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BiSHモモコグミカンパニー、YouTuberパーカーと語った「ぼっち」の哲学

Rolling Stone Japan / 2021年5月19日 18時0分

左からモモコグミカンパニー、パーカー(Photo by Kana Tarumi)

BiSHのモモコグミカンパニーによる、インタビュー&エッセイ連載「モモコグミカンパニーの居残り人生教室」。10回目は、ぼっち系YouTuberで現役大学生でもあるパーカーさんがゲストです。

こんにちは、BiSHのモモコグミカンパニーです。今回は、YouTuberとしても活躍する現役大学生のパーカーさんとお話をしました。コロナ禍になり、一人でいることを突き付けられた人は多いのではないでしょうか。かく言う私もその中の一人でした。もともと一人はさほど苦痛ではない私ですが、自粛期間中、来る日も来る日も一人きりで過ごす毎日に鬱々とした気持ちを抱えながら過ごしていました。そんな中、ぼっち系YouTuberとして活動するパーカーさんの動画をみて、一人で過ごす何の変哲もない毎日でもちゃんと自分の生きた証なんだと、救われる気持ちになったのを覚えています。一人でも、自分らしく、納得して自分の道をしっかり歩いていくヒントを沢山もらえました。

モモコ:きっかけはパーカーさんが書かれた本(『ひとりの時間が僕を救う』)だったんです。「ひとりの時間が僕を救う」っていうタイトルに全てが込められてるっていうか。一人の時間って、本当は恥ずかしいとか寂しいとか結構ネガティブな、それこそ「一人ぼっち」とかっていう表現になっちゃうと思うんですけど。それが逆に自分を救ってくれるんだって。私も一人の時間が大切だと思ってる人間なので、本をきっかけにパーカーさんの動画を見始めた感じです。

パーカー:ありがとうございます。BiSHに関しては、きれいな感じと泥臭い感じのバランスが絶妙でいいなって思っていて。ミュージックビデオを見ていると、めちゃくちゃ 激しい感じもありつつ、すごくキラッとした部分もある感じがして。新しいというか不思議な、今まで見たことがないような気持ちになりました。

モモコ:うれしいです。ありがとうございます。学生や大人でも、一人でいることに寂しさを感じたり、恥ずかしさを感じたりする人っていると思うんですけど、パーカーさんが一人でもいいやと思えたきっかけとかってあるんですか?

パーカー:高校ぐらいまではそんなに一人でいることとかも、一人でいるっていう発想自体がなくて、高校の終わりぐらいでようやく「そもそもずっと人と一緒にいて、そこに合わせている自分は本当の自分なんか?」って、自我の目覚めみたいなのが高3の終わりぐらいに訪れたんです。タイミング的にはめちゃくちゃ遅いと思うんですけど、ようやくそこで本当の自分を認識して。

モモコ:きっかけみたいなのはあったんですか?

パーカー:これっていうきっかけは浮かばないんですけど、ちょっとずつ変わっていったのかなって。中学校の時はあんま何も考えずレールに沿って生きてたんです。でも高校の時の勉強で、言われたことをやるんじゃなくて、自分で考えて実行して結果を出すという体験をしたんですよ。それを通じて、ちゃんと何をするのか考えて自分の人生は自分で決めなきゃいけないんだなっていう風に意識が変わっていったのかもしれません。

モモコ:そうだったんですね。


動画を通じて皆と共有する「一人の心地よさ」

パーカー:僕も初めは一人って確かに恥ずかしいし、そもそも一人になるって発想とかもなかったんですけど。ただなんだろうな、そもそも人と喋ってても楽しいと思う瞬間が少なかったりして、それだったら会話してる時間、大学の勉強をしたらもっと自分の世界が広がるんじゃないかと思って。

モモコ:今も思ってたり?(笑)

パーカー:(笑)人と話すことが嫌いなわけではなく、何人かで固まって「彼女欲しい」とか話してたりするのが本当に苦手で。だったら一人でいるほうがいいなっていうのは思ったりしますね。

モモコ:一人で寂しいなって思うことってあんまりないんですか?

パーカー:それはないですね。昔は多分あったのかもしれないですけど。

モモコ:パーカーさんの動画を見ていて、すごい温かいチャンネルだなぁと思ったんですよ。ぼっち系なのに全然ぼっちの悲壮感みたいなのがないなーっていうのがあって。それってチャンネルを見てくれる視聴者の方とかも関係してるのかなって。

パーカー:ああ、確かに。僕は単に動画を上げるだけなんで、(視聴者の方と)直接会ったり関わったりってことはないんですけど、コメント欄を通じていろいろ知ることができるので。この動画は何回再生されたっていう数字だけじゃなく、実際のところどういう風に思われたのか、そういう感想を知ることで「見てくれる人がいる」という実感を得られます。

モモコ:コメント欄を見るとパーカーさんに対するツッコミが多いですよね。普通に撮ってるだけって本人は思ってるかもしれないけど、ツッコミも含めて面白い。コメントとセットで完成というか、コメント欄も見て楽しめるチャンネルだなって。傍から見てる感じだと、パーカーさんと視聴者さんとの関係って、BiSHのようなグループにも通じるところがあるなと思いました。しっかりチャンネル登録して、動画が更新されたらすぐにチェックしに行くみたいな。ファンレターとかもらったりするんですか?

パーカー:ファンレターとかはないんですけど、更新した瞬間に見に来てくださる方はいますね。些細な変化についてもコメントしてくれるので、今自分ってこういう感じなんだって捉えるきっかけにもなったりしてます。

モモコ:そこで気づくみたいな。

パーカー:はい。そういう意味では助かってるというか、ハッとさせられたりしますね。


Photo by Kana Tarumi



誰かのためにではなく、自分のために

モモコ:他の方の動画と自分の動画を比較したり、それこそ数字を気にしたりすることはありますか?

パーカー:あります。ネガティブな意味ではなく、凄い人の動画を見て自分ももっと頑張らなきゃアカンなとか、今いるところから引き上げてもらうために、敢えて別の動画を見たりすることは多いですね。続けることで成長していくのが一番楽しいので、逆に成長が鈍化していくと、やっぱり悲しくなってくるので。

モモコ:視聴者さんのためというよりは、自分のためにやっていると。

パーカー:そうですね、人のためって言えるほどの段階にはまだ達してないと思います。もちろん見て頂けるのはありがたいですし、ポジティブな影響をいろんな人に与えられたらいいなと思うんですけど、あくまでも自分がまず頑張らないと。

モモコ: 私は自分のためにやるっていうのがすごく苦手なんですよ。ライブとかで大舞台に立っていると、その場にお客さんがいてもいなくても、いろいろ意識してしまう。配信ライブでも画面越しにたくさんの人が見てるって想像するだけで、どんな顔していいかわからないし、面白いこと言わなきゃとか、ちゃんと歌わなきゃとか、間違えたらダメだとか、考えすぎて空回りしてしまうことが多い。だから自分のために頑張れるっていうのは、本当に凄いと思います。

パーカー:でも僕も一貫して自分のためにやってきたわけではなくて、外からの見られ方をすごく気にする時はあります。最近好きな言葉があって「祝福できないなら、呪うことを学ぶ」っていうので、どういうことかと言うと、人のために祝福するのはすごくいいことじゃないですか。でもいい人を演じるために敢えてそういう選択をして、本来の自分を失ってしまうくらいやったら、めちゃくちゃ自己中心的に生きた方がいいんじゃないかっていう。

モモコ:あ~、すごく刺さりました(笑)。

パーカー:いい人だと思われたいっていうか、道徳的に正しいことしなきゃいけないっていう強迫観念みたいなのを持ってたんですけど、最近はそういうのを取っ払って、いかに自分のために生きるかが大事かなって。自分は本当にこれがしたいのかどうか、心の声を聞くことが大切だなって思います。


「正解の動画」とは?

モモコ:動画のコメント欄だけではなく、InstagramとかSNSでいろんな反応がわかるじゃないですか。自分のためにやって反応が悪い場合もあるだろうし、逆に視聴者さんに合わせた方が反応がいい場合もあると思うんです。そういう状況だと迷いが生じやすい気もするんですが、パーカーさんにとって自分の中の「正解の動画」ってどういう動画なんですか?

パーカー:いい動画って、大きな感動とかじゃなくても、相手に考えさせるというか、心を動かすものだと思うんです。それは動画に限らず本もそうだと思うんですけど。

モモコ:朝マックの動画(「朝マックすら注文できないコミュ障ぼっち大学生」)の再生回数、凄いですよね。



パーカー:再生回数が多くて、なおかついい動画ができたっていう時もあれば、再生回数多いけど、自分的にはあんまり……っていうものもあるので、数字を指標にするというよりは、自分なりの納得感の方が大事ですね。YouTubeに動画を出してる以上、数字があった方がいいのは間違いないんですけど。僕は人と喋ること、自分の考えを相手に伝えるのが苦手だから、こうして一人でやってるんですけど、モモコさんはBiSHで活動していてファンの方に自分の考えを伝えたりしなきゃいけない場面って出てくるじゃないですか。

モモコ:ありますね。

パーカー:そういう時って難しいなって思いますか?

モモコ:そうですね。歌でもダンスでもなんでも、何かを伝えるのってすごく難しい。6年やってきて、今もやっぱり緊張します。でも私は書くのが一番伝わりやすいなって思ったりします。

パーカー:モモコさんは書くのもそうですし、作詞もされてるじゃないですか。伝えるっていう意味でいうと、自分的には難しいなと思うポイントが二つあって。一つは伝える内容。そもそもそこにちゃんと価値があるかどうか、内容的にちゃんとしているかどうか。次にそれをどういう言葉選びで伝えるか、どんな表現だったら伝わりやすいかってことで。

モモコ:確かに。

パーカー:自分で本を書いた時はそのへんですごく悩みましたね。

モモコ:私の場合、本に関しては意外とスラスラ書けたものが多いんですけど、ライブの最後に話すときとかは、めちゃくちゃ時間がかかりました(笑)。3分以内に収まるように書いて、ボイスメモで自分の喋りを録って、それを聞き直して何度も練習したり……。あと私がパーカーさんの動画を見て思ったのは、すごくポジティブだなってことです。出来事の大小問わず、毎回面白い。ぼっちでただネガティブな感じだったら、たぶんそんなにみんな注目してなかったんじゃないのかなと勝手に思ってて。動画で料理や部屋の掃除をよくされるじゃないですか。その時も「失敗しても大丈夫です」ってよく言ってるなって思ってて。自分でポジティブだなとか思ったりしますか?





パーカー:自分はそもそも適当すぎる人間で、料理に関しても、作るのに失敗したり、めっちゃこぼしたり、汚したりしてもどうでもいいやと思っちゃうんですよね。あと、ネガティブになった時にそこからどうやって前を向けるかっていうのはすごく大事だと考えていて。自分が今どうしてネガティブなのかってことから逃げない。そこを頑張ったらむしろラクになるので。


Photo by Kana Tarumi



ぼっちをプラス思考に

モモコ:一人でいて楽しい時は一人でも楽しめるけど、落ち込んだ時に一人でいることって結構大変で。みんなは誰かと一緒にいるのに、自分は一人なんだとか、わりとネガティブ寄りの感情になってしまうけど、でもそういう時に、自分で自分を引き上げる力っていうか、ポジティブな方に持っていけたら、みんな一人でも輝けると思うんですよね。

パーカー:学生時代、人前に出て何かやろうと思ったりしましたか?

モモコ:全然ないです。私はクラスの人気者ではなかったし、特に何か注目されるような人間じゃなかったので。アイドルのオーディションに興味本位で行ってみたいなとは思ってたけど、自分がなるってハッキリ想像したことはなかったです。大学も周りは海外志向の人が多くて、みんな留学したりしていて、でも自分は留学に興味が持てなくて。その時に、ぼっちでもういいやと思ったんですけど、なんとなくオーディションを受けに行ったら、そのまま受かっちゃったみたいな。

パーカー:周りとは違う選択肢を取るってことに不安はなかったですか?

モモコ:あまりなかったのかな。むしろ周りの方がえらいと思ってて、そこについていけないからこそ自分は道を外してしまった感じがあるんですね。だから自分の人生、当時は普通に不安でしたけど(笑)。でもどっちに行っても不安だなっていうのがあって、そっちに行っても不安だから、もうどっちでもいいじゃん、自分の好きな方に行こうみたいな。面白そうな方を選ぼうって思いました。

パーカー:本にも書いてらっしゃったと思うんですけど、そこで一歩踏み出したわけですよね。僕も今、もっと挑戦しないといけないなって思っても、結局踏み出せないまま終わることも多くて、なのでモモコさんの本を読んで勇気が出たというか。

モモコ:ありがとうございます! パーカーさん、もう一つチャンネル作ったんですよね?

パ:はい。高校の時に、自分なりに勉強法を考えてやったのがいい経験になったっていうのを、伝えたくて。高校生とかに向けた勉強関係のチャンネルなんです。

モモコ:塾の先生もやってるんですよね。



パーカー:はい。単純に僕の経験だけで喋るんじゃなくて、現場を見るというと偉そうに聞こえるかもしれないですけど、もうちょっと詳しく高校生の勉強に対して向き合おうと思って。お手伝いみたいな感じでやらせてもらってます。

モモコ:えらいですよね。パーカーさんぐらいのYouTuberさんだったら働かなくても食べていけるんじゃないかと思うのに(笑)。それでも現場を見ようっていう姿勢が凄い。

パーカー:5年後とか考えた時、もっといろいろ自分でもできることを増やしていかなきゃいけないし、まだまだ課題は山積みです(笑)。頭で考えることと、実際に作ってそれがちゃんと良いものになるっていうのって、難易度がまったく違うじゃないですか。

モモコ:確かに。私もBiSHでステージに立つまでは、別に出来るっしょ!って思ってたんですけど、いざステージに立ったら全然できなくて。ステージに出る側にならないとわからないこととか、歌える・踊れる以外でも人に負けないようにする力とか、メンタルの持ちようとか、いろんな要素が必要なんだなって気がついたんです。パーカーさんが言ってるように、頭で考えてできそうだなって思っても、やっぱり行動に一歩でも踏み出さないとわからないですよね。


Photo by Kana Tarumi



ファンと視聴者の存在

パーカー:僕は感覚で何でもやりたい方なので、モモコさんのように作詞をしたり本を書いたり、自分が考えてることを誰かに届けるために言葉に変換できたりするのって凄いと思っていて。僕は逆に自分のためにしか考えてないから、言語化とかせずに、感覚のまま自分だけで消化してしまう。

モモコ:パーカーさんには視聴者さんという味方がいっぱいいるじゃないですか。だからそこにいっぱいヒントが隠されてそう。

パーカー:ヒントですか?

モモコ:自分はここを伝えたかったけど、別のポイントにみんな注目するんだなとか、私だったらいろいろ発見がありそうだなと思って。逆にそういうのを気にせず我が道を行くのがパーカーさんのいいところだと私は思いますし、そこはブレずに、うまく取り入れていったらいいのかなと。

パーカー:今、ヒントを頂きました。ファンレターがいっぱい届くような状況で、モモコさんは自分を応援してくれる人たちとの距離感ってどう考えてますか? 本にも書いてありましたが。

モモコ:「この人はすごく熱意を込めて応援してくれるから」って、その人にばかり親しくするのも違うし、ファンの方とはみんな平等に接したいです。でもパーカーさんで言うと、50万人以上もチャンネル登録者数がいるんですよね。

パーカー:はい。ただ、僕の場合は応援してくれる方にこちらから何かしてあげることはできないので、そういう意味では無責任というか、距離感を考えることはあまりないかもしれないです。

モモコ:私の仕事はファンの方がいなかったら絶対に成り立たないことだし、楽しみ方は人それぞれでいいし、自由に楽しんで欲しいなとは思ってます。BiSHとモモコグミカンパニーを自分の好きなように楽しんでと。

パーカー:そうなんですね。傍から見てて、そのへんどういう風に考えてるんだろうって思っていたので、めちゃくちゃ面白い回答が来てよかったです! ありがとうございます!


Photo by Kana Tarumi

=あとがき=

自分らしくいられるのは難しい。人前に立ち、大勢の人に見られているときはもちろん、一人で過ごす時間だって”自分らしく”は難しい。学生時代、一人でいることは恥ずかしいことだと思っていた私にとって、一人でも生き生きしているクラスメイトがカッコよくて眩しかったのを覚えています。人と関わることは人生において不可欠で大切なことだけれど、それと同じくらい、自分だけの道を自分なりに納得して進むためにどこかのタイミングで周りと距離をとってみて、自分の本心を聞き出すことは大切なのだと思います。

パーカーさんは著書『ひとりの時間が僕を救う』の中で、”誰かに合わせる生き方は、自分のためにならないのだ”と書いています。今年も春になり新学期が始まりました。周りに合わせる自分に疲れてしまったら、時には自己中心的な自分を許して少しわがままに生きてみてもいいのかもしれません。

【写真を見る】BiSHモモコグミカンパニーと「ぼっち系YouTuber」ことパーカー


Photo by Kana Tarumi

パーカー
1999年生まれ。大学生。2019年より、ぼっち大学生のリアルな日常動画をYouTubeに投稿。エッセイ『ひとりの時間が僕を救う』(KADOKAWA)発売中。
パーカー / 大学生の日常
https://www.youtube.com/channel/UCBOW9JS4366gwX_rFFgZNTw

モモコグミカンパニー(BiSH)
https://twitter.com/gumi_bish
”楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバー。結成時からのメンバーで最も多くの楽曲で歌詞を手がける。読書や言葉を愛し、独特の世界観を持つ彼女が書く歌詞は、圧倒的な支持を集め、作詞家として業界の評価も高い。2018年3月に初の著書『目を合わせるということ』を上梓。2021年5月現在第16刷と異例のベストセラー。2020年12月には第二弾エッセイ『きみが夢にでてきたよ』を発表。BiSHとして、2020年12月24日に332日ぶりとなる有観客ワンマン「REBOOT BiSH」を代々木第一体育館にて開催。このワンマンの模様が完全収録された映像商品を5月26日に発売する。そして、5月14日よりスタートの超豪華12組のゲストを迎えるBiSH初の対バンツアー「BiSHS 5G are MAKiNG LOVE TOUR」や5月25日に名古屋での初アリーナ公演「BiSH SPARKS "This is not BiSH except BiSH" EPiSODE 4」などの開催も決定。
https://www.bish.tokyo/

Edited by Takuro Ueno(Rolling Stone Japan)

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