「ツタロックDIG LIVE Vol.8」2年振りの有観客開催、11組のバンドが魅せた圧倒的熱量
Rolling Stone Japan / 2021年11月19日 12時0分
2021年11月6日、TSUTAYA O-EASTにて「ツタロックDIG LIVE Vol.8」が開催された。コンピレーションアルバムの制作やバンドを集めたライブ公演を2014年から継続してきた同企画だが、コロナ禍の影響もあり、本公演は2019年10月21日のVol.7以来となる約2年ぶりのイベント公演となった。
13時からスタートし約8時間にも及ぶこの日のライブ、MASSIVE STAGEとCOSMIC STAGEの2か所で行なわれたイベントを出演順にライブレポートしていこうと思う。
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オープニングアクトはインディーズバンド&アーティストの音楽配信サイトEggsのオーディションを勝ち上がったORCALANDだ。演奏した3曲はどれも個々人のプレイスキルを活かしたアンサンブルでアイデアも豊富で、騒と静の切り替えを活かした質感はオルタナ系の血筋を感じさせる。オープニングアクトとは思えないほどの高レベルな楽曲に、集まった観客らも驚きを隠せなかった。
ORCALAND
1番手に登場するのはリュックと添い寝ごはんだ。この日登場するバンドのなかでもゆるやかなムードを放っているバンドで、長丁場なこの日のイベントにはピッタリだろう。ブカっとした服装で「くだらないまま」や新曲「東京少女」を披露した。彼らというとどこか牧歌的なグルーヴとムードが漂うが、ベース&ドラムのボトム隊の安定感ある演奏に、ギター&ボーカルの松本のソフトタッチなボーカルは、20歳前後とは思えぬ魅力に満ちている。11月21日にはLIQUIDROOMでのワンマンを控えている彼ら、トップバッターとして大きな存在感を放っていた。
リュックと添い寝ごはん
2番手に登場したのはバイリンジボーイ、2019年11月8日に結成され、ギターボーカルの梅林寺連太郎の名を冠したスリーピースバンドだ。「こんな早い時間に来てくれてありがとう。熱いのはダサイなんて言われそうだけど、熱くなれないヤツの方がダサイぜ」と梅林寺はハッキリと言葉にし、リッケンバッカー独特の芯のあるギターサウンドと自身のボーカルでフルに活かしたライブを見せつける。この日のライブ序盤の勢いづかせるパフォーマンスを見せてくれた。
バイリンジボーイ
「熱くなれないヤツの方がダサイぜってさっきMCされてましたけど、全く同感です」と、3番手に登場した時速36kmのギターボーカル仲川はライブ中に語った。東京都練馬区江古田を拠点にする時速36kmの音楽は、小細工無用と言わんばかりのパワフルさが常にある。ドラムス松本のパワーヒッターなドラミングに支えられながら、仲川の力入った歌声は、裏返り、かすれ、叫びになり、どこか泥臭い。心の歪みをストレートに表現するような彼のボーカルに、ギターノイズとどことなくヨれるアンサンブルは、まさしく「エモ」と称するに相応しい。
時速36km
4番手に登場したのは2020年に結成されたばかりの藍色アポロだ。「カゲロウ37℃」「mind」で始まったセットリストは、どこかクリーンで清涼感すら感じさせる清々しさが尾を引くライブだった。歌心とメロディラインを大事にした楽曲群には、とある時期のASIAN KUNG-FU GENERATIONやLUNKHEADを筆頭に、20年以上前にあったハイラインレコードや下北沢系ギターロックバンドの面影を彼らに見た。日本独特のギターロックな血筋は、姿と場所を変えながらそこにあった。
藍色アポロ
ライブも中盤戦に差し掛かるところで登場したのは、5番手となるマルシィ。福岡発の3ピースバンドで、Apple MusicやSpotifyなどで「絵空」「白雪」といったラブソングがピックアップされ注目を集めてきた。彼らにとっては久しぶりの有観客ライブであり、これまでの4人体制から3人体制になったばかりのタイミング。「大切なものはみんな大事にしてほしい」とMCした後に演奏された代表曲「絵空」は、喪失感と別れを綴った佳曲。ミドルテンポ中心のセットリストで丁寧なパフォーマンスが光り、観るものを釘付けにしていた。
マルシィ
「広島から10時間かけてやってきました!」と溌溂としたMCで観客を沸かせていたのがbokula.だ。平均年齢20歳ながら今年からインディレーベルLD&Kが新レーベル「STAY FREEEE!!!!!!!!」に所属し、先日まではヤングスキニーらと共にツアーをこなすなど、全国に飛び回ってライブをこなしつづけてきた。タイトなバンドアンサンブルと印象的かつ多彩なギターリフの数々で観客を盛り上げていき、ミドルテンポ一切なし、アップテンポのみの全球ストレートな熱演を披露。いまもっとも見るべきライブバンドではなかろうか。
bokula.
