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ASKAが語る、CHAGE and ASKAのハーモニーの秘密

Rolling Stone Japan / 2021年7月7日 11時45分

ASKA

ASKAがニューシングル「笑って歩こうよ」を7月14日にリリースする。このシングルをフックにASKAサウンドの魅力について聞き始めると、CHAGE and ASKAの楽曲の思わぬエピソードが飛び出した。更に、初の配信ライブのことも話してくれた。

―先ずは近況から教えてください。

シングルが完成して、今はアルバムを出すため、日々歌詞を書いては歌って、歌って完成しては気になるとこをまたやり直すという、いつものスタイルです。

―そうやって今まで一体何曲作ってきたんですか?

1000曲近く作ってますね。

―それだけ作ってきてもいい音楽を生み出すためには地道な作業を繰り返しやっていくしかないんですね。

数曲なんですけど、歌詞に関してものすごく後悔している楽曲があるんです。楽曲って世の中に発表したら、それが最終形なので。だから自分の中の後悔を経験しないためには、やっぱり徹底的に満足するものを出していくということしかないんです。

―ちなみに、その後悔した曲ってなんですか?

まず「男と女」です。この曲は当時プロデューサー判断で歌詞の書き直しをしました。
これはいま僕がそのプロデューサーの年齢を超えたから言えることです。あの時、プロデューサーには受け入れられない、もしくは「別の何か」への期待があったのでしょう。書き直して歌ってはみたものの、今ここに来ると、やっぱり書き直す前の歌詞の方がしっくりくる。出しちゃったものはしょうがないですよね。でもライブで一度だけ自分が書いた歌詞で歌ったことがあるんです。”この楽曲は、実はこういう歌詞が最初はついてて。不意に思い出してしまうってことは、いまだにその歌詞の方が自分の中では響くということなんでしょう。今日はその時の歌詞を歌わせてください”と言って歌ったことがありましたね。

―それはいつやったんですか?

2002年の『STAMP』というCHAGE and ASKA初のセルフカバーアルバムを出した後の武道館でしたね。

―修正前と後、歌詞はどこがどう違ってたんですか?

”ふるえる肩越しに あなたのさよなら 背中で涙をかくす 私”っていうのが世に出た歌詞なんですけど、僕が書きたかったのは、”気づいていました あなたのさよなら あなたが無口になった時に”でした。あなたが無口になった時に気づいてたっていうことを僕は書きたかった。”背中で涙をかくす私”という表現は、僕に見えていた女性像とは少し違っていた。あなたが無口になった時に実はもう分かってたんだっていうね。僕の中ではその方がいまだに良かったと思ってます。

―本人から聞いちゃうから余計そうなんですけど、ASKAさんが書いた詞の方がスッと入ってくるし、詩的です。

歌詞とメロディが相まった楽曲なので、プロデューサー判断としては”背中で涙をかくす私”で情景を描写したかったのでしょう。対して、ボツになった方は心理描写ですね。最終的に書き直したのも自分です。どうしてあの時もっと粘らなかったんだろうっていう後悔があって、でも一回世の中にそれを伝えて発表した時点で浄化されたので。でも、その後にも「砂時計のくびれた場所」っていう曲があって。

―この曲も?

はい。どうしても楽曲の最後の締めのコード一歩手前が、思いつかなかった。これじゃないか?っていうものにしたんです。すごく近いところまできてるんだけど別のコードがあるはず、でもその時にはどうしても思いつかなかった。で、出してはみたものの、毎回ライブで歌う時に、そこに来ると、”うーん、別のコードなんだよな……”って思いながら歌ってました。苦しみですよ。それを『STAMP』でやり直したんです。遂に見つかって。それは、作品としては本当はやっちゃいけないですよ。他の人が、この楽曲を”こういう風にカバーしました”、それはOK。だから、この時もやり直しという言葉は使いましたけど、リメイク、セルフカバーとして出しました。そういうことで自分を納得させて、やり直したんです。

―なるほど。今作っているアルバムに関しても納得いくように地道に作っては……。

はい。残していく作品ですからね。


ハーモニーへのこだわり

―そして、7月14日にシングル「笑って歩こうよ」が発売されます。ハーモニーが印象的な曲ですが、ASKAさんと言うと、チャゲアスも含めて”ハーモニーソングの達人”のイメージがありますが、それはいつから始まったんですか?

