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Jay SomとPalehoundが意気投合、Bachelorで見つけた友情とブリーダーズ愛を語る

Rolling Stone Japan / 2021年6月8日 18時30分

バチェラー(Photo by Tonje Thilesen)

ジェイ・ソム(Jay Som)ことメリーナ・ドゥテルテと、ペールハウンド(Palehound)ことエレン・ケンプナーがスタートした新プロジェクト、バチェラー(Bachelor)によるデビュー作『Doomin Sun』がリリースされた。

本作は、カリフォルニア州トパンガに住宅を借りた2人がおよそ2週間かけて作り上げたもの。ビッグ・シーフ(Big Thief)の司令塔バック・ミークとジェームズ・クリヴチェニア(Dr)、チャスティティ・ベルト(Chastity Belt)のアニー・トラスコットら、彼女たちの友人やパートナーも時々顔を見せてはアルバム制作を手伝い、ピクシーズやブリーダーズ、コクトー・ツインズらへのオマージュがふんだんに散りばめられたソングライティングと、クィアネスや気候変動をテーマに取り上げつつもユーモア感覚に溢れた歌詞世界が印象的な良作に仕上がっている。

来る6月11日には、彼女たちがホストを務めるオンラインフェス「Doomin Sun Fest」が開催され、エイドリアン・レンカー(ビッグ・シーフ)やチャスティティ・ベルトはもちろん、ジャパニーズ・ブレックファストやジュリアン・ベイカー、コートニー・バーネットなど痺れるメンツが参加するという。そんな二人にプロジェクト結成の経緯やアルバム制作のエピソード、「Doomin Sun Fest」への意気込みなど聞いた。


左からペールハウンドことエレン・ケンプナー、ジェイ・ソムことメリーナ・ドゥテルテ(Photo by Tonje Thilesen)


─まずはメリーナにお礼を言いたくて。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、多くのバンドが来日をキャンセルする中、まさにギリギリのタイミングでジェイ・ソムの来日公演を敢行してくれましたよね。

メリーナ:こちらこそとても良い思い出になったし、アジアツアーの中で東京公演が特に印象に残っているんだ。大阪でのライブが終わってすぐに東京に移動したんだけど、ちょうどその日(2020年2月26日)に日本政府から規定以上の人数が集まる会場でのイベントの中止要請が出たんだよね。

私たちは予定通りライブをすることができたんだけど、お客さんが全員マスクをしていて、私もバンドメンバーもその光景に少し圧倒されてしまったのを覚えてる。でもみんな本当にいい人たちばかりで、礼儀正しくて、声が出せない代わりにたくさん拍手をしてくれて……。オープニングアクトのHomecomingsもすごく素敵なバンドだったよね。



─そこから今日まで、世界中の人たちがコロナ禍とそれに伴うロックダウンで大変な思いをしてきました。メリーナとエレンはロックダウンの期間、どのような過ごし方をしていましたか?

エレン:私はずっとギターの先生としてレッスンをしていたのと、あとはこのアルバムの制作に時間を使っていた。1年前はミックスをやっていた時期で、その作業で忙しくしていたし、残りの時間は1人でレコーディングスタジオに入って、プロデュースのスキルを上げられるように勉強したりもしてたよ。

メリーナ:私も同じような感じ。ほとんどずっと制作をしていたから、その関係で他のミュージシャンたちとオンラインで共同作業をしたり、あとはいつもよりたくさんTVを見たり。『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』にはまって、もうすぐ全シーズン見終わるところ(笑)。

エレン:私はかぎ針編みを始めたんだ。時間がたくさんあったから手を動かしたくなって。それに、これまで当たり前だったものの大切さにも気付かされたな、友情とかね。やるはずだったツアーができなくなってしまって、ツアーも当たり前にできるものではないんだなと痛感もした。

メリーナ:私はロックダウンになって、音楽作りを完全にやめてしまった時期があったよ。ただ、それを悪いことだとも思っていなくて、むしろ必要な時間だったと思ってる。日本でのライブのあと、ジェイ・ソムが予定していた他のライブは全部中止になってしまい、ものすごく忙しくなるはずだった2020年が一気に暇になってしまって。