bokula.の熱演を隣のステージ上からじっと見ていたのが、3人組で活動しているthe quiet room。茨城県水戸市で結成され、北関東〜東京を中心に活動し、10年ものキャリアを積んできた彼らが今年ついにファーストアルバム『花束のかわりに』を発表。この日参加したバンドでも随一の経験値を活かし、大きな身振り手振りで観客をたくみに盛り上げていく。加えて印象的だったのは、この日立ったメンバー4人が終始笑顔でライブしていたこと。「ライブハウスにいまこんなに人がいることに感動している」という菊池遼のMCは、偽らざる本音だったことが伝わってくるライブだった。
the quiet room
2020年8月結成されたばかりのヤングスキニーは、メンバーもまだ20歳が中心となったバンドだ。「ワンナイト」「バンドマンの元彼氏」や、この日は演奏されなかったが「世界が僕を嫌いになっても」など、リアリティに溢れすぎているほどに綴られた生活感や心情の機微は、男女関わらずに胸を打つものだ。ささくれ立った感覚を包み込んだ楽曲群を淡々と演奏をつづけ、孤独感や寂しさをひと際に感じさせる歌声で引き込んでいた。今後彼らがどのようなバンドになっていくのか楽しみだ。
ヤングスキニー
11月にして半袖のシャツを着て、大阪人らしい小気味よいMCを見てしまうと、reGretGirlが繊細なラブソングで大ブレイクしているという事実とどうしても繋がらない。だが「背中を押すことはできなくとも、隣で手をつなぐことをしていきたい」とMCで語り、ラフな質感のギターリフと3人組だからこそのシンプルなアンサンブルには、ロックバンドらしい熱量が前面に出ていた。「ピアス」に始まりラストに披露したヒット曲「ホワイトアウト」まで、彼らの強かさを感じさせてくれるライブであった。
reGretGirl
7時間にも及ぶこの日のライブ、ラストを飾ったのはCOWCITY CLUB BANDだ。2020年4月に結成された滋賀県出身、自身のルーツにフォークソングや歌謡曲を挙げる彼ら、朗らかで大きく拍をとった「グッドラック」からスピードをグッとあげていく「ランデヴー」と、聞き取りやすい歌声とメロディラインが沁みる。「イイ感じで帰れるようにやります!」と宣言して演奏するのは「まっすぐ帰るよ」「カントリーボーイズオンザラン」の2曲、柔らかくも温かいフォークロックでこの日のイベントを締めくくった。
COWCITY CLUB BAND
ここ5年で継続してきたツタロックとして、2年ぶりとなった有観客イベント。ライブハウスに足を運びづらい現状が続くなかにあって、SNSでのバイラルヒットやライブハウスシーンで注目されるバンドらを集めた本公演は、いま開催するにジャストタイミングなイベントだったといえよう。
「ツタロックDIG LIVE Vol.8」
2021年11月6日(土)東京・TSUTAYA O-EAST
主催・企画:CCCミュージックラボ株式会社
制作:株式会社シブヤテレビジョン
協力:Rolling Stone Japan
協賛:eggs
問い合わせ:TSUTAYA O-EAST 03-5458-4681
公式HP:http://tsutaya.jp/dig_8/
出演者:藍色アポロ / ORCALAND / COWCITY CLUB BAND / the quiet room / 時速36km / バイリンジボーイ / マルシィ / bokula. / ヤングスキニー / reGretGirl / リュックと添い寝ごはん(※50音順)
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