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ケンドリック・ラマー、ドレイクと並ぶ三強? J・コールが6作全米1位の偉業を成し遂げた理由

Rolling Stone Japan / 2021年7月16日 20時0分

J・コール(Photo by David Peters)

音楽メディアThe Sign Magazineが監修し、海外のポップミュージックの「今」を伝える、Rolling Stone Japanの人気連載企画POP RULES THE WORLD。ここにお届けするのは、2021年6月25日発売号の誌面に掲載されたJ・コールの最新作『The Off-Season』を考察した記事。如何にして彼はケンドリック・ラマーやドレイクと肩を並べる、現代の三大ラッパーの一人に名を連ねることになったのか?

時の流れは容赦ない。2010年代はラップがメインストリームを席巻したが、2010年代半ばにその先陣を切ったレイ・シュリマーやミーゴス、その後のマンブルラップ勢はわずか数年で人気に陰りが見え始めている。新世代のラップスターは次々と登場するが、生き残れるのは一握り。

それを踏まえると、最新作『The Off-Season』がオリヴィア・ロドリゴ、テイラー・スウィフトに続く今年3番目の初週売上を記録し、デビュー作から6作連続1位を獲得した史上初のラッパーとなったJ・コールは、やはり特筆すべき存在だ。2010年代を通して極めて高い人気と影響力を保ち続けているという点では、ケンドリック・ラマー、ドレイクと並ぶ三強の一人に数えていい。

J.Cole - The Off-Season


J・コールがこれほどまで高い人気を保ち続ける理由としては、「ラップのポップ化」という時流に流されないオーセンティックなビートメイキング(コールはプロデューサーでもある)と、Rolling Stoneが評するところの「思慮深いジョッキーのように人種、階級、ジェンダーの問題をナヴィゲートする」リリシストとしてのスキルの高さが挙げられる。ポップなラップヒットには色気を見せず、自身のラップ芸術を追求する無骨さと生真面目さが信頼に繋がっているとも言えるだろう。

ただ、それゆえに、マンブルラップによって「ラップのポップ化」が推し進められた2010年代後半には、どこか居場所のなさを感じることもあったようだ。なにしろ2019年のシングル「Middle Child」は、自分はジェイ・Z世代とマンブルラップ世代の狭間の世代で「人々の目を引かない」という切なさの表明から始まる曲だったのだから。

J. Cole - MIDDLE CHILD


だが、この『The Off-Season』にはそこからの前向きな意識の転換がある。2014年の三作目以降、アルバムには一切客演を呼ばず、「孤高のアーティスト」としてプロップスを高めてきたコールだが、本作には21サヴェージやリル・ベイビーなど新世代ラッパーたちをフィーチャー。一方で、アルバム冒頭の「9 5 . s o u t h」ではジェイ・Z「U Dont Know」(2001年)と同じサンプリングネタを引用するなど、上の世代へのリスペクトも忘れない。2010年代は「ラップのポップ化」によって新旧世代の世代間抗争が起きた時代でもあったが、コールはミドルチャイルドの役割としてその両者を繋ぎ、歴史の分断に抗おうとしているかのようだ。

J. Cole - 9 5 . s o u t h (Official Audio)


もっとも、『The Off-Season』はコールによる新章の始まりに過ぎない。2018年の時点で、コールは「『The Off-Season』が間もなく出る……全ての道は『The Fall Off』に続く」と宣言していた。この次に待ち受ける『The Fall Off』で、果たして彼は何を見せようとしているのだろうか。

Edited by The Sign Magazine

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