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リンゴ・スターは81歳で絶好調 最新EPにビートルズ時代、ビリー・アイリッシュまで語る

Rolling Stone Japan / 2021年9月29日 18時0分

リンゴ・スター(Photo by Scott Robert Ritchie)

リンゴ・スターは音楽業界でもっとも――いや、どんな業界でも愛される人物といえよう。81歳になってもなお、彼は歩みを止めない。ザ・ビートルズの伝説のドラマーは、今年2枚目のEP『チェンジ・ザ・ワールド』のリリースしたばかり。平常時なら自ら率いるオールスター・バンドとともに毎年ツアーに出るのだが、近ごろは自宅のスタジオで曲を作り、パンデミックの鬱積を晴らしている。壁をも揺るがす高笑いで本人も言うように、「ここ最近はみんな他にすることもないから、曲を書いているのさ」

彼の心は常に音楽でいっぱいだ。エンジニアがZoom用マイクのセッティングを手伝っているときも、ビートルズの名曲「ヘルプ!」をいきなり歌い出す。今年のグラミー賞ではプレゼンターとしてビリー・アイリッシュにレコード・オブ・ザ・イヤーを手渡し、話題になった(アイリッシュの反応は「調子どう、リンゴ?」)。インタビューの合間に電話が鳴る。長年ザ・フーのドラムを務める息子のザックからだ(着信音は、サーカス風のオルガンとスライド・ホイッスルを組み合わせた奇妙な音――「『鳴ってるのはお前の電話だ』とわかるようにね」)。

本人同様、新曲からも温かさとユーモアがあふれ出ている。『チェンジ・ザ・ワールド』にはリンダ・ペリー、スティーヴ・ルカサー、トロンボーン・ショーティ、そして50年代のオールディーズ「ロック・アラウンド・ザ・クロック」の豪華バージョンに参加したジョー・ウォルシュなどのコラボレーターを迎えた4つの新曲が収められている。最後のEP『Zoom In』がリリースされてから6カ月しか経っていない。デジタル版は9月24日に配信スタート、CDと(もちろん)カセットも同時リリースされる。11月19日には10インチ・アナログ盤がリリース。世界にはつねにリンゴの魔法が少しばかり必要なことを思い出させてくれる。

リンゴは得意の機知と魅力を振りまきながら、『チェンジ・ザ・ワールド』についてZoom経由でローリングストーン誌の取材に答えてくれた。またビートルズ時代のこと、リモートでのコラボレーション作業、「ロック・アラウンド・ザ・クロック」が幼少時代の思い出をよみがえらせる理由、新作ドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:Get Back』、リマスター版『レット・イット・ビー』、そしてビリーとマイリー・サイラスのファンである理由についても語ってくれた。



ー『チェンジ・ザ・ワールド』のリリースおめでとうございます。今年は実に多くの新曲を出しました。ショウビズ界いちの働き者ですね。

リンゴ:少しずつ小出しにしているからだよ。「またアルバムを作るのは嫌だ」と思ったんだ。10曲も作るのはまるで仕事じゃないか。最高の仕事だし、俺も演奏は大好きだけど、今は4曲ずつ出すことにした。どのみち昔からEPが大好きだったしね。だからEPを出し続けるよ。

ーリードシングルの「レッツ・チェンジ・ザ・ワールド」は素晴らしいですね。今の時期にピッタリですね。

リンゴ:俺もすごく気に入っている。スティーヴ・ルカサーとジョー・ウィリアムズのおかげだ。ルークがギターを演奏しているが、ブラスも少し入れたから聴きごたえがある。今回のEPではリンダ・ペリーとか、今まで一緒に仕事したことのない人と大勢組んだ。彼女は最高だよ。「カミング・アンダン」はほとんど俺と彼女が手がけた。「トロンボーンを入れよう」という話になって、ニューオリンズに音源を送った。話を持ちかけるなら、トロンボーン・ショーティの他にはいないだろ? 彼1人でブラスセクションまるまる1個分の迫力がある。「ジャスト・ザット・ウェイ」はレゲエの曲で、トニー・チェンとフリー・フルウッドが参加している。ブルース・シュガーは今回はエンジニアだ。彼はプロデューサーとしても有名だけどね。最近はみんな他にすることもないから、曲を書いてるのさ。

今こうしてレコーディングできるのはいいことだ。おかげで命拾いしたよ。救われた。時々「ああ、うんざりだ、ツアーに出たい、出たい、出たい!」ってなるからね。今じゃそこら中にファイルを送信できる。すごいことじゃないか?

