極悪ポルノ男優のレイプ事件、被害者が明かした「おぞましい手口」の数々
Rolling Stone Japan / 2021年9月14日 6時45分
2020年6月20日、米カリフォルニア州ロサンゼルスのクララ・ショートリッジ・フォルツ刑事司法センターにて レイプおよび性的暴行罪の罪状認否で、スチュワート・ゴールドファーブ弁護士の弁論に耳を傾けるロン・ジェレミー被告。(Photo byDavid McNew/Getty Images)
21人の被害者が絡んだ30件以上の性的暴行罪で米大陪審から起訴されたポルノ俳優、ロン・ジェレミー被告に対する刑事裁判の記録が公開され、セレブの地位を利用し女性を食い物にしていた事件の実態が明らかになった。
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起訴内容は強姦罪12件、強制口腔性交罪7件、拘束下での性的暴行罪6件、異物による性的挿入罪4件、意識不明または睡眠中の相手に対する性的挿入罪2件、14〜15歳未満の児童に対する猥褻行為、強制ソドミー罪、強姦目的での暴行罪がそれぞれ1件ずつで、古いものでは1996年にさかのぼる。被害者はサンフランシスコ・バレーで撮影中に被告からレイプされたと主張する19歳の女性や、ナイトクラブでレイプされたという26歳女性、被告の自宅で性的暴行を受けたという女性など。ジェレミー被告は8月25日、すべての起訴内容で無罪を主張した。2017年にはローリングストーン誌との取材で容疑を否認し、これらの主張「真っ赤な嘘、または責任転嫁」だと述べた。「私はいままで誰もレイプしたことはない」と、長い声明を発表した。
冒頭陳述でロサンゼルス郡検事局のポール・トンプソン検事補は、25年にわたるジェレミー被告の犯行パターンを詳しく説明した。その後21人の匿名の証人のほか、犯行当時近くにいた被害者の友人や夫らも証人として召喚した。
告発者の1人、証人5番は犯行当時15歳だった。証言台に立った彼女は、2004年6月にカリフォルニア州サンタクララで行われたパーティで被告から膣に指を無理やり挿入されたと証言した。『Almost Better Than Sex』と題したそのパーティの主宰者がジェレミー被告だった。被告のアシスタントは、未成年だった彼女にウォッカとクランベリーのカクテルを一口勧めた。その時彼女はすでにエクスタシーを半錠飲んでいた。本人の証言によれば、ジェレミー被告は彼女を楽屋へ案内して「クールなこと」を見たいかと尋ねた。そして性的行為に及んだという。
「ただもうひたすらショックで、身動きができませんでした」と、その女性は証言した。被告を押しのけようとしたが、できなかったと言う。「あっという間の出来事でした」と本人。「彼は私よりずっと力が強くて、体も大きいですから」 事件を目撃していたとみられる女性の友人も被告にやめるように言ったが、被告はひるまなかったそうだ。「彼はただ『だから何だ』と言いました」と、女性は証言した。その女性は2020年夏にジェレミーが最初に起訴されるまで、この件について通報しなかったと言う。「大人には力があることをわかっていませんでした。ほんの子供だったんです」と彼女は証言した。「このことで自分をさんざん責めました」
行きつけのバー&グリルが犯行の現場
数十年にわたって活動してきた伝説的ポルノ男優のジェレミー被告は、憎めないおやじキャラとしてポルノ業界での地位を確立したあと、メインストリームにも進出し、リアリティ番組『The Surreal Life』などのTV番組や『デトロイト・ロック・シティ』などの映画にカメオ出演した。ローリングストーン誌が2017年に取材したアダルト業界で働く十数名の女性は、ジェレミー被告がポルノ業界の有名人としての地位を利用して、誰からも咎められることなくファンや俳優仲間に痴漢行為や性的暴行をしていたと語った。「公然とセクハラや性的暴行をして、まんまと逃げおおせる人間がいるなんて、よっぽど切羽詰まった状況じゃないと口にできません」。ジェレミーから暴行を受けた人気ポルノ女優のジュリア・アンは、当時ローリングストーン誌にこう語った。
2020年夏にロサンゼルス地方検事局がロン・ジェレミー被告を起訴した後、ローリングストーン誌はやはり被告から暴行を受けたという別の数十人の女性(大半はポルノ業界とは無縁)の主張を報じた。「今になればわかります……彼は低俗な人柄で、裏の裏をかいていたんです」と言う女性は、ワシントン大学在籍中だった2009年にセントルイスで、ジェレミー被告から同意なく指を挿入されたと主張している。「笑いのためにわざと低俗なふりをしているだけで、実際には不適切な行為などできない、とでも言うかのように。ですが、結局はやっぱり加害者だったんです」
