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Adoが語る、歌い手の衝動「孤独は悪いものではない」

Rolling Stone Japan / 2021年5月24日 17時45分

Ado

国民的ヒットソングが生まれにくいコンテンツ過多時代にもかかわらず、”うっせぇうっせぇうっせぇわ”というフレーズを多くの人が口ずさむ社会現象を巻き起こしているAdo。

4月27日にリリースした新曲「踊」もYouTubeにアップされたミュージックビデオがたった1週間で1000万回再生を突破するほどの人気を集めており、ビルボードチャート(Hot 100)のトップ10には「うっせぇわ」と「踊」の2曲がランクインしている。単曲のヒットにとどまってしまうケースも多い中、「うっせぇわ」で世間を席巻し始めたAdoは、「Ado」というアーティストとしての存在が支持を集め巨大なポップスターになりつつあると言えよう。

【動画を見る】Adoの新曲「踊」ミュージックビデオ

「踊」を手掛けたのは、作曲・編曲GigaとTeddyLoid、作詞DECO*27という最強布陣。「うっせぇわ」は刺激的な言葉とメロディが楽曲の中毒性を担っていると言えるが、ダンスミュージックに仕上がった「踊」はリズムや楽曲の複雑な展開から中毒性が溢れる1曲だ。さらに、DECO*27による言葉遊びがふんだんに散りばめられた歌詞は、一見パーティシーンを描いているように読めるが、Adoの音楽活動や心情の本質を描いているようにも捉えることができる。

”うっせぇうっせぇうっせぇわ”と歌い叫ぶAdoは、実際、何に対して怒りを抱いているのか? その答えと、Adoの喋り方から滲み出る言葉や行動に対する責任感の強さや真面目さは、あなたが抱いている”うっせぇわ”のサビのイメージとはまったく異なるものかもしれない。

―「踊」……めちゃくちゃいい曲だなと。

Ado (笑)。ありがとうございます。

―Gigaさん、TeddyLoidさん、DECO*27さん、3人とも今Adoさんに曲を書けることがすごく嬉しいんだろうなというのが曲から伝わってくるんですよね。海外のサウンドやビートをいち早く日本で取り入れることと、日本のよき文化を海外へ発信していくことに意識的であり続けているTeddyLoidさんとGigaさんが、今日本で最も勢いと個性がある歌い手のAdoさんの声と存在を使って何を作るべきかを考え抜いて、挑戦的な姿勢も持ちながら緻密に作り上げられた楽曲だなと。

Ado そうですね。激しめのダンスミュージックとか、盛り上がるような音作りとか、そういう曲も私は好きでよく聴くんですけど、まさか自分が歌うとは思っていなかったので、すごく貴重な経験だなと思っています。


プレッシャー以上に感謝の気持ちが大きい

―J-POPやボカロの文脈というよりも、今世界中の人の心を掴んでいるK-POPが得意とするビートやベースラインの組み方、音色の選び方、展開の仕方、オリエンタル感を取り入れた上で、DECO*27さんというボカロPの頂点と言っても過言ではない作詞家が歌詞を書いていて、あらゆる文化を1つに編み込んで日本のメインストリームへ投げ放った曲だなと感心しています。

Ado 私も聴いたときに、EDMっぽいノリノリな曲になりそうだなと思ったんですが、たしかに音作りとか入っている音がK-POPっぽいなとは思いましたね。

―Adoさんはご自身のルーツとしてまふまふさん、そらるさん、りぶさんなど歌い手の名前をよく挙げられていますが、K-POPも聴かれるんですか?

Ado K-POPも聴きますね。特に聴くのはBLACKPINKさん、RED VELVETさん、BTSさんとか。あと、CLCさんというグループも拝聴します。

―「踊」はラップもあれば合唱パートもあって、レコーディングの際に歌うのが大変だったのでは?

Ado 正直、大変でしたね。「うっせぇわ」も「レディメイド」も「ギラギラ」も大変だったんですが、「踊」もとっても大変でした。「踊」は声を重ねる部分が多くて、特にサビに入ったときの”Woah”が一人で7、8人分くらいの声を入れなきゃいけなくて、しかもそのコーラスが曲の中で結構振られていたので、なかなか苦戦しましたね。







―「うっせぇわ」が社会現象とも言われるくらい、本当に老若男女に聴かれる楽曲になっている中で、Adoという歌い手に対して今どんな曲を書き下ろすべきかという点も、Gigaさん、TeddyLoidさん、DECO*27さん、それぞれ考え抜かれたと思うんですね。Adoさんは、今のご自身の状況や立ち位置に対して気負いする部分などないですか?

