人間椅子が語る、欧州公演やコロナ禍を経て、シンプルな一体感で伝えたかったこと
Rolling Stone Japan / 2021年8月6日 17時45分
今や名実ともに日本を代表するハードロックバンドとして君臨する人間椅子。特に2010年以降、いくつもの印象的なターニングポイントを迎えながらデビュー30周年イヤーをひらりと飛び越えた昨年、そのヘビーサウンドをヨーロッパツアーで轟かせ、喝采を浴びるに至った。
【動画を見る】『映画 人間椅子 バンド生活三十年』予告編
2019年に発表した前作『新青年』は30周年記念作品となる通算21作目のオリジナルアルバムであったが、バンド史上でも大きなアルバムセールスを記録した作品となった。しかも、そこにサブスクの視聴回数まで含めると、人間椅子の音楽を聴いている視聴者の数はデビュー当時と同じか、またはそれ以上かもしれない。
今年、彼らは通算22作目となるアルバム『苦楽』を発表する。コロナ禍においても挫けることのないハートで立ち向かったレコーディングの末に生まれたのは、今の時代だからこその強い思いが込められた傑作だった。
今回はアルバムについてはもちろんのこと、筆者も足を運んだヨーロッパツアーのエピソードや曲づくりの苦労について3人に話を聞いた。
―最近、デビュー当時の頃かそれ以上の規模で人間椅子の音楽が聴かれているような気がするんですが、みなさんの体感としてはいかがですか?
和嶋慎治(Gt, Vo):去年、海外ツアーへ行くチャンスが得られたという時点で、デビュー当時ぐらい聴かれてるかもしれないですね。僕らがデビューした頃のバンドブームは若い人が中心となった動きだったけど、あれから30年が経った今では僕らと同世代の人らも聴いてくれてるし、ありがたいことに若いロック好きの人もライブに来てくれるので、あの頃よりも幅広い層に受け入れられていると思いますね。
鈴木研一(Ba, Vo):売れているとは思ってなかったけど、この前、実家に帰って温泉に行ったら、温泉の店員さんから一緒に写真撮ってくれって声かけられて、「デビューしたての頃みたいに声かけてくる人がいるんだな」ってびっくりしました(笑)。マスクしてたのになんでわかったんだろう。
和嶋:それはわかるよ! 鈴木くんの場合はマスク関係ないね。
―(笑)。2年近く前に別の音楽サイトでみなさんにインタビューしたとき、記事のキャッチコピーが「今が絶頂期」だったんですが、今はさらに更新していますよね。ずっと上昇している感覚ってありますか?
和嶋:2013年に「Ozzfest Japan 2013」に出たのが重大なターニングポイントで再デビューしたような感覚があったんだけど、その後もずっと登ってる感覚はありますよ。その前があまりに低迷していたから余計にそう思うのかもしれないけど。
―ノブさんはデビュー当時は別のバンドのメンバーでしたが、人間椅子を客観的に見ていた初期と実際にメンバーになった今を比べてみてどう感じていますか?
ナカジマノブ(Dr, Vo):当時は同世代のバンドとして同じ時期にデビューをしたライバルというか戦友みたいな存在で、「人気あるな」「売れてるな」「頑張ってるな」という目で見ていたり、なんとなく近いところにいるイメージでした。2004年に加入してから思うのは、デビュー当時と今とで枚数とか動員に近いものがあったとしても、音楽的な見え方はちょっと違うんじゃないかなと。今は、人間椅子が表現したいことをより理解してくれている人がライブを観に来てくれているんじゃないかなって。デビュー当時はきっと、アイドル的な見方をする方もいたかもしれないけれど、今はちゃんと音楽を聴いて、生の演奏を体感するためにライブハウスまで足を運んでくれている人が増えているのかなあという感じですね。
―今のほうがバンドの本質的な部分を好きになってくれている人が多い。
ナカジマ:もちろん、昔もそういう人はいたと思うし、バンドの音楽的な芯も変わっていないんですけどね。僕が加入してからも一足飛びではないけれどじわじわ会場が大きくなったり、会場が変わらなくても2デイズができるようになったり、30年かけて少しずつ大きくなってきてるんじゃないかなと僕は思います。
デビューの頃から自分たちはすっごい面白いことをやってると思ってる
―バンドのベーシックは変わっていないのに注目度が高まっている状況ってご本人としてはどういう感覚なんですか?
和嶋:高まってるんですかねえ……? ちょっと実感ないなあ……でも、去年『映画 人間椅子 バンド生活三十年』を公開したけど、そんなこと数年前には考えもしなかったもんね。やっぱり、ロックを好きな人がいっぱいいて、いい音楽をやってる人もいっぱいいる。そんな中にあって僕たちはちょっと個性的で独特な表現をしているので、そこが伝わったのかなと思いますね。デビューの頃から自分たちはすっごい面白いことをやってると思ってるんですよ。だけど、僕らみたいなバンドが超メジャーになるのもおかしいと思うし、今ぐらいでちょうどいいと思う。ただ、僕らの曲を聴いたりライブを観て「おもしれえ!」と思ってくれたり、笑ったり泣いたりしてもらえるのが幸せなので、そういう人たちがまたちょっとでも増えたらうれしいですね。
―『新青年』リリース以降で最も大きなトピックとしては初のヨーロッパツアーが挙げられると思います。僕もロンドン公演を拝見しましたが、すごく盛り上がっていましたよね。あのツアーを振り返ってみていかがですか?
和嶋:あれから1年以上が経った今となっては、「夢見てたんじゃないかな? あれは本当だったのかな?」と思います(笑)。しかも、ロンドンですごくウケたし。僕たちはイギリスのロックを聴いてカッコいいと思って、それをバンドでやりたくて中学の頃からバンドを始めたんですけど、日本人が海外のハードロックをそのままなぞってやるよりも、和風でやるほうが海外ではウケるだろうという思いがあって、日本語で歌ったり、文学を取り入れたり自分たちなりのオリジナリティを加えていたんです。それを信じて続けていたら本当に海外で受け入れられた。そうやって認めていただけたことで、「ああ、やってきてよかったな」と思いました。
鈴木:やってみてわかったのは、思ってたよりも金がかかるんだなということで。海外には本当にまた行きたいし、次はもっと具体的に考えないといけないので、僕ら3人とローディとPAの5人だけで回れるように、なんとか工夫したいですね。あと、向こうのライブハウスって思ってたより大きい音が出せなくて、「もっと小さくしろ」って何度も言われて、ベース的には全然望んでいた音にならなかったからリベンジしたいんですよ。音が小さくてもいい音が鳴るアンプを荷物代がかかっても持っていくべきでした。
―前回は夢を実現するという意味合いが強かったと思うんですけど、次に行くとなったらまた違ったものになりますよね。ビジネス面でも成功させないと。
和嶋:現実的な行き方をね。
鈴木:毎回毎回タクシー乗ってたら絶対ダメだなって。自分たちで機材を担いで、とことん節約しないと次はない。長く行けるように考えないとダメですね。
―ノブさんはどうでしたか?
ナカジマ:僕は海外でワンマンをやるというのがバンド人生における夢だったし、それが叶ったので今でも幸せですね。僕のこの先のバンド人生にかなり影響を与えてくれたと思います。今2人が言ってくれたようにいろんな面で反省点もあるので、次に行くときはそれを活かせるようしたいし、いろんな土地にも行きたいし、夢が膨らんじゃってますね。もちろん、コロナの状況は変わらないとダメだから慎重にならざるを得ないと思うんですけど。
―ロンドンのお客さんはシュッとしたファッションの人たちが多かったですね。
和嶋:お客さんはカッコよかったね! あれは参ったなあ! 女の子もみんなオシャレなんだよ。その前日に行ったドイツの工業都市ボーフムとは全然客層が違うんだよね。
ナカジマ:ボーフムはガタイのいい人たちばかりで、みんなロックTを着てて、ビール飲みながら「音楽楽しむでー!」って感じで。
―終演後のミートアンドグリートでは参加者一人ひとりとしっかり話し込んでいる姿が印象的でした。
鈴木:すごく高いチケットを買ってもらったから、僕らもついサービス精神が出ちゃって。
ナカジマ:嬉しかったしね!
和嶋:みなさん片言だけど日本語の挨拶を覚えてきてくれるんですよ。相手の母国語に合わせてコミュニケーションを取りたいっていう気持ちは万国共通なんだなと。
―イギリスだけではなく、いろんな国からお客さんが来ていました。
ナカジマ:ポーランドとかね。
和嶋:イタリアもいた。イスラエルもいなかったかな。
―YouTubeの再生回数もすごいけど、あの何百万という数字よりも目の前にいる一人ひとりのお客さんのほうがよりリアルというか。
和嶋:ああ、そうなんですよ。数字は数字だから想像するしかないんだけど、本当に来てくれたっていうことで実感できましたね。
クオリティが落ちない理由
―『新青年』の制作が終わってからの2年間は、今回のアルバムをつくるにあたってどういう時間だったと思いますか?
和嶋:人間椅子は3年に2枚ぐらいのペースでアルバムを出していてそのためにバンドは動いてるので、いつものアルバムをつくるっていうのがひとつありましたね。なので、コロナ禍になってもいつもどおりにアルバムをつくるわけですけど、ヨーロッパツアーのあと1年以上ライブ活動ができていなかったのでそれは歌詞に影響しました。ただ、この現状を「ツラい」とか「どうすればいいんだろう」って具体的に書くのではなく、我々の独特な表現で心情を表せればいいなと思って取り掛かりました。コロナは大きく影響してます。
―コロナはリリースペースには影響を与えていないですね。
和嶋:今年はなんとかツアーをやれることになりましたけど、もしかしたらできなかったかもしれなかったから、だとすればなおさらアルバムを出しておかないと。それしかやれる活動がないし、どんなに状況が苦しくてもアルバムを出してたと思いますよ。
―なるほど。
和嶋:あと、お客さん側にもいろんな職種の人がいて、今までどおりに働けている人もいるでしょうし、そうじゃない人もいっぱいいると思うんだよ。みんな苦しいと思うんだよ。そこに何かしらのメッセージを届けることは義務みたいなもの。励ましてあげたいとか、「我々、頑張ってますよ」でもいいから、それを伝えないと。
―作品資料に、「いたずらに批判的にならぬよう、特定の事象をあげつらわないよう、細心の注意を払うつもりです」とありましたが。
和嶋:今後、社会がどうなっていくのか分かる人はいないと思うんですよ。それをルサンチマン的感情で……社会的弱者が権力者をただ批判するみたいなことになるのはいかんなと思ったんですよ。政治に対する個人的意見はあくまでも個人的なものなので、そういうことはしないようにしようと思った。
―そういうメッセージを明確に伝えるバンドもいますよね。
和嶋:そういうバンドもいていいと思いますけど、自分たちはノンポリでいたいし、そういう立場で面白いこと、不思議なことをやりたい。自分たちのやりたいことがやれる社会であれば僕らは文句はない。そういうことを現時点での僕らなりの言葉で書ければなと。
―デビュー以降、22枚もの作品を定期的につくり続けているわけですが、どこから音楽的なアイデアが湧いてくるんですか? ほかのジャンルやバンドから今でも影響を受けたりするんですか?
和嶋:聴いているのは古い音楽ですね。
鈴木:でも、曲をつくるにあたって影響を受けるとしたら、自分は和嶋くんからですね。「すごいな、この展開」と思ったら、それに負けないようにカッコいい展開を自分もつくろうと思う。和嶋くんもそうだろうけど、「とにかく前作よりも上を」って毎回考えてつくるから落ちないんじゃないですか。
和嶋:俺ももちろん、鈴木くんが曲を持ってくると「こういう展開をさせたいな」って思いますよ。バンド内にコンポーザーが何人かいるといい意味で刺激し合うことになるから、それがいいように作用していると思う。あと、どう頑張っても100点を出せないんですよね。自分でもわかるんですよ、ここが足りなかったとか、ここはヘタクソだったなとか。
―そうなんですね。
和嶋:自分らがすげえと思う海外のアルバムを聴いて100点だと思った感じを自分たちのアルバムでも出したいっていう大きな目標があるからこそ、毎回アルバムをつくったあとは100点を出せたと思えない。それで「次はもっといいものを!」っていうことをずっと繰り返しているからクオリティが落ちないんだと思う。
マニアとしては捨て曲がすごく好き
―30年以上にわたってコンスタントに作品を出して、そのどれもがカッコいいって世界中を見渡してもなかなかないですよ。
和嶋:確かにしんどいかもしれないですよね。たとえば、ビートルズはすごくいい音楽をつくったけど8年しかもたなかったし、そう考えると30年続いているのはすげえなとは思います。
鈴木:確かに枚数だけは(ディープ・)パープルに勝ってるね。でも、ストーンズには負けてるのかな。
和嶋:そうですよ。グレイトフル・デッドなんてすごいあるんじゃないの? でも、ストーンズみたいに死ぬまでやる勢いのバンドがいるのを見ると「いいな」と思いますよね。
鈴木:本当にそう。カッコいいんだよ。チャーリー・ワッツを見るとあまりにカッコよくて「体調わりぃ」なんて弱音吐いてる場合じゃないなって思うんですよね。
和嶋:そういうものすごくビッグな大先輩がいるから、僕らが辞めるとか言ったら恥ずかしいっすよ。日本にだってずっとバンドをやってる方はいるし、そんな大したもんじゃないっすよ。確かにこんなにコンスタントに作品を出している人はいないかもしれないけど。
―しかも、人間椅子はどの作品からもまんべんなく代表曲がありますよね。
和嶋:そうね。それは昔から鈴木くんとよく話してるんだけど、「アルバムに1曲か2曲でいいからいい曲をつくろう」って。そういうゆるいルールを自分たちに強いて頑張ってまして(笑)。僕らが好きなロックを聴いてても、全曲いいアルバムってぶっちゃけないんだよね。だから、「おお!」って感動する曲がいくつか入ってればアルバムとしては成功なのかなと。
鈴木:マニアとしては捨て曲がすごく好きなんですよ。
和嶋:そうなんです! 駄作がカッコよく聴こえるんだよ。
鈴木:KISSを聴こうというときに、『ラヴ・ガン』とか「ロックンロール・オールナイト」は選ばないですよね。だから大事なんですよ、捨て曲は。今回のアルバムはすでにレア曲になりそうなものが収録されているので、それも大事にしたい。
―ノブさんは今回のレコーディングにあたってどんなことを考えていましたか?
ナカジマ:実は、レコーディング当日に一発目の音を出すまで、焦りや不安に似た気持ちがあったんですよ。これまではレコーディングをやって、ツアーをやって、イベントに出て、またレコーディングっていう感じでレコーディングとレコーディングの間にも予定が詰まっていたので自分をキープすることができたんですけど、今回はそれがなかったから「今まで通りの表現、演奏、手順を覚えてるかな?」っていう焦りがありました。でも、ドラムのサウンドチェックを始めた途端にホッとして。「ああ、体が全部覚えてるんだ」って。そういう安堵感はありましたね。
―和嶋さんと鈴木さんにはそういう不安はなかったんですか?
和嶋:テンションの高いギターソロってお客さんの前でやらないと訓練できないんですよ。部屋でやってもそんなにテンション高くならない。だから、レコーディングに入るまでは「ソロ、弾けるのかなあ?」と思ってましたね。でも、ひととおり曲作りをやってレコーディングをしていくなかで感覚が戻ってきたのか、全曲すごくちゃんと弾けてホッとしました。
鈴木:去年、雨が長かったせいか倉庫でいろんなものがカビていて、ベースも調子悪くなったので修理しないとレコーディングに入れなかったですね。ずっとライブをやってないと楽器は調子悪くなるんですよ。僕自身も左肘の調子が悪かったんですけど、痛いなりに弾けるフレーズをつくればいいんだと思って、自分がつくる曲は自分に優しいベースラインにしましたね。
和嶋:だからやっぱり、このタイミングでアルバムを出せてよかったんですよ。世の中の状況がよくなるまでレコーディングは止めておこうってなったら、楽器は腐るわ、感覚も忘れていくわで、今しゃべっててもつくってよかったなって思いますね。
「神々の行進」は誰かプロレスラーの入場曲に使ってくれないかなあと思ってます
―今作は人間椅子サウンド特有のおどろおどろしさが控えめで、全体的に割とカラッとした印象があるんですが。
和嶋:ライブがやれていなかった分、お客さんの前で演奏したいっていう気持ちが無意識のうちに働いた気がするんだよね。掛け合いが多いのもそういう理由なんじゃないかなと思って。掛け合いがあることでヘビーな曲も全体的に明るく聴こえるし、我々がお客さんと一緒に演奏しているような一体感がどの曲にも表れているんだと思う。だから、曲調もヒネりを減らしたものになってると思うんですよ。
―確かにわかりやすいフックが多いですね。
和嶋:それは、お客さんと掛け合いをしたいという気持ちと、ヨーロッパツアーに行ってみて、単純なフレーズに単純な言葉を乗せると海外の方にウケるんだなという手応えがあったので、それも意識したところはあるかもしれません。
―歌詞は難解な部分もありつつ、サビには必ずわかりやすくてフックになる言葉が入ってますよね。
和嶋:そう、AメロBメロで難しいことを言ってるんだけど、サビは聴いて意味がわかる言葉にしないとダメだろうなとこれまで以上に思いました。
―「杜子春」「疾れGT」「至上の唇」といった楽曲はそういうタイプですよね。
和嶋:「至上の唇」は鈴木くんが書いたモーターヘッドみたいな曲に、ノブくんにしか歌えない歌詞を乗せてみました。
―たしかにノブさんぽい歌詞だと思います。
ナカジマ:僕が入って最初に参加したアルバムが『三悪道中膝栗毛』で、そこで歌わせてもらったのが「道程」という曲だったんですけど、あれも研ちゃん(鈴木)が曲を書いて、和嶋くんが詞を書いて、僕が歌ったんですけど、あれと同じことをできたのがうれしくて。最初の衝動が再び湧き上がってくるような感覚がありました。早くライブで歌いたいですね。
―先ほど、アルバムに1、2曲いいと思えるものがあればいいというお話をされていましたけど、今作だとそれはどの曲になるんですか?
和嶋:そう言われるとね、今回はよくできたと思う曲がけっこうあるんだよね。どの曲にもフックがあるし。気に入ってる曲を挙げるとするなら、「杜子春」と「夜明け前」。「夜明け前」は、「絶対に朝はあるよ」ということがアルバムを聴いた人に伝わればいいなと思って書いた曲なのでアルバムに入れられてよかったし、「疾れGT」という自分の趣味の曲を入れられたのも楽しかったな。この曲の途中でバイクのエンジン音が入ってるんですけど、レコーディングの合間を縫って自分のバイクの音を録ったんですよ。GoProとスマホとICレコーダーで録って、その中から一番いい音を使いました(笑)。
鈴木:「疾れGT」はいい曲だと思うからライブの1曲目にやりたいね。あと、「神々の行進」は誰かプロレスラーの入場曲に使ってくれないかなあと思ってます。
ナカジマ:僕は敢えて挙げるなら「恍惚の蟷螂」と「夜明け前」ですかね。ドラムを叩きながら楽しい気持ちになりそう。
リフへのこだわり
―バカみたいな質問ですけど、なんでみなさんはこんなに耳に引っかかるリフを生み出せるんですか?
