1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 音楽

RMが語るK-POPの定義、BTSと自分自身のアイデンティティ

Rolling Stone Japan / 2021年6月23日 9時0分

米ローリングストーン誌より、BTSのRM(2021年4月6日、韓国・ソウルにて撮影) Photograph by Hong Jang Hyun for Rolling Stone. Fashion direction by Alex Badia. Shirt, pants, and bracelet by Fendi.

「夢を追いかけることに焦りと絶望のような気持ちを抱いていました」とBTSのリーダー、RMは語る。

「アメリカの基準で言う、アイビーリーグ(訳注:ハーバード大やイエール大を含む、アメリカの伝統ある私立大学8校の総称)のような一流大学を目指していました」とBTSのリーダー、RMは語る。「良い成績を取ろうと必死に努力する、典型的な優等生タイプでしたね。そんな僕がパン・シヒョク氏(HYBE創設者)を信じて、別の道を歩むことにしたんです。それに、夢を追いかけることに焦りと絶望のような気持ちを抱いていました」。ラッパー、作曲家、プロデューサーとしてのRMの才能、そしてさまざまな事柄に向けられる彼の知的好奇心は、もはやBTSには欠かせない要素となっている。韓国のソウルにある所属レーベルの本社から米ローリングストーン誌の取材に応じたラップ・モンスター改めRMは、BTSの楽曲はK-POPなのか?という問い、韓国のヒップホップの特殊性、『花様年華』期のハイライトなどについて語ってくれた。

※先月、米ローリングストーン誌がBTSが本誌の表紙を飾ったことを記念して、各メンバーをフィーチャーしたデジタルカバーストーリーを数日にわたって掲載した。日本版も「Rolling Stone Japan vol.15」発売日の6月25日へのカウントダウン企画として、完全翻訳記事を毎日掲載していく。

ーあなたは先日、「僕は韓国人であり、韓国人としてでないと何もできない。これ以外のことは何ひとつできない。なぜなら、僕はアウトサイダーだから」という韓国の抽象画の先駆者、キム・ファンギ(1913〜1974)の言葉を引用していました。最近は、主にこの言葉について考えているとも言いましたね。ファンギの言葉は、どのようにしてあなたの作品に当てはめられるのでしょうか?

僕が聴くポップスやヒップホップのほとんどはアメリカのものです。でも、韓国人の僕が思うに、韓国人には独自の個性と地域に根ざしたアイデンティティのようなものがあると思います。上手く説明できないのですが、韓国人あるいは東洋人特有の特徴がいくつかあるんです。だからこそ、僕たちは東西という2つの要素を融合して、まったく新しいジャンルを生み出しました。それを”K-POP”と呼ぶ人もいれば、”BTS”と呼ぶ人もいるでしょうし、東西の融合による”ハイブリッド・ミュージック”と呼ぶ人もいるでしょう。いずれにしても、それが僕たちのしていることなんです。昔のシルクロードについて考えてみると、東洋と西洋の人々が交わる巨大な交差点のようなイメージがありますよね。そこでは、いろんな品物が売買されていたかもしれません。こうした歴史は繰り返されると思いますし、何らかの新しくて興味深い現象が起きようとしているんです。大きな変化の中心にいることができて、とても光栄に思っています。

ーいまも活動中の韓国ヒップホップの黎明期を代表するEpik High(韓国出身の3人組ヒップホップグループ、RMに大きな影響を与えた)をはじめ、韓国には数多くの素晴らしいヒップホップアーティストがいます。昔はどのようなアーティストの作品を聴いていましたか? 現在は?