Ado もちろん、そう思うことも、ないとは言い切れません……が、こんなにもたくさんの方に私の歌声が聴かれていると思うと、もう本当に、気負いやプレッシャー以上に感謝の気持ちが大きいです。

―今作では、今までと違うAdoの一面を見せたいという気持ちもありました?

Ado そうですね。今までは、たとえば「うっせぇわ」だったら怒りとか、自分の心情を曲として伝える感じだったんですけど、今回は全体的にこれまでの3曲とは違っていて、自分の新しい一面がまた見せられたんじゃないかなと思ってます。「踊」は……なんて言えばいいのでしょう……元気で、激しくてノリノリで、クラブなどで使われるんじゃないかっていうくらいのEDMっぽい曲で。私は自分のことを陰キャだって言ってるんですけど(笑)、クラブはこんな引っ込み思案な陰キャが行くようなところじゃないと思いますし、そんなところで流れているような曲を陰キャが歌うっていうのは……「なんだこれは」というか(笑)。


自分が話してきたことが歌詞に表れてる

―Adoさんの中では、どんなパーティをイメージしながら歌われました?

Ado どんなパーティ……私、パーティを経験したことがないので(笑)。パーティやクラブというよりはライブ会場の盛り上がりを想像して歌いましたね。”踊りだせ 踊りだせ”とか煽ってる歌詞も、ライブでやったら盛り上がるんだろうなって。普段私は絶対にこんなこと言わないので(笑)、もうもはや自分の中では役の台詞みたいで、すごく新たな挑戦でした。

―「台詞みたい」とおっしゃいましたが、DECO*27さんが書かれた歌詞は、Adoさんが音楽活動に向けるモチベーションそのままだと捉えることもできると思いました。Adoさんが歌い手の活動を始められた初期の頃に、プロ意識が半端な歌い手たちのライブを観て、「自分は間違ってたのかな」とネガティブな気持ちになったというお話を他のインタビューで拝見したんですけど、それでも歌で自分を愛してもらえるようひたむきに開演準備をしてきて、昨年メジャーデビューという幕を開けたAdoさんストーリーや心情が、”半端ならK.O. ふわふわしたいならどうぞ 開演準備しちゃおうか 泣いても笑っても愛してね”というラインで描かれているなと。

Ado たしかにそれはありますね。”半端ならK.O.”っていうのは……そうですね。”なんだかな…ってつまんないこともあるでしょう”とかも。自分が経験してきたことや、自分が話してきたことが歌詞に表れてるのかなと思うところはあります。

―それに対して「なんだかな」って感じるのって、裏を返すと、Adoさん自身がすごく大事にしてることがあるからだと思うんですけど。Adoさん自身は、なぜ歌で本気で戦おうとしてるのでしょう。

Ado 自分が見てきた歌い手さんたちのようになりたいというモチベーションでここまできたのかなと思います。「歌い手になって自分も輝きたい」「このAdoという名前が輝いて愛されてくれたらいいな」という夢を持っていた昔の自分のために頑張ろう、というモチベーションもありますね。

―昔は、自信がなく、劣等感強いタイプでした?

Ado それは今もそうなんですけど、昔のほうがひどかったですね。特技と言えるものがなく、大して勉強も運動もできるわけではない、本当に根暗な人間だったので。自分が誇りに思ってる部分も本当は大したことないんじゃないかと思うときもあって、それゆえに自信を喪失していったんだと思います。でもネット上で声だけで魅了してる人たちを見て、「自分は何もできないけどこれならもしかしたらできるかもしれない、というか、やってみたい」と思えてから、自分を変えたい、抜け出したいって思ったんだと思います。


孤独を感じる部分は今も多い

―「踊」もそうですが、Adoさんの曲には「ロンリー」や「孤独」というワードが入っていることが多いですよね。孤独を抱えながら生きてきたという実感がありますか?

Ado そうですね、ありますね。孤独の種類はなんとも言えないんですけど。歌い手を始めたときも一人で、誰かがサポートしてくれたり一緒に活動してくれたというわけではありませんし、寂しいなって思うところもあったり。あとは、ありがたいことに今こうしていろんな方々に自分を見てもらえていますが、友人たちは自分と同じ立場にいるわけではないので、自分の具体的なことをすべて伝えようとしても難しいところがありますし。そういった面では、今、私は孤独だなって思う部分が結構あります。それは友人たちが悪いとかではないですし、ただ個人的な想いなんですけど。孤独を感じる部分は多いです。

―アーティストが抱える孤独感は特殊なものであるとも思いますし、でもどんな人間も、自分が内側で抱えている孤独は人に話してすべて理解してもらえるものではなかったりしますよね。先ほど「どんなパーティをイメージしましたか?」と聞いたのは、「踊」という曲は、リアルに人が集まるダンスフロアを表現してるだけでなく、Adoさんの曲の中や動画サイトなどの場で繋がることも描かれているなと思ったからで。

Ado そうですね。孤独でつらいと感じている人って私だけではないと思いますし、多分、いろんな孤独を感じている人が多いと思うんです。そういった方たちに孤独を共有する、といいますか。そういった気持ちを共有できるという意味では、孤独は悪いものではないのかなとも思います。

―Adoさんはこの春に高校を卒業されましたが、こうやってメジャーデビューして大人たちと一緒に仕事をするようになった今、社会に対するイメージや関わり方に何か変化はありましたか?

Ado 自分がいる立場って、多分、普通の社会人とは全然違うと思うんですけど。いろんな人に見られるようになったので、一つひとつの発言がすべて大事になってくると思っています。気をつけないと誰かをすごく悲しませたり傷つけたり怒らせてしまったりするなって。あと、いろんなメディアから世間にAdoの名前が出ていると思うんですけど、それって私一人の力ではなくて、周りにスタッフさんや応援してくださる方がいらっしゃるからなので、その人たちの顔に泥を塗らないように、その人たちを傷つけないように、ということはすごく心掛けています。


Adoが考える自分の強み

―正しい振る舞いばかりを意識してると、「うっせぇわ」の主人公みたいに窮屈になることはないですか?

Ado 窮屈になったとしても、行動に出したらすべて終わりですし(笑)。もちろんたまに「ああ大変だな」と思うところもありますが、自分の立場や周りのすべてが変わってしまったわけではなくて、身内や友人は自分が有名になっても今まで通り普通に接してくれているので、その人たちに救われてる部分はあります。なので特に窮屈に感じることはありません。

―これからどういう大人になりたいと思いますか?

Ado もうちょっと責任感を持ちたいです……(笑)。

―先ほどの発言からは十分自分の行動や発言に責任感を持たれているなと感じました(笑)。

Ado まだ甘えてる部分があるので(笑)。自分を甘やかさないようにしたいです。

―逆に、どういう大人にはなりたくないなと思いますか。

Ado 自己中心的にはならないようにしたいです。無意識に自己中心的な考えになってしまうことがあるので、そういうのはだんだんなくしていきたいですね。いろんな人に「10代なんてあっという間だよ」「20代前半はあっという間だよ」とか言われるんですけど、あっという間に過ぎていく中でそんな想いを抱えているのはまずいなと思い始めて、今の内に、幼稚な部分を直していきたいなと思っています。

―お話を聞いていると、「うっせぇわ」の主人公とは真逆くらいの発言だなと(笑)。

Ado あははは(笑)。でも「うっせぇわ」の歌詞に共感する部分はあるので。”つまみ易いように串外しなさい”とか”社会人じゃ当然のルールです”とか、そういったことは経験していないのでわからないですが、怒りという感情は自分にもあるので、自分が経験してきたことや思ったことと重ねて歌いました。

―それは、どういう怒りですか?

Ado 人に対する怒りもありますが、一番は自分に対する怒りですね。「なんで私こんなにバカなんだろう」「愚かなんだろう」って、そう思うところが多かったので。

―今も、自分に対する怒りは大きいですか?

Ado むしろそれしかないです。計画性がなくてギリギリに何かを提出するだとか、何も考えないでやって後悔するだとか、そういうことが多くて。「なんで直せないんだろう?」「なんでまだこうなんだろう?」って思う気持ちが大きいです。

―「うっせぇわ」のsyudouさんや、「踊」のGigaさん、TeddyLoidさん、DECO*27さん含め、やはりAdoさんは、声はもちろんそれ以外の部分でも音楽クリエイターを掻き立たせるものを持たれているなと思います。ご自身では「Ado」というアーティストの個性はどういったところにあると自覚されていますか?

Ado 自分の歌い方って、がなったり声色を変えたり特殊だと思っているんですけど。でもそれよりも、感情を剥き出しで歌う、怒りなら怒りの感情そのまんまにして歌う、というのが自分の個性のひとつなのかな。歌詞によって心情は変わるんですけど、とにかく心情のまま歌うのが自分の強みなのかなとは思います……が、ちょっと自分ではわかりません(笑)。

<INFORMATION>

「踊」
https://ado.lnk.to/odo

「ギラギラ」
https://ado.lnk.to/giragira

「レディメイド」
https://umj.lnk.to/ado_rm

「うっせぇわ」
https://umj.lnk.to/ado_usseewa

公式ホームページ
https://www.universal-music.co.jp/ado/





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