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TOMORROW X TOGETHERロングインタビュー完全翻訳「僕たちの音楽でしか語れない物語を伝えたい」

Rolling Stone Japan / 2021年7月25日 18時0分

TOMORROW X TOGETHER photographed for Rolling Stone India by Ahn Yeonhoo. Art Director: Tanvi Shah, Visual Creative: Lee Hyunju, Rakta, Stylist: Kim Gyunam, Hair: Kwak Minkyoung, Makeup: Han Areum

青春時代の悩みを癒す芸術性を携え、人気急上昇の韓国の5人組が新世代の代弁者になった理由とは? ローリングストーン誌インドの電子版の表紙を飾った、ロングインタビューを完全翻訳でお届けする。

2020年、私はインド生まれで現在50代後半の父が、20代になるかならないかという韓国のボーイバンドTOMORROW X TOGETHERに出会った瞬間を目にした。父はある日私のSpotifyプレイリストで彼らの曲を耳にし、たちまち魅了され、おすすめの曲やミュージックビデオのリンクを訊いてきた。その当時は間違いなく父にとって人生で辛い時期だったが、どういうわけか父は彼らの軽快なサウンドに喜びを、彼らのメッセージに安らぎを見出した。もっとも、決して歌詞をすべて理解していたわけではなかったが。私はこの話を、2021年のインタビューでTXTの5人のメンバーに聞かせた。彼らはこれを聞いて感激した。

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「僕たちが取り上げてきたテーマは、年齢に関係なく、今の時代を生きる大勢の人々にぴったり当てはまります」と言うのは、5人組のリーダーでボーカルのSOOBINだ。「とくに大勢の10代の子たちや若者には、僕たちの音楽を聴くと共感できると言ってくれる人が多いです。僕たちにとっても、そういう話を聞くとすごく嬉しいですね。世界中の人たちが僕たちの曲に共鳴してくれてものすごく嬉しいですし、感謝しています。これからも皆さんを感動させ、皆さんの気持ちや考えを反映した音楽を作っていきたいです」。


ローリングストーン誌インド版 2021年6月号のデジタル版の表紙に登場したTOMORROW X TOGETHER(Photo by Ahn Yeonhoo)

SOOBIN、YEONJUN、TAEHYUN、BEOMGYU、HUENINGKAIが2019年にTOMORROW X TOGETHERとしてデビューした当時、彼らは株式会社HYBEのレーベルBig Hit Music(当時はBig Hit Entertainment)が世界的メガスターBTSの次に送り出す、最初の後継アーティストだった。兄貴分のBTSが世界中で大成功を収めたのをうけ、次のグループは何を仕掛けてくるのか、という期待が高まり、TXTのサウンドや彼らが発信するメッセージをめぐって様々な憶測が飛んだ。今年初めに行われたローリングストーン誌インド版とのインタビューでHYBEグローバルCEOのレンゾ・ユン氏は、BTSの後を継ぐのがいかに大変かはレーベル側も承知していて、メンバーを型にはめるのではなく、アーティストとしてメンバーの人柄を重視したことがTOMORROW X TOGETHERの成功のカギだった、と語っている。「TOMORROW X TOGETHERのデビューの準備期間で、我々はBTSに影響されないよう努めました」とユン氏は説明した。「実際、BTSとは違うグループにしようとはっきり決めていました。TOMORROW X TOGETHER独自の音楽性や、メンバー1人1人の嗜好、仲間意識などを重視したんです」。


BTSの作品が若者と社会の関係を掘り下げたのに対し、TOMORROW X TOGETHERは成長の過程そのものを吟味することを目指し、人生の中でも人格形成に重要で、後から振り返ればまるで夢のような時期に頭から飛び込んだ。それは新鮮で、私的で、力強く、メタファーや想像力を盛り込んで、1人の若者の視点で人生の新たな側面を示した。「僕たちはいつも、自分たちの音楽でしか語れない物語を伝えようとしてきました」 メッセージ性について、ボーカルのTAEHYUNはこう語る。「ですから、僕たちがティーンエイジャーの視点で成長の物語を描いたのはごく自然な流れだったと思います」 ボーカルのBEOMGYUはさらにこう説明する。「僕たちの音楽はつねに、自分たちも含め、今を生き抜く若者が主人公です。僕たちも駆け出しの時は10代でしたから、初期の作品では人生の中でも複雑で混乱に満ちた時期を生きるティーンエイジャーがテーマでした」 TXTのメッセージは普遍的でありながら、完全に独特だ。