和嶋:多分、お互いにすごく考えてるんですよ。
鈴木:うん、すごく考えてる。
和嶋:なんちゅうか……合格ラインみたいなものがあって、「おお! いい!」っていうカッコいいリフと、音の組み合わせとリズムがイマイチなリフが、口ではうまく表現できないけど明確にあるんですよ。しかも、じゃあ捻ればいいかというとそうでもなくて、意外にシンプルなほうがよかったりするし、そこが難しい。
鈴木:だから、まず自分の中で合格しないといけないし、その後に和嶋くんの審査にも合格しないといけない。「これは文句なしだろ」っていうものができるまでひたすら考えるし、弾くしかない。
和嶋:そうだねえ。時々、頭にリフが浮かんだりするし、夢に出てきたりするの。で、「これはカッコいいんじゃない?」と思ってギターを弾くと全然ダメってことがかなりあるんですよ。
鈴木:夢パターンは絶対よくないよ。
和嶋:頭の中ではカッコよく鳴ってるんだけど、実際に弾くとショボショボっていうのはけっこうあるから難しいんですよ。
―感覚的なものだけど明確なラインがあるんですね。
鈴木:使える音って限られてるじゃないですか。だから、変わったリズムと独特なフレーズがうまく合致したときに「ああ、できた!」って思うんじゃないのかな。うまく言えないけど。やっぱり、先人のリフ作りの名手はすごいっすよね。トニー・アイオミとか「なんでこんなすごいリフが浮かぶんだ」って思うし、ジミー・ペイジもそうだし、その域に近づこうと思って一生懸命考えてますよ。でも、何回やっても適わないんだよなあ。だから、「もっともっと」と思うんじゃないですか。
―ノブさんはそんなふたりをそばで見ていてどう感じてますか。
ノブ:リフひとつ聴いて、「ああ、この裏には10から30個ぐらいのリフがあったんだろうなあ」と思うと、そのひとつひとつを僕のドラムで台無しにはできないって思いますね。だから、ふたりがつくってきたリフでも自分の体のように大切にしなきゃって思ってます。しかも、「このリフは、あんまよくないんじゃないかな?」なんて思うことはないんですよ。もちろん、吟味した上で勝ち残ってきたリフだからだと思うんですけど、「すげえなあ!」といつも思ってます。
―リフをつくるときはノブさんのドラムも思い浮かべた上での審査になるんですか? それとも、リフ単体での判断になるんですか?
鈴木:まずはリフだけでカッコよくないとドラムを乗せてもカッコよくならないですよね。
和嶋:そうですね。ドラムパターンと同時に浮かぶこともあるけど、リフをつくってからドラムパターンを変えることもあるし。あと、再現できないリフはつくらないようにしてますよ。あまりに難しいリフをつくっても弾くのが難しすぎると楽しめないから、それぞれが楽しく演奏できるようなものをつくろうとするね。いいリフってシンプルなんですよ。自分もそうありたい。
鈴木:なかなか近づけないんですよね、「パラノイド」とかさ「スモーク・オン・ザ・ウォーター」とかさ。神々の領域がまだあるんですよね。
【関連記事】人間椅子・和嶋慎治が「青春の情熱」のまま、一度も休まず30年間バンド活動できた理由
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<INFORMATION>
『苦楽』
人間椅子
徳間ジャパン
発売中
『苦楽 ~リリース記念ワンマンツアー~』(全14公演)
8月20日(金)長野 CLUB JUNK BOX
8月27日(金)金沢 GOLD CREEK
8月29日(日)大阪 umeda TRAD(ソールドアウト)
9月1日(水)神戸 CHICKEN GEORGE
9月3日(金)高松 OLIVE HALL
9月5日(日)名古屋 Electric Lady Land
9月9日(木)福岡 DRUM Be-1
9月11日(土)沖縄 桜坂 Central
9月16日(木)福島 いわき club SONIC iwaki
9月18日(土)弘前 KEEP THE BEAT(ソールドアウト)
9月20日(祝月)青森 Quarter(ソールドアウト)
9月22日(水)札幌 PENNY LANE 24
9月25日(土)仙台 CLUB JUNK BOX(ソールドアウト)
9月27日(月)東京 Zepp DiverCity
オフィシャルサイト:http://ningen-isu.com/
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