもノスタルジックな気持ちを喚起させる要素ではあるかもしれない。
小原 決して太陽が燦々と降り注ぐ下で演奏するものじゃないというか(笑)。しかも民族楽器って神楽だったり宮廷音楽だったり、お上のために演奏するためのものが多いじゃないですか。

ーそこが神秘的でもありますよね。

小原 たとえば祭囃子とかも、何の楽器が鳴っているのか分からないんですけど、いつの間にかそれが自分の中で抽象化されたサウンドになってるんです。自分の地元には「よさこい祭」や天狗を祀る祭りとか、その行事で山に鬼を探しに行くとかがあって、そういう原体験と自分の中で鳴っていたであろうサウンドが結びついているので、アジアの楽器のサウンドを聴くとノスタルジーを覚えるのかもしれない。

ーしかもTempalayはそういう楽器を、ロックというイディオムで鳴らしているのが強力なオリジナリティになっていると思います。

小原 前からそういうことをやってきたつもりだったんだけど、今回はそれがより目立ったんでしょうね。今までは、メンバーが弾けない楽器を取り入れることに抵抗もあったのかも知れない。それを取っ払い、二胡奏者の吉田悠樹さんをゲストに迎えるなどしたことも大きいと思います。

ーNatsukiさんは、今回サウンド面ではどのようなアプローチをしましたか?

Natsuki 全体的にかなりビートの強いミックスになりましたね。今回、ほとんどの楽曲のベースを高木祥太くん(BREIMEN)くんが弾いてくれていて、彼のプレイを聴いたときに「アタックの速いドラムと相性がいいのかも知れない」と思ったんです。今までだったら出さなかったであろうアタック感を、今回は割と出していますね。とはいえ音圧重視のドラムにはしたくなかったので、いい塩梅のバランスを探していました。以前までのTempalayが「60年代の追求」だとしたら、今回はそこから10年経って70年代。ハードロックが全盛だった頃の、アタックの強い音像を今のTempalayにミックスしてみたかったんです。そういう意味では、今までにないパワー感が全体的にあるのかなと。それと今回は全体的に「明るい」ですよね。曲調というよりは質感がちょっとだけオープンになったのかなという気がします。

ー音像の明るさはどこから来ているのでしょう。

Natsuki 以前までは、いろんな音が飽和していてそれが「Tempalayらしさ」でもあったと思うんですけど、今作は割と各音の輪郭がしっかりした中で絡み合っている、その絶妙な絡みがよく見えるようになっているからじゃないかなと。ギターとシンセの棲み分けも、前よりちゃんとできていて、それぞれの楽器がちゃんと活きている感じがします。

ーAAAMYYYさんはいかがですか?

AAAMYYY レコーディングはほとんどリモートで参加したのですが、レコーディングされたドラムのデータをもらって、それをベースに自宅でシンセの音を作り込むことができました。ソフトシンセ類はあまり使わず、自分が持っているシンセの実機をメインで使えたので手応えを感じています。


メジャー移籍を選んだ理由。「アートは生活と隣り合わせ」
 
ー本作はTempalayがunBORDEに移籍して初のアルバムですが、メジャー契約を果たしたことについてはどのような考えがあったのでしょう。

小原 まあ、パイを広げるという意識はあったと思います。正直メジャーに入っても収入が変わるわけではないんですよ。それはもちろん最初から分かっていたし、さすがにここまでやってきて「メジャーに入ったから安泰」とは周囲の状況を見ていても全く思っていない。それも踏まえた上での移籍です。

ーなるほど。以前のインタビューで綾斗さんは「いかに目標の月50万を達成し、キープしていくか?」を考えているとおっしゃっていて。あれから数年経ち、「売れる」ということに対してはどんな意識でいますか?

小原 あのときは、「売れるとは何か?」についていろいろ考えていた時期だったと思うんですよね。売れるにはどういうプロセスがあって、どういう状況であれば自分たちの普通の生活よりも、ちょっといい生活ができるだろう? みたいなことを、イメージしながら話したのだと思う。でもそれって結果論でしかないし、それ以前に説得力のある音楽を作らなければ一過性のものになってしまう。食い続けられないですよね。「金がなくても好きなことができればいい」などとはもちろん思っていないし、とにかくいい作品を作るしかないというのが今の気持ちですかね。

ー自分で納得のいく作品を作り、なおかつ生活も維持していくってなかなか難しいことだと思うんですよ。

小原 でも、それってタイミングなのかなとも思いますけどね。狙いにいくとダメだし。タイミングを「迎えにいく」という感じなのかな……まだ来てないですけど(笑)。

ーAAAMYYYさんが作詞、Natsukiさんが作曲を担当した「フクロネズミも考えていた」(早期予約特典音源)では、アートの未来、人間の未来について歌っていますよね。