でも今回に限らず、なにか悲しいことが起きた時って、その中にはなにかポジティブな要素があるものなんだよね。ジェイ・ソムの予定が全部なくなったことで、バチェラーにエネルギーを注ぐことができて『Doomin Sun』という作品ができたこともそう。そのことに意識を向けて、悲しいことに向き合い続けなくてよくなったしね。

エレン:私もロックダウンのおかげで、時間が手に入ったのはよかったと思う。アルバム制作の時、普段は予定の時間に間に合わせるために、急いだりしないといけない瞬間があるものだけど、今回は理想の音になるまでたっぷり時間をかけられた。オンラインで他のミュージシャンとつながることもできるから、コラボレーションもたくさんできたしね。

─2人がバチェラーを始めたのは、2017年にカリフォルニア州のサクラメントで対バンをしたのがきっかけだったと聞きました。その時はお互いどんな印象だったんですか?

エレン:私はもう一目惚れって感じ、友だちバージョンのね。好きなものもすごく似ていて、出会ってすぐに仲の良い友だちになっている未来が見えたな。あの日以来ずっと連絡を取り合って、自然な流れで今回のアルバムが実現した。以前からジェイ・ソムのファンだったから余計に嬉しかったよ。

メリーナ:仲良くなりたいと思っている人のことって、事前にネットストーキングしたくなるんだけど(笑)、エレンの場合もそうで、知り合ってすぐに彼女のYouTubeを全部見たんだよね。

エレン:(笑)

メリーナ:そしたら私が知っている人の中で、誰よりもギターがうまくて感動した。とにかく、私たちは特別な友情でつながっているし、このアルバムはお互いの音楽への愛があってこそ生まれたと思う。




─音楽を一緒に作るにあたって、友情はやはり大切なもの?

エレン:そう思う。もちろん、友情とか絆がない状態で音楽を作っているバンドはいるし、それで問題なければいいけど、やっぱり友情でつながっていた方がよりエキサイティングなものが作れると私は思ってるかな。友情が生み出すパッションとか刺激とかって、間に合わせで作れるようなものじゃないからね。このアルバムではそれが不可欠だったんだ。

メリーナ:私もそう思う。友情は、本当に本当に大切。今作のレコーディングのためにトパンガに家を借りて2週間滞在したのだけど、2週間って制作時間としては結構短くて。しかも「Sun Angel」以外、事前に全く何もできていない状態だったんだよね。そういう状態で何かをやる時には、相手に対する信頼がないと成し遂げられない。でもエレンとはしっくりくることが多くて、いろんなことを口に出さなくてもスムーズに進めることができたのは嬉しかったな。

─トパンガではどんな1日を過ごしていたんですか?

メリーナ:とにかくゆるくて(笑)、2週間という期間をプレッシャーに感じず自分たちのペースを大事にしながら作業できたよ。まず朝のスタートはゆっくりめで、朝ごはんを一緒に作ってからジャムセッションをしたり、音楽を聴いたりしつつゆっくり作業を始めて。日によっては、別々に作業をしたりもした。私がコンピューターに向かって、エレンは外にあったツリーハウスで歌詞を書くっていうことが多かったかな。

エレン:森の中からはコヨーテの声が聞こえたりして感動的だった。しかもすごく素敵な家だったよね。広くてスペースがたくさんあったし。リビングにはドラムとギターとピアノが置いてあったので、ダイニングにメリーナのレコーディング機材をセッティングしたんだ。

友情でつながっている方がエキサイティング

─レコーディングにはビッグ・シーフのバック・ミークとジェームズ・クリヴチェニア、チャスティティ・ベルトのアニー・トラスコットが参加していますね。

メリーナ:すごく素敵なコラボレーションだったよ。ジェームズはLAに住んでいるんだけど、バックはトパンガに住んでいて、制作中に私たちを訪ねて来てくれた上に、エレンにギターを貸してくれて。そのギターを、いつもストリングスでお世話になってるアニーにも演奏してもらったんだ。