複数のチャプターに分かれるTOMORROW X TOGETHERのアルバムは、それぞれ成長の異なる側面を切り取りつつ、幻想的なビジュアルの世界へといざなう。最初はイマジネーションや成長の痛みにまつわる純真無垢なテーマからスタートした――ファーストEP『THE DREAM CHAPTER: STAR』とリードシングル「CROWN」は、新鮮で、陽気で、若さにあふれ、友情や自己発見の物語を掘り下げ、若者の視点から世界をとらえた。セカンドアルバム『THE DREAM CHAPTER: MAGIC』とリードシングル「 9 and Three Quarters (Run Away)」では次の段階へ。高校へ進み、友情/恋愛も複雑になり、世界を理解する中で、現実逃避の必要性は依然にも増して困難になった。また10代の子たちにありがちなように、このアルバムも世界のポップカルチャーから多くを引用して中核を形成した。『THE DREAM CHAPTER』シリーズ第3弾にあたる『ETERNITY』ではさらに人生の暗い側面に目を向けた。青春の殻を破り、壊れた友情やいさかい、自分探しの旅、さらには不安や別れや死といった恐怖などの現実に対峙した。ショートホラーフィルム形式の「Eternally」のミュージックビデオは夢と現実の境界を曖昧にしてこうした心の旅を見事に描き出し、若者の胸の内と感情が成長するさまを19分にわたって描いた。



「彼らは身体的にも精神的にも変化していきますが、他のティーンエイジャーもやはり彼らと同じような気持ちなんです」 ミュージックビデオの中でメンバーが演じるキャラクターについて、BEOMGYUはこう語る。「10代のころは人間関係や友情を築き、ともに夢を追いかけます……だから『THE DREAM CHAPTER』なんです」 アーティストとして次の段階の『The Chaos Chapter』に突入すると、TOMORROW X TOGETHERの作品は最新EPとともに新たな展開を迎えた。「そして今度は『The Chaos Chapter: FREEZE』です。ここでは少し成長したティーンエイジャーが、現代の様々な問題に直面する姿を描いています」とBEOMGYUはさらに続けた。「成長についての普遍的な物語です。このアルバムはきっと世界中の若者の皆さんの胸に響くと思います」。

『The Chaos Chapter: FREEZE』では、"大人"に差しかかった若者が現実世界で様々な感情を経験する姿を描いている。若者は未熟で、おびえている。後戻りはできないが、この先築いていく人間関係を通して逃げ場を見つけ出せるだろう。「『THE DREAM CHAPTER』シリーズは、仲間との間でアイデンティティを見つける少年の姿を追った青春の物語です」 この時代と最新の時代の関係について、SOOBINはこのように語る。「『The Chaos Chapter: FREEZE』の主人公は、世界の惨状で生活からあらゆる日常性が失われていく中、恐れと虚しさを抱いた少年です。この物語では、少年は自分にとって特別な存在を見つけ、”愛”という感情を発見するんです」 もちろん、コロナウイルス感染拡大とそれに伴う生活の混乱もこのアルバムの主要なテーマのひとつだ。人類全体として、また個人として、自分たちの存在意義を問いかけている。ラッパー兼ボーカルのYEONJUNはアルバムの記者会見でこの点についてさらに追及した。「みんなそれぞれ日常生活を送っていますが、日常が揺らいだことで少年は無力に感じ、何もできなくなってしまうんです」 一部の楽曲はこれまでのアルバの流れを引き継ぎ、フィクションの物語をさらに展開して成長の過程を描いている。「밸런스 게임 (What if I had been that PUMA)」は『THE DREAM CHAPTER: ETERNITY』の楽曲「동물원을 빠져나온 퓨마 (PUMA)」を思い起こさせるし、「No Rules」は『THE DREAM CHAPTER: MAGIC』の「New Rules」を反映している。


『The Chaos Chapter: FREEZE』はフィクションの物語と画面上のキャラクターを膨らませた上に、アーティストとしてのメンバーの進化ぶりも証明している。5人全員が作曲やコンセプト作りに参加し、18歳で最年少のHUENINGKAIは「디어 스푸트니크 (Dear Sputnik)」でプロデュースのスキルも発揮している。SOOBINが「소악행 (Ice Cream)」を共同作曲した一方で、「밸런스 게임 (What if I had been that PUMA)」の作曲にはYEONJUN、TAEHYUN、BEOMGYUの名前もクレジットされている。「No Rules」はもっとも多くのメンバーが作曲に関わった作品で、YEONJUN、BEOMGYU、HUENINGKAI、TAEHYUNがクレジットされているし、「Frost」の歌詞はYEONJUNが手がけた。「僕たちはデビューした当初から、制作プロセスに関わりたいと強く願っていました」とHUENINGKAIは言う。「自分たちの能力を磨くうちに、アイデアを膨らませて提案する機会も次第に増えていきました」 Big Hit Musicが所属アーティストを積極的に作曲やプロデュースに参加させていたこともあり、メンバー全員が定期的に歌詞やプロデュースやコンセプトをレーベルに提案し、アルバムに盛り込んでいった。HUENINGKAIいわく、シンセサイザーが響く壮大なロックテイストの「디어 스푸트니크 (Dear Sputnik)」は彼がグループに加入する前に作ったサンプルをもとに、数年かけて作られたものだそうだ。「『its just a sample(ただのサンプル)』というファイル名でレーベルに送ったら、とてもいい評価をいただきました。そこから膨らませて、最終的に形になりました」



