Vが語る、BTSを支える音楽愛と発表を控えたミックステープ制作秘話
Rolling Stone Japan / 2021年6月25日 9時0分
米ローリングストーン誌より、BTSのV(2021年4月6日、韓国・ソウルにて撮影) Photograph by Hong Jang Hyun for Rolling Stone. Fashion direction by Alex Badia. Coat and top by Fendi; pants by Lemaire.
「隠れメンバーだと言われたときは、実際チームから切られたと思いました」とBTSのVは語る。
BTS結成当初から、歌手、作曲家、プロデューサーとして活躍するVは、BTSの秘密兵器的存在だった。表現力に富むディープな声は、高音域を得意とする他のメンバーとは対照的であると同時に耳に心地良い。そんな彼は、直球のベッドルームR&Bに臆せず飛び込める一方、「Intro: Singularity」のようにセクシーなネオ・ソウル風の楽曲もこなす。ジャズとクラシックをこよなく愛するVは、サックス奏者としてミュージシャンの道を歩みはじめた。そんな彼が影響を受けたアーティストはサミー・デイヴィス・ジュニアからサム・クック、さらにはコールドプレイ(2月に『MTV Unplugged Presents: BTS』で披露した「Fix You」のカバーは、どうやらVの発案のようだ)など、BTS屈指の多彩さを誇る。4月の朝、黒のニュースボーイキャップをかぶり、黒のジップアップタイプのパーカーと白いマスクで登場したVは、韓国・ソウルの所属レーベルの本社の一室でオレンジジュースを飲みながら、発売を控えたミックステープ、エルヴィス・プレスリー愛、お気に入りの映画など、さまざまな話題について米ローリングストーン誌に語ってくれた。
※先月、米ローリングストーン誌がBTSが本誌の表紙を飾ったことを記念して、各メンバーをフィーチャーしたデジタルカバーストーリーを数日にわたって掲載した。日本版も「Rolling Stone Japan vol.15」発売日の6月25日へのカウントダウン企画として、完全翻訳記事を毎日掲載していく。
【動画を見る】Vの表紙撮影メイキング動画
ー昨日は、久しぶりにバラエティ番組の収録だったそうですね。いかがでしたか?
5年ぶりの出演でした。そのせいで、ものすごく緊張してガチガチになっていたんです。だから、あまりよく眠れませんでした。でも昨日は現場に到着して、いざ収録開始となると、司会者の方が本当に親切で、何かと気を使ってくださいました。おかげで、とても順調でしたよ。居心地も良かったです。今朝はこのインタビューがあるから、またしても昨夜はあまりよく眠れませんでした。
ーそれは申し訳ない!
(笑)いえいえ、いいんです。
ーミックステープのリリースに向けて奮闘中だと聞きました。リリースが遅れていることもあってかなりプレッシャーを感じていると思うのですが、進行状況はどうですか?
僕たちはBTSとして音楽制作に取り組んできましたが、それはあくまでグループとしての作業でした。ですから、ミックステープを制作するということは、アルバムに関わる全楽曲をすべて自分ひとりでこなすことなんですよね。すべての曲の作詞やメロディーづくりはもちろん、プロダクションのプロセスにも加わらなければいけません。BTSとしてアルバムをリリースするときは、こうしたプロセスがメンバーに分散されるのですが、それをひとりで背負わなければいけないのは、かなりのプレッシャーですね。なので、キツいです。でも、僕という人間を表現し、キム・テヒョン(Vの本名)という人間の本当のカラー、VのカラーをARMYのみんなに知ってもらえる、という良い点もあります。ですから当然、最高のチャンスですし、そのおかげでミックステープ制作はすごく楽しくて充実しています。
ー現時点でのリリース予定は?
当初は2020年にリリースしたいと思っていたのですが、僕が思っていたよりもずっと大変で複雑でした。今年の初めに出せたらいいなとも思っていたのですが、それも予想よりずっと厳しくて! なので、いまの目標は今年の年末です。
BTSのV(2021年4月6日、韓国・ソウルにて撮影)
Photograph by Hong Jang Hyun for Rolling Stone. Fashion direction by Alex Badia. Coat and top by Fendi; pants by Lemaire.
ー韓国ドラマの挿入歌としてもお馴染みのソロ曲「Sweet Night」をすでにリリースされています。そこからどんな経験を得ましたか?
「Sweet Night」は、友人(俳優で元共演者のパク・ソジュン)が出演していたドラマ(『梨泰院クラス』)のサントラの収録曲としてリリースされたのですが、もともとは僕のミックステープ用に制作していたものなんです。パーソナルな楽曲のひとつですね。今夜はぐっすり眠りたいな、と心の底から思ったときの気分が着想源です。
ー最新アルバム『BE』に収録されている「Blue and Gray」は名曲です。幸福とは程遠い、本当に苦しい時期につくった曲だと言っていましたが、そこまで辛かった理由について教えてください。
当時は、新型コロナウイルスのパンデミックが広がり、深刻な事態になろうとしていた頃でした。ARMYのみんなの前でパフォーマンスをするため、一生懸命準備を重ねていました。当時の僕には、こんなに頑張って練習し準備してきたことをみんなの前で披露できない、という事実を受け入れなければいけないのが辛かったんです。SNSを使ってARMYのみんなに「最高のパフォーマンスをお見せするので、楽しみにしていてください!」と告知していたのに。だからこそ、本当に苛立ち、事実を受け入れられず、悲しかったです。そこには少し疲れていたことと、頑張り過ぎて若干バーンアウト気味だった部分も多少はあったかもしれません。
ーツアー活動のない生活中に経験した良いことは何ですか?
