TETSUYAが語る、ソロ20周年での若返りと楽曲制作における哲学
Rolling Stone Japan / 2021年11月24日 19時0分
LArc~en~Ciel30周年、ソロデビュー20周年を迎えた2021年、TETSUYAが10年ぶりとなるソロアルバム『STEALTH』をリリースした。本作についてはもちろん、その収録曲をすべて披露したワンマンライヴ「TETSUYA LIVE 2021 "THANK YOU"」や、誰が聴いても名曲と感じさせる強力なメロディを生み続け、ライバルはディズニーランドと語るその音楽観についても語ってもらった。
-バンド30周年、ソロ20周年を迎えるほどのキャリアを積んできたわけですが、自身ではどんな音楽人生を歩んできたなと感じていますか?
こんなにも長く音楽活動を続けられているので、ありがたいなと思います。先日、LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で久しぶりにソロの有観客ワンマンライヴ「TETSUYA LIVE 2021 "THANK YOU"」を開催させて頂いたんですけど、感染病予防対策で50%しかお客さんを入れられなかったとはいえ、ファンのみんなの前で歌うこともできて嬉しかったし、楽しかったし、そこでも音楽を続けられていることに幸せを感じました。
-「TETSUYA LIVE 2021 "THANK YOU"」はどんな意気込みを持って臨まれた公演だったのでしょう?
ラルクの30周年ツアーと重なってしまったので、スケジュール的に不安でしたし、最初は「できるのかな? そこまで無理してソロのライヴもするべきなのかな?」と思っていたぐらい大変な状況ではあったんですけど。どうしてもバンドとソロのアニバーサリーイヤーが一緒になっちゃうんで、過去にもこういうことはあったんですけど、昔とはいろいろ違うんで(笑)。あと、バンドで全国をまわっている状況下で、ソロライヴに向けて歌う練習をする場所やタイミングがなくて。
-ライヴ中のMCでも仰っていましたね。
ライヴで歌える体に仕上げるまでどうしても時間が必要で、しかも今回はハイトーンで歌う楽曲が多いニューアルバム『STEALTH』の全曲披露ライヴでもあって、しっかり体を作り上げないとあの声は出ないんですよ。その準備期間が「足りるかな?」という不安がいちばん大きかったですね。1、2曲歌うだけならすぐ整えられるんですけど、20曲弱を歌い切る体を作るにはそれ相応の時間がどうしても必要になってくるので。
-バンドとソロのモードの切り替えも簡単じゃないでしょうし。
そうですね、僕の場合はバンドとソロでやることが全然違うんで。ベースを弾くことと歌をうたうことは全く別モノなので、それぞれの準備期間が必要になるんですよね。「ラルクのライヴをやっているからソロライヴもバッチリだ」ということにはならない。でも、結果的に良いライヴができたので「やってよかったな」と思いましたね。今回は新しいソロアルバム『STEALTH』をリリースしてのライヴだったので、レパートリーが増えたことによって表現の幅も広がっていろんな要素を見せることができたし、心配していた歌に関しても全然大丈夫だったというか「まだまだ歌えたな」と思うぐらいだったので、最後まで気持ち良くライヴすることができました。
-ソロでの有観客ワンマンライヴは結構久しぶりでしたよね?
去年のクリスマスのストリーミングライヴも100人限定だったんですけど、あれだけしっかりオーディエンスがいる前でソロライヴをしたのは2年ぶりぐらいかな。しかも今回は新しくて綺麗で広い会場だったので、それもあって気持ち良かったですね。去年のストリーミングライヴはライヴハウスで収録したんですけど、やっぱり大きいホールのほうが歌っていて気持ちいいですね。
-そのライヴのMCでも「構想15年、制作10年」と仰っていたソロアルバム『STEALTH』。遂にリリースすることが決まったときはどんな気持ちになりましたか?
うーん……ここに至るまでレコード会社のスタッフが辞めちゃったり、担当が変わっちゃったりしたこともあって、いつになったらリリースできるのか僕も分からない状態が続いていたんですよ。ぶっちゃけてしまうと(笑)。
-ソロのファンクラブを立ち上げたとき、スタッフの後押しがあって設立したと仰っていた記憶があるんですけど、そういう周囲の意見を重んじて動くTETSUYAさんからすると戸惑う状況ではあったんですね。
そうなんですよ。ファンクラブも僕発信じゃなくてスタッフが「作りましょうよ」と提案してくれて、それに対して「でも、やるならちゃんとしたモノをやらないとファンに失礼だよね」って進めていって実現したものなんですよね。僕、案外受け身でプロジェクトが動いていくことが多いので、今回のアルバム『STEALTH』に関しては先が見えない時期もあったんですけど、それでも、そのときそのときにできる限りのことをやってきた積み重ねがこうして形になって、ようやく皆さんのもとへお届けできたことは嬉しく思います。
-ここまで全編にわたってポップでメロディアスで、誰が聴いても名曲と感じるであろう楽曲群はなかなか出逢えないと思いました。これだけ華やかでカラフルなアルバム、自身では仕上がりにどんな印象や感想を抱かれていますか?
僕、ライバルはディズニーランドだと思っていて。ディズニー映画にそんなに詳しくなくても、ミッキーマウスの大ファンじゃなくても、何の予備知識がなくても、ディズニーランドって行けば誰もが楽しめるじゃないですか。そういうモノを僕もアルバムやライヴで目指していて、僕の楽曲を1曲も知らなかったとしても楽しめる音楽空間を創りたいと常に思っているんです。あと、自分自身がマニアックな音楽バカじゃないから「パッと聴きで良いか悪いかだけでいいじゃん」と思っているし、パッと聴いて「あ、良いな」と感じるモノだけを作りたいし、難解なモノは要らないと思っている人なんで。
-それにしても、パッと聴いて「あ、良いな」と感じる楽曲をこれだけ多種多様なレパートリーで生み出し続けられる才能は尋常じゃないと思います。目指しても作れるモノじゃないというか。
ウチの父とかそんなに音楽に詳しい人ではないんですね。そんな父でも「あの曲、ええな」と言ってくれたりするんですけど、そういう音楽に明るくない人でも「良いな」と思えるモノを作りたいだけなんです。音楽好きのマニアックな人にしか理解されないモノを作ってもディズニーランドにはならないので。アーティストって便利な言葉で「これが分からないおまえが悪い」って言い切っちゃえば、それでアーティストになれるじゃないですか(笑)。でも、僕はそういう感じが好きじゃないんですよ。あと、自分が音楽を売る側のスタッフとしての脳も持ち合わせているので、だから今回のアルバム『STEALTH』みたいなモノが自然と生まれてくるんだと思います。
-聴いてくれる人が楽しんでくれなきゃ意味がない。その想いが人一倍強いんでしょうね。
僕は曲なんて誰でも作れると思っているんですね。この話をすると「え、そんなのなかったよ」って言われるんですけど、僕の中学では音楽の授業で作曲の授業があったんですよ。宿題で「曲を作ってきなさい」って先生に言われるんです。だから「作曲なんて誰でもできるでしょ? 義務教育で習ったでしょ?」と思っていたんですけど、この話をすると毎回驚かれるんですよ。なので、僕の中学の音楽の先生はちょっと変態だったのかもしれません(笑)。でも、その影響で今でも「曲なんて誰でも作れる」と思っていて。ただ、良い曲を作れるかどうかは別なんですよね。誰でも作れるからこそ、良い曲じゃないと意味がない、だから僕は「これじゃ弱いな」とか「サビが弱いな」って思ったら、ちゃんと突き刺さるまで頭使ってひねり出して、必ず強力なメロディを生み出す。それは自分に義務付けています。
-ゆえに『STEALTH』も強力なメロディだらけのアルバムになっていると。ちなみに、過去の作品と比べてどんなところに変化や進化を感じたりしましたか?
ラルクの結成から数えて30年経っているので、曲作りも時代と共にいろいろと変わってきて。自分の中でもコツみたいなものはどんどん掴めてきているので、より楽しんで作れています。「この世の中にないモノを僕が生み出している」って考えたらすごく光栄だし、自分でもすごいことをやっているなと思うし。0から1を作るという、いちばん大変で、いちばんすごいことを自分がやれている。それは楽しいし、幸せですよね。どんどんその想いが大きくなっているのは、今回のアルバム『STEALTH』を聴いていても感じますね。で、それを聴いて、すごく気に入ってくれる人がいて、「影響を受けています」と言ってくれる人もいろんなところにいる。本当に有り難いなと思います。
-TETSUYAさんがソングライティングされている音楽は、完全にTETSUYAさんにしか作れないモノになっているじゃないですか。今や類似品すら誰も作れない次元になっていて、本当の意味で唯一無二の道を進んでいますよね。
不思議ですね(笑)。中学の頃に先輩に勧められてベースを始めて、その流れでバンドを組んで音楽の道へ進みましたけど、一度も「プロになろう」なんて思ったことはなかったんですよ。そもそもプロになれるなんて思っていなかった。そんな僕がこうやって30年も音楽を続けられていることも不思議だし……人生って分かんないもんですね。小学校の卒業タイミングで校長先生とお話しする時間があって、3、4人ずつ校長室に行って2、30分ぐらい「将来、何になりたいか?」みたいな話をするんですけど、僕の前に居た女の子が「私はシンガーソングライターになりたいです」って答えていて。そのとき、校長先生は「シンガーソングライターって何?」って聞いてて(笑)。で、僕は将来、音楽の仕事に就くと思っていなかったんで、そのやり取りを他人事のように聞いていたんですよね。そんな僕がこうして曲を書いて、自ら歌って……もう不思議としか言いようがないなって。
-自分でも全く想像していなかった人生を歩んできたわけですね。