リードシングルの「0X1=LOVESONG (I Know I Love you) 」は、世界が混乱に陥り、あまたの疑念や悲しみが胸によぎっても愛を信じる、という内容だ。HYBEの創業者パン・シヒョク、BTSのRM、アメリカ人アーティストMod Sunが共同作曲し、Big Hit MusicのSlow Rabbitがプロデュースしたこの曲は、TOMORROW X TOGETHERの中でもとくに力強く、抒情的な作品だ。また彼らが他のアーティスト――韓国のシンガーソングライターSeoriと正式にコラボレーションした第1号でもある。グランジロックと生々しいボーカルで、これまでの5人には見られなかった成熟や葛藤が伝わってくる。そうした重々しさは、Seoriのソフトなハスキーボイスと見事な対比をなしている。6月25日にリリースされたアコースティック・バージョンでは、ラッパーのpH-1とWoodie Gochildも制作陣に加わり、新たなヴァースが加わることでオリジナルの生々しさがより強調されている。「こんなに素晴らしいアーティストと一緒に仕事ができるなんて、本当に光栄です」 『The Chaos Chapter: FREEZE』の制作にかかわったコラボレーター、プロデューサー、ソングライターの顔ぶれについて、YEONJUNはこう語る。「みなさんのご協力に感謝しています」。

>>関連記事:RMが語るK-POPの定義、BTSと自分自身のアイデンティティ

『The Chaos Chapter: FREEZE』はビルボード・アルバムチャートでTXT史上最高位の5位にランクインし(それまでは2020年のEP『minisode1 : Blue Hour』の25位が最高位だった)、Top5にランクインした4組目のK-POPグループとなった。グループ初期の活躍をみてみると、『THE DREAM CHAPTER: STAR』がK-PPOP男性グループのデビュー作として最高位を獲得し、全米6都市を回るツアーはソールドアウト――いずれも新人K-POPアーティストとしては異例の快挙だ。TOMORROW X TOGETHERの今後の目標について尋ねると、全員口をそろえてこう答えた。「僕たちの目標はつねに、自分たちの最高の音楽とパフォーマンスを届けることです。世界中のMOA(グループのファンの総称)のためにステージでパフォーマンスするのが待ちきれません」


この2年、5人は成長過程にある世界各地の若者の道しるべとなる一方で、数百万人の大人たちに10代のころを思い起こさせた。人生の試練の重みに耐える一方で、1人じゃないんだ、という感情が沸き起こる。そうした感情ゆえに彼らは大勢のファンを獲得し、チャートでも素晴らしい成績を収めてきたのだ。若い彼ら――メンバーの年齢層は18~21歳――の肩には多くがのしかかるが、TOMORROW X TOGETHERはそうした重圧を背負う覚悟ができている。「まったくプレッシャーがないわけではありませんが、逆にもっといい音楽を提供したいというモチベーションにつながっていると言えますね」とYEONJUN。彼らはインスピレーションは双方向で生まれると考えている。自分たちと一緒にファンも成長しつつ、自分たちもファンとともに成長することを忘れてはならない、と。「間違いなく、MOAとの関係は双方向です」とHUENINGKAIも断言する。「僕たちが発信しているのは、MOAはもちろん、大勢の人が音楽を通じて共感できるストーリーです。ありがたいことに、ファンも音楽に共感して僕たちを応援してくれます。そうやってファンとTXTは、相手の中に自分自身を見出しているんです」


TOMORROW X TOGETHERのメンバー。左からSOOBIN、HUENINGKAI、BEOMGYU、YEONJUN、TAEHYUN。ローリングストーン誌インド版の撮影にて(Photo by Ahn Yeonhoo)

