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絶対に聴き逃したくない「偉大なソング6曲」 2021年4月~6月期リリース編

Rolling Stone Japan / 2021年7月17日 10時0分

ラナ・デル・レイ(Photo by Mat Hayward/Getty Images)

音楽メディアThe Sign Magazineが監修し、海外のポップミュージックの「今」を伝える、Rolling Stone Japanの人気連載企画POP RULES THE WORLD。ここにお届けするのは、2021年3月25日発売号の誌面に掲載された2021年2ndクォーターを象徴するソング6選の記事。

2020年初頭に世界がパンデミックに見舞われたせいで、どこか歴史がねじれたような期間が続く中、この6曲は2010年代の残り香と、2020年代になって生まれた新たな萌芽と変化がゆっくりと混じり合い、新たな光景を浮き上がらせている「今」を体現している。BTS、リル・ナズ・X、キッド・ラロイ、ラナ・デル・レイ、ビリー・アイリッシュ、ドージャ・キャット――今聴くべき6曲を紹介しよう。

1. BTS / Butter


2ndクォーターMVPソングがこの曲だという事実に異を唱える者はいないだろう。bpm110のディスコポップという形式に取り立てて新しさはない。敢えてネガティヴに言えば、サウンド的には「Dynamite」のヴァージョン2でしかないとも言える。だが、北米発のトラップとダンスホールが世界中のポップ音楽のビートの進化とジャンル融合をもたらした「変化のディケイド」だった2010年代の後に訪れた、2020年代前半という「ポストジャンルの時代」における最大の共通項をこの曲は的確に射抜いている。何よりもリリックが完璧だ。しなやかに強かに、出会う者すべてをその魅力で虜にしてしまうBTSという存在のメタファーとしての「バター」という言葉を見出した時点で、未曾有の成功は約束されていたと言っていい。彼らBTSはもはやK-POPという枕詞を必要としないグローバルポップの覇者。これから先の2020年代半ばのポップ音楽を語る/生きる/考える/楽しむ上で、今BTS以上の存在を思い浮かべることは難しい。もはや彼らが世界の中心なのだ。


2. Lil Nas X / Montero (Call Me By Your Name)


自らのファーストネームを冠したタイトル。サブタイトルは北イタリアの避暑地を舞台に少年と青年のひと夏の恋を描いた同名のルカ・グァダニーノ2017年の映画を示唆する。オンライン上でみつけ、そこにカントリーのテイストを見出し、たった30ドルで買ったビートを使った2019年を代表するメガヒット「Old Town Road」とは違い、ダンスホールレゲエとフラメンコの中間に位置するこの曲のビートは、メジャー契約後に信頼を固めた鉄壁の布陣によって磐石。本人もディレクションに加わり、同性愛を禁忌として位置付ける聖書からの引用で溢れたMVは、30数年来、信仰と罪というテーマを執拗なまでに描き続けるニック・ケイヴという異端の存在をも想起する鋭利な批評性と、MCU映画以降のどこか馬鹿げたSFスペクタクルタッチの壮大さが同居した、まさに2021年の表現。ソーシャルメディアがすべての中心となった時代を知り尽くしたメディアパーソナリティという肩書きさえももはや過去。一発屋どころか、新時代の総合作家という称号こそが現在の彼には相応しい。


豪州のラッパー/シンガーの最新ヒット

3. The Kid LAROI / Without You


全盛期のオアシスを思わせるギターストローク、魅力的なしゃがれた声、誰もが聞き飽きつつもいまだ惹かれてやまない喪失の物語――てっきり90年代半ばのポップロックの雄フーティー・アンド・ザ・ブロウフィッシュのカヴァーも記憶に新しい、ポスト・マローン新曲だと誰もが思い込むに違いない。だが、実際は、故ジュース・ワールドにフックアップされた豪州のラッパー/シンガーの最新ヒット。彼もまた、現在のポストジャンル時代の申し子の代表格だろう。かつてオアシスの曲をギター1本でさも申し訳なさそうに弾き語った故マック・ミラーが思わず苦笑する姿が脳裏に浮かんでくるようだ。時代は変わった。故ジュース・ワールドとの共演曲がメガヒット、ジャスティン・ビーバー最新作にも参加し、この「Without You」はマイリー・サイラスを客演に迎えたリミックスもあってチャートをさらなる追撃中。しかも、どうやら彼と契約したのはコロンビアCEO、ロン・ペリー。間違いなく2020年代前半のトレンドは彼を中心に進んでいるようだ。


