ペンタトニックスが語る、Little Glee Monsterや日本との絆「世界で一番愛している国」
Rolling Stone Japan / 2021年9月24日 12時0分
ペンタトニックスの最新アルバム『The Lucky Ones』が大反響を呼んでいる。同作は6年ぶりのオリジナル・アルバムで、Little Glee Monsterとのコラボレーション楽曲も収録。3年連続グラミー受賞、動画総再生52億回超えの大人気アカペラ・グループが一回り成長した姿をアピールしている。リーダーのスコット・ホーイングがリトグリへの想い、日本への深い愛情、コロナ禍での学びについて語ってくれた。
ーニュー・アルバム『The Lucky Ones』のデラックス・エディションには、東京をテーマにした新曲「Midnight In Tokyo」が収録されます。どのような経緯で誕生した曲なのですか?
スコット:この曲は、けっこう前から、もう数年前になるかな、僕たちが温めていた曲で、いつ発表すればいいのかタイミングを見計っていたんだ。みんなもよく知っていると思うけど、日本は僕たちが世界中で一番愛している国で、来日したり、パフォーマンスするのが大好きって、いつもそう言ってるよね。今回ニュー・アルバムのデラックス・エディションを発表するにあたって、これって絶好の機会じゃないかと考えたんだ。ついにこの曲を発表できるぞと思ってね。それに、せっかくなら日本の素晴らしいアーティストとのコラボも実現させたいと考えた。そこで依頼したら、Little Glee Monsterが快く引き受けてくれたんだ。彼女たちの歌声が、この曲の魅力を格段に高めてくれている。僕たちもすごく興奮してるんだ。だって、やっとこの曲を発表できたわけで、この曲で歌っているのは、僕たちが大好きな東京の街について。しかも、Little Glee Monsterとのコラボまで実現しちゃって、もう大興奮だよ。
ーこれまでに日本や東京には、もう10回近く訪れていますよね。いまやすっかり東京に詳しいのではないかと思うのですが、特にこの曲ではどういう東京について歌っていますか?
スコット:とにかく僕たちは東京が大好きなんだ。美しくて活気のある街で、すごくエネルギッシュだよね。人々も優しくて親切だし、創造性が漲っている。あちこちにカルチャーを感じるし、食文化も豊かで。この曲では、そんな東京で最高に楽しい一夜を過ごすというストーリーが歌われている。街へ飛び出して、アメージングな体験をして、恋に落ちて、すべてがスムーズに流れていく。曲のムードは、ちっぽけなことを気にせず、思いっきり楽しもうよ、という感じかな。
ー「真夜中の東京」といえば、何か具体的に印象に残っている体験はありますか?
スコット:うん、すっごくいっぱいあるよ(笑)。いつも東京に行ったら、みんなで夕食をどこかに食べに行って、その後ブラブラ歩き回るんだ。渋谷だったり、東京の知らない街だったり。レコード会社の人たちや、ライヴで一緒に仕事をした人たちとも仲良くなるし、新しい友情が生まれたり。すごくポジティヴでワクワクさせられる体験ばかりだよ。「Midnight In Tokyo」には、そういう日本のポジティヴで楽しかった体験が体現されていると思うんだ。
ー初めて来日した外国人観光客が知らないようなスポットもスコットなら知ってそうですが、ディープな日本といえば、どんなことを思い浮かべますか?
スコット:もちろん観光客らしいこともいっぱいしたけどね。でも、そうだなぁ、ゴーカートに乗って街中を走ったり、朝のテレビ番組でお好み焼きを自分で作ることになったりしたのはよく覚えているよ。そのあとアメリカに帰ってからも、すごく食べたくてなってね(笑)。絶対ないと思ったけど、ググってみたらLAに1軒あって、みんなでわざわざ食べに出掛けたよ。史跡や名所を訪れたり、いわゆる観光客向けのロボットレストランのようなところも行ったし、採れたての鮮魚が並ぶ市場なんかも。あと飲み屋もけっこうハシゴしたよ。いろんな面白いバーを覗いたり、そうそう、古いヴァイナル・レコードがいっぱい並ぶ「バー・ミュージック」というお店とか。あれこれ体験がいっぱいありすぎて、毎回日本に行くたびに感激するよ。あと、もちろんメンバー全員が日本のアニメや任天堂ゲームなども大好きで、そういうのを見て歩いたり、買い物を楽しんだりも。
リトグリとのコラボ、日本語で歌うこと
ー今回Little Glee Monsterとは2度目のコラボとなります。彼女たちとの付き合いも長くなりましたが、スコットから見て彼女たちはどのように映っていますか?
スコット:最初に出会ったのは、僕たちが初めて日本に行ったとき。だから最初に出来た日本の友達みたいな存在なんだよね。その後も一緒にコラボしたりして、ずっと長い付き合いが続いているよ。彼女たちって本当に才能に溢れていて、すっごく優しい人たちで、それに自分たちのやってることに凄く情熱をもっている。全員が美しい声の持ち主で、グループとしても大好きなんだ。アカペラ・グループって、なぜか互いに強い絆を感じるんだよね。言葉で上手く言い表せないんだけど(笑)。同じような経験をしているからかな。今回彼女たちとコラボしたシングルを発表できたのも嬉しいし、彼女たちはこの曲にピッタリじゃないかと思うんだ。
リトグリとの前回コラボ曲「Dear My Friend」
ーこれまでにも日本語によるカヴァーを発表されてきましたが、今回の「Midnight In Tokyo feat. Little Glee Monster」は、初めて日本語で歌われたオリジナル・ソングとなります。
スコット:そうそう、すごくスペシャルなんだ。もともと僕たちは日本語で歌うのが大好きだから、これまでも歌ってきたよね。Official髭男dismの「Pretender」やPerfumeメドレーなども大好きだった。でも、今回はついに日本語によるオリジナル曲に初挑戦というので、すごくワクワクしてるんだ。日本語と英語の両方で歌っているよ。オリジナル・ヴァージョンは英語で歌っていたけど、これは絶対に日本語も入れるべきだと思って、もうひとつのヴァージョンでは日本語も付け加えた。日本らしさがいっそう強調されるんじゃないかと思ってね。
ー日本のファンにとっても、いっそうスペシャルに感じられます。とはいえ日本語で歌うのは大変ではなかったですか?
スコット:カースティンとミッチの2人は、日本語がホントに上手いんだよね。子どもの頃から日本のアニメで育っているから、あの2人は日本のカルチャーなどにも精通していて。まあ、全員が日本語の発音に関しては、まずまずじゃないかと自負してたりもするんだけど(苦笑)。それは置いといて、今回不安だったのが、日本語で作る歌詞に関してかな。そもそもネイティヴじゃないから完璧じゃなくても仕方ないんだけど、文節が上手く合ってるのか、ちゃんと意味を成してるのか……などなど。だからメロディを作ったら、こういう感じの歌詞を載せたいんだけどって日本のチームに伝えて、少しずつ日本語にしていったんだ。
「Midnight In Tokyo feat. Little Glee Monster」MVのメイキング映像。MVは牧野惇(YOASOBI、Mr.Children、YUKI等)が監督を務め、LAと東京にて遠隔撮影。ソニーPCLによる大型ディスプレイ、カメラトラッキングとリアルタイムエンジンを組み合わせた撮影手法「バーチャルプロダクション」が使われている。
ー「Midnight In Tokyo feat. Little Glee Monster」のミュージック・ビデオも、すでに日本とアメリカで別々に撮影されたと聞いています。どんなビデオになりそうですか?
スコット:うん、凄くクールなビデオだよ。東京の街をLittle Glee Monsterが車で駆け抜けて、そこに僕たちが登場するんだ。彼女たちの乗ってる車の画面や、街の大きな看板の中で僕たちが歌っている。僕たちはLAのスタジオで撮影したんだ。このビデオの凄いところは、150台のカメラが僕たちの周りを取り囲み、どんな角度からでも撮影できるようになっている。この装置で僕たちはCG化されたアニメのように変身、ホログラムみたいな感じなんだ。言葉で説明するのは難しいけど、僕たちにとってもこれまでにやったことのないクリエイティヴなコンセプトだったよ。Little Glee Monsterとペンタトニックスの両者は同じ場所にいないけど、まるで一緒にいるかのようで。実際には別々の国なんだけど。
ーMVにはソニーグループが初めて手掛ける電気自動車VISION-Sも登場するそうですが、その車にはフューチャリスティックなエンタメ機能が満載されているとか。たとえばスコットが思い描いたり、あったらいいなと思う未来の車はありますか?
スコット:そうだね、正直あの車がすごく欲しいかな(笑)。ビデオの中でもすごくカッコ良く見えて、ワクワクしてたんだ。搭載されているいろんな機能もすごく未来的でカッコいいんだよね。そもそもフューチャリスティックな車のヴァイブというのが好きなのかな。自動運転をはじめ、いろんな便利な機能が搭載されている感じとか。ビデオに出てくるあの車のワクワク感も、すごく曲と合っていると思うんだ。
『The Lucky Ones』とコロナ禍での成長
ーニュー・アルバム『The Lucky Ones』は、2015年の『Pentatonix』以来、久方ぶりのオリジナル楽曲集となります。なぜこのタイミングでオリジナル曲を発表しようと考えたのですか?
スコット:2015年のアルバム『Pentatonix』以来、僕たちはツアーを中心にした活動をずっと続けていた。常にノンストップという感じで、ツアーを繰り返していたし、そのうえ、クリスマス・アルバムやカヴァー・アルバムを発表したり、それにメンバー・チェンジなんてこともあったり。いろんなことが次々と起こって、常に手いっぱいな状態だったんだ。マットがメンバーとなってからも、またツアーを再開していたからね。ある時ミーティングで、僕たちにはこんなにいろんな体験があるわけで、ストーリーがあるのだから、そろそろまたオリジナル曲によるアルバムを作るべきじゃないかって話になったんだ。まだ1枚しか作ってなかったから、2枚目を作ろうよってことで、みんなで盛り上がったんだ。で、スタジオに入って曲を作り、完成したのは、すごく正直にありのあままの自分を投影したアルバムになったよ。だからとても誇りに思っているんだ。
ーカヴァー曲と比べて、やはりオリジナル曲を作るのは時間も労力も掛かりますよね?
スコット:うん、間違いないよ。ソングライティングをするからには、大変なことも多いと思うんだ。まず曲作りをするにあたって自分自身をさらけ出さなきゃいけないし、ゼロから全てを作り上げることになる。すでにある素晴らしい曲にひねりを加えたり、新しいアレンジを施したり、声だけを使って創造することに掛けては僕たちは熟練者と言えると思うんだけど、オリジナル曲に関しては、それらをやったうえで、さらに自分たちの体験を歌に込めたり、ゼロからスタートするわけで、やはりそれだけプロセスが多いよね。
ースコットは、この9月に30歳を迎えますよね。世界中をツアーして、様々な体験を通して、アーティストとして、またひとりの人間としてどんなふうに成長したと思いますか?
スコット:うわっ、すごく深い質問だよね。うんうん、本当にあらゆる意味において成長したと思っているよ。シンガーとして成長したと思うし、自分の声に関してより理解が深まった。それにソングライターとしても成長したと思うよ。いつも曲を作っているし、この10年間にペンタトニックスを通していろんな体験をしてきたからね。数えきれないほどのステージに立って、数えきれないほどの国々を訪れて、もちろん最高のときもあれば、最悪のときもあるけれど、それらを通して感情面でも強くなったし、精神的にも強くなったよ。グループのメンバー全員に関して言えると思うんだ。より自分に自信がもてるようになり、クリエイティヴな人間になった気がする。スリリングでいろんな体験に満ち溢れていた20代には、とても感謝しているよ。もちろん30歳になるのも楽しみにしているし、心の準備も整っている。次の10年間がどうなるんだろうって興味津々だよ。
ー昨年からのコロナ禍で、すべてがストップしたおかげで、改めて自分自身を見つめ直すことも多かったと思うのですが、どんなふうに過ごしていましたか?
スコット:僕としては、最初の頃はまずはたっぷり休んだって感じかな。ずっと四六時中、移動したり、働いていたから、一箇所に留まってじっとしているのは、すごく新鮮だった。寛いで家にいるしかなかったんだけど、最初の頃は楽しかったかな。でも、常に新しいこと、刺激を求める僕としては、何かをやらなきゃって感じで、いろんなスキルを身に付けていったよ。たとえばニュー・アルバムはステイホームしながら作っていったんだけど、そのために僕はProToolsの使い方も学んだし、自分のヴォーカルのプロデュースもできるようになったよ。曲作りもいっぱい手掛けたしね。あとTikTokにもいっぱい投稿したかな(笑)。バカやりたい欲求は、そこで解消してかな。他にもずっとやりたかったけど時間がなくて出来なかったプロジェクトに取り掛かったり、友人のためのミュージカルを手掛けたりもしたよ。あとは、やたら食べまくってたかな(爆笑)。まあ、いろんな意味で自分自身を見つめ直して、クリエイティヴになって、成熟したんじゃないかなと自分では思っているよ。
ーコロナ禍にスコットをはじめ他のメンバーがハマったこと、新しい趣味などはありましたか?
スコット:そうだね、メンバー全員がそれぞれ趣味をもっている。マットとケヴィンはすごく教会活動に熱心だし、ケヴィンはソロ活動をやったり、カースティンは演じることが大好きだから、演技レッスンを受けたり、オーディションに臨んでいるよ。ブロードウェイの舞台にも立っていたしね。ミッチはメッサー(Messer)名義で『Roses』と題されたソロEPを発表していて、それが最高にアメージングだよ。あと彼は新しい猫を飼ったり。みんなそれぞれに人生を謳歌しているよ。そうそう、ケヴィンには赤ちゃんも誕生したよね。それぞれが多忙って感じかな。もちろんペンタトニックスとしての活動も、いろいろやっているしね。
ー日本のアニメやゲーム、漫画、音楽などでは、何かハマったものはありますか?
スコット:ビデオゲームやアニメに関してはあまり変わりないけど、それ以外では、「Midnight In Tokyo」で日本語の歌詞を書いたり、Little Glee Monsterとの共演やビデオ撮影をしたのが、やっぱり日本関係では一番大きい出来事かな。あと、日本にも行く計画があって、もっと早く来日する予定だったんだけど、コロナ禍で断念したんだ。もちろんこの状況が変わればすぐにでも来日するつもりだよ。みんなの前で「Midnight In Tokyo」をはじめとする新曲を早く披露したいんだ。それが僕たちの夢だよ。実現したら最高じゃないかな。
ー日本のファンも長引くコロナ禍にまだまだ悩まされている状況です。励ましのメッセージをいただけますか。
スコット:うん、もちろん! みんなに伝えたいのは、僕たち全員が日本のファンのことを、とても愛してますってこと。(日本語で)「ミンナ、ダイスキ」。ずっと長きにわたって僕たちを応援してくれて本当にありがとう。できるだけ早くまた日本に行きたいと思っています。日本のみんなが「Midnight In Tokyo」を気に入ってくれると嬉しいな。みんなのために作ったスペシャルな曲なんだ。こんな状況下ではあるけれど、みんなも安全にして、健康でいてください。また平常を取り戻したときには、みんなの前で飛び跳ねながらパフォーマンスしたいと思ってます。
ー最後に、今後の予定を教えてもらえますか。
スコット:まずはツアーを再開したいかな。クリスマスもすぐに来ちゃうから、当然ながら僕たちはクリスマスに関することも、いろいろと考えているよ。あとオリジナル曲にも、もっと挑戦したいかな。パフォーマンスに関しても、これまでより大胆で思い切った見せ方を考えているんだ。シアトリカルで型破りなショーみたいな感じをね。現時点ではあまり言えないけど、アーティストとしてかなり思い切った飛躍をしたいなって計画してるんだ。
ペンタトニックス
『The Lucky Ones【ジャパン・デラックス・エディション】』
発売中
購入・再生リンク:https://PTX.lnk.to/TheLuckyOnesDXJP
【初回仕様】
特典①パントビスコがペンタトニックスをイラストで描きおろした”PTXスペシャル・ステッカー”封入(2種類)
*メンバー全員は共通封入、メンバー・ソロ5種はランダム封入。
特典②メンバーが日本ファンのために特別収録した”PTXスペシャル・ボイス・メモ”(2種)ダウンロード券封入
*メンバーが日本ツアーでかつて訪れた札幌、横浜、名古屋、大阪、福岡の方言でメッセージを特別収録。
*共通でメンバー全員のボイス1種と、ランダム封入されたソロ・ステッカーと同じメンバーのソロ・ボイス1種がダウンロードできる。
ペンタトニックス日本公式サイト:https://www.sonymusic.co.jp/artist/pentatonix/
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