新しいものがひとつの文化に入り込んできて、そのアイデンティティが変化し、新しい場所に適応するというプロセスは常にあるものです。ご存知の通り、韓国とアメリカの音楽に影響を与える要素は異なります。たとえば、韓国はアメリカのような多民族国家ではありません。ですから、音楽にはさまざまな感受性が込められているんです。もちろん、韓国のラッパーには、アメリカとは異なる独自のリリシズムと独自の状況や苦労があって、それらをラップというプロセスに落とし込んでいます。当然ながら、僕は韓国人としてこうしたものに一番共感するんです。

聖書のなかに「日の下に新しきものなし」という一節があります。とくに僕たちのような人、いわば世界の端っこにいるような人たちは、海外から入ってきたものを変えて、自分たちのものにするにはどうしたらいいか?と考えています。韓国とアメリカのラッパーから得た刺激のバランスをとる際、僕はこの点について考えるんです。でもいまは、さまざまなジャンルが収束しているように感じます。


BTSのRM(2021年4月6日、韓国・ソウルにて撮影)
Photograph by Hong Jang Hyun for Rolling Stone. Fashion direction by Alex Badia. Shirt, pants, and bracelet by Fendi.

ーBTS結成当初は、ラッパーになるかアイドル——いわゆる”ポップスター”——になるかという問題が一部の人々の頭のなかにあり、あなた自身も悩んでいたそうですね。これについては、すでに楽曲のなかでも触れています。この葛藤について、もう少し詳しく教えてください。当時は、どうしてこの問題にそこまでこだわっていたのでしょうか?

子どもの頃は、散文家や詩人になるのが夢でした。そんな僕がラップに出会ったんです。自分がやりたかったことの大半を音楽に注ぎました。それに、純粋なアーティストになる、あるいは純粋なラッパーになるという問題もありました。ですから最初の頃、BTSがポップグループとしてデビューした頃は、自分自身のアイデンティティを整理しなおして、新しいアイデンティティを取り入れるようなことをしなければならないときもありました。それに当時は、良い結果がなかなか出せなかったんです。ファンも少なかったですし。成果もイマイチでした。馬鹿にされることも何度かありました。

ですから、こうしたアイデンティティを育み、自分のものとして受け入れるには、ある程度の時間が必要でした。でも、ラップであれポップミュージックあるいはその他のジャンルであれ、それらは僕の想いや考えを表現し、人々に共感してもらうためのものです。結果として、こうした葛藤の多くは自ずと解決されたんです。それに、いまとデビュー当時の2013年の状況はかなり違うと思います。というのも、純粋さ、本物であること、誠実さとは何か? アーティストとは何か? ポップミュージシャンとは何か?という議論はいまも健在ですが、こうした境界線はますます意味を失ってきていますから。自分が手がけた作品が発表できる限り、それは僕の夢と僕がずっとやりたいと願っていたことの延長ととらえていいんです。

ーBTSは、アルバム『花様年華』時代に真のアイデンティティを見出した印象です。すべてがひとつにまとまり始めたのもこの頃ですね。当時を振り返ったときの感想は?

『花様年華(英題:Most Beautiful Moment in Life[人生でもっとも美しい瞬間])』というタイトルにもかかわらず、その頃は僕にとってもグループにとっても激動の時代でした。『2 Cool 4 Skool』(2013年)をはじめ、デビュー初期はタフなイメージというか、タフさと怒りを誇張して表現していたんです。その後、僕たちは少し肩の力を抜いて、夢を抱いている若い人たちの気持ちを表現しようとしました。これは以前よりも誠実な表現でしたし、多くの人が共感してくれることにも気づきました。

これは未経験のことでしたから、なかには混乱する人もいました。というのも、僕たちは以前よりも自分自身をさらけ出し、より繊細な面を見せていましたから。それまでとはかなり違うアプローチでした。ですが、それは意味のあることだと気づき、『LOVE YOURSELF』シリーズでも継続したんです。続けていくうちに、次から次へと新しい発見がありました。

ーBTSファンの多くはBTSの楽曲をK-POPととらえていないようです。あなたも「BTSはジャンルです」と言っていました。それに対する見解を聞かせてください。

とても重要な問題ですね。なぜなら、K-POPと呼ばれるジャンルは、ものすごいスピードで拡大していますから。たとえば、いわゆるK-POPグループのなかには、ヨーロッパ、インド、中国など、外国人しかいないグループもあります。韓国人メンバーがいないのに、歌っているパートを代えるなど、K-POP的なことをしているんです。BTSも急成長を遂げています。それにいまとなっては、K-POPの幅もかなり広がりました。K-POPは韓国の歌を歌う韓国人のことだと言う人がいるかもしれません。たしかにそれはK-POPです。でも「Dynamite」はどうでしょうか? 僕たちは英語で歌っています。でも、メンバーは全員韓国人ですから、K-POPと言う人もいるでしょう。あるいは、英語だからシンプルにポップソングだと呼ぶ人もいるかもしれません。でも本当のところ、世間が僕たちをK-POPの一部、あるいはアウトサイダーと考えるかにはあまり興味がありません。大切なのは、僕たちが韓国人でポップソングを歌っていることです。BTSそのものがジャンルだと言った背景には、こうした理由があるんです。K-POPの定義をめぐる議論は音楽業界にとってはきわめて重要ですが、メンバーにとってはあまり意味のないものなんです。

ー芸術家としての可能性に対する考え方を改めさせてくれたアーティストは?

入り口はナズ、エミネム、黄金時代のヒップホップアーティストでした。転機となったのはドレイクですね。2009年に『So Far Gone』がリリースされた頃です。この作品には、何というか、ショックを受けましたね。ラッパーが歌を歌うなんて気持ち悪いと思っていましたから。でもその直後から、多くのヒップホップアーティストが歌いはじめたんです。ラップとメロディーのあいだに様々なジャンルのメロディーを差し込むようになりました。なので、僕にとってこれは大きな変化でしたね。

ーソロ曲「Intro: Persona」の”僕の影、僕は「戸惑い」と書いて呼んだ(My shadow, I wrote and called it hesitation)”というラップの意味について教えてください。

躊躇あるいは慎重さともいえますが、こうしたものがリスクをおかしたり、挑戦したりするときの妨げになると思ったんです。



ーいつか孫たちがグラミー賞のパフォーマンスを観るかもしれないといってメンバーを鼓舞したそうですね。こうしたことはよく考えるのでしょうか?

僕たちが刻むすべての足跡がオンラインという誰もが観られる場所に残ると考えただけで、時折ゾクゾクします。ですから、そうですね、こうしたことが僕たちのモチベーションになっていると思います。

ー「痛みは一瞬。映画は永遠」と、ある俳優が言ってましたね。

(うなずく)。人生は短い。芸術は永遠です。

From Rolling Stone US.


【BTSメンバー個別インタビュー】

J-HOPEが語る、BTSで成長することとソロ活動の意味

JIMINが語る完璧主義とダンスに捧げる情熱、ARMYへの愛と感謝、BTSの未来

JINが語る、歌手としての義務と使命、BTS「Spring Day」に込めた想い

JUNG KOOKが語るBTS「Dynamite」制作背景、ARMYへの想い、アリアナからの学び



Rolling Stone Japan vol.15
発行:CCCミュージックラボ株式会社
発売:カルチュア・エンタテインメント株式会社
発売日:2021年6月25日
価格:1100円(税込)
photographed in Seoul on April 6th, 2021.
Photograph by Hong Jang Hyun for Rolling Stone. Fashion direction by Alex Badia. Hair by Han Som, Mujin Choi, Lim Lee young, Lee Da Eun. Grooming by Kim Da Reum, Seo Yuri, Kim Seon Min. Styling by Kyungmin Kim, Lee Ha Jeong, Kim Hyesoo, Hong Sil, Seo Hee Ji, Kim Hyunjeong. Vs jacket; Sugas T-shirt; Jins top and necklace; Jungkooks coat; RMs jacket and necklace; Jimin and J-Hopes shirts and jackets by Louis Vuitton.

>>関連記事:Rolling Stone Japan BTS号インタビューノーカット翻訳掲載


>>本文に戻る



>>本文に戻る

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください