HYDE、1stアルバム再現ツアー『ROENTGEN』を出すことは僕にとってロックだった
Rolling Stone Japan / 2021年6月30日 20時0分
「僕だけの、ミニマムでいいから、隅々まで目の行き届いた作品への憧れっちゅうか。昔からこう、絵とか好きだったんですよ」「最初の最終形は、もうちょっとおとなしかったね。自分が描いてる今回のアルバムっちゅうのは、もうちょっとおとなしかった。結構、『やっちゃったかな?』ぐらい(笑)。もっと地味になる予定だったんだけど、それぐらいのものを、やりたかったんだよね」(『ROCKINON JAPAN』2002年4月号)。これはHYDEがソロ名義で初のアルバム『ROENTGEN』をリリースした際のインタビューである。「静」をテーマにした『ROENTGEN』は、HYDEが想像していた以上の確かな手応えを持って生まれた。にも関わらず、この時は作品を発表したのみでツアーを行うことはなく、HYDEも「当時は、このアルバムでライヴをしようという意識が全くなかった」と話す。それから約20年の歳月が経ち、彼は大きな決断をするーー。
それはソロ活動20周年を記念したオーケストラツアー「20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021」。長い沈黙を破り、ついに『ROENTGEN』が観客の前で演奏されることになったのだ。今回はツアーの開催を記念して、6月25日に中野サンプラザホールで行われた初日公演の模様を紹介しよう。
関連記事:HYDEワールドツアーを締めくくる『ANTI』最終形 その強靭さを支えた信頼関係
開演時間の19:06(6:66)になると、管楽器隊、ダブルカルテット、コーラスを含めた総勢22名のオーケストラのメンバーが登場。会場の照明が落ちたと同時にムービングライトが動き出し、ゆらゆらと光が飛び交い、一瞬にして神秘的な世界へと変わった。壮大な演奏に導かれて、白い衣装に身を包んだHYDEが姿を現すと「UNEXPECTED」で幕を開けた。
観客の大きな拍手に包まれる中、HYDEは胸に手を当てて客席全体に目を配り、心から溢れ出したような喜びの表情を見せた。「ああ……早速、僕の方がウルウルきてしまいました。20年目にしてやっとツアーが始まったというね。今日は『ROENTGEN』の曲だけでなく、ここに至るまでの間にやりたかった曲も入れていきたいと思います」。
HYDE曰く、コロナ禍をきっかけにツアーのアイデアが浮かんだのだと言う。「『そうだ! 『ROENTGEN』のツアーをやれば良いじゃん』と思って。しかもオーケストラで再現するようなツアーをやったことがなかったので、これは良い考えだと思いました」。そして『ROENTGEN』の制作を振り返った。「当時ね、ラルク(LArc〜en〜Ciel)から離れて1人で曲を全部作って。全部自分でアレンジをして。もうこんなアルバムは作れないなって。『やるとしたら10年後かな』って当時のインタビューでは言っていたんですけど……20年が経ちましたね(笑)。20年経ってようやく重い腰を上げました。やっと『ROENTGEN』に会えた。『このアルバムを20年聴いてきて、やっとライヴで観れる』と感じてる人がいっぱいいると思うんだよね。僕もこうやって歌っていて感慨深い。(後ろ振り返り)しかも今のメンバーで再現してくれるのがすごいなって。タイムマシーンに乗ってるみたいな気分」。
ここで現在制作しているアルバム『ROENTGEN2』の中から、新曲2曲を披露をすることに。「まず1曲は「SMILING」という、タイトルは笑顔なんですけど暗い曲です(笑)。雪が降ってリセットして、また頑張ろうという歌詞になっていますが、「WHITE SONG」よりもさらに悲しく仕上がっています。もう1曲は「THE ABYSS」という曲で、ABYSSは奈落の底っていう意味。これもまた重い内容なんだけど、すごく良い曲になりました」。そんな紹介の後に演奏された「SMILING」は、雪景色の広がる銀白の中を行き場なく彷徨うような、デリケートな歌詞でありながら、スケール感のある演奏が楽曲の表情をより豊かに表現していた。そして「THE ABYSS」は生きることに疲れ果てた主人公が、自身の人生を振り返り「何が正しくて、何が間違っていたのか」と苦悩する歌詞になっていた。まるで触れると簡単に割れてしまうガラス玉みたいに、儚さと美しさが内包された世界観。このHYDEにしか映せない景色に、人々は魅せられるのだろうと再認識した。