本当の意味で何かに集中することができました。コロナ前は、忙しすぎてひとつのことに集中したり新しいことにフォーカスしたりすることができませんでした。新しいことにチャレンジしたくても、浅いアプローチを取らざるを得なかったのです。ディープに飛び込むことはできませんでした。でも、昨年はもっと自分の時間が持てるようになりました。仕事に関しては、プロデューサーとしての仕事を増やして、もっと深く音楽と関わるように努めてきました。以前の僕のメロディーはどちらかと言うとシンプルで、複雑さに欠ける気がしていたんです。でも、より多くのエネルギーを注いで、たくさん音楽を聴いて、いろんなことについて考える時間があったと思います。そのおかげで、音楽をつくるプロデューサーとしての仕事により深く飛び込むことができたと思います。それに、時間的な余裕があったおかげでいいメロディーもたくさん思いつきましたし、座ってただボーッとする時間もありました(笑)。それが大きな助けになりました。
ーいろんな音楽が好きだと聞いています。あなたにとってヒーローのようなミュージシャンは誰ですか?
僕のヒーローは、絶えず変わるんです——早いときで1時間おきに。たとえば昨日は、エルヴィス・プレスリーでした。今日は別の誰かかもしれません。これは個人的な好みの問題だと思うのですが、僕は年を重ねたエルヴィス、後期のエルヴィスが好きです。有名な曲はたくさんありますが、隠れた名曲、ディスコグラフィーのなかでもあまり目立たない曲がまだまだあると思います。だからこそ、すべての曲——たとえ1分だけでも——を聴きたいと思っていますし、現にそうしています。ヒット曲だけでなく、曲と曲のあいだに埋もれてしまっている曲も聴いてみたいです。
ー1950年代の名曲もありますが、おっしゃる通り、「雨のケンタッキー」や「サスピシャス・マインド」などの後期の楽曲は名曲中の名曲と言えますね。
お勧めの曲があれば、ぜひ教えてください。聴いてみます!
ープレイリストを送ります。ところで、BTSデビュー前に「隠れメンバー」と言われていたときはどんな気分でしたか?
本当に正直に言うと、隠れメンバーだと言われたときは、実際チームからから切られたと思いました。
ーいまでは笑い飛ばせますか? それとも、少しトラウマになったとか?
もちろん、いまは確実に笑い飛ばせます。これをネタにCEOであるレーベルの社長をいじったり、動揺させられる限りはね。もちろん、いまとなっては笑い話ですね。
ー古い映画が好きだと聞きました。お気に入りの作品はありますか?
古い映画は好きです。いわゆる「古典映画」のようなものも好きですが、あまり古すぎないものがいいですね。たとえば『ゴッドファーザー』(1972年)なんかは、観ていて楽しかったですね。いちばんのお気に入りは、『レザボア・ドッグス』(1992年)です。『ゴッドファーザー』は、実は最近観たんです。友人が「あまりに長いから、途中で寝てしまった」と言っていて、「そんなにつまらないのかな?」と気になったんです。でも、実際観てみたら、すごく感動しました。とりわけ、ゴッドファーザー(マーロン・ブランド)のカリスマ性と、ディレクションとプロダクションに携わっているすべての俳優に心を動かされました。何度も言いますが、劇中のゴッドファーザーの存在感は圧倒的ですね。
ー韓国のテレビドラマ『花郎(ファラン)』では、演技にも挑戦しています。今後は俳優業のほうも積極的にやってみたいという気持ちはありますか?
30歳になったら考えてみようかなと思っています。
From Rolling Stone US.
Rolling Stone Japan vol.15
発行:CCCミュージックラボ株式会社
発売:カルチュア・エンタテインメント株式会社
発売日:2021年6月25日
価格:1100円(税込)
photographed in Seoul on April 6th, 2021.
Photograph by Hong Jang Hyun for Rolling Stone. Fashion direction by Alex Badia. Hair by Han Som, Mujin Choi, Lim Lee young, Lee Da Eun. Grooming by Kim Da Reum, Seo Yuri, Kim Seon Min. Styling by Kyungmin Kim, Lee Ha Jeong, Kim Hyesoo, Hong Sil, Seo Hee Ji, Kim Hyunjeong. Vs jacket; Sugas T-shirt; Jins top and necklace; Jungkooks coat; RMs jacket and necklace; Jimin and J-Hopes shirts and jackets by Louis Vuitton.
>>関連記事:Rolling Stone Japan BTS号インタビューノーカット翻訳掲載
【BTSメンバー個別インタビュー】
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▼JIMINが語る完璧主義とダンスに捧げる情熱、ARMYへの愛と感謝、BTSの未来
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▼JUNG KOOKが語るBTS「Dynamite」制作背景、ARMYへの想い、アリアナからの学び
▼RMが語るK-POPの定義、BTSと自分自身のアイデンティティ
▼SUGAが語る、BTSが世界制覇後もハングリー精神を保ち続ける秘訣
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