ギタリストichikaとバレエダンサー二山治雄が見せた奇跡のセッション
Rolling Stone Japan / 2021年10月19日 21時0分
10月15日、ギタリストのIchika Nito(以下、Ichika)と、バレエダンサーの二山治雄によるコラボレーション『The Session「Eclipse」-Melodies for Ballet,Ballet for Melodies-』が渋谷ストリームホールで開催された。
【画像を見る】ギター演奏とバレエの競演
IchikaはSNSの演奏動画をきっかけに世界から注目を集めるギタリストで、左手でベース、右手でメロディを奏でるピアノの原理を応用し、タッピングを駆使した繊細かつテクニカルなプレイが唯一無二の個性を放つ。一方の二山も17歳でローザンヌバレエ国際コンクールで1位に輝き、世界最大のバレエコンクール「YAGP」シニアの部で金賞を受賞するなど、やはりワールドワイドに活躍し、将来を嘱望されているバレエダンサーだ。Ichikaの妹がバレエダンサーであるという縁もあって企画が進められ、二山に声をかける形で実現したこの公演は、Ichika Nito名義での初めてのショウでもあった。
この2人に、こちらもローザンヌのファイナリストで、現在はシカゴのジョフリー・バレエで活躍する新井誉久が振付、元英国バーミンガム・ロイヤル・バレエの山本康介が舞踊監修で加わり、さらにステージには、様々なアーティストのレコーディングやライブに関わり、先日はMr.ChildrenとGLAYの出演が話題を呼んだ『UNITE01』でBzのサポートを務めたことも記憶に新しいドラマーの青山英樹が参加。各界の第一線で活躍する名前が揃いつつ、異なるジャンルの実験的なコラボレーションだからこそ生まれる緊張感と驚きに満ちた、貴重な公演となった。
公演は三部構成で行われ、第一部はIchikaがメインのパート。ステージ中央の椅子に座り、歴史あるギターブランドIbanezから今年発表された日本人初のシグネチャーモデルICHI10を手にすると、おもむろにタッピングによる細やかなフレーズを弾き始める。そこから一転、衝動的にコードをかき鳴らすと同時に、二山がステージ袖から勢いよく飛び出してきて、ジャンプやターンを決めるという、なんともドラマチックなオープニングだ。
深いリヴァーブのかかった音色で幻想的な雰囲気を作り上げた「solitude」に続いては、7弦ギターに持ち替え、ここから青山も加わって、「have a nice dream」を演奏。寝そべっていた二山が途中で起き上がってステージに腰を下ろし、上半身のみの動きで楽曲を表現してみせたのは、コンテンポラリーならではの一幕だったと言える。
©Alouette inc.
ピックや弦の種類、演奏方法によって大きく異なるギターならではの「一音の情報量」を大切にするIchikaらしい、強弱を生かしたプレイの「insomnia」、ポストロック色を感じさせる「flowers」と、この日のために作られた新曲をメインに、リアレンジされた既発曲も織り交ぜながらステージが進行。歪んだ音色でシーケンスのギターとハモリを聴かせる「waves」はフュージョン風で、青山のリズムも徐々にアグレッシブさを増し、ツーバスも交えた後半は両者に共通するバックグラウンドのメタル要素も感じさせ、音楽的なふり幅を見せつけて第一部が終了した。
他ジャンルのコラボによる即興だからこその、スリリングなステージ
2人の自己紹介的なコメンタリーが流れる転換を経て、第二部は二山がメインのパート。両サイドにIchikaと青山が位置し、「misery」では二山がステージを広く使って、しなやかなジャンプやターンを次々と繰り出していく。ギターとドラムの演奏に合わせて踊ることは、当然普段のクラシックバレエとは異なり、また終演後のトークによると、振付は慣れないリモートで行われ、シカゴと日本の時差もあって大変だったそうだが、本番ではそれを一切感じさせない優雅さを漂わせていたのは流石の一言だ。
©Alouette inc.
ワルツのリズムに合わせて軽快なステップを踏んだ曲に続いて、ステージには二山とIchikaの2人が残り、披露されたのはショパンの「前奏曲 第13番」。ギター一本で奏でられるショパンに乗せて、二山が苦悩する主人公を表現すると、2人だけの世界へとより深く沈み込んで行き、催眠的なムードに包まれた「death」のラストでは、二山がステージ上に倒れ込む。ここでIchikaがギターを置いて、ハープへと移動。本格的に練習を始めたのは去年で、人前で演奏するのは初めてというハープの繊細な音色が響く中、二山は再び起き上がり、伸びやかなダンスを踊る。「Eclipse」=日食というタイトルが示す二面性、絶望の先にある希望を表現するかのような、美しい一幕だった。
©Alouette inc.
休憩を挟んでの第三部では、この日初めてスタンディングでICHI10を持ったIchikaと青山がハードロック色強めのセッションを展開し、そのまま即興演奏に突入。まずはIchikaがファンキーなカッティングも交えた自由自在のプレイを聴かせると、続いて青山は緩急をつけつつ、ツーバスを駆使した手数も足数も多い熱量の高いプレイでオーディエンスを大いに沸かせる。さらには、そこに二山も加わって、3人でのセッションに突入すると、二山の身体性が存分に発揮された自由なダンスを披露。他ジャンルのコラボレーションによる即興だからこその、スリリングなステージが展開された。
©Alouette inc.
ラストは再びIchikaと二山の2人が舞台に残り、Ichikaのタンゴ調の演奏に合わせて二山が情熱的なダンスを踊って、貴重な共演が締め括られた。異なる才能が共鳴し合った特別な演目は、Ichikaが目標として掲げる「魂の琴線に触れ、心を揺さぶる表現」に確かに手をかけるもの。終演後のトークでは「またやりましょう」という言葉も交わされ、今後の発展性も大いに感じさせる公演となった。
<INFORMATION>
アーカイブ配信はイープラスにて、22日23時59分までとなります。
配信&アーカイブ期間 10月15日(金)19:00~10月22日(金)23:59
10月22日(金)23:59を過ぎると視聴途中でも配信が終了となります。
詳細は下記の配信チケット販売ページをご確認ください。
E+(イープラス)
http://eplus.jp/eclipse/ ※国内向け配信チケット購入サイト
https://ib.eplus.jp/eclipse ※海外向け配信チケット
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