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威嚇・恐喝は日常茶飯事、ギャングと職員の「癒着」が明るみに 米刑務所

Rolling Stone Japan / 2021年11月17日 6時45分

2019年8月10日、米ニューヨーク州メトロポリタン矯正センターのフェンス(Photo by Bebeto Matthews/AP)

米ニューヨーク市マンハッタン南部のメトロポリタン矯正センターは、性的搾取で起訴された富豪、ジェフリー・エプスタイン被告が自殺した場所としても知られる。様々なセキュリティレベルの男女の囚人を収容している拘留施設だが、環境劣悪で、矯正官が受刑者に虐待を加えたり、内部で汚職が蔓延したりするなど問題が多いことでも知られる。

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そのため司法省は8月に同刑務所の閉鎖を発表し、10月に受刑囚を移送。ニューヨーク南地区連邦検事は現地時間11月4日、忌まわしい同センターの最後にして極めつけのスキャンダルを暴露する起訴状を公開した。関係者の犯罪歴を踏まえた上で起訴状をじっくり読んだ結果、Blood Hound BrimsやCrips一派といったニューヨークシティ最恐のギャング団と施設職員との癒着が明るみになった。

3人の看守は高層建築の刑務所に禁制品を持ち込む計画に加担し、8人の受刑囚に便宜を図ったとして起訴された。11の呼び名を持つこれら受刑囚は、少なくとも6つのギャングのメンバーだ。そのうちの1人、Nine Trey Gangsta Bloodsのアンソニー・”ハーヴ”・エリソンは、ラッパーの6ix9ineを誘拐して強盗を働いたなどの罪で懲役24年の刑期を務めている。

22ページの起訴状によれば、犯罪計画に関与した刑務所職員は賄賂を受け取って、麻薬や酒、タバコ、携帯電話など様々な物品を12階建ての収容所に持ち込ませていた。1975年に開所し、連邦刑務所局が運営する同センターは、主に裁判や量刑判決を待つ受刑囚の拘留用に使われていたが、近年では過密な収容率と不衛生な環境、そしてスキャンダルの舞台となっていた。

ここは世界でも悪名高き受刑囚が収監されていた施設でもある。ちなみにエプスタインは、監視そっちのけで居眠りやインターネットをしていた看守の不注意により、まんまと自ら命を絶った。メキシコの麻薬王エル・チャポことホアキン・グズマンは刑務所内の不衛生な環境に反発し、同センターでの拘留を「身体的、情緒的、精神的拷問」になぞらえた。

起訴状によれば、持ち込み計画は2019年10月ごろから始まって今年1月まで続いた。3人の刑務所職員は、オキシコドン、ザナックス、喫煙型合成カンナビノイドK2、酒、煙草、携帯電話、アクセサリーの持ち込みに手を貸していた模様。これら禁制品は拘留中の受刑囚8人の手に渡ったとみられる。彼らは「キンゴ」「レル」「ブランド」「ドンP」「チノ」「ジュニア」など、TVドラマ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』からそっくりそのまま取った別称で呼ばれていた。

起訴状には受刑囚の所属するギャングは列挙されていないが、すでに連邦当局はニューヨークシティでもっとも恐れられるギャングとの関連性を突き止めている。

Blood Hound Brims:連邦当局の表現によれば、「ストリートと刑務所で幅を利かせるギャング、Bloodsの中で最も凶悪かつ急速に成長している一派」

Davidson Avenue DTO(麻薬取引組織):連邦当局いわく、「全米に展開するストリートギャングCrips」から分かれた一派

Boss Crew:連邦当局の表現によれば、「Brooklynの麻薬取引組織」

Stevenson Commons Crews:連邦当局によれば、ブロンクスを拠点とする「恐喝組織」

Hot Boys:連邦当局の表現によれば、アッパーマンハッタンを拠点とする「強盗団」



禁制品の持ち込みの他にも

起訴状に出てくる受刑囚の中でもっとも有名なのが、Nine Trey Gangsta Bloodsのハーヴ・エリソンだ。Nine Trey Gangstaはラッパーの6ix9ineがストリートの信用を得るためにつるんでいたギャングで、時折ミュージック・ビデオにメンバーを出演させていた。エリソンはラッパーの腹心兼ボディガードだったが、やがて6ix9ine(本名はダニエル・ヘルナンデス)を正統なギャングではなく「ギャングかぶれ」とみなすようになった、と言われている。

結局エリソンは2018年に6ix9ineを誘拐し、宝石類を渡さないと殺すと脅した。ニューヨークデイリーニュース紙の報道によれば、大量の戦利品の中には「赤のRolexプレジデント、Cuban Linksのブレスレット、ダイヤモンドの指輪4つ、69マークの入ったダイヤモンドの回転式チェーン、映画『ソウ』シリーズの登場人物ジグソウをかたどったチェーン、6ix9ine本人のレインボーカラーの髪をあしらった9万5000ドル相当のマイリトルポニーのネックレス」などがあった。6ix9ineはエリソンのSUVから見知らぬ他人の車に飛び乗り、難を逃れたということだ。

その後、6ix9ineは検察側に協力し、重要証人として元ギャング仲間に不利な証言をした。最終的に武器所持および恐喝罪で懲役2年に減刑された。判事はギャングを売った彼の証言を「めったにできないこと」で「きわめて有益だ」と称賛した。

今回の起訴によれば、同センター職員のうちシャロン・グリフィス・マクナイトという看守班長が、量刑判決を控えていたエリソンへの禁制品持ち込みに関与した。同職員はさらに深入りし、エリソンの裁判の担当判事に宛てて、本人がいうところの「模範囚」に減刑を求める手紙を書いた。

判事はその手紙を額面通りに受け止めた。「これがジョン・グリシャムの小説か何かではなく、皆が共謀して(エリソンについての)話をでっち上げているのでない限り」と判事。「私には、(エリソンの)同センターでの経過が順調であることは否めないように思われます」

起訴状は、グリフィス・マクナイト班長が判事へ虚偽の報告をしたことで、「職務に背いて公的手続きに立ちはだかり、横やりを入れ、妨害した」と主張。「当時グリフィス・マクナイト班長は、エリソンが実際は『模範囚』ではないことを知っていた」ときっぱり言い切っている。


ニューヨーク州議員はセンターの閉鎖を「絶賛」

起訴状では禁制品の持ち込み容疑に加え、別の職員についても、施設内の受刑囚が禁制品持ち込み計画をFBIに密告しないよう「威嚇・恐喝し、他の受刑囚にも威嚇・恐喝させた」と主張している。

ダミアン・ウィリアムズ連邦検事は刑務所への持ち込み容疑に関し、センターの職員は「自分たちが守るべき受刑囚と共謀し、職務を全うすると誓った制度を軽んじた」上に、そのうち2名の職員は「正義の追及を妨害して」事態をさらに悪化させた、と述べた。

FBIのマイケル・J・ドリスコル支局長は、職員が「それぞれの容疑で犯罪者としか言いようのない行動を起こし、収監中の犯罪者が罪を重ねるのを補助した」と主張した。

今回の起訴状はメトロポリタン矯正センターによる醜態の、おそらく最後の忌まわしい1ページだ。司法省は同施設を「安全・安心」から遠のかせていた「諸問題」に対処するため、「同センターを少なくとも一時的に閉鎖する」という決定を発表した。十数人のニューヨーク州議員が、閉鎖を「絶賛」する書簡を書いた。

現在、収監者は正式に皆無だ――センターの再編や再開がいつになるのか、そもそも再開される見通しがあるのか。今のところ司法省からは何のコメントも出ていない。

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from Rolling Stone US

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