「『ROENTGEN』を作った2000年頃、『ソロはやるな』とかそういう色んな意見もありました。だけど、自分だけの宇宙を作りたくて仕方がなかった。誰かの意見を常に聞くのも、もちろん素敵なんですけど、自分だけのものが頭の中にありながらも、それを作らない選択肢を選ばなければいけないのが嫌で。20年前に無理を言って、本当にワガママな限りの作品を作らせてもらいました。そしたら、こうしてみんなの前でツアーが出来た。……人生って分からないね」。この日、HYDEの発する言葉は「歌える喜び」に満ちていた。アーティストと観客が一緒になって、お互いに高い温度で楽曲が演奏する/される幸せを噛み締めている。大袈裟ではなく、1つのユートピアのようにも感じられた。
コンサートは後半戦になり「前から結婚式で歌えるような、幸せを形にしたような曲を歌いたいなと思っていて。僕的にはこの曲を(結婚式で)流して欲しい」と話して、ここでも初披露の楽曲「FINAL PIECE」を歌った。人生讃歌のような「運命の人と出会えた幸せの歌」と言葉にすれば簡単だが、それを圧倒的な表現力と説得力を持って楽曲に昇華していた。僕が座っている席の後ろで、すすり泣いてる人の声が聴こえた。
間もなくコンサートが終わりを迎える頃、HYDEが静かに語り始めた。「『ROENTGEN』というアルバムが出来た当時、デジタルだったりダンスミュージックだったり、ヴィジュアル系も盛り上がっていましたから、こんなアコースティックアルバムは誰も求めてなかった。だけど、こうやって20年も楽しんでもらえるアルバムが出来たことが、自分自身でもやって良かったなと思います。『ROENTGEN』って不思議なタイトルはね、まさに時代に逆行する意味を込めています。ロックってうるさい音だけじゃなくて、反抗するとか時代を変えていこうとする力だったりとか、そういう意味もあると思うんですね。だから、あの時に『ROENTGEN』を出すことは僕にとってロックだったんです」。流行に乗らない新しい表現というのは、いつだって最初は否定される。それでも自分の中で正しさと覚悟を持って形にしたことで、今、彼の音楽に賛同した者たちが集まり、素晴らしい景色が生まれたのだ。
「生きていて良かったね、みんな。今日、夢を見れたと思うんです。僕も夢を……すごく楽しかったし、みんなもきっと『ここに来れてよかった』という気持ちだと思ってます。この夢をまた日本中をまわって、みんなに演奏を聴かせて生きてて良かったという気持ちを届けられたら良いなと思います」。そう言って、この日配信されたばかりの「NOSTALGIC」を披露し、最終曲の後は終始席に座ってコンサートを観ていた観客全員が一斉に立ち上がり、盛大な拍手が起きた。HYDEは会場の隅々まで歩き、深くお辞儀をして初日公演の幕を閉じた。
彼らの旅は、まだ始まったばかりだーー。
<関連情報>
HYDE
「20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU」ライブビューイング
開催日:2021年7月31日(土)、8月1日(日)
時間:19:00開演
※アーカイブ配信期間
2021年7月31日(土)公演:8月1日(日)21:00 ~ 8月4日(水)20:59
2021年8月1日(日)公演:8月2日(月)21:00 ~ 8月5日(木)20:59
※映画館の開場時間中には公演前の演出など、現地の様子を上映予定です。
開催映画館:https://liveviewing.jp/2021hyde-heianjingu/
※開場時間は映画館によって異なります。
※大阪府では条例により、16歳未満の方は終了時間が19:00を過ぎる上映には、保護者同伴でないとご入場いただけません。
料金:
・HYDE Official Fan Club「HYDEIST」限定 Premium Ticket
価格:6000円(税込/映画館全席指定)
※Premium Ticketは、映画館ライブ・ビューイングと、アーカイブ配信のセットとなります。
※3歳以上有料/3歳未満で座席をご使用の場合は有料
・映画館ライブ・ビューイング
価格:4500円(税込/全席指定)
※3歳以上有料/3歳未満で座席をご使用の場合は有料
・HYDE Official Fan Club「HYDEIST」限定 Premium Ticket先行(抽選)
申し込み期間:2021年6月26日(土)12:00 ~ 6月28日(月)23:59
ファンクラブ先行:https://www.hyde.com/hydeist
※Premium Ticketのお申込みは、HYDE Official Fan Club「HYDEIST」会員限定。
※アーカイブ配信は、GLOBE CODINGでの配信となり、アーカイブ配信期間中は何度でも視聴が可能となりますが、リアルタイムでのライヴ配信はご視聴いただけません。
※お申込みは、おひとり様につき2枚まで。詳細はHYDE Official Fan Club「HYDEIST」にてご確認ください。
・映画館ライブ・ビューイング
申し込み期間:プレリザーブ(抽選)2021年6月26日(土)12:00 ~ 6月28日(月)23:59
◎チケットぴあ(電子チケット):https://w.pia.jp/t/hyde-heianjingu-lv/
※プレリザーブお申込みは、おひとり様につき2枚まで。
一般発売期間(先着):2021年7月21日(水)18:00 ~ 7月30日(金)12:00
◎チケットぴあ(電子チケット):https://w.pia.jp/t/hyde-heianjingu-lv/
※一般発売お申込みは、おひとり様につき2枚まで。
※一般発売は先着順となりますので、予定枚数に達し次第受付を終了いたします。
<配信情報>
HYDE
「20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU」
2021年7月31日(土)18:30開場/19:00開演
◆アーカイブ配信期間:8月1日(日)21:00 ~ 8月4日(水)20:59
2021年8月1日(日)18:30開場/19:00開演
◆アーカイブ配信期間:8月2日(月)21:00 ~ 8月5日(木)20:59
※開場時間中には公演前の演出など、現地の様子を配信予定です。
配信メディア:GLOBE CODING
※ライヴ配信のチケットをお持ちの方は、アーカイブ配信期間中は何度でも視聴が可能です。
※アーカイブ配信期間終了時点までに視聴を開始された方は最後までご視聴いただけます。但し、アーカイブ配信期間終了以降にページリロードを行うと視聴不可となりますので、ご注意ください。
料金:4500円(税込)
販売期間:【7月31日(土)公演】2021年7月21日(水)18:00 ~ 8月4日(水)18:00
【8月1日(日)公演】2021年7月21日(水)18:00 ~ 8月5日(木)18:00
チケットぴあ申し込み:https://w.pia.jp/t/hyde-heianjingu/
視聴に関するお問い合わせ:https://globecoding.jp/support/
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
内田彩、初のギター弾き語りを披露した『ACOUSTIC DAY』スペシャルゲストにぐんまちゃんらが駆け付けた『SWEET POP NIGHT』ライブレポート
PR TIMES / 2024年5月2日 10時15分
-
indigo la Endツアー「藍衆」総括 かつてない進化を遂げたライブバンドとしての現在地
Rolling Stone Japan / 2024年4月23日 21時0分
-
オール・タイム・ロウが語る、結成20周年を祝うライブへの想い、ポップパンクの可能性
Rolling Stone Japan / 2024年4月23日 19時0分
-
「王様戦隊キングオージャー ファイナルライブツアー2024」ツアー最終日の3公演をuP!!!独占生配信!チケット販売開始!
PR TIMES / 2024年4月21日 13時15分
-
THE YELLOW MONKEYのライブ映像作品が、いつでも、どこでも視聴可能なサブスクサービス「TYM STORAGE」の詳細公開 メンバー出演のオリジナル特番も配信予定
PR TIMES / 2024年4月19日 13時45分
ランキング
-
1「なんかガリガリ」第4子妊娠の元モー娘。の“激ヤセ”姿に心配の声続出、過去にも体重激変
週刊女性PRIME / 2024年5月3日 17時0分
-
2太田光 「ウエストランドがご迷惑をおかけしました」 ガルアワ初出演で「みちょぱです」
スポニチアネックス / 2024年5月3日 19時31分
-
3おぎやはぎ テレ東・松丸アナ〝人力舎所属〟報道に「聞いてない」「絶対に所属になりません」
東スポWEB / 2024年5月3日 17時17分
-
4草彅剛主演「碁盤斬り」がイタリア映画祭で〝批評家賞〟 白石和彌監督「みなさんのおかげです!」
東スポWEB / 2024年5月3日 22時30分
-
5なかやまきんに君がボン・ジョヴィのアンバサダーに「すごいことが起きましたね」
東スポWEB / 2024年5月3日 17時5分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください