神宿・一ノ瀬みかが語る、「音楽の理解」を深めた上でのネクストステージ
Rolling Stone Japan / 2021年9月21日 19時30分
9月26日にぴあアリーナMMにて単独ライブを開催する原宿発5人組アイドルユニット・神宿。5thアルバム『THE LIFE OF GIRLS』は「女の子の人生の中にアイドルとしての人生がある」というメンバーの想いを伝える内容で、制作においてはメンバーが全曲に関わり、セルフプロデュースの色が最も濃い一枚となった。常にグループを前進させていくパワーの源について、一ノ瀬みかに聞いた。
【画像を見る】神宿の面々
―メンバー自ら楽曲制作に積極的に関わるようになったり、サウンドの方向性が広がったり、グループが大きく変化してからしばらく経つと思うんですが、なぜ今のような形になっていったんでしょうか?
そうですね……2年前に塩見きらが加入して、彼女が初めて作詞した「在ルモノシラズ」という曲をきっかけに、少しずつメンバーが曲作りに携わっていくことになったんですが、その意図としてはファンのみんなに音楽と歌詞をより深く表現して伝えたいという思いがあって。それまでの神宿はいただいた曲を歌って、歌詞を伝えて、ライブでみんなと一緒に踊って楽しむということが多かったんですけど、そうではないよさを出せたらいいよねという話になったんです。
―手応えはいかがですか?
うーん……ファンのみんなから「明るいだけだと思ってたのに本当はこんな辛いことがあったんだ」みたいな声をいただくことによって心の距離が縮まったというか。私たちはコロナ禍でもたくさんの楽曲を発表してきたんですけど、ファンのみんなと会えない時間が増えることで心の距離が離れるのは悲しいし、私たちはファンの心の支えになりたいと思っていたので、そういう意味ではみんなとの絆が深まっていると思います。
―……もしかして、僕が言う「変化」という言葉にあまりピンときていないですか?
ああ、そうですね……神宿は2021年9月28日に7周年を迎えるんですよ。私は最初からいたメンバーなのでグループのことも自分のことも一番客観的に見ていて、そういう立場からすると神宿は少しずつだけど常に変化していっているグループだと思っています。確かに、楽曲面でメンバーが歌詞に携わるようになったという一面を切り取るとすごく大きな変化だと思うんですけど、それ以前にもたくさんの変化があったんです。神宿は常にベストを尽くしてきたし、みんなで意見を出し合いながら進化していると思うので、急に変化したという意識はないんですよね。
―そうなんですね。ビジュアル面もガラッと変わったように見えたので、「変化した」という印象がより強いものになっているのかもしれないです。失礼しました。
確かに神宿には、絶対に髪を染めちゃいけない、ネイルもしちゃいけない、ピアスも開けちゃいけない、カラーコンタクトもしちゃいけないという時期もありました。だけどそれは従来のアイドルの形であって、もちろんそういうよさもあるけれど、2019年に神宿に入ってきた塩見は最初からすでに茶髪だったんですよ。なので、「別に髪染めてもよくない?」みたいな感じになって。
―なるほど。
あと、私は14歳からアイドルを始めて、塩見は加入した時は20歳で、私以外のメンバーはみんな成人していて、そうやってみんなが少しずつ大人になっていく過程をアイドルとして見せることも大事だよねという話になったんです。
昔からのファンとともに
―ジャンルを問わず、熱心なファンって保守的だし、アイドルのファンは特に変化を求めない人が多いように感じるので、みなさんの前進はけっこう思い切った決断だと思います。
それは私たちもすごく考えないといけないことだと思っていて。昔から応援してくださっているファンのみんなは本当に大切なんです。私たちの歴史をすべて知ってくださっているし、辛いことも一緒に乗り越えてきているのですごく大事にしたい。なので、私たちが新しい挑戦をすることで苦しい思いをさせてしまうんじゃないかと思ったこともあったけど、今も残ってくださっているファンがいることも確かで、新しくファンになってくださった方々も含めて神宿のいろんな面を知ってくださっていると思うんです。もちろん、私たちはまだまだたくさん考えないといけないことがあるし、その分できることもたくさんあると思うんです。
―そうですね。
私たちは9月26日にぴあアリーナMMでワンマンをやるんですけど、そのための演出を今みんなで考えていて、昔から応援してくださっているファンのみんなにも楽しんでいただけるように過去の楽曲も織り交ぜられたらいいよねって話し合ったりしています。
―前に進んでいきたいという気持ちとこれまでのファンも大事にしたいという気持ちのバランスのとり方ってすごく難しそうですね。
話し合いをする中で「もっと昔の曲をやったほうがいいんじゃないか」という意見もあるし、「新しい曲ばっかやるほうがいいよ」という意見もあります。2年前に年表をつくったんですよ、神宿が国民的アイドルになるまでの10年分の年表。そのために何をしたらいいんだろうっていろいろ調べたんですけど、やっぱり上手くいかなくて。でも、これは後出しみたいになるんですけど、コロナ禍を経験したからこそ、私は今回のアルバムで自分のソロ曲を入れることができたんじゃないかなと思っていて。みんなに笑顔を届ける、KMYD【K=KAWAII(可愛い!)M=MAX(全力!)Y=YELL(応援!)D=DREAM(夢!)】を届けるって言い続けていると、本当の自分というか、孤独になったときの自分がだんだんわからなくなってくるんです。なので、コロナ禍はそういう自分と向き合ったからこそできる発言や助けられる人が増えるきっかけになったと思うし、それを歌にしたかったので、「Lion」というソロ曲を収録させていただくことになりました。
音楽的スキルと人間力
―では、アルバムについてお聞きします。今作『THE LIFE OF GIRLS』では様々なジャンルを取り入れていると思うんですが、中でもK-POPから影響が大きいように感じました。ご自身としてはどうですか?
世界的な音楽市場を見ていくと、やっぱりK-POPの需要が高かったりしますし、そういうサウンドを取り入れるという話はもともと出ていて。だけど神宿のよさもちゃんと出さないといけないので、それを織り交ぜたような楽曲ができたんじゃないかと思います。
―自分たちの好みというよりも、世界的なトレンドを見た上で自分たちが取り入れるべきサウンドを探っていったと。
楽曲をつくるにあたってはマネージャーの柳瀬が研究熱心で、「こういう音楽がいいんじゃないか」という話をたくさんしてくださるんです。その中で、「これはいいと思う」「よくないと思う」という話し合いをしながら決めていったという感じですね。
―今作を制作する上でポイントになったのはどういうところですか?
以前出させていただいた、『THE LIFE OF IDOL』をリリースした時点で今回のアルバムを出すことは決まっていたんですよ。ソロ曲、恋愛っぽい曲、西海岸っぽい曲、夏っぽい曲というふうに楽曲のタイプもリストアップしていて。あと今回は、アイドルの人生、そして女の子の人生というテーマがあったので、すべての楽曲に自分たちがクレジットされていることが大事だよね、という話もしていました。
―サウンドも大事だけど、それ以上にそこに込めるメッセージが大事だったと。
そうですね。
―なぜ自分たちが楽曲制作に関わってまでメッセージを伝えることが大事だと思ったんでしょうか?
曲に対する理解を深め、知識を増やしていく必要がある。歌って踊る技術を磨くことと、人間としての力を磨くこと、音楽を表現するからこそ、そこに対する理解を深めること、そのバランスを見た上でもっと音楽の理解を深めていくべきだと判断しました。神宿って同じクラスにいても仲良くならないような人たちの集まりなんですよ。それぐらいそれぞれの個性が強くて、各メンバーにつくファンのタイプも全然違うんです。そういう方々がステージの前にたくさん集まることを考えると、それぞれの個性を伸ばしたほうがいいよね、という話になったんです。そのためにはメンバーそれぞれがちゃんと勉強をして、それぞれがリーダーシップをとれるぐらいの人間力を身に付けないとだめだよね、それをできるようになることが国民的アイドルになるために必要なんじゃないかという結論に達したんです。それが私たちが思い描く新しいアイドル像なんじゃないかと。
ソロ曲で表現できた、ありのままの自分
―そういった話し合いを経て制作された楽曲の中で、「Trouble」は初めてメンバーだけで作詞作曲を手掛けた1曲です。制作はどういう流れで行われたんでしょうか。
神宿ってメッセージ性が強くて自分たちの内面が出ている歌詞が多いんですけど、もっと世の中にフォーカスにして、ファンの心に寄り添った楽曲、深く考えずに踊れるけど、ストーリー性のある楽曲、メンバーの内面が見えるような楽曲がほしいというオーダーを受けて私がデモを書いて、そこから歌詞を乗せました。
―これ、すごくキャッチーですよね。今作で一番耳に残る曲だと思いました。
本当ですか!? めっちゃうれしいです! 私にとってこれが処女作なんですよ。初めて世界中に配信された自作曲なので、デモをみんなに送る段階からすごく緊張したし、(パソコンの)エンターキーを押すのに手が震えたし、自分が生み出した曲がみんなの耳に届くというのが不思議でした。ミックスのときは感動しましたね。
―一ノ瀬さんはこれまでにも曲を提出していたということではなく、これが初めてつくった曲なんですか?
実は私、みんなに内緒でずっと曲を書き溜めていたんですよ。もともとミュージシャンになりたいという夢があったんですけど、本当に恥ずかしかったから内緒で歌詞とメロディラインをつくったりしていて、そのときにつくったものがこの曲にも入ってます。Aメロからサビ終わりまでかな。いつ書いたか正確には覚えてないですけど、かなり前です。
―塩見さんがマスタリングに立ち会っているという話を聞いたんですけど、ミックスにも立ち会っているんですか?
そうですね。この曲も塩見と羽島めいと私の3人でスタジオに行って、「ここはギターをもっと前に出したほうがいいんじゃない?」とか、イントロの調整もけっこうしました。
―ミックスで一番大事にしたのは何ですか?
これは初めて書いた曲だし、私はあまりたくさん意見を言える立場ではないけれど、耳触りのよさとテンポは意識しました。声の波形がちゃんとトップにきたところでリズムを当てたい。そうすることによってテンポ感が合ってリズミカルに聞こえるんです。そこはミックスのときにオーダーしました。
―先ほども話題に上がった、一ノ瀬さんのソロ曲「Lion」は本当にいい歌ですね。
ありがとうございます。
―自分の内面をさらけ出した歌詞があるからこそ、この歌になったような。
もともと、みんなの総意でバラードをやることは決まっていたんです。それで、自分のどこを切り取ったらみんなが喜んでくれるのか考えたときに、コロナ禍で向き合ってきた自分の本当の気持ちや、普段見せないような心の内側、自分が大事にしたいと思っていることを歌詞に込めました。
―なるほど。
今回、「Lion」の作曲を手掛けたKITAさんがプリプロの時にヴォーカルディレクションをしてくださったんですけど、本番の日になったら「僕は基本何も言わないので、3回だけ録って、それで納得がいかなかったら納得いくまでやって」って言われたんです。そんなことを言われたのは初めてえ「どうしよう!?」と思ったんですけど、4時間ぐらいずっと一人でブースにこもって歌い続けた結果、ありのままの自分を表現できたと思うし、歌声と歌詞がリンクしたんじゃないかなと思います。
考えることを止めたら負ける
―1枚のアルバムの中に前作が丸々入っているという形は斬新ですね。作品の形態自体がメッセージになっていると感じました。これは誰のアイデアだったんですか?
おっしゃるとおり、『THE LIFE OF GIRLS』というアルバムの中に、以前リリースさせていただいたアルバム『THE LIFE OF IDOL』がそのまま入っています。「GIRLS」の中に「IDOL」がある、女の子の人生の中にアイドルの人生があるんだよという思いを込めているんですけど、アイデアの大元は塩見だったと思います。コロナ禍で現実として突きつけられる問題……金銭面だとか集客面がアーティストにも響いていると思うんですけど、アーティストは作品をつくって、その全てをライブで届けるというのが仕事だと思うし、それ以外の要素が入ると雑念が混ざるライブになってしまうと思うんですよ。私はそれはよくないと思うし、私が憧れのアーティストを観る立場だとしたら、すごく嫌だなと。だからこそ向き合う。だからこそ、スタッフのみんなとちゃんと腹を割って、「今はこういう状況です」と話し合う。それがすごく大事だなと思っていて。今回の作品をつくる上で何が大事だったかというと、ファンのみんなにちゃんと自分たちの気持ちを伝え切ることだと思ったんです。ライブに来られない方にも感動してもらうための仕組みをつくらないといけないと思ったんです。私たちの根本にあるのはいつだってファンのみんなだったし、そういう気持ちをぶらさないためにいろいろ話し合った結果、このメッセージを届けたいということになりました。
―ぴあアリーナMM公演以降、自分たちのどんな姿を思い浮かべていますか?
私はさらに忙しくなっていけたら良いなと思います(笑)。2020年から今にかけて、コロナ禍で不安であろうファンのみんなを支えたくて勢力的に活動していた事もあるので、いったんみんなで今までの事を振り返る時間も必要なのかなって思います。
―一ノ瀬さんの思考に影響を与えている存在って誰かいますか?
メンバーでいうと、塩見とめちゃくちゃディスカッションするんですよ。私たち2人はインプットした情報をよく話すんです。活動の参考になるようなYouTubeのMVが公開されたら速攻で観てからLINEで送ったり、私はSpotifyのバイラルチャートに入ってる曲を全部聴いたり、そういうインプットをした上でいろんな話をするんですよ。いま世の中はこういう動きがあるからこういう音楽が出てきてるんだよね、とか。あとは、「ファンはこうしたら喜ぶと思う」「いや、そうは思わない!」みたいな討論をしたり。そういうことをするなかでいろんな考えが浮かんだりします。2人して「とにかく考えることをやめるな!」って。考えることを止めたら負けるので、頑張らないといけないなと思ってます。
―ちゃんと休めているんですか?
おとといはMV撮影が終わって帰ってきたのが6時で、そのあと11時ぐらいから16時まで制作作業して、16時からダンスレッスンがあって、そのあとYouTube配信があって、それが終わってから家に帰って制作作業を夜中1時ぐらいまでやって、また朝7時に起きてレッスンして……みたいな。
―つまり、休めていないってことですね。
でも、まあ、眠れてるんで!(笑)。私は健康オタクなので、睡眠だけはちゃんととってます!
<INFORMATION>
『THE LIFE OF GIRLS』
神宿
発売中
https://kamiyado.jp/release/20210825_THE-LIFE-OF-GIRLS/
神宿 7th Anniversary Live 「WE ARE KAMIYADO」
ぴあアリーナMM
2021年9月26日(日)
Open 16:00 / Start 17:00
https://kamiyado.jp/news/WE_ARE_KAMIYADO/
この記事に関連するニュース
-
Billyrrom、「風」の時代に台風の目となる6人が語る自信と挑戦
Rolling Stone Japan / 2024年11月22日 18時30分
-
iScreamが語る、一人ひとりの「歌姫」がグループとして放つ輝き
Rolling Stone Japan / 2024年11月19日 17時30分
-
SKY-HI、Novel Core、CHANGMOが語る、日韓コラボレーションの狙いと意味
Rolling Stone Japan / 2024年10月31日 12時0分
-
f5veが語る、東京発の異次元サウンドを支える姿勢「ありのままでいることの素晴らしさ」
Rolling Stone Japan / 2024年10月30日 18時15分
-
江籠裕奈「大人のかわいいにも気づいてね」という思いを込めて
日刊SPA! / 2024年10月29日 8時48分
ランキング
-
1韓国ガールズグループ「NMIXX」、竹島の領有権主張する歌で「炎上」 日本公演反対署名が5万人突破
J-CASTニュース / 2024年11月25日 18時30分
-
2「エビ中」星名美怜 ドライすぎる「契約終了」の表現にファン困惑「卒業(転校)とかじゃなく?」
スポニチアネックス / 2024年11月25日 22時58分
-
3清原弁護士 東国原氏と激論 斎藤知事の問題めぐり「収賄とか…」「収賄とは言ってない」かみ合わず
スポニチアネックス / 2024年11月25日 19時1分
-
4「タイミー」を橋本環奈"パワハラ疑惑報道"直撃? CMキャラが中居正広に差し替わったと思われたが…
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月25日 9時26分
-
5「ほんとズレてる」岡村隆史、不倫発覚の盟友を“中学生レベル”の擁護発言で炎上
週刊女性PRIME / 2024年11月25日 17時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください