J-HOPEが語る、BTSで成長することとソロ活動の意味
Rolling Stone Japan / 2021年6月19日 9時0分
米ローリングストーン誌より、BTSのJ-HOPE(2021年4月6日、韓国・ソウルにて撮影)Photograph by Hong Jang Hyun for Rolling Stone. Fashion direction by Alex Badia. Coat and pants by Fendi; ring by FOTL; necklace by Wilhelmina Garcia.
「人々にもっと元気を与えられる音楽をつくりたかったんです」。米ローリングストーン誌によるBTSデジタルカバーストーリー第1弾の個別インタビューでJ-HOPEは語った。
数多の有名人BTSファンのひとりとして知られる米人気深夜番組 「レイト・レイト・ショーwithジェームズ・コーデン」のホストでコメディアンのジェームズ・コーデンは、BTSについて「本質は善へのエネルギーである」と述べた。えくぼのある笑顔、やわらかい物腰、ステージ上での圧倒的な存在感が印象的な27歳のラッパー、ダンサー、ソングライター、プロデューサーのJ-HOPEは、BTSの根幹にある善良さとあふれんばかりの才能の結合を体現する人物だ。J-HOPEという名前にも、そんな彼のポジティブさが投影されている。米ローリングストーン誌が急きょ行ったBTSメンバーとのソロ・インタビュー第1弾のなかで、J-HOPEはデビュー初期を振り返り、ミュージシャンとしての今後をはじめ、さまざまな話題について語ってくれた。J-HOPEは、韓国・ソウルにあるHYBE傘下のBig Hit Music(BTSの所属レーベル)の本社のスタジオルームから、パリッとした白いTシャツにオリーブグリーンのコートを羽織ってインタビューに応じてくれた。テレビ番組のインタビューで見せる元気いっぱいの姿と比べると抑え気味だったが、親しみあふれるまぶしい笑顔は健在だった。
※先月、米ローリングストーン誌がBTSが本誌の表紙を飾ったことを記念して、各メンバーをフィーチャーしたデジタルカバーストーリーを数日にわたって掲載した。日本版も「Rolling Stone Japan vol.15」発売日の6月25日へのカウントダウン企画として、完全翻訳記事を毎日掲載していく。
【動画を見る】BTS・J-HOPE、表紙撮影のメイキング映像
ー起きてすぐ、ここに直行ですか? それとも、今朝は何か別のことをする余裕はありましたか?
バスルームに行きました!(笑)
ーパンデミックに見舞われたこの1年を通じて、ご自身の新たな面を何か発見しましたか?
この1年は、僕たちの日常生活がどれだけかけがえのないものであるかを知るための機会でした。今後のあるべき自分の人生と、こうした状況でも落ち着いて集中していることの大切さについて考えました。自分について深く考える時間でしたね。
ーそこから学んだことは?
自分がいちばん得意なことをやるべきだ、ということですね。時間は流れて、人生は進んでいきますから、僕たちは音楽とパフォーマンスを続けなければいけません。人々の心を慰め、希望のようなものを与えられる音楽をつくるべきだと素直に感じたんです。ほかの人たちと同様に僕たちも普通の人間ですから、同じことを感じるんです。だからこそ、人々にもっと共感してもらえて、もっと元気を与えられる音楽をつくり、パフォーマンスがしたかったんです。
BTSのJ-HOPE(2021年4月6日、韓国・ソウルにて撮影)
Photograph by Hong Jang Hyun for Rolling Stone. Fashion direction by Alex Badia. Coat and pants by Fendi; ring by FOTL; necklace by Wilhelmina Garcia.
ー名曲「Life Goes On」のメッセージと通じるところがありますね。
「Life Goes On」は、パンデミックという状況で僕たちに何ができるか? という問いかけから生まれた楽曲なんです。それは、この瞬間だからこそ語れるストーリーです。心を開いてメンバー間で感じていることを話すモチベーションにもなりました。だからこそ、大切な曲だと思っています。
ーあなたが手がけた歌詞の中には、みんなの好きなその笑顔の影に時折悲しみがにじんでいることを明かしたものがあります。あなた自身が表現するポジティブさと、現実の生活で経験するより複雑な感情のバランスをどのように保っているのですか?
昔といまの状況は、本当にまったく違います。僕はただ、ありのままの自分を見せようとしているだけです。これが僕にとっていちばん心地良いことだと思うんです。誰にだって、世間に見せている顔とは別の顔がありますよね。もちろん、アーティストとしての重圧やプレッシャーを感じているのは事実です。でも、それをそのまま受け入れています。こうした困難を乗り越えようとする自分を表現しようとしているのです。
こうした感情を表現することは、僕にとって一種の慰めにもなっている気がします。BTSは、アーティストとして活動しはじめた瞬間からずっとファンのみんなとコミュニケーションを取ってきましたが、いまではより自然で心地良いコミュニケーションが取れていると思います。以前は、僕たちの良い面、明るい面だけを見せようとしていました。J-HOPEという僕の名前にもあるように、BTSと僕の明るい部分だけを見せようとしていたんです。でも、時間が流れていく上で、ずっと同じ感情を抱きつづけることはできませんし、僕自身もいろんな感情を持つようになりました。こうした感情を音楽や対話を通じて、とても美しい方法で表現しようとしたんです。
ーそのひとつがソロ曲「Outro: Ego」ですね。この楽曲を制作していた当時は、どのようなことを考えていたのですか?
曲のタイトルにもあるように、内省や自分自身とエゴについて深く考えることが主なテーマです。チョン・ホソク(J-HOPEの本名)というひとりの人間の人生と、J-HOPEとしての人生を歌っています。こうした内省から導き出した結論は、僕が自分を信じ、自分という人間に希望を抱いていること、そしてこれが僕のアイデンティティーだということです。それと同時に、これらは僕が直面した困難でもあります。自分を信じることで今後もこうした困難に立ち向かい、新しいチャレンジに挑戦していくと思います。
ー2018年に初となるミックステープ『Hope World』をリリースし、アーティストとして大成功を収めました。制作時のお気に入りのエピソードはありますか?
そうですね、振り返ってみると、あの頃にこうした音楽が実現できたのは本当に純粋で、無垢で、美しいことだと思います。いま、音楽に向き合っているときも当時の気持ちを思い出しながら「そんな時代もあったな」と考えるんです。現在取り組んでいる音楽に本当に良い影響を与えたと思います。ミックステープを通じてたくさんのことを学び、アーティストとして、ミュージシャンとして進みたい方向が本当の意味で見えてきたのだと思います。たくさんの人にこのミックステープを気に入ってもらえて、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。今後も音楽制作を続けて、J-HOPEにしかできない”音楽”のスタイルを表現していけるように頑張ります。
ー2作目のミックステープに対する想いはありますか?
現時点での目標は、インスパイアされていい音楽をつくることです。まだ何も決まっていませんから、いまはただ音楽制作を続けるつもりです。音楽のスタイルはそこまで大きく変わらないとは思いますが、もっと成熟していくでしょうね。2枚目のミックステープには、何としても語りたいストーリーを盛り込むようにします。
ー『Hope World』から「Blue Side」のフルバージョンをリリースされたばかりですが、これは以前からあたためていたもの、それとも最近仕上げたものなのでしょうか?
当時はフルバージョンではなかったので、またこの曲に取り組んで仕上げたいとずっと思っていました。いつも頭のなかにはありましたね。「この曲を仕上げたい」とようやく心を決めたのは、2週間あるいは1カ月前のような気がします。さっきも話したように、このミックステープを作っていたときの気持ちをよく思い出すんです。
ー練習生になった頃のあなたは、ラップ未経験者でした。そこから努力して、見事なスキルを身につけたことは明白です。当時の学びのプロセスについて聞かせてください。
至らないところはまだあると思います。それにまだまだ先は長いですし、学ぶべきこともたくさんあります。僕にしかないスタイルを見つけないといけません。でも、ここまで来ることができたのは、他のメンバーのおかげだと思っています。練習生になったばかりの頃は、他のメンバーは全員がラップ経験者でした。ですから、宿舎のなかでは音楽がかかっていて、誰もがフリースタイルでラップしていました。最初は、溶け込むのに苦労しました。新しい環境に馴染むために、必死に努力したんです。いまとなっては、楽しい、良い思い出です。それに、あの頃はとても楽しかったです。
ーとても若くして練習生になりましたが、BTSとともに成長するのはどのような経験でしたか?
練習生時代の生活は、"普通"とはかけ離れたものだったと思います。他の子たちや友人たちは、学校で勉強したり遠足に行ったりして学生時代の思い出をつくることができましたから。でもご覧のとおり、僕はこうしたものではなく、アーティストとしてのキャリアを選択しました。学生時代の思い出がないからと自分をかわいそうだと思うことはできるかもしれませんが、僕には夢があったんです。それに、練習生時代にメンバーに出会えたのは本当に素晴らしいことでした。こんなに違う人たちがひとつのグループをつくれるなんて、ただただ奇跡的だと思うんです。メンバーのみんなにお礼を言いたいですし、ときどきあの頃に戻りたくなることもあります。
ーBTSのデビュー初期、タフなイメージだった頃のMVなどを振り返ってみて、当時の印象はどうですか?
シングル「No More Dream」をリリースした頃のBTSの楽曲は、偏見や抑圧との闘いを表現していました。ですから当然、こうしたコンセプトが当時のスタイリングや視覚的な要素に入り込んでいます。これが当時の僕たちのアイデンティティーであり、表現であるとも言えるでしょう。でも、いつまでも同じ状態で立ち止まっていることはできません。時間の流れとともに物事は変わり、トレンドも変わります。僕たちの音楽性もそうです。僕たちは、周囲への影響、オーディエンスについて考えました。そうしたものが音楽のスタイルやコンセプトの変化へと導いてくれたんです。
>関連記事:BTSが世界で成功を収めた理由:K-POPのルールや価値観を覆したBTSの軌跡
ー結成当初は、それぞれのメンバーがさまざまなバックグラウンドや価値観を持っているため、衝突したと何度も言っていましたね。当時の人間関係を複雑にしていた主な原因は何だったのでしょうか?
当初から僕たちはとにかく全然違う人間同士でしたから、気まずかったですね。慣れるのにはかなりの時間が必要でした。共同生活を送っていたのですが、それぞれが自分だけのパーソナルスペースを持てるよう配慮していました。それから徐々にお互いのことを知り、いまではBTSとして長年活動してきましたから、調和のようなものが生まれました。お互いを理解することで、BTSならではのチームワークが生まれたんです。それに一人ひとりの役割は違っていて、音楽でもやっていることは違います。だからいまは助け合いながら、もっと上手くなるための努力を続けています。
From Rolling Stone US.
Rolling Stone Japan vol.15
発行:CCCミュージックラボ株式会社
発売:カルチュア・エンタテインメント株式会社
発売日:2021年6月25日
価格:1100円(税込)
photographed in Seoul on April 6th, 2021.
Photograph by Hong Jang Hyun for Rolling Stone. Fashion direction by Alex Badia. Hair by Han Som, Mujin Choi, Lim Lee young, Lee Da Eun. Grooming by Kim Da Reum, Seo Yuri, Kim Seon Min. Styling by Kyungmin Kim, Lee Ha Jeong, Kim Hyesoo, Hong Sil, Seo Hee Ji, Kim Hyunjeong. Vs jacket; Sugas T-shirt; Jins top and necklace; Jungkooks coat; RMs jacket and necklace; Jimin and J-Hopes shirts and jackets by Louis Vuitton.
>>関連記事:Rolling Stone Japan BTS号インタビューノーカット翻訳掲載
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