4. Lana Del Rey / Text Book


教科書というタイトルは、人生の伴侶を探そうとする女性がそこに「今は亡き父の面影」を投影してしまうことのメタファーだろう。コーラス冒頭は「あなたはサンダーバードに乗っている/私の父と同じ車」。50年代に生まれたフォード・サンダーバードは古き良き時代(?!)の富やアメリカンドリームの象徴。つまり、有害な男性性という言葉がすっかり一般化した2010年代を経た今、にもかかわらず、ここでは「強い父性の喪失」に対する悲しみがほのめかされている。だが、コーラスはこう続く。「さあ、歴史を書き換えましょう/あなたと一緒に踊りきってみせるの」。しかも最後のパートはこうだ。「私たちは群衆の中で『Black Lives Matter!』と叫んだ」。続くカントリー・ソング「Old Man River」の引用は悠久の時を刻む歴史のメタファー。つまり変化は時間を有するということ。ここでの彼女は、愚かで間違ってもいた過去を愛おしむことと、社会の不条理を改善していくことの同居の可能性をほのめかす。誰もが正しくあることに腐心する中、ラナ・デル・レイは現実の複雑さを見つめている。


ビリー・アイリッシュのリアルな表現

5. Billie Eilish / Lost Cause


1stアルバム以降、今現在のメガポップスターという立場からの視点を歌うことが続いていたビリー・アイリッシュがここ2曲、かつての「自らの半径5mの場所のリアリティ」から言葉を紡ぎ出している。トキシックな男性に対する反撃というトピックは決して目新しいものではないものの、いまだ変わらない現実とパンデミック以降の限られた生活という背景からすれば、これこそが彼女にとっての今もっともリアルな表現だということが伝わってくる充実の仕上がり。兄フィニアスによるbpm75のビートも、以前のトラップではなく、グルーヴィなベースラインを配することで新時代の到来を告げている。かつてはメールゲイズに対する防御策としてオーバーサイズのスタイリングだった彼女がこのMVでは女友達たちと部屋着姿でトゥワークを披露。すべてが健康的に攻撃的なのだ。現在の彼女は責任あるロールモデルが陥りがちな陰鬱とした場所にはいない。来るべきアルバムの「前よりずっと幸せなの」というタイトルは新時代に向けての攻撃の狼煙にほかならない。


6. Doja Cat / Kiss Me More feat. SZA


MOOO!――鼻の穴にフライドポテトを突っ込んだ乳牛のコスプレ姿の彼女の動画がミームとしてヴァイラルした2018年にはまさか、ドージャ・キャットが今のようなエスタブリッシュされたポップスターになるとは誰もが思ってもみなかったに違いない。だが2020年初頭、時代のトレンドにあわせ、bpmをぐっと落としたフレンチタッチ/フィルターハウス仕様の「Say So」がパンデミック後の世界であれよあれよという間に市民権を獲得。その後、MTVアワードでのエモロック仕様にリメイクされた「Say So」のパフォーマンスの見事な滑り具合がむしろ安心と懐かしさを感じさせたものの、SZAを客演に迎え、イントロでのギターアルペジオを筆頭に、より90年代スウェーディッシュポップ感を強めたこの4月第二週の新曲では、どこかBTSと並走する、ポストジャンル時代におけるネオオーセンティックスタイルを確立したと言えるかもしれない。3rdアルバム『プラネット・ハー』は6月最終週リリース。かなりバラエティに富んだ仕上がりになるようだ。

Edited by The Sign Magazine

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