地方検事局によれば、ジェレミー被告は常連だったRainbow Bar & Grillという店で犯行を重ねていた。「彼はそこに足しげく通っていたので、従業員も彼をよく知っていました。彼も従業員や店のことを熟知しており、それを利用して性的暴行を働いたのです」とトンプソン検事補。
【写真を見る】ジェレミー被告が利用していた「Rainbow Bar & Grill」
以前ローリングストーン誌がRainbow Barの元従業員のエミリー・J・サリヴァンさんに取材したところ、ジェレミー被告は「お客やウェイトレスを触る」ことで有名だったそうだ。「彼はよく背後から近づいて、首や耳にキスしたりお尻を触ったりという変なことをしていました。本人は”ロン・ジェレミーの愛撫”と呼んでいました」とサリヴァンさん(バーの元マネージャーは2020年、ジェレミー被告は「痴漢魔だが、レイプ犯ではない」と語っている)。
ジェレミー被告の弁護を務めるスチュアート・ゴールドファーブ氏は、コメント取材に応じなかった。8月の大陪審起訴の後、ローリングストーン誌に宛てた声明では「彼の立場は、刑事告発された当時と変わっていません。彼はすべての容疑で無実です」と述べている。
ゆうに1500ページにもおよぶ証言には、そこそこ有名人だったジェレミー被告が知名度を利用して、被害者になりそうな女性を誘惑していた手法が語られている。「彼がセレブだとは言いたくありませんが、でもある意味セレブですよね」。2013年にロサンゼルスのホテルでレイプされたと証言した女性はこう語る。「私は小さな町で生まれ育ちましたが、彼はいわゆるステイタスシンボル、有名人でした」
【動画】逮捕前のジェレミー被告が出演したミュージックビデオ、60代にして水着の美女たちと共演
謎のカクテル「ロン・ジェレミー・スペシャル」
ロサンゼルス郡のマレーネ・マルティネス検事補によれば、ジェレミー被告の「狩場」は多数あったものの、暴行のパターンは一貫していたようだ。「彼は自分の思い通りに事が運ぶよう、必要以上にもめ事が起こらないような状況で被害者に暴行を働いていました」
ある女性は2014年、Sardosというバーでジェレミー被告と出会った。同じバーで彼女は元イン・シンクのジョーイ・ファトーンとも知り合い、すっかり舞い上がってファトーンにキスした。翌日ジェレミー被告から連絡があり、ファトゥーンと会わせてやろうと提案された。だが車は別の場所へ向かい、そこで被告は彼女に無理やり性的な行為をした。「それはだめと言いました」と彼女は証言した。「彼は『先端だけだ』と数回言いました」。膣に痛みを感じた後、彼女は医者にくまなく身体検査をしてもらい、ジェレミー被告から暴行を受けたことを明かした。
「医者からはなぜ通報しないのかと聞かれましたが、私はとにかく忘れたいんだと答えました」と本人。「でも全然忘れられません」
別の女性は、2013年にRainbow Bar & Grillでジェレミー被告に会ったと証言した。サインをもらいに友人と被告に近づき、3人で軽くおしゃべりしたという。そのとき被告は、ピザを作っているところを見せてあげようと申し出た。それからその女性を狭いトイレに連れ込み、ドアのカギをかけ、トイレに押し付けた。「胸を見たいだけだ」と言いながらパンティに指をねじ込もうとした、と彼女は証言した。その女性は被告をシンクに押しのけて逃げ出し、友人に店を出ようと言った。
「『ロンからレイプされそうになった』と言いました」と、その女性は証言した。
別の女性は、2013年にRainbow Bar & Grillのトイレでジェレミー被告から暴行を受けそうになったと証言した。被告はバーで「ロン・ジェレミー・スペシャル」なるカクテルを彼女のために注文したが、その女性が「気分が悪い」と言うと、「VIP専用トイレ」に案内しようと申し出た。その女性の証言によれば、彼はドアの前に立ちはだかり、そのまま性的行為に及んだという。
その女性はジェレミー被告に何度も「やめて」と言ったが、腕に「力が入らなかった」ので身動きできないと感じたそうだ。「彼がドアをふさいでいたので、逃げられない。抗うこともできず、身動きもできない。自分ではコントロールできない。絶望的でした」と、レイプされた時の精神状態についてその女性は語った。
別の女性は2014年にRainbow Bar & Grillでジェレミー被告と会ったが、彼女もまた彼からドリンクをおごってもらった後で気分が悪くなったと証言している。「ものすごくめまいがして、その後思いきり嘔吐しました」。公衆酩酊で逮捕されるといけないから、友人のアパートについてくるように、というジェレミー被告の助言に彼女は従った。証言によれば、彼女は居間のソファに横たわっていたが、目が覚めるとジェレミーの指が膣に挿入されていたという。