エレン:ドラムパートは自分たちで演奏したんだけど、ものによってはどうしても技術が追いつかない部分があって、そういうところでジェームズに助けてもらった。ジェームズは私たちが好きなドラマーの1人だし、コラボレーションできて本当に嬉しかったな。



─そうして完成したアルバムは、メリーナとエレンの個性が「ぶつかり合う」というよりは、お互いを刺激し合いながら深いところで結びついた、親密かつリスペクトに溢れた楽曲が並んでいます。

エレン:歌詞は私が書いたものもあるし、メリーナが書いたものもあるけど、お互いのバンドでツアーをしてきた中で感じたことや得たものが反映されていると思う。私たちのこれまでの恋愛や友情、そうした関係性の始まりや終わり、別れによって感じた自分の心の弱い部分とかもね。

─歌詞を読むと、クィアネスや気候変動などシリアスなトピックからインスパイアされつつも、直接的なメッセージソングへと帰結するのではなく、どこかユーモアやウィットネスを感じさせます。

エレン:歌詞を書く時は、自分の思考をそのまま表現したいと思っているのだけど、シリアスなメッセージを伝えたいときや、ダークなテーマを扱うときには必ずユーモアを交えるようにしているんだ。それは、自分自身のメンタルヘルスのためでもあるし、聴いた人が自由に解釈できる余地を残したいからでもあるんだよね。

メリーナ:私にとってエレンが好きな作詞家の一人なのは、そういうバランス感覚に長けているところだよ。

─僕も常々、「シリアスなメッセージを伝えたいときにこそユーモアが必要」と思っていたのですが、2人がそういう考えに思い至ったのはどんな経緯でした?

メリーナ:自然とそうなったかな。私たちはまだ若くて、常に新しいことに触れている状態だから、成長していく中で自然とそういう考え方になっていったのだと思う。周りの若者たちが大人になっていく様を見たり、友情でも恋愛でも、自分の人間関係からもたくさん影響を受けたりしているし、もちろんエレンからも影響を受けてるから。

エレン:私も人間関係と、あとはやっぱりSNSかな。色んな人のSNSの投稿を読むのが好きで、内容に賛成できてもできなくても、とにかく色々読んで、そこから影響を受けたんだと思う。



─ソングライティングの面では、今作にはお二人がフェイバリットに挙げているピクシーズやザ・ブリーダーズへの愛が炸裂していると思いました。

メリーナ:もちろん2組とも大好き。特にエレンはそうだよね。

エレン:ブリーダーズは本当に影響力のあるバンドだと思う。キムとケリーのディール姉妹がバンドを牽引している、あの体制にも影響を受けた。私が好きなベーシストの1人がキムだったから、メリーナの尊敬しているベーシストがキムだと知って嬉しかったな。

メリーナ:ギターもすごくて良い曲ばかりだしね。

エレン:歌詞もね。全部最高。



─他にインスパイアされた音楽やアーティスト、映像作品を挙げるとしたら?

メリーナ:今日ちょうどその話をしていたんだけど、製作中はアラバマ・シェイクスをよく聴いたな。エレンが『Sound & Color』(2015年)を教えてくれて、ちょっと前のアルバムではあるんだけど、すごくはまった。プロダクションもミキシングも、ギター・ワークもすごく参考になる。ブリタニー・ハワードも最高。

エレン:あとは『マンダロリアン』(笑)。私たち2人とも『スター・ウォーズ』が大好きだからずっと見てたよね。そうそう、メリーナが映画音楽にはまっているんだけど、それも今回のアルバムにも表れていると思う。私が歌詞として曲のストーリーを書いて、メリーナがそれにサウンドトラックをつけるみたいな感じで、その関係性も好きなんだ。そもそも『スター・ウォーズ』の音楽って最高だしね(笑)。

メリーナ:ジョン・ウィリアムズやハンス・ジマーのような壮大な映画音楽が好き。『インセプション』とかね。静かめなのだと、ジョージ・クルーニーが出ていた方の『ソラリス』(スティーヴン・ソダーバーグ監督作)を手掛けたクリフ・マルティネスの音楽も好きだな。歌詞がある音楽を聴きたくない気分の時とか、自分が描く曲より映画音楽のほうが好きだと思うこともあるんだよね。

─ちなみに『スター・ウォーズ』で好きなキャラクターは?