バンドを始めた頃はヘヴィメタルを聴いていたんですけど、ヘヴィメタルバンドはギタリストが曲を書くもんじゃないですか。でも、その当時組んでいたバンドはギターが曲を全然書かなくて、書いてきたとしても「なんだこりゃ?」みたいな曲しか持って来ないんで、仕方なく僕が曲を書くことになったんですね。で、僕のまわりはみんな「上京してプロになる」と言っていたんですけど、僕だけ唯一プロ志向じゃなくて「俺は無理やわ」みたいな。それなのに気付いたらプロになっていて……。
-ここまでの話を聞いていて思ったんですけど、TETSUYAさんって天才タイプですよね。
TETSUYA:うーん……天才かどうかは分からないですけど、よく「天才」とは言われます(笑)。でも、そういう才能があるとは自分では気付けていなかったし、まわりの人のおかげでここまで来れている感覚のほうが僕自身は強いですけどね。
-たしかに、ここまでのストーリーはすべて偶発的な出逢いやきっかけから展開されていますよね。
そうなんですよね。ソロ活動に関しても、hydeがソロ活動をすることになって、それまで僕はソロなんて考えてもいなかったんですよね。やりたいことはすべてラルクでできていたし、他にやりたいこともなかったので。でも、そこでバンドの動きがいったん止まるのであれば時間もあるし、それで「俺もやろっかなぁ」ぐらいの感じでソロを始めたんです。そしたら僕のほうが曲を作るのが早かったんで、結果的に僕が先にソロデビューすることになっちゃったっていう(笑)。
-それも偶発的な巡り合わせですもんね。
僕、なんでもそうなんですよ。誰かの勧めで始めたりとか「それなら俺もやろうかな」とか、そういうまわりの状況に流されてここまで来ていて(笑)。ただ、性格的に「やるからにはちゃんとしたい、中途半端なモノはやりたくない」と思うタイプで、それに加えて負けず嫌いでもあるので、何に対してもここまで本気でやってこれたんだと思います。歌うなら歌うで、ちゃんとヴォーカリストになりたいと思っていたし。ただ、最初のきっかけはすべて自分の意思じゃないんですね。だから本当にまわりの人たちに感謝です。
-今「歌うなら歌うで、ちゃんとヴォーカリストになりたいと思っていた」と仰っていましたが、ソロを始める時点で理想のヴォーカリスト像や「こういう歌い手になろう」みたいなイメージはあったんですか?
僕、デペッシュ モードが好きで、デイヴ ガーンの声がいちばん好きなんですけど、ああいう声は出ないんですよ。だから自分のこの声で歌うしかなかったんですけど、気付いたらどんどんハイトーンが出るようになっていって。普通は年齢を重ねると共に高音域って出なくなるじゃないですか。でも、僕は年齢と共に何故かどんどん高音域が出るようになっていて。というか、見た目も中身もどんどん逆行していて、マッサージを受けていても「すごく良い筋肉」ですねって言われたり、人間ドッグを受けても体の中がすごく綺麗なんですよ。20代の頃より健康になって若返っていっているんですよね。それに伴って声のキーもどんどん上がっている(笑)。
-そんな進化の一途を辿るTETSUYAさんの未来も楽しみなのですが、今回のアルバム『STEALTH』以降はどんなヴィジョンを描かれていますか?
今作『STEALTH』は10年ぶりのアルバムになっちゃったんですけど、次のアルバムもすでに構想があったりするので、途切れることなく活動を続けていきたいなと思っています。
-その次のアルバムについて、現時点で何か話せたりしますか?
僕は常に最新作が最高傑作だと思っているので、今回の『STEALTH』を超えるアルバムにしたいですね。
<リリース情報>
TETSUYA
3rdアルバム『STEALTH』
発売中
通常盤【CD】3300円(税込)
初回限定盤【CD+Blu-ray】5280円(税込) [デジパック仕様]
UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤【CD+DVD】11000円(税込)
[LPサイズジャケット仕様・LPサイズ二つ折りブックレット付き]
=収録曲=
1. REGRET
2. Make a Wish
3. I WANNA BE WITH YOU
4. 誰がために鐘は鳴る
5. 白いチューリップ
6. FATE -Album ver.-
7. 愛されんだぁ I Surrender
8. READY FOR WARP
9. ARIGATO
10. Time goes on ~泡のように~
11. Eureka
[Bonus Tracks] ※初回限定盤、UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤のみ収録
12. milky way~砂時計~Link -LIVE 2019 "THANK YOU" 4950-
13. 瞳の住人 -LIVE 2019 "THANK YOU" 4950-
Official Site:https://www.tetsuya.uk.com/
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