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ジョージ・ハリスン『オール・シングス・マスト・パス』50周年を迎えた名盤の革新性

Rolling Stone Japan / 2021年8月13日 17時45分

『オール・シングス・マスト・パス』ジャケット写真

先ごろ発売されたジョージ・ハリスン『オール・シングス・マスト・パス』50周年記念エディションが、オリコンデイリーランキング(8/6付)で総合1位を獲得するなど日本でも話題を集めている。1970年に発表された本作の革新性、今回のリイシューにおける聞きどころを掘り下げた、米ローリングストーン誌のレビューをお届けする。

【動画を見る】『オール・シングス・マスト・パス』関連動画まとめ

ジョージ・ハリスンが『オール・シングス・マスト・パス』の制作を始めたのは1970年5月、彼が27歳のときだった。15歳のときから音楽人生を捧げてきたビートルズが(同年4月に)解散したあと、ジョージは夏から秋にかけてスタジオにこもり、それまで温めていた曲に打ち込みつつ、新曲も作り上げていった。彼はここでオールスターキャストというべき面々、盟友エリック・クラプトンやボビー・ウィットロック(共に後年デレク・アンド・ザ・ドミノスを結成)、クラウス・フォアマンにビリー・プレストン、リンゴ・スターやジョン・レノンまで十数人の仲間を集めた。

共同プロデューサーのフィル・スペクターが例によって過剰に音を重ねた本作は、同年11月にLP3枚組でリリース。然るべき時間と発言の場さえ与えられたら、元ビートルズの「Quiet One」にいくらでも語ることがあることを証明してみせた。自分の弟に口出しさせない従兄たちが家を出たあと、残された従弟が賢くておもしろい人物であることに気づく。『オール・シングス〜』はそんなアルバムである。




ジョージ・ハリスン(Photo by Barry Feinstein)

今回の50周年記念リイシューは、目からウロコの落ちそうなリミックスに加えて、47曲もの(!)デモ音源/アウトテイクを収録。デジタル音源、LP8枚組、CD5枚組のほか、重さ50ポンド(約22kg)の木製ボックスに2冊の豪華ブックレット、ジャケットに登場する妖精の模型などのグッズを封入した「Uber Deluxe Edition」も用意されている。これぞまさしく”リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド”といったところか。

オリジナルの『オール・シングス〜』は、ここで見事に熟成されている(新鮮なリミックスも悪くない)。親しみやすいフォーキーな楽曲(「ビハインド・ザット・ロックト・ドア」「美しき人生」)、スピリチュアルな探求(サプライズヒットとなった「マイ・スウィート・ロード 」)、爆発的なジャム・セッション(「アウト・オブ・ザ・ブルー」)まで。80年代から90年代にかけてカレッジ・ラジオを占拠したインディーロックを、ここでジョージが発明していたのがよくわかる。

このアルバムは1987年、1995年、もしくは来週の金曜日に、MergeやSecretly Canadianといったレーベルからリリースされたとしてもおかしくない。ジャムについて付け加えると、同じく1970年にリリースされた『ジョンの魂』のミニマムな心理劇や、『マッカートニー』のベースメント・ポップを上回る形で、本作は次の10年がヘヴィなサイケ・ロックの時代になることを完璧に予見していた(ジョージは過小評価されているビートルズのサイケな楽曲「Its All Too Much」の作者でもある)。

『50周年記念エディション』の聞きどころ

制作初期のデモを収録した2枚のCD(セッション初日はリンゴ・スターとクラウス・フォアマンを迎えたもの、2日目はアコースティック・バージョン)は、それぞれが作品として独立していてもおかしくない。フィル・スペクターがウォール・オブ・サウンドのレンガを積んでいく直前、キャンプファイヤーの和やかさを思わせるテイクだ。「コズミック・エンパイア」は初期T・レックスを想起させるし、「マザー・ディヴァイン」では愛するパティ・ボイドにセレナーデを捧げている(というか、いくぶん怒鳴っている)。

ボブ・ディランはもともと本作で密かに存在感を放っていたが(「イフ・ノット・フォー・ユー」のカバー、アルバム冒頭の共作曲「アイド・ハヴ・ユー・エニイタイム」)、ここでも1968年に共作した「ノーホエア・トゥ・ゴー」や「アイ・ドント・ウォント・トゥ・ドゥ・イット」のカバーを披露している。




最後の5枚目のディスクには、フルバンドで演奏したアウトテイクを収録。「ワー・ワー」は少し長いバージョンになり、ゴージャスな「イズント・イット・ア・ピティー(テイク27)」はグループの鼓動のように聞こえる。「美しき人生」の最初のテイクは、なぜだかもっと明るく聞こえる。

この素晴らしいコレクションが示すのは、かつてのバンドメイトが自分の意見を貫き通そうとしていたのに対し、ジョージはロック・コミュニティの一員であることを受け入れ、彼らを自分の頭の中に招き入れたということ。ジョージは自分のヴィジョンを支持してくれる仲間たちに囲まれながら、大空に羽ばたいたのであった。

From Rolling Stone US.



ジョージ・ハリスン
『オール・シングス・マスト・パス』50周年記念エディション
発売中

【画像を見る】デラックス・エディション展開図

①50周年記念スーパー・デラックス・エディション(5CD + 1ブルーレイ【音源のみ】)
価格:20,900円(税込)

②50周年記念3CDデラックス・エディション
価格:5,500円(税込)

③50周年記念2CDエディション
価格:3,960円(税込)

④50周年記念スーパー・デラックス・LPエディション
価格:35,200円(税込)

※日本盤はSHM-CD仕様、英文ライナー翻訳付/歌詞対訳付

⑤Uber Deluxe Edition
5LP、3LP、3LP Color

※UNIVERSAL MUSIC STORE限定、輸入盤のみ

日本公式ページ:https://www.universal-music.co.jp/george-harrison/







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