エレン:2人ともベビー・ヨーダは好きだよね。私はR2-D2とか、ロボットのキャラクターが全般的に好き。

メリーナ:私はイウォークが大好き。

エレン:あー、私も。

メリーナ:でも最近で言うと、マンダロリアンが好きかな。



─ありがとうございます(笑)。さて、6月11日に2人がホストを務めるライブストリームフェス「Doomin Sun Fest」が開催されます。このイベントの見どころというと?

エレン:イベントではライブセットに一番時間をかけてる。もちろん自分たちのライブも楽しみだけど、私は出演してくれる他のアーティストたちのパフォーマンスが本当に楽しみ。セットも友人の一人が企画に協力してくれて、"ギャラクシー・ブレイン”って呼んでるユニークな世界観を作り上げてくれたんだ。『セサミ・ストリート』っぽい雰囲気もある感じ。

メリーナ:今のところ全部で7時間ぐらいは必要になりそうだから、なんとか短くしようと頑張っているところ(笑)。1日でやるにはちょっと長過ぎるからね。

─昨今はライブストリーミングが多くなってきていますが、その中で「Doomin Sun Fest」はどういうところでオリジナリティを出そうとしていますか?

エレン:そこは私たちもこだわっているところで、他と違うものにしようと努力しているところ。みんながライブストリーミングに飽きてきているところだとは思うし、アメリカでは特に、もう普通のライブが再開され始めているからね。その中でオリジナリティを出すために、音楽アーティストだけではなくて詩の朗読や、ダンサーのパフォーマンスなども予定してる。あとは観客のみんなにも参加してもらえるような、インタラクティブな企画も行う予定だよ。

─「Doomin Sun Fest」の収益は寄付されるそうですが、そうした試みを通して世界に伝えたいメッセージはありますか?

エレン:一番伝えていきたいのは人と人とのつながり……特に友情かな。音楽はもちろん、他の表現方法も一般的にも恋愛における人とのつながりが強調されがちだけど、私たちは家族と同じくらい友情を大切なものだと思っているんだ。だから、みんながもっと友情を大切にして、友人に感謝できるようになればいいなと思う。

メリーナ:私も同感。

─日本には、あなたたちのライブを生で見るのを楽しみにしているファンがたくさんいます。最後にメッセージをもらえますか?

エレン:私はまだ日本に行ったことがないから、とにかく日本に行きたいって気持ちが強いな。

メリーナ:私も早くまた日本に行きたい。みんな、私たちの音楽を聴いてくれてありがとう。行けるようになったら、絶対に真っ先に日本に行くから。世界の中でも日本は本当に大好きな国なんだ。みんな本当に優しいし、音楽が好きなことが伝わってきて、去年のライブも最高の思い出になってるから。本当に本当に、早く日本に行きたい。



バチェラー
『Doomin Sun』
発売中
視聴・購入:https://tugboat.lnk.to/Bachelor_S3


「Doomin Sun Fest」
Bachelorとしての初パフォーマンスを披露
視聴リンク:https://doominsunfest.bachelor-band.com/
(日本時間 6/11 (金) 7:00 AM〜)

※「Doomin Sun Fest」はフリーで視聴が出来るフェスティバルですが
人種の平等を提唱する慈悲団体「Seeding Sovereignty」への寄付も募っています。
https://seedingsovereignty.org/

※終演後には3Dソーシャルゲーム「Hotel Hideaway」の中でバーチャルなアフターパーティーが行われます。
https://www.hotelhideawaythegame.com/

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