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米共和党議員、極右集団メンバーの疑いが浮上

Rolling Stone Japan / 2021年10月22日 6時45分

Phil Jensen SD Representative District 33/Facebook

長年フィル・ジェンセン氏は何かと騒動を起こしてきた。米サウスダコタ州の上院議員だった2014年には法案SB128号を提出。これは州内の企業に性的嗜好に基づいた顧客の選別や従業員の解雇を認めることで、LGBTQ差別にGOサインを出すような法案だった。

【画像を見る】”公開処刑”を求めて大暴れする極右集団

しかし法案は通らなかった。ジェンセン氏はラピッドシティ・ジャーナル紙とのインタビューで、この法案が「言論の自由と私有財産権」を守るためのものだと力説。差別に対抗するためには自由市場を拠り所にするべきだ、との主張を繰り返した。「仮にKKKのメンバーが小さなパン屋を運営していたとしましょう。我々の大多数は、その人が黒人客への接客を拒否するなどとんでもない、と思うでしょう。それにですよ? 誰もその店で買わなくなるので、その店は数週間かそこらで廃業するでしょう」(この発言に当時州知事だった共和党のデニス・ドーガード氏は反論し、「彼の発言はサウスダコタ州の価値観から完全に逸脱していると思います」と述べた)

この騒動を受け、ラピッドシティの地元紙はジェンセン議員を「サウスダコタでもっとも保守的な政治家」という見出しを掲載した。そして同じ年、ジェンセン議員は政治家としての履歴書に「オース・キーパーズ(Oath Keepers)の会員」という新たな肩書を加えたとみられる。

オース・キーパーズとは連邦政府の権威に対抗する過激派民兵グループだ。メンバーは陰謀論的な思考に従った10項目に誓いを立て、迫り来る政府の圧政に立ち向かうよう求められる。これら10項目の誓いは「1. 我々はアメリカ国民から武器を奪ういかなる命令にも従わない」というような、かなり他愛もないものから始まるが、やがて現実から逸れていく。例えば6番目の誓いは、「我々はアメリカの都市を封鎖し、これらの都市を巨大強制収容所に変えるようないかなる命令にも従わない」というものだ。メンバーは暴動が起きると、しばしば武装自警団として姿を現す。なかでも顕著なのが2014年ネバダ州で起きたバンディ牧場立てこもり事件と、ミズーリ州ファーガソンで起きた暴動だ。1月6日のアメリカ連邦議会襲撃では、同グループのメンバー数十人が事件に関与したとして起訴されている。


3万8000人以上の会員名簿が漏洩

ここ最近、Distributed Denial of Secretsという情報開示グループがオース・キーパーズのものとみられる記録、メール、チャット履歴など大量の文書を公表した。彼らはオース・キーパーズのメンバーと思しき3万8000人以上の会員名簿のデータベースへのアクセス権をローリングストーン誌に提供した。同様の会員名簿を報じた他のメディア――USAトゥデイ紙、オレゴン州公共放送、情報サイトThe Gothamist――は、軍や警察当局の中から数十人の民兵メンバーを特定した。特定された者の多くはグループとの関わりを認め、中にはすでに退会していると明言した者もいた。情報漏洩の件についてオース・キーパーズに質問を投げたが、返答はなかった。

Distributed Denial of Secretsの共同創立者エマ・ベスト氏の話では、これらのデータはハッカーから提供されたそうだ。Distributed Denial of Secretsはデータダンプをテクニカル分析にかけ、これらの情報が正当であることは「間違いない」と判断した。「要するに、ご想像通りのものが全て揃っていました」と、Distributed Denial of Secretsは言う。「パズルのピースがぴたりとはまりました。データはあまりにも膨大で、実に詳細にわたっていたので、偽造するのは不可能です」

名簿に記載されたオース・キーパーズのメンバーの大多数は個人メールで入会しており、勤務先がすぐに特定できるような詳細は一切ない。ジェンセン議員の記録は他とは明らかに違っていた。記載されていたのは州議会のメールアドレスで、議員の敬称には当時の役職で「フィル・ジェンセン上院議員」と書かれていたのだ(ジェンセン議員は州の上下院どちらにも属していたことがある。現在はラピッドシティの一部を含む第33選挙区の代表下院議員だ)。記録によれば、ジェンセン議員は2014年に年間会員として入会していたようだ。データベースには、現在の入会状況については記載されていない。

オース・キーパーズ会員名簿に名前が記載されていたこと、また同組織との現在の関係についてジェンセン議員に電話およびメールでの取材を申請したが、返答はなかった。

民兵グループの会員名簿に名前が載っていた公職者はジェンセン議員だけではない。極右派でトランプ前大統領の熱烈な支持者であるアリゾナ州のウェンディ・ロジャース州上院議員は、トランプ氏が2020年大統領選挙でアリゾナ州の票を奪われた、という嘘を喧伝した人物だ。リークされたデータベースにはロジャー議員の情報も掲載されているが、本人はグループとの関係をまったく隠すことなく、「我が国と憲法に対する彼らの献身は素晴らしいと思います」とツイートしている。


「州内最大級の品揃えを誇る銃器店」のオーナー兼政治家も

アリゾナ州の政治家ではもう1人、ピナル郡行政官を務めるジェフ・サーディ氏の名前もリークされたデータベースに登場する。サーディ氏はローリングストーン誌に宛てたメールの中で、10年以上前にオース・キーパーズに入会して年会費を支払ったことを認めた。本人によれば同グループに関心を抱いたのはハリケーン・カトリーナの後、一部のニューオリンズ市民が地元警察から銃を押収された時だったそうだ。彼はオース・キーパーズの集会には一度も出席したことはないと強調したが、「理屈の上では、憲法支持を誓った者は誰もが事実上オース・キーパーズの一員です」と付け加えた。サーディ氏は最近のオース・キーパーズの活動からは距離を置き、創設者のスチュワート・ローズ氏が「当初の趣旨とは相いれない方向に」グループを導いていると非難した。ちなみにサーディ氏は公職とは別に、本人いわく「州内最大級の品揃えを誇る銃器店」のオーナーでもある。

名誉毀損防止連盟が運営するプロジェクト、Center on Extremismの調査研究員を務めるアレックス・フィードフェルド氏は長年にわたって民兵グループを研究している。オース・キーパーズの勢力は主に銃を持つ人間、つまり警察当局の人間を採用することに由来する、と彼は言う。「ですが、現職または引退した公職者のオース・キーパーズメンバーも徐々に増えています」。フィードフェルド氏も指摘するように、政府の人間が反政府過激派グループに入会するとはいささか皮肉だ。オース・キーパーズに参加することは違法ではないものの、「とても気がかりです」とフィードフェルド氏は言う。さらに政治家に関して言えば、「彼らは過激な施行に沿うような法律の制定に一枚噛んでいます。実際に一般市民の生活にも影響が及んでいます」

ジェンセン議員は近年も政治的姿勢を緩めていないようだ。マスク着用義務などのコロナウイルス公衆衛生対策を公然と非難し、最近では連邦当局に異を唱え、「職場でのワクチンや検査の義務化を全国規模で施行しようとするバイデン政権の試みを一切無効とすることを求める」決議案にも署名した。

議員は2月にはラピッドシティ・ジャーナル紙の論説で、オース・キーパーズのイデオロギーから拝借した主張を展開した。「我々は今、建国の礎となった憲法上の権利が安全の名のもとに脇へ押しやられている時代を迎えた」と、彼は警告する。「不可譲の権利を蔑ろにする決議・法令・命令が、発布・可決・施行されている」。ジェンセン議員は「法律で無理やり我々を従わせようとする強制や弾圧」にも激しく抗議した。

ジェンセン議員のWEBサイトは一風変わっている。PhilJensenSD.comには、メーリングリストへの参加を求める他はほとんど何も情報がない。サイトの紹介文は「ソーシャルメディアでの尋常ならぬ検閲」と「未曾有のキャンセルカルチャー」を非難した後、「私の口から直接皆さんに、毎週メールで真実を語ることが極めて重要です」と続く。

「皆さんを政府内部にご案内し、真実をお届けしたいのです」とジェンセン議員。「メディアや政党上層部の手が加わっていない真実を……自由が危機にさらされています」と警告し、「自由から自由が奪われているのです」

from Rolling Stone US

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