「恋人はワイン色」からですね。プロデューサーがすごく優秀な人だったんです。さっき言った「男と女」の人です。どうして僕らのハーモニーは単純なんだろう?っていうことを話したことがあるんです。それに対してなんで海外のミュージシャンのハーモニーっていうのは音楽的にスマートに聴こえるんだろう?と。そしたら海外のミュージシャンのコーラスは音階をぶつけてるからなんだよと。”ぶつけてる”っていう意味を教えてくださいって言って、その意味を教えてもらったんです。専門的になるからここでは割愛しますが、それは今まで僕が気がつかなかったことでした。もちろん先輩のシンガーたちは皆んな気がついていましたけど、そこまで僕は無知だった。それからハーモニーにこだわりだしました。ペダルハーモニーっていうのがあって、コードトーンに乗せるハーモニーのやり方あるんですけど、サイモン&ガーファンクルみたいに、一個一個のハーモニーがメロディになってるっていうのを僕は自分の曲の売りにしたかったんです。そこからそういうことをやるようになりました。



―”ハーモニーがメロディになっている”っていうのがまさにASKAさんですよね。

それはすごく意識しています。

―「笑って歩こうよ」は歌詞の内容は色々な解釈ができなくもないんですが……。

恋愛の切れ端も見えるし、人生のある種ブリッジ的な潜り抜けるところも見えるし。でもなんだかんだあっても、人は色々言うけど、何を言われても笑って歩こうよっていうことが最後言いたかったんです。だって直接出会う人じゃない人の方が圧倒的に多いわけで。その人たちは媒体を通してしか僕を知らないわけです。おおよそ僕が言いたことはなかなか伝わらないですよ。僕が見て欲しいことはなかなか見てくれない。だけどそれが世の中なので。自分のことを分かってくれる人たちの中で暮らしていけばいいと思ってますしね。でも言う人は何とでも言いますから。そこにいちいち何だかんだ言う必要はなくて、僕のスタイルは音楽活動で見せていけばいいだけなので。笑って歩いていこうよって、ある種誰もが持っていなきゃいけないことだと思うんですよね。何を言われてもいいじゃん、自分さえしっかりしていれば。笑い飛ばそうよって。でもそれがなかなか難しい。なかなか笑って返すことは難しい。だから僕の作品っていうのは、その人を投影しているんじゃなくて、僕の想像が作品になっているのも多いですね。もちろん、そのままの自分を書いた曲も多い。よく作品に僕を投影して、ASKAってこういう人なんだって思ってる人がいます。僕は素直に言います、違う、これは僕じゃないと。確かに僕の体験があるだろうけど、こんなことがあっても、こういう人でありたいっていうのが作品なんだって。


今からまたラブソングが増えるのかなっていう気がしてます

―なるほど。それにしても覚えやすいメロに”笑って歩こうよ”っていうシンプルな言葉が乗って、すごいメッセージになっているのも驚きです。

ちょうどこのタイミングで出した意味があって。実はこの曲、ちょっと前に作った曲だったんですけど、今出すことになったこの曲の運命があると思うんです。このご時世のなか、普通であれば皆んな笑っているようなシーンでも、笑っちゃいけないムードがあったりしますよね。一つの視点に目を向けると決して笑い事じゃない。過去にこんな時代ってありました?って感じです。僕らが知らない時代にはあったでしょうけど、少なくとも僕らが生きて来た中では、こんな時代はなかったですよ。赤ちゃんが世に誕生した時に、最初にやることって、泣くことと笑うことでしょ。この二つしかないわけです。あと寝ることぐらい。でもそんな中でも、やっぱり笑うことって伝染するんです。泣くっていうのは何かしら理由があるけど、その理由は分からないですよ。でも笑うってことに理由はないですから。笑顔に理由はない。だから笑うっていうことを今書いてみたんです。

―カップリング曲の「プラネタリウム」は書き下ろしですか?

これもちょっと前の曲です。ストックしてる新曲が50曲あってまだまだ発表してない曲がいっぱいあるんです。これも、アルバムに入れようかどうしようか迷ったんですが、今回のシングルの2曲、似てるなって思われるでしょうけど、割とこの辺のポップス性っていうのは、僕の音楽の中で好みだと思ってくれる人が多いんじゃないかなと思って。ただ、普段の僕なら「笑って歩こうよ」が1曲だったら、もう1曲は全然違うどマイナーのロックを持ってくるのがASKAっぽいと思われがちなんですけど、「プラネタリウム」はありかなと思って。



―「笑って歩こうよ」は”笑って歩こうよ”がまさに伝えたいところだとおっしゃってましたが「プラネタリウム」で伝えたいメッセージは?

僕はラブソングに関してこんなことを言ってきたんです。10代のラブソングは綺麗だと。20代のラブソングもすごく綺麗だと。30代になるとラブソングはちょっと意味を持ち始める。30代って、秘めた恋愛が加わってくる。40代になるとラブソングを歌うことに少し無理が出てくる。50代になってニコニコとラブソングを歌ってるってちょっとキモい。60代になると、還暦とはよく言ったもので、本当にリセットできるので、60代が若い時の感覚で歌うことになんか無理がないんですよね。すごく自然に歌えるんです。だから、それの表れが少しずつ始まってきたかなっていうのがこの曲です。そして、今からまたラブソングが増えるのかなっていう気がしてますね。


配信ライブを開催した理由

―なるほど。メッセージという言葉で思い出したのですが、「笑って歩こうよ」には”青いシャツを着た雨のメッセージ”という言葉が意味深に出てきますが、これは?

「笑って歩こうよ」に出てくる”青いシャツを着た 雨のメッセージ”。これは、ただ単に雨のメッセージじゃなくて、時代背景のことなんです。上から降ってくるもの、僕らが囲まれているもの、それを受け止めていかなきゃいけないなっていう。そもそも、雨は本当に青いのか?ってところですよね。でも、雨色って空の色によって変化するじゃないですか。けど、僕は青い雨を歌ってみたかった。でもそれは、世の中の状況を一回受け止めない限りそこは乗り越えられないですから。反発ってただの反発でしかないですし、受け止めた上で自分の考えがあってそこを進んでいかなきゃいけないですから。抽象的な説明なんですけど、ちょっと自分の中ではそこはこだわったところではあるんです。

―ASKAさんが言う”青い雨”って、空が青いから雨が青く見えるってことなんですか?

それでもいいですし。水滴自体が青と思っている人がいればそれでもいい。”水滴は灰色だよ”、それはその人の感覚ですよね。その人の今の状態です。でも僕はそこに色をつけてみたかったんです。

―シングルリリースの前には6月23日に初の配信ライブを行いました。配信ライブをやらないことにこだわっていたASKAさんが今回配信ライブをやろうと思った経緯は?

僕はライブのステージをかなり作り込んでいるので、ブルーレイで観た時も、ステージは2Dでも、画面を観ながら脳内では3Dにしてみたい。ただ、配信ライブに関しては2Dを超えられないです。やっぱり平面にしか映らないんですよ。だから自分には合わないなって思って、もうちょっと色んなものがデコレイトされたものが、ステージの中で感じられるようになったらやってみようかと思ったんです。その時期はもうちょっと先だろうなと思っていたんですが、ところが今回、そう言っていた僕もやらないといけない事情ができたので、そんなこだわりはもはや要らないと思いました。

―配信ライブのタイトルは「すべての事には理由がある」ですが、その”理由”が今言った”事情”なんですね?

そうですね。詳しくは言えないんですど、そのこだわりを捨ててでもオンラインライブをやることが僕には必要だった。その気持ちをメンバーの皆んなに伝えたら、皆んながそれに乗ってくれて。本当にね、皆んな泣かせるんですよ。”もし足りない分は僕もお金を出します”って。”ギャラ要りません”って。そんなこと言うメンバーも出てきたりとか。だから、皆んなの気持ちが一つになってますね。ここを皆んなで共有して、皆んなで一つの心になろうっていうところですよね。僕は集まってくれたメンバーに、ありがとうっていう気持ちしかないですね。

―その参加メンバーがすごいことになってました!

CHAGE and ASKAの時の歴代のメンバーと、ASKAバンドですからね。

―このメンバーでの演奏も素晴らしかったです。

CHAGE and ASKAの曲もやりましたし、ソロ曲もやりました。で、その度に演奏メンバーが変わるんですけど、そこは配信のいいとこで、”ごめん、ちょっと今時間かかってるけどさ”とか”ちょっと今ジャック差し込んでるんで”とか。それが普通にできますから。でもライブ自体は奇をてらわずにやれました。だって”やること”が一番の目的なので。ステージにこだわって”ここを魅せよう””ここで掴もう”っていうのは、実はあまり考えていませんでした。今僕がやることが一番なので。

そして10月9日を皮切りに全国ツアーが始まる。前回『ASKA premium ensemble concert -higher ground- 』ツアーから約1年7カ月。同ツアーにて奇しくも中止となった大阪、熊本公演も含まれるASKA自身も待ちに待ったツアーだ。ASKA、バンド、ストリングの三位一体のアンサンブル。前回にも増して熱いステージになることは間違いないだろう。

<INFORMATION>


「笑って歩こうよ」ASKA
DADA label
7月14日発売

01. 笑って歩こうよ
02. プラネタリウム

『ASKA premium concert tour-higher ground-アンコール公演』

2021年10月9日(土)東京・府中公演:ディスクガレージ 050-5533-0888
2021年10月16日(土)熊本公演:BEA 092-712-4221
2021年10月24日(日)静岡公演:サンデーフォーク 054-284-9999
2021年11月5日(金)岡山公演:YUMEBANCHI(岡山) 086-231-3531
2021年11月6日(土)広島公演:YUMEBANCHI(広島) 082-249-3571
2021年11月10日(水)相模原公演:ディスクガレージ 050-5533-0888
2021年11月16日(火)東京・渋谷公演:ディスクガレージ 050-5533-0888
2021年11月17日(水)東京・渋谷公演:ディスクガレージ 050-5533-0888
2021年11月23日(火・祝)高崎公演:ディスクガレージ 050-5533-0888
2021年11月26日(金)東京・国際フォーラム公演:ディスクガレージ 050-5533-0888
2021年11月30日(火)大阪:YUMEBANCHI (大阪)06-6341-3525
2021年12月  9日(木)京都:YUMEBANCHI (大阪)06-6341-3525
2021年12月17日(金)仙台:GIP 0570-01-9999
2021年12月22日(水)名古屋:サンデーフォーク 052-320-9100
2021年12月28日(火)福岡:BEA 092-712-4221

https://www.classics-festival.com/rc/aska-premium-concert-tour-higher-ground-2021/






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