性的暴行で訴えられたマリリン・マンソン、元アシスタントが明かす「尊厳破壊」のやり口
Rolling Stone Japan / 2021年5月23日 6時45分
マリリン・マンソンの元アシスタント、アシュリー・ウォルターズさんが、性的暴行、性的殴打、性的ハラスメント、故意の精神的苦痛の賦課(ふか)など複数の罪で、マンソンと彼が運営する会社Marilyn Manson Records, Inc.を訴えた。
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ウォルターズさんはマリリン・マンソン(本名:ブライアン・ワーナー)から性的不正行為を受けたと名乗り出た女性十数人の1人。また法的手段に訴えた女性としては、先月の『ゲーム・オブ・スローンズ』の女優エスメ・ビアンコに続き2人目。
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マンソンと出会った当時、ウォルターズさんは新進気鋭のフォトグラファーだった。マンソンはアーティスト同士コラボレーションしようと提案。訴状によれば、マンソンは2010年3月にソーシャルメディアで接触し、彼女の写真を絶賛した。2カ月後、彼は彼女を自宅に招き、彼女の写真を撮影して服を脱ぐようそそのかした。その後マンソンは彼女をベッドに押し倒してキスを迫った後、彼女に噛みついて、彼女の手を無理やり下着の中に押し込んだという。翌日彼はショートメッセージで再度コラボレーションの話を持ちかけた。彼女は暴行を水に流すことにした。
その後マンソンはプロに徹し、ウォルターズさんは彼のためにセミヌードになることにも同意した。その際、彼が言い寄ってくることはなかった。だがほどなく怪しげな雰囲気になったと彼女は主張している。というのもマンソンから、自分の専属フォトグラファーになってほしい、ただし下着にナチスのジャケット姿でビデオに出るというオーディションをクリアするのが条件だ、と言われたからだ。
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彼は「女の子が凌辱された直後のような姿をしているのが好きだ」と彼女に語り、「純粋に仕事のため」と言って彼女の乳首を赤く塗った。ビデオの撮影中、共演者の男性がパンツのチャックを下ろし、彼女が横たわるベッドのシーツの下で陰部を触っていたが、マンソンから手を貸してやれと命じられたそうだ。彼女がその場を立ち去ろうとすると、共演者は彼女を壁に押し付けた。マンソンは、共演者が彼女にそそられている、気に入った、と言った。ウォルターズさんも後になって知ったが、マンソンは共演者に、彼女と寝てもいいと信じ込ませていたそうだ。
訴えによれば、マンソンは2010年8月にウォルターズさんを個人アシスタントとして雇い、給料としてフォトグラファーとしてのギャラの倍を払う、と言った。彼はひどい癇癪もちで、家具や電化製品や調度品を壊しては、彼女に片付けさせていたという。片づけに時間がかかりすぎると、彼女を叱りつけることもあった。家族や友人に会うために休みを取ることも許されなかった。
コカイン漬けで長時間働かせる
その一方で、彼は彼女を友人たちに無理やりあてがった。「2010年9月またはその前後、ロサンゼルスで行われたSpike TVのScream Awardsで、(マンソンは)酩酊状態でウォルターズさんを男優の膝の上に載せ、『ご自由に』と得意げに言った」と原告は訴えている。「その男優はさっそくウォルターズさんにキスし、彼女をずっと膝の上に座らせた。同様に被告は、業界で影響力を持つ友人や関係者にもウォルターズさんを差し出した」。さらに翌月には、マンソンは彼女を映画監督にあてがった。その監督は彼女の身体をさんざんまさぐり、彼女の口を覆った状態でスカートに手を差し込んだ。原告は2011年3月の出来事も詳しく説明している。マンソンは裕福なミュージシャンの言うなりになるよう彼女を説得。そのミュージシャンはマンソンの目の前で彼女を愛撫した。彼女が言うには、ミュージシャンはのちに「いくらで」彼女を譲ってくれるか、とマンソンに尋ねたという。
マンソンに雇われていた間、ウォルターズさんはマンソンが「若い女性ファン」の服をはぎ取り、相手が泣き叫ぶまで鞭打って暴行する映像を何度となく見させられた。映像の中でマンソンは相手に銃を向けていたという。撮影当時、ファンはまだ未成年だったとウォルターズさんは主張している。
ウォルターズさんは一度クローゼットに身を隠したことがあったが、マンソンはドアをたたき壊したそうだ。ギャングとつながりがあると言って、人殺しもできるんだぞと脅したりもした。訴えによれば、マンソンは従業員にナチスの装身具をつけさせて無理やりビデオに出演させたり、脅迫まがいの悪口や暴言を吐いたりした。またゆすりのネタはないかと他人のコンピューターを詮索したこともあった。ウォルターズさんに皿を投げ、怒りに任せて彼女を押し飛ばしたこともあるという。訴状によれば、複数の女性をレイプしてなんのお咎めも受けていないことを自慢すらしたそうだ。
ビアンコや女優のエヴァン・レイチェル・ウッドをはじめとするマンソンの恋人が客室のバスルームに身を隠していた時には、食事や飲み物を持っていった、とウォルターズさんは振り返る。マンソンが彼女たちに暴行する現場にもいた。一度など、マンソンはウッドに小道具の骸骨を投げつけたが、あまりにも強く投げつけたので、ウッドの腹部にみみずばれが出きたそうだ。出張先では、マンソンは「しょっちゅう女性ファンを堕落」させていたという。彼女の記憶によれば、マンソンはウィーンで若いファンと性行為し、彼女の処女を奪ったと豪語した。
出張のたびにマンソンは、コカインなどのドラッグを彼女の荷物に隠した。訴えによれば、空港警備員の注意を引きかねないので、彼女は抵抗することができなかったという。マンソンは2011年7月、当時の恋人だったビアンコとウォルターズさんが一緒にいたのを知り、彼女を解雇した。
マンソンはたびたびウォルターズさんを48時間ぶっつづけで働かせていた。訴えによれば、自分が写真を撮る間、彼女を椅子の上に12時間ずっと立ちっぱなしにさせたこともあった。その間、彼女はコカイン漬けにされていた。8月には、ウォルターズさんが自分のキャリアの邪魔をしている、と言って言葉と暴力で脅した。隣人が電話を盗聴していると思い込み、屋根のワイヤーを切ってくれと彼女に頼んだこともあった。
マンソンを恐れて暮らしていた
彼女が言うには、最終的に解雇されたのは2011年10月だったが、マンソンは彼女がアート作品を盗んだと主張して、その後も彼女に嫌がらせを続けた。Facebookのアカウントをハッキングされた、とも彼女は主張している。
ウォルターズさんは、性的ハラスメント、性的暴行、性的殴打、故意の精神的苦痛の賦課など6件で訴えを起こしている。性的嫌がらせをしたマンソンは性差別に関するカリフォルニア州民法の違反にあたり、また市民権の行使を妨げたことは恐喝・脅迫から市民の権利を守る別のカリフォルニア州民法、通称Bane法にも違反している、と彼女は主張している。
「このような恐ろしい経験を告発するという英断を下したアシュリーの代理人を務めることに、特別な思いと栄誉を感じています」と、彼女の弁護を担当するヴァリ・ケイン&ヴァニーニ法律事務所は声明を発表した。「彼女が今回の訴訟で加害者の責任を追及するのは、他の女性たちが同じ目に合わないようにするためだけでなく、日ごろから権力と影響力を乱用する人々の手にかかり、トラウマを負った他の被害者に力と勇気を与えるためでもあります。近年、アシュリーやマリリン・マンソンの被害者の皆さん方のおかげで、被害者が名乗り出るには意思と時間を要することを議会や裁判所も理解するようになりました。暴行に耐え忍んだ末に、自分たちの声を聞き届けてもらうために戦うアシュリーやその他被害者に心から感服いたします」(マンソンの弁護団はいずれの暴行容疑も全面的に否定している)
ウォルターズさんは過去に支払われるはずだった賃金の遡及支払いと、額面不詳の損害賠償を請求している。またマンソンが所有する彼女の写真や、書面による同意なく入手した他の女性たちの卑猥な写真の処分も要求。さらに、マンソンとMarilyn Manson Recordings Inc.の従業員に対しては、反性的ハラスメント・反性的暴力のトレーニングを受けるよう求めている。
今年初め、ウッドはマンソンを暴行で非難した。彼女は以前ビアンコと協力して、家庭内暴力の被害者の権利を拡大するPhoenix法の制定にも尽力している。ビアンコは今年4月にマンソンを告訴。複数の女性たちが名乗り出たのをうけ、マンソンとつながりのあるエンターテインメント業界はこぞって彼との関係を断ち切った。彼のレーベルLoma Vistaは契約を解除。マネージャーだったトニー・シウラ氏も袂を分かった。ブッキングエージェントのCAAは、代理人契約の打ち切りを発表。TV番組『Creepshow』と『American Gods』は、予定されていた彼の出演を取り消した。
マンソンは今年2月に声明を発表し、女性たちの非難は「事実をひどくゆがめている」と発言した。「私の親密な関係はつねに、志を同じくするパートナーとの完全な同意に基づいていた」と本人。「他の人々が過去を誤ってとらえようとする理由はさておき、それが真実だ」
ウォルターズさんはビアンコの主張に関するニューヨーク誌のインタビューで、マンソンを恐れて暮らしていた、と語った。「みな人格を奪われていました」とウォルターズさん。「誰もが四六時中、ビクビクしながら過ごしていました」
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