ー今はこういう風にできるんですから、すごいですよね。

リンゴ:ああ。具体的にどの曲かは言えないが、いつだったかエディ・ヴェダーもファイルを送ってきたんだ。(茶目っ気たっぷりに笑いながら)これ以上は言わないよ、エディ!

ーそれは待ち遠しいですね。

リンゴ:まあ、ドラムはすごいよ。この部屋に――なあ、どのくらいかな、15×12フィートぐらい? ここに機材を全部持ち込んだ。キーボードも、マイクも全部だ。それから寝室にはアンプを3台とドラムセットが2台ある。それが俺たちのやり方だ。もう10年もこういう風にやっている。なかなかいいもんだよ、犬や(妻の)バーバラ(・バック)に声をかけたり、お茶を飲んだりできるし、安全だ。パンデミックのせいでめっきり外にでなくなった。

「ロック・アラウンド・ザ・クロック」と15歳の記憶

ー新作にはあなたの50年代のルーツに立ち帰る曲もあります。どういういきさつで「ロック・アラウンド・ザ・クロック」を歌うことになったんですか?

リンゴ:考えていたんだ――ただ座って物思いにふけることがあるだろう――15歳のときのこと、病院に入院していた年のことをね。入院中に14歳の誕生日を迎えたんだが、15歳の誕生日が近づいてきて、病院で誕生日を迎えるのはいやだと思った。医者に相談して、おふくろが頼み込んで退院させてもらった。誕生日の2週間前に退院して、継父とロンドンに行って、そこで継父の家族と1週間過ごした。それからリバプールの祖父母の家に戻った――親父は3歳の時に出て行ったから、祖父母がおふくろと一緒に俺を育ててくれたんだ。みんなでマン島に連れて行ってくれた。ちょうど『ロック・アンド・ロール/狂熱のジャズ』が上映中だったので、映画館に連れて行ってくれた。休みの日に賑わうような場所で、誰もが楽しんでいた。天気の悪いフロリダみたいな感じさ。

そしたら観客が映画館で大暴れしたんだ! 座席を引きはがして、投げつけて、喧嘩したり。「ワオ!」――俺は退院したばかりだったからね――「ワオ! 世の中変わったな!」って感じさ。わかるだろ? 本当にすごかった。ご覧の通り、その時のことは一生ずっと心に残っている。それでビリー・ヘイリーのことが頭に浮かんで、「そうだ、『ロック・アラウンド・ザ・クロック』をやろう」って思ったんだ。

ビルは父親みたいなタイプだったろう。だからみんなエルヴィスとかエディ・コクランとかバディとか、ビルの後に出てきた連中のほうが大好きだった。とにかくビルは父親みたいなタイプだったからね。でも「ロック・アラウンド・ザ・クロック」ではいい仕事をしていた。



ー退院した後、若者が劇場で大暴れする新世界にやってきたわけですね。

リンゴ:ああ、そうさ! 1年も寝たきりだったんだから。(甲高い声で)「やっと良くなった!」 アメリカ万歳――アメリカがストレプトマイシン(抗生物質)を発明してくれたおかげだ。俺は結核だったから、リバプール郊外のハスウェルにある温室に入れられた。木々が生い茂って風が吹きこんでくるような場所だ。あるのは窓とストレプトマイシンだけ。そこに何カ月も寝そべってなきゃいけなかったんだ。特別な日にはベッドから出してもらって、椅子に座ることができた。「ああ、椅子に座っていられる!」

ーいつかビリー・ヘイリーと同じくらい有名になるぞ、と決めたのもその時ですか?

リンゴ:いや、ビリー・ヘイリーのようにビッグになるとは考えもしなかった。「映画に出てくる奴らみたいになる」とは思ったが、結局テディ・ボーイ止まりだった。

ー観客があなたに熱狂して大暴れようになるまでに、そう時間はかかりませんでしたね。

リンゴ:そうなんだ、すごくないか? 乱闘はそんなになかったと思う。悲鳴はたくさんあがっていたが、大暴れはしていなかったよ。

ビリー・アイリッシュへの共感

ー今年のグラミー賞ではビリー・アイリッシュとともに脚光を浴びましたね。

リンゴ:ああ、相当奇妙だったな。辺りをぶらぶらして「やあ、調子はどうだい?」って言って回るほうが性にあってるんだが。実際は車に乗って、前日に検査を受けて――まったく、今じゃそんな世の中だ。車に乗って、会場に直行して、車を降りて、楽屋に入って、ステージにあがって、また車に戻る。リアルな時間はまったくなかった。でもなんにせよ、俺は彼女が大好きだ。あの子はすごい。あの子の態度が気に入った。マイリー・サイラスも好きだ。ちょっとした反逆児が好きなんだよ。わかるだろ。



ー2人もあなたの大ファンですよ。あなたがビリーに賞を手渡した時、彼女は兄と一緒にあなたの前で深々とお辞儀をしていました。あなたの音楽はあらゆる世代に響いています。

リンゴ:まあ、それが音楽というものさ。つまりビートルズを例にすれば、前に誰かが2枚の写真を見せてくれた。1962年の8月に俺が加入した時のと1969年8月のもの、4人全員揃って撮った最後の写真と最初の写真だ。それだけ短い期間だったんだ。でも俺たちは今も廃れていないし、音楽もいまだに素晴らしい。今じゃ、俺たちは一種のヘヴィメタルだった、とも言われてるんだぜ!(愉快そうに笑いながら)面白いことを言うよな。

だがビートルズの音楽は今も健在だ。たくさんストリーミングもされている。今この瞬間にも別のボックスセットがリリースされ、さらに今後も続いていく。最初はアナログ盤、それからCD、今はストリーミング。他に新しいものが発明されるとすぐにまたリリースされるんだ! でも俺が好きなのは、大勢の若い子たちが「この音楽気に入った、この曲好きだ」って言ってくれることだ。どの世代もビートルズに夢中になっている。どんな形であれ音楽に興味を持てば、ビートルズは避けて通れない。それだけすごいバンドだったんだ。

ーリマスター版の『レット・イット・ビー』を聴きましたが、あなたのドラムはかつてないほど鮮明に、大きく聞こえます。

リンゴ:面白かったよ――最初にリマスターしたのは「イエロー・サブマリン」だった。ポールと一緒にアビイ・ロードに行って聴いたんだが、「あれをやったのは誰だ? ありゃ何だ?」って感じだった。それだけクリアなんだよ。でもドラムは――リマスタリングのおかげでドラムが鮮明に聞こえるようになった。大勢の人から言われたよ、「ワオ、あなたがあれを演奏したんですか? 本当にあなた?」 そう、あいにく俺さ。気に入ってるがね。

60年代はモノラルだったから、何か削るとしたら、たいていはバス・ドラムだった。初期の録音にはバス・ドラムはほとんど入っていない。でもそれが当時のやり方だったんだ。今はクリアに聴こえる。いいことだよ。

『レット・イット・ビー』の舞台裏

ー生まれ変わった『レット・イット・ビー』を聴くと、みんなが一緒に楽しんでいた雰囲気が伝わります。

リンゴ:楽しいこともたくさんあった。今年の感謝祭(編注:11月25日〜27日)には、リマスター版のドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:Get Back』が公開される。6時間の超大作で、楽しい場面や笑いが満載だ。オリジナル(ドキュメンタリー『レット・イット・ビー』)に楽しい場面や笑いが一切なかったのは残念だ。だがあの時、俺たちは屋上に上って、1枚のアルバムを仕上げた。日がなふざけてたわけじゃないんだ。



ー(映画では)あなたのドラムに背中を押されて、ボーカル2人が物語を語っているように聞こえます。

リンゴ:現場でも実際にそうだった。俺も同じブースにいたから、2人にはいつもドラムが聞こえていた――まあ、ほとんど部屋の反対側にいたけど、少しずつ距離を縮めていったんだ。年月が経つにつれ、その距離もどんどん短くなっていった。ジョージ・マーティンですら、(ブースを)分けるべきだと思い込んでいたからね。俺たちも、多少の多重録音には反対しなかった。俺が好きな曲は、あのレコードじゃなく、ホワイトアルバムに収録されている「ヤー・ブルース」だ。あの曲では俺もブースにいた――8×8フィートぐらいだったかな。全員揃って、アンプやらなにやら全部入れて、ジョンが歌った。「ワオ、クラブ時代に戻ったみたいだ」と思った。それだけすごかったんだ、互いのエネルギーがびしびし感じられたからね。だからそう、リマスター版は俺にとってもすごく嬉しかった。

ー友情と音楽、そしてともに歩んだ軌跡へのトリビュートですね。

リンゴ:俺もあのバンドが大好きだ。あの3人と一緒にやれたのはとにかく鳥肌ものだった。あらゆる要素がそろっていた。いくつもの声を持つ男にして最高のベースプレイヤー、ポール。それにジョン。(レノンの声を真似て)「レッツゴー!」 ジョージはギターでメロディを奏でる。ジョージの演奏は、楽曲と同じくらい重要なものばかりだ。(ハリソン風のギターを口真似して)彼がどんな演奏をしても「ああ、あの曲だな」とわかる――ジョージの演奏で曲名がわかるんだ。すごかった。俺たちは本当によくやったと思うよ。

From Rolling Stone US.



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