米女優の変死、ポルノ業界の「病巣」と薬物依存
Rolling Stone Japan / 2021年8月10日 6時45分
米ロサンゼルスで最も治安の悪い地区、スキッド・ロウで人気ポルノ女優として知られるダコタ・スカイの死体が発見された。ハリウッドのセレブリティとパーティ三枚だった彼女の身に何が起こったのか?
2021年6月9日、スキッド・ロウ地区のトレーラーにいた男性から警察に通報が入った。男性によれば、その日の未明1人の女性が立ち寄って、ここで一休みさせてくれないか、と頼んできたという。彼は頼みを聞き入れ、彼女にソファを譲った。だが夜が明けて確認しに行ってみると、女性は息をしていなかった。
女性の名前はローレン・スコット。カラオケとヒラリー・ダフが大好きで、一度は海洋生物学者になりたいと夢を抱いたこともある彼女は、ダコタ・スカイという名前で知られていた。8年前、小柄で亜麻色の髪をしたスカイは19歳でポルノ業界に足を踏み入れ、以来300本近いポルノ作品に出演した。死亡時は27歳。小柄な体格と日常的な愛らしい顔立ちのおかげで、主に10代の役柄を演じていた。
ロサンゼルス郡検視局によれば、スカイの死因はいまだ断定されていない。当局はローリングストーン誌に対し、事件解決までは彼女の死に関する資料の公開を拒んだ。だがポルノ業界では彼女が薬物依存症に悩まされていたのは有名な話だった。死亡時、彼女はホームレスだったという報道があったが、それは間違いだ。彼女は夫と別居し、カリフォルニア州ウッドランド・ヒルズで恋人と同棲していた。だが、かつての栄光からはすでに転落していた。
ポルノ業界の頂点を極めていたころのスカイは、業界トップクラスのエージェントをつけ、数百本ものDVDの表紙を飾り、2015年には栄えあるAVN最優秀女優賞にノミネートされるなど数々の賞に名前が挙がった。だが近年は出演機会も減り、ソーシャルメディアの話題は警察沙汰や(2017年には家庭内暴力で逮捕。のちに起訴は取り下げられた)突飛な行動が中心で、ごく最近も、2021年5月にジョージ・フロイドの壁画の前で胸をさらけ出した。また薬物とアルコールにおぼれ、何年も依存とリハビリを繰り返し、借金をしては仕事がないかと尋ね回っていた。「業界ではとても有名だったんですよ」。スカイの友人で、のちに彼女の指導者となるポルノ女優のキアナ・ブラッドリーさんはこう語る。「他に行くあてがなかったがゆえに、他人の車の中で、見知らぬ男のそばで死んだんです」
【写真を見る】キアナとダコタ・スカイ
スカイがここ数年ポルノ業界で活躍していなかったことから、ポルノ業界の中には体裁を気にして、彼女とは慎重に距離を置いていた者もいる。彼女の物語は悲劇だが、とはいえポルノ関係者に限らず、この街では決して珍しい話ではない、と彼らは言う。「依存症の問題を抱えている人間が過剰摂取で死んだ。ロサンゼルスでは日常茶飯事です とある内部関係者は筆者に語った。「結局のところ、薬物の問題を抱えた哀れな人間が死んだ、ということです」
「生意気なブロンド娘」のキャラクターで瞬く間に人気者に
だが一方で、スカイの死はポルノ業界に巣くう問題を反映している、という者もいる。そのひとつが精神疾患や依存症患者を支える組織的サポートの欠如だ。「ダコタぐらいの年齢だった時、私も最悪な状態で、よく撮影をすっぽかしていました。それで最後には『君はもう雇えない。助けが必要だ。リハビリ施設に入れて助けてもらいなさい』と言われました」とブラッドリーさんも言う。「そういうことは今ではありえません。周りは彼女をさんざん利用して、お払い箱にしたんです」