「私がヘマをやらかしたんだと思いました」 なぜすぐに暴行を通報しなかったのか、という質問に彼女はこう答えた。「どこか安全な場所に連れて行ってやる、という彼の言葉をうのみにした私が悪かったんです」
ジェレミー被告の「手品」
証人2番として証言台に立った別の女性は、2017年3月に夫とハリウッドで休暇を過ごしていた際にRainbow Bar & Grillに立ち寄り、閉店時間にレストランの外でジェレミー被告と出会った。彼女はホテルに戻る前にトイレに行きたくなり、ジェレミー被告は彼女の胸にサインした後、トイレまで案内しようと申し出た。すると彼はトイレの中までついてきて、入り口をふさぎ、尻を見せてくれるまでは帰さないと言った。
その後ジェレミー被告は、「手品」を見せてやろうとその女性に言った。彼女の手を無理やり自分の陰部に置くと、「ロン・ジェレミー、大きくなれ」「ロン・ジェレミー、小さくなれ」と言って、陰部を硬くしたり萎ませたりした。その女性は数カ月後、街に戻ってから居住州で暴行を通報した。「胸がムカムカしました……信じてくれる人がいるとは思えませんでした。相手がお金持ちならなおさらです」と彼女は言った。
証言によれば、ジェレミー被告は狙った獲物の警戒を解く戦術として、この「手品」を活用していたようだ。2019年に年越しパーティでジェレミーと出会った被害者の証言によれば、被告は「手品」を見せようと彼女を外に連れ出し、その後彼女を後ろ向きにして公園のベンチにかがませ、無理やり挿入した。
被害者によれば、その後ジェレミー被告は「いくらだ」と尋ねたそうだ。「何のことかわかりませんでした」と本人。「すると彼は40ドル出して私によこしました」。その女性は2020年春に事件を通報したが、起訴の中ではもっとも最近だ。犯行から数カ月経っていたのは、誰も信じてくれないだろうと思ったからだ。「彼は有名人で、私は単なるパーティで酔いつぶれた若い女でしたから」
証言の中で詳しく語られているように、ジェレミーは被害者に近づくために業界のベテランとしての地位も利用した。証人22番の女性は2008年当時17歳で、ポルノ業界で働くルームメイトたちとロサンゼルスのウッドランド・ヒルズの家に住んでいた。ルームメイトがパーティを開いたが、彼女は参加しなかった。前の年に交通事故に遭い、痛み止めを飲んでいて、運動機能に問題を抱えていたためだ。外で歓声と笑い声が起こったのでドアから覗いてみると、ジェレミー被告がちょうど家の中に入ってくるところだった。2人は目が合い、不安を感じた彼女は部屋に戻った。ほどなくジェレミー被告が部屋に入ってきた。「彼は部屋に入ってきて、『君はポルノ業界の人間かい?』と尋ねました」と本人。「私は『いいえ、まだ17歳だもの』と答えました」
彼女はベッドに後ずさりし、その後ドアから逃げ出そうとした。被告は彼女のパジャマのズボンを脱がし、彼女を壁に押し付けてレイプした。「やめてと言いました。私は震えていました。ルームメイトか誰かに聴こえるように、ドアをつかんで物音を立てようとしました。その時彼が私の背中をぽんぽん叩いて、触ってきて、落ち着いて静かにするよう言いました。『みんなやってることだよ……力を抜くんだ』『音を立てるんじゃない』と」
ジェレミー被告はすべての容疑を否認
ジェレミー被告から暴行を受けたという女性たちの中には、仕事で彼と出会ったと言う女性もいる。2010年夏、22歳のときにジェレミー被告と出会ったというモデルの女性は、被告から400ドルで仕事をオファーされた。日本の雑誌用のヌード写真の撮影で、彼女の裸体にセレブリティの顔の写真をPhotoshopで張り付ける予定だったという。被告のアパートで落ち合った後、被告は服を脱ぐよう指示し、彼女の顔にタオルをかぶせ、ベッドの上でポーズを取らせた。すると彼は本人の同意なく指を挿入したという。
「こんなことはしてほしくない、気持ち悪い、胸がむかむかする、と何度か言いました」と彼女は証言した。「彼はずっと『そんなことないさ、俺たちはみな清潔だ、清潔な食べ物を食べて、清潔な水を飲んでいるんだから』と言っていました。私は『いいえ、あなたはきれいじゃない。今までに何だかの性病にかかったことがあるって自分でも言ってたでしょ』と言いました」
被害者の多くは、昨年夏にジェレミー被告が性的暴行で逮捕・起訴されたというニュースを見て名乗り出ることにした、と言っている。ある女性は、ローリングストーン誌でジェレミー被告がすべての容疑を否認し、告発者は「後悔の念に駆られた」のだと語っている記事を見て、名乗り出る気になったと証言した。「あのことで、あの事件のことで嘘つき呼ばわりされたり後悔していると言われる筋合いはありません」と彼女は言った。「あの男が私を襲った時、私はただ夕食を食べていただけで、彼と関わりを持つつもりは一切ありませんでした」
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