インスピレーションの話題になったところで、各メンバーに音楽の道を進むきっかけを聞いた。「いち観客だったころから、パフォーマンスには特別な力があると思っていました」とSOOBINは打ち明けた。「シンガーやパフォーマーは人々にたくさんの喜びを与えることができます。僕も学生の頃、学園祭で張り切ってパフォーマンスしていました。オーディエンスの声援を聞くのが楽しかったです」 YEONJUNにとって、アーティストへの道のりはダンスへの情熱から始まった。「学生のころダンスグループに所属していたので、当然ステージでパフォーマンスする機会はたくさんありました」と本人。「ステージに上がった時、他では感じたことのない興奮を覚えました。ダンスにすっかりほれ込んで、ぶっ通しでリハーサルしているうちに、自分がどれだけパフォーマンスが好きなのか、気づいたんです」 BEOMGYUにはかなり幼いころの音楽の記憶があるという。「父はいつもドライブで音楽をかけていました。僕も中学校の時にバンドを始めて、観客の前でパフォーマンスするうちに音楽の道が見えてきました」と彼は説明する。「ずっとこの夢を叶えたかったので、今のこの生活にすごく満足しています」 TAEHYUNも家族を通じて音楽への情熱を見出していった。「姉がK-POPにハマっていたんです」と彼は振り返る。「自然のなりゆきで僕も好きになりました。SHINeeのミュージックビデオを見て、すごくクールだと思ったのを覚えています。そのあと中学の時にHYBEに加入する機会があり、世界中の様々な音楽へ幅を広げることができました」。

HUENINGKAIは覚えている限り、音楽で食べていくことを考えなかった時はなかったという。「つねに音楽に囲まれていましたね。僕の身近な人々はほとんど、なにかしら楽器を演奏しています。僕にとって、音楽の道に進むことは自然な流れだったんだと思います。歌うことも、ギターを弾くのも大好きでしたから」


グループを結成して以来、強い絆を築いてきた秘訣は何だと思いますか?という質問に、TAEHYUNは迷わずこう答えた。「やっぱり、自分が失敗してもフォローしてくれる仲間が4人いる、というのは大きいですね」と彼ははっきり言った。「グループとして思い描く未来や目標について、僕たちの意見は一致しています。ここまでこれたのもメンバー同士の強い絆のおかげだと思います。一緒に過ごした時間を通して、チームワークを磨くことができたのは間違いありません。僕たちはひとつのチームとして、ファミリーとして、より良い音楽やパフォーマンスを作るために一緒に活動しています」

現在のポップシーンでTXTの存在を特異にしているのは何か、という話題になると、メンバーはしばし考えあぐねたあと、こう切り出した。「僕たちの音楽は、万国共通の若者の経験を物語っていると思います」とTAEHYUNが口火を切った。「だからこそこれだけ多くの人が、出身地や言葉に関係なく、僕たちの音楽に共鳴できるんだと思います」 YEONJUNは、TXTの総合的な美意識や幅広い芸術性がさまざまな境遇の人々を虜にしている、と考えている。「僕たちは音楽も、振り付けも、スタイルもトレンディです」と本人。「幸運なことに、これまでアルバムを通じて幅広いジャンルに接することができました。将来的には、TOMORROW X TOGETHERそのものがひとつのジャンルになるかもしれませんね」。

TXTのコンセプトはTOMORROW(未来)の部分が前面に押し出されているが、メンバーはTOGETHERの部分のほうに力点を置いている。彼らにとって、最終的にはベストを尽くし、いま自分たちを必要としてくれる人に寄り添うことがすべてなのだ――それがインドに住む私の父親であれ、世界のどこかにいるティーンエイジャーであれ。「僕たちはアーティストを、世界に共感や安らぎやポジティブなエネルギーを与えれられる人だと定義しています」とBEOMGYUは言う。「世界中の人々にパワーを与えられるアーティストになれたら、とも思っています」 YEONJUNも感慨深げに同意し、今後残していきたいレガシーへの思いを口にした。「僕たちの音楽やパフォーマンスを通じて、皆さんにエネルギーと安らぎ、共感を持ち帰ってほしい。それが僕たちの最大の願いです」と彼は言う。「僕たちはMOAの皆さんからたくさんのパワーをもらっています。だから、僕たちも皆さんのパワーの源になれたらと思っています」


ローリングストーン誌インド版2021年6月号デジタル版の表紙撮影の舞台裏
撮影:Ahn Yeonhoo
アートディレクター:Tanvi Shah
ビジュアルクリエイティブ:Lee Hyunju、Rakta
スタイリスト:Kim Gyunam
ヘア:Kwak Minkyoung
メイク:Han Areum

Fron Rolling Stone India

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