スカイはフロリダ州クリアウォーター生まれ。アルコール中毒の母親は40代で死去し、父親とは疎遠だった。子供時代に性的暴行を受け、母親は時折アルコールに走った。「彼女が育った環境は、それはもう最悪でした」。夫のザッカリー・ルコント-ゴーブルさんはローリングストーン誌に語った。10代初め、彼女は南オハイオに移って父親の家族と住み、そこで出会った年上の恋人からビデオチャットを勧められた。ルコント-ゴーブルさんによればこの時彼女はまだ16歳。法定年齢に達していなかった。19歳になると、彼女は最初のエージェントとなるEast Coast Talentのジョン・オバーン氏にスカウトされ、フロリダのポルノ業界でキャリアをスタートした。「背の低いモデルも最終的には上手くやれます――小柄な女の子もです」とオバーン氏。 始めて6カ月も経たないうちに、彼女は100本以上の作品に出演した。
ルコント-ゴーブルさんがスカイから聞いた話では、業界に入った当初彼女は、女の子同士の絡みの撮影しかやりたくない、とオバーン氏に伝えていたが――駆け出しのポルノ女優にはよくある頼み事だ――エージェントはすぐに男女の絡みのシーンをブッキングしたという。「まさにおとり詐欺ですよ」とルコント-ゴーブルさんは言う(オバーン氏は記憶にないと言ってこの件を否定し、スカイは初めから男女のシーンをやりたいと言っていた、と語った)。
スカイは仕事を満喫し、まちがいなくその才能があった。「彼女はダコタ・ファニングにそっくりで、それも彼女のウリでした」。スカイの友人で、ポルノ俳優組合を運営するアラナ・エヴァンス氏はこう語る。「生意気なブロンド娘、というのが彼女の持ち味で、ファンもそれを望んでいました」。およそ2年半後、彼女はEast Coast Talentを去ってポルノ界の中心地ロサンゼルスへ移住。ポルノ業界のスーパーエージェント、マーク・スピーグラー氏とともに仕事を始めた。
スカイは怖いもの知らずで、その気になれば友人に寛大だった。ブラッドリーさんがクラブのマーケティング職の面接を受けた時には、スカイは下着1枚になってテーブルに上り、酒をがぶ飲みして客を惹きつけたそうだ。「彼女はつたない声で歌ってくれました。歌はてんでダメだったのに」とブラッドリーさんは振り返る。「私の力になりたいという一心だったんです」。素面の時の彼女は快活で、朗らかで、何にも物おじしなかった。監督兼脚本家のジャッキー・セントジェームズ氏がローリングストーン誌に語ったところでは、全盛期のスカイが一度クレジットなしのエキストラをやると申し出て、冴えない衣装を着て根暗な大学生を演じたことがあったそうだ。「彼女の頼みで太い眉毛を書き、胃腸薬みたいなサイアクの色の服を着せ、ダサいシュシュで髪をまとめました。彼女はまったく気にせず、満足げで、思いっきり楽しんでいました」とセントジェームズ監督は振り返る。「それが私にとってのダコタの思い出です。お高くとまって馬鹿はやらない、というようなところは全くありませんでした」
薬物依存が急激に悪化した理由
だが薬物中毒に陥った彼女は衝動的で、突拍子もなかった。愛犬が病気で手術を受けなくてはならないことをFacebookに延々と投稿したり、元同僚や雇い主にかたっぱしから金をせびることもあった。「普通じゃありえないな話ですよ、彼女はほうぼうから引っ張りだこの女優だったんですから」。ルコント-ゴーブルさんの話では、彼女は突然パリに飛んで見知らぬ相手とセックステープを収録したり、喧嘩中に夫にナイフを向けたりしたそうだ。「僕は悪魔について詳しくありません」と彼は言う。「悪魔に取りつかれた、というような人に会ったこともありません。でも、あの子の中には悪魔が棲んでいました」
ルコント-ゴーブルさんは2015年ごろ、絶頂期だったスカイとパーティで出会った。スカイから妊娠を告げられた後、2人は2016年にラスベガスで式を挙げた(ルコント-ゴーブルさんいわく、スピーグラー氏から契約のオファーを受けた後だったので、仕事を続けるために彼女は中絶を決めた)。ポルノ業界の部外者、いわゆる「民間人」の彼にとって(現在は大麻業界で働いているが、一時期は極右扇動家ミロ・イアノポウロスの広報を務めたこともある)、彼女が風俗業界の人間だという事実をどう受け止めていいかわからなかった。「初めのうちは、それで彼女が女性として力を得ているのだと思いました」と本人。「彼女にやめろと言う権利なんて自分にはないだろう、とも思っていました」 さらにいただけないのが、スカイがザナックスを嗜好していたことだ。「ここはロサンゼルスです。不安症を抱えて、処方されたとおりにザナックスを服用するなら、必ずしも問題じゃありません」と彼は言う。「彼女は初めのころ、実に上手くこのことを隠していました」
ルコント-ゴーブルさんによれば、最優秀女優賞を逃したころから彼女の薬物依存が急激に悪化したそうだ。1度にザナックスを10~15錠も飲む姿を何度となく目にしたという。彼女はメタンフェタミンも吸っていた。「僕はこの業界の人間じゃなかったから、彼女が立ち直る手助けをしたかったんです」と彼は言う。「もしかしたら、彼女の心の支えになってやれるかもしれない、彼女に必要な助けを与えて立ち直らせることができるかもしれない、と思ったんです」。一緒に住み始めてから2年後、スカイがルコント-ゴーブルさんにナイフを突きつけたのがきっかけで夫婦関係は終わりを向かえた。スカイの生前最後の数年間、2016年に別居して以来2人は名目上の夫婦でしかなかった。「僕はむしろ彼女の父親、世話人以外の何者でもありませんでした」と本人は言う。
加速する妄言と暴力
もうひとつ問題だったのが、スカイが徐々に予測不能な行動をとるようになったことだ。彼女はよく妄想に襲われ、暴力的になり、性的虐待や暴行を受けたと言って人々を責めたり、影の勢力が自分を付け回して命を狙っていると主張した。一度などは、ルコント-ゴーブルはケネディ一族の1人で、自分も命を狙われていると友人のエヴァンス氏に語った。別の友人に電話して、家の中に隠しカメラを仕込んだこと、恋人が自分に売春させているのではないかと心配なので行動を逐一記録していることを語ったりもした。「本当におかしなことを口走っていました。彼女と仕事したことのある業界の人間は、彼女の扱い方をよく心得ていました」とエヴァンス氏は言う。「彼女が薬物依存であること、理路整然としていたとしても素面とは限らないことをわかっていました。数年間、彼女はそんな状態でした」。一時期はポルノ男優ロン・ジェレミーにレイプされたと主張した。エヴァンス氏によれば、ロサンゼルス警察がジェレミーの捜査でスカイに供述を依頼すると、最初は彼女も同意したが、後になって協力を拒んだという(ジェレミー被告は現在、他の性的暴行容疑で懲役330年を求刑されている。ローリングストーン誌は同被告の弁護士にコメントを求めたが、返答はなかった)。
【写真を見る】触る、舐める、挿れる、悪行三昧のポルノ男優ロン・ジェレミー
2017年6月、スカイは家庭内暴力を理由にフロリダ州ピネラス郡で逮捕された。ピネラス郡の裁判所記録によれば、スカイは早朝4時55分ごろ、当時付き合っていた恋人をセックスのあと「下唇が切れて腫れ上がるまで」殴ったという。「ドラッグに駆られた激情です」と、事件についてブラッドリーさんは言う。翌月、その恋人は不起訴を申請し、裁判所はこれを認めた。その後2年間でスカイは少なくとも6回リハビリ施設に通ったが、ルコント-ゴーブルさんいわく、たいてい数日後には自主退院していた。どれも長くは続かなかった。数週間薬を断った後、再びエージェントや広報担当者やセレブの取り巻きらの家を転々として、結局は路上生活に舞い戻った。「深夜遅くや早朝に電話がかかってくることもありました。彼女が取り乱しているのは明白でした」とブラッドリーさん。「旦那さんも、彼女の所在が分からないとよく言っていました。ダコタから目を離さずにいるのは一苦労でした」
スカイの窮状はポルノ業界のゴシップブログの格好の標的になった。メインストリームのゴシップブログ同様、彼らは堕ちたスター俳優の苦難に飛びついた。「ダコタはいつも僕らがおもしろがるソーシャルメディアの大惨事だ。本サイトは彼女の動向を見守る一方、彼女がしかるべき助けを得られるよう願っている」 2019年、スカイのリハビリ施設入院のツィートをうけて、あるゴシップブロガーはこう書いている。入院から数カ月後、彼女はバーバンクの裁判所で麻薬等運転の罪で有罪を認めた。だが、精神疾患やソーシャルメディアでの破天荒ぶりがゴシップの格好のネタになっても、彼女は役を演じ続けた。
「薬物中毒者を1本1000ドルで雇っても、助けにはなりません」
実際にインターネット・ポルノ映画データベースに掲載されているプロフィールを見ると、スカイは2019年だけで20本以上の作品に出演している(もっとも、中には過去の作品のコンピレーションもあるが)。「名前が通っていて売れる女優なら、業界は使いたがるでしょう。それがこの業界の悪いところです」とオバーン氏も言う。「スポーツと同じですよ。誰かが負傷したら、代わりを見つけてプレーを命じる。彼女が絡むものは何でも売れたので、みんな彼女を使い続けたんです」。オバーン氏によれば、2018年のExxotica見本市でスカイから事務所に戻らせてくれと頼まれたそうだ。この時彼女はスピーグラーと袂を分かち、学業に戻るべく一時的に活動を休止していたが、それも長くは続かなかった。業界に復帰して以来、彼女はいくつもの事務所を転々とし、ごく普通の女の子というイメージとは相反して身体にタトゥーを入れていた。オバーン氏は申し出を断った。「彼女は以前とは違っていました。私が昔の彼女を忘れられない限り、代理人を務めるのは難しかったでしょう」と彼は言う。「あの時、私が代理人を務めたかったのは昔の彼女です。ダコタにはもうその面影はありませんでした」
この時スカイが受けた仕事は、以前仕事をしたことのある会社が、彼女の問題が公然としているにもかかわらず仕事をあてがって助けてやろうとしたケースが多い。だがブラッドリーさんは、薬物中毒にはまったスカイを雇った者は誰であれ、事実上背中を押したに等しいと言う。「彼女は何でもやるというところまで来ていました。ファンとの対面だろうが、エスコート嬢だろうが、コンテンツ案件だろうが、働けるときに働いていました。とても働ける状態じゃなかったのに」とブラッドリーさん。「この2年、彼女を起用した人は自分を恥じるべきです。彼女の精神状態はおかしかった。それは周知の事実でした。そうじゃないという人がいたら、それは嘘です」。数年前からスカイとは仕事をしていなかったが、時折連絡を取り合っていたセントジェームズ監督も同意見だ。「誰かがこういう状態だったら、自分にできることは相手を雇うことじゃない。私自身の責任問題になるからではありません、彼らのためにならないからです。だって、そんな状態で同意なんてできますか?」
スカイの死後、親しかった人たちは彼女から金を搾り取っていた人々、つまり元エージェントや元広報担当者や彼女を起用したプロデューサーが彼女を搾取し、助長すらしていた、と非難した。何人かはジェームズ・バートレット氏を名指しして批判した。スカイの友人で広報を担当していた彼は、彼女とひっきりなしにパーティを開いて薬物の問題を悪化させた(この件についてバートレット氏は、スカイがドラッグをやっているところは見たことがないし、一緒にドラッグをやったこともないと否定した。「このような言いがかりは名誉棄損です。世の中には悪いことをいうやつらが大勢いますからね」)。だがもっと大きな問題は、業界内にスカイをサポートする組織的な仕組みが欠如している点なのは、誰もが認めるところだ。「彼女には、『だめだ、君を起用するわけにはいかない、でも素面になる手伝いをしよう』と言う人がもっと必要でした。彼女はそれが得られなかった」とエヴァンス氏も言う。「薬物中毒者を1本1000ドルで雇っても、助けにはなりません」
母親・祖父母・愛犬の死
スカイの友人や遺族によれば、彼女はポルノ業界に入る前から依存症や精神疾患を抱えていたそうだ。第一彼女はポルノ業界での仕事を楽しんでいたし、ポルノ業界でたくさんの友人や恩師と出会えた。だがポルノ俳優はたいがい個人事業主なので、えてして健康保険や厚生福利は受けられない。ましてや依存症や精神疾患の患者のための正式なサポートシステムもない。ごくわずかだが、セックスワーカーを主な対象として活動する団体もある。そのひとつが、全米でセックスワーカーにセラピストを斡旋するPineapple Supportだ。だがエヴァンス氏とブラッドリーさんによれば、スカイもPineapple Supportに助けを求めたが、何の返答もなかったそうだ。「私たちみんながダコタを助けようと努力しました」とエヴァンス氏。「ですが彼女に関する限り、たとえ依存症を助長しなくても責任はあります」(Pineapple SupporttのCEOを務めるレイア・タニット氏はこれに反論し、2019年にストーカーから逃げたいと助けを求めるスカイのツイートを見て彼女に連絡した、と述べた。本人から大丈夫だと念を押されたあとも連絡してみたが、彼女からは何の返答もなかったそうだ)。友人や遺族の話ではスカイは業界に入る前から問題を抱えていたが、その一方で精神疾患に悩む人向けの組織的サポートはポルノ業界にはない。「たっぷり稼ぐことができるので、この業界に入ってくる人は後を絶ちません」とエヴァンス氏は説明する。「時には稼ぐこともあるでしょう。でも時にはダコタのように、抱えている問題が助長されるだけです」
COVID-19パンデミック中、認可を受けたポルノ映画撮影も数カ月間閉鎖に追い込まれ、他の俳優たちがみなそうであったようにスカイにとっても2020年は大変な1年だった。だが彼女の場合、個人的に悪いことがいくつも重なってさらに輪をかけた。2019年、長年アルコール中毒だった母親が肝不全で死亡。祖父母2人はCOVID-19に感染してこの世を去り、愛犬エリーも亡くした。2020年5月、非公開の軽罪で彼女は午前3時に逮捕され、ヴァンナイズ拘置所に拘留された。その年の初春にはエスコート嬢の仕事をポルノ業界のゴシップブログで暴露され、ジョージ・フロイドさんの壁画の前で乳房を露出した写真をInstagramに投稿してソーシャルメディアで叩かれた。「ああ、ダコタはハイなんだな、としか思いませんね」。問題の投稿についてエヴァンス氏はこう言った。「素面の彼女はこんなことしません」
死の前夜、スカイは恋人と同棲していた家を出て、複数の友人や広報担当者に電話をかけて泊めてもらえるかと尋ねたが、全員から断られた。「彼女はFBIとマフィアに追われていると思い込んでいました。ヘルズ・エンジェルスのバイカーになるんだと言っていました。完全にハイでしたね」とブラッドリーさん。彼女はバレーからロサンゼルスのスキッド・ロウまで1時間かけて歩き、午前2時30分にホームレスの男性のトレーラーにたどり着いた。ローリングストーン誌はロサンゼルス警察に調書の公開を求めたが、断られた。だが捜査官と長時間話をしたルコント-ゴーブルさんによれば、ホームレスの男性の話ではスカイは何やら吸引してからソファにうずくまり、そのまま眠りに落ちたそうだ。彼女が目を覚ますことはなかった。
ポルノ業界が彼女のためにできたこと