AAAMYYY あれは、綾斗が言いそうな言葉を過去曲からたくさん引っ張ってきて並べたんです。

小原 じゃあ、作詞は俺やん。

AAAMYYY (笑)。2サビでフクロネズミが言ってることとかは、私が考えていたことでもあるけど、基本的なモチーフは綾斗の言葉。ライブのMCなどで、いきなりすごくいいこと言うじゃないですか。そういうのを入れ込んでいこうと思ったんです。だから、やっぱり作詞は綾斗なのかな。

Natsuki いやいや(笑)、綾斗を見て感じたAAAMYYYの歌詞でしょ。郭熙が山を見て山水画を描いたのと一緒。

全員 (笑)。

ーコロナ以降、アートのあり方みたいなものは変化していくと思いますか?

小原 もっと生活に根ざしたものになっていくんじゃないですかね。基本的に、アートは生活と隣り合わせのものだと俺は思っていて。今回コロナによって生活スタイルが大きく変わったわけだから、自ずとアートの形も変わっていくと思う。こういう時代だからこそ、それがより価値を持つものになるといいなと思います。


Photo by Genki Ito for Rolling Stone Japan

 

「死」は無限の創作テーマ。終わらない3人の会話
 
ーAAAMYYYさんがTempalayの正式メンバーになって2年半くらい経ちます。ベースレスという編成、この3人だからこそ生み出し得るアイデアやクリエイティヴィティがたくさんあると思うのですが、その辺りは今どんなふうに考えていますか?

小原 本当にこの3人は「合わない」と思うんですよ(笑)。普段聴く音楽もルーツも全く違うし、趣味もバラバラ。であるが故に、こういう楽曲ができるのかなともいえる。めぐりめぐって今の形態というか、精神状態にもなっている気がしますね。なので、もう今からメンバーを増やすとか減らすとかできないんじゃないですかね。まあ、統率を取る人がいてくれてもいい気はするけど。

Natsuki でも、それも申し訳ないよね。これから加入する人がもしいたら、きっとその人がバランサーにならざるを得ないというか。

AAAMYYY あははは(笑)。

小原 もともとメンバーだった人(竹内祐也。2018年6月に脱退)が、その役をしてくれてはいたんですよ。その人がいなくなって背骨が抜けてしまったみたいな(笑)。

ー軟体動物のように(笑)。

Natsuki 流れもありますよね。そもそもAAAMYYYはサポートとして、1stアルバムのツアーのときにはすでにいたので、ずっと4人でやってきたような感じだった。で、AAAMYYYを加えて4人組になろうと思ったときに、いろいろあって1人抜けて3人になったという経緯なんです。結局、3人バンドから3人バンドになるという(笑)。だから、最初から意味があって3人組になろうと思ったわけじゃないんですよね。

ーAAAMYYYさんは、この2年半で立ち位置の変化のようなものはありますか?

AAAMYYY 加入当初と比べると、スタンスは大きく変わりましたね。それこそバランサーになろうとしていたというか、「いかにこのバンドをうまいこと進めていくか?」みたいな、謎のタスクを自分で勝手に課していて(笑)。演奏に関しても、「Tempalayっぽくなければ」「ヤバイ音でなければ」みたいな気持ちがあったんですけど、今は全くなくなりました。むしろ、そういう思い込みは邪魔だったなあって思っています。それこそコロナ期間中にいろいろ考える機会があって、そこで気持ちが大きくシフトしたんです。同時に、そのスタンスでずっとやってきている他の2人をすごいなあと改めて思いましたね。

ーまだしばらくはコロナが続きそうですが、そんな中でTempalayはどんな展開を考えていますか?

小原 うーん、コロナについては考えても仕方ないので、今は楽しいことしかあんまり考えていないですね。今年はツアーもやりますし。まだギリギリ許してるかな、何をか分からないけど。でも、この状態がこのまま続くようなら、いよいよという時が来るでしょうね。「辛抱たまらん」ってみんなが、国民が、人間がなったらどうなるか分からない。日本はまだ全然大丈夫だと思いますけど。

Natsuki さっきのアートのあり方の話にもつながるんですけど、自分にとっては「作ること」がセラピーみたいなものなので、今はもう「自分のため」と思って音楽を作り続けています。「誰かのため」みたいに、今はなかなか考えられないから、まずは自分を納得させたいです。

AAAMYYY  Natsukiの言う「音楽を作ることがセラピー」って本当にそう思います。私自身は『ゴーストアルバム』の制作があったから、去年はなんとか命が繋がったという気持ちなんですよね。いつもアルバムを作り終えた後、こうやって3人揃ってインタビューをすることで綾斗やNatsukiが考えていることが分かるんですけど、今日の最初に綾斗が言った「メッセージはない」「伝えたいことはない」というのが一番の救いでした。「メッセージを込めたものをやらなくていい」というスタンスが、私もやっと理解できたというか。自分を音楽に投影することができるかなという気持ちが、今作を作ることでより高まった気がします。これからも自分が納得のいくもの、本当にかっこいいと思える音楽を作り続けたいですね。

ーところで、さっき話していた綾斗さんの死生観の話、NatsukiさんとAAAMYYYさんはどう思います?

Natsuki 「生と死は、どっちの側に立つかだけの話」という考え方ですよね。俺は綾斗の言いたいこと、「分かるな」と思っちゃうんですよね。前のインタビューで言ってた「死に強烈に惹かれる」という感覚も、みんな多かれ少なかれ持ち合わせていたからこそ反響が大きかったんじゃないかな。確かに「死」は、特殊なようですごく身近にある。絶対に向こう側は跨げないんですけどね。実際のところ死後の世界がどうなっているのか、生きている側にいたら分からない。全く未知で、いくらでも想像できるからこそ「死」は永遠のテーマだし、こんなに面白いんだろうなって思います。

AAAMYYY 私も基本的には綾斗とNatsukiに同意というか。ただ、その「死」を愉快に捉えている綾斗の感覚は面白いなあと思いますね。怖がってもいるのだろうけど。

Natsuki でもAAAMYYYもさ、Netflixで映画観て妄想するタイプじゃない?(笑)。だから楽しんでいるようにも見えるけど。

AAAMYYY 確かに(笑)。たとえば、自分が死んでも自分じゃ分からないわけじゃないですか。死んだかどうかは自分以外の誰かが決めることって、なんか変だなあとは思ったりする。
小原 なるほどね。つまり自分が死んだってことは、自分では認められないわけか。……ん、どういうことだ、もう死んでるかもしれないってこと?(笑)

Natsuki でもそれって絶対分からないわけじゃん。「無」なんだから。

AAAMYYY きっと、この意識のまま向こうの世界に行けるわけじゃないと思うんだよね。輪廻にしても、もしこの意識のまま生まれ変わったらそれが分かるけど、そんな人いるの?って思う。

小原 俺、ずっと小さい頃から思っていることがあって。人って死ぬじゃないですか。死んだら「無」になると言われていますよね。でも寝ているときも「無」の状態になって、起きたから前の日の記憶を思い出して生きているわけですよ。要は「一回死んでいる」ということになる。じゃあ、死んだときに「無」になって記憶が全部なくなるのに、なんで今の俺には記憶があるんだろう?って思うんですよ。

AAAMYYY ……ん?

小原 そう、この話をすると必ず「ん?」って顔をされる。

Natsuki これ、マジ答えが出ない! だからこそ一生話していられるんだけど(笑)。

Edited by Yukako Yajima
Styling by Kan Fuchigami
Hair and Make-up by Katsuyoshi Kojima(TRON)

<INFORMATION>


『ゴーストアルバム』
Tempalay
ワーナーミュージック・ジャパン / unBORDE
発売中

1.    ゲゲゲ
2.    GHOST WORLD
3.    シンゴ
4.    ああ迷路
5.    忍者ハッタリくん
6.    春山淡冶にして笑うが如く
7.    Odyssey
8.    何億年たっても
9.    EDEN
10.    へどりゅーむ
11.    冬山惨淡として睡るが如し
12.    大東京万博


『ゴーストアルバム』(アナログ)
2021年6月23日(水)発売
ワーナーミュージック・ジャパン / unBORDE
定価:¥5,500(税抜価格:¥5,000)
形態:LP
 
収録内容:
[Side-A]
01. ゲゲゲ
02. GHOST WORLD
03. シンゴ
04. ああ迷路
05. 忍者ハッタリくん
06. 春山淡冶にして笑うが如く
 
[Side-B]
01. Odyssey
02. 何億年たっても
03. EDEN
04. へどりゅーむ
05. 冬山惨淡として睡るが如し
06. 大東京万博
 
▼購入URL▼
・amazon.co.jp
https://www.amazon.co.jp/dp/B092VSS1FY
 
・楽天BOOKS
https://books.rakuten.co.jp/rb/16720186/
 
・TOWER RECORDS
https://tower.jp/item/5188448
 
・ディスクユニオン
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008300277
 
・HMV
https://www.hmv.co.jp/product/detail/11808324
 
・TSUTAYA
http://shop.tsutaya.co.jp/cd/product/4943674337156/

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