実際のところポルノ業界は彼女に対して――助けることはできないにしても――依存症克服をもっとサポートすることができたのではないか。この点に関して、スカイと親しい人々の間では意見が割れている。「問題を抱えている人がいたら、手を差し伸べるでしょう。助けがいらないと言われたら、他に手の出しようはありません」とオバーン氏は言う。「リハビリ施設に入れ、本人が自主退院したら、こちらはやれるだけのことはやりました。それが助長と言うなら、本人が問題の原因をこっちに責任転嫁しているんです。おそらく業界は彼女を長く手元に残しておきたかったでしょう。もっと彼女に生きていてほしかったはずです。彼女をリスペクトしていましたし、助けが必要なときは自分たちがそばにいることをわかってほしかった。ただひとついえることは、業界は必要なものを買う金を彼女が手に入れられるようにしてやった、ということです。それ自体は悪いことじゃない」。Pineapple Supportのレイア・タニットCEOは、スカイのようなオンラインで活動するセックスワーカー向けの支援団体を運営する上で、個々にアプローチすることがとくに難しい点だ、と語る。「リソースを提供して、彼らの力になることはできます。でも彼らに助けを求めるよう強制することはできません。そこがとくに歯がゆいところですね」と彼女は言う。「本当に助けが必要な人もいますが、助けが必要だと感じていない人もいます。残念ながら(スカイの場合は)後者だったんでしょう」
だが一方で、違った見方をする人もいる。ダコタ・スカイは問題を抱えた若い女性で、業界は使い物にならなくなるまで彼女から搾り取ったのだ、と彼らは言う。使い物にならなくなれば、あとはお払い箱。そうしたシナリオはポルノに限ったことではないが――確かに同じようなことは、はるか昔からハリウッド女優にもあった――風俗特有のレッテルゆえに、困った人々が余計にサポートを求めにくくなっている。ダコタと親しかった人々は「(彼女を助けようと)できることは何でもしました」とエヴァンス氏は言う。「ダコタは助けを受けることもあれば、拒否することもありました。ダコタのような状態だと、結局は本人次第なんです――監督はそういう俳優を起用するべきじゃありません。本来はそうあるべきですよ、周りの人間があらゆる手を尽くして助けようとしても支援がないんですから」
スカイの死後、ブラッドリーさんとエヴァンス氏は募金活動を始めた。アルコール中毒や薬物中毒、精神疾患の問題を抱えるポルノ関係者を支援する、ダコタ・スカイ基金設立に向けたものだ。取材した人々の中には、撮影現場で同意書を提供できないほどぼろぼろになった俳優に、ドラッグ検査を義務付けるという案を提案する人もいた。だがセントジェームズ監督は、こうした措置を業界全体で実施することに懐疑的だ。「嗜好目的でのドラッグ使用はそこらじゅうで見られます。もちろんこの業界以外でも」と監督。「ハリウッドでドラッグ検査をやれば、そりゃあ大問題になるでしょう」
葬儀の席でブラッドリーさんは、スカイが依存症に苦しんでいた時期に彼女を利用し続けた業界関係者に向けてこうスピーチした。「作品に貢献する若い女性を犠牲にするポルノなど、受け入れがたいことです。俳優としても、監督としても、エージェントとしても、ファンとしても受け入れられません。あまりにも犠牲が大きすぎます」と彼女はスピーチした。「ダコタはごく最近の例です。ですが私たちが何もしなければ、きっとまた数カ月後、数週間後、あるいは数日後にこうして集まって、また1人この世を去った若い女性を偲ぶことになるのは間違いありません。もっとできるはずです。もっと手を尽くさなくては」
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