FAKYのAKINAが語る、洋楽とJ-POPの表現、セルフプロデュースの強み
Rolling Stone Japan / 2021年11月19日 18時30分
FAKYのAKINAが、米ローリングストーン誌のTwich配信ライブに日本の女性アーティストとして初出演。欧米・アジアの注目アーティストが多数登場するレギュラーコーナーに大抜擢された。
Courtesy of avex
Rolling Stone JapanではFAKYとして取材したことはあったが、ソロでのインタビューは初。グループの中ではダンスを得意とする溌剌としたシンガー/パフォーマーという印象だったが、先月配信された「FUTURE」や、その一つ前の「Stupid, Careless, Dumb」では内省的な響きのヴォーカルを披露。海外のオルタナティブR&Bやエレクトロニック・ミュージックなどを愛聴しているだけあって、その懐の深さを知らしめる曲に仕上がっている。
アメリカと日本のハーフ。幼少期を沖縄で過ごし、その後アメリカへ戻って各地を転々として育ちながら、FAKYに加入するためカリフォルニアから東京にやって来たAKINA。このソロ活動を通じて、まだ誰も見たことがない景色を見せてくれるに違いない。
—ソロのヴォーカル活動は、FAKY加入後から続けてるんですか?
AKINA:1年前にソロデビューしたので、割と最近はじめた感じです。自分で歌詞を書くのも好きで、15歳くらいから自分の曲をつくったりはしてました。一応ピアノとギターは簡単なものだったら弾けるので、今もオフの日は、家でずっと曲とかメロディをつくったりしてます。
—FAKYでインタビューさせてもらったとき、サブリナ・クラウディオとかジェネイ・アイコのようなR&Bがすごく好きだっておっしゃってましたよね。ソロの曲も、そういう方向性の曲だなと思いました。
AKINA:FAKYにいる「私」も素直な私なんですけど、ソロで活動している「私」は、FAKYでそこまで見せたら暗すぎるかもしれないってところまで全力で出してます。
—R&Bだとヴォーカルの表情が大事ですもんね。「Stupid, Careless, Dumb」のヴォーカルもすごく憂いがあっていいと思いました。
AKINA:この曲は自分でデモをつくったときは、シンプルなコードで素朴な感じだったんですけど、%C(TOSHIKI HAYASHI)さんにお願いしてローファイ的なサウンドもミックスしてもらいました。丸みを帯びたサウンドと、ちょっとダークな歌詞とのバランスがとてもいいなと思います。
ー新曲の「FUTURE」は日本語の歌詞で、LUCKY TAPESのKai Takahashiさんが作詞・作曲・プロデュースされてるんですよね。これまでの路線とまた系統が違うっていうか。
AKINA:そうですね。「Stupid, Careless, Dumb」に関しては私がよく聴く海外のアーティストのテイストに寄せてみたんです。「FUTURE」の方はほぼ日本語なので、そこがまずチャレンジでした。日本語で歌うから、今のJ-POPみたいなサウンド、フラットな歌い声にもチャレンジしつつ、声の出し方も全然違う。この2曲は対照的で面白いと思います。
—日本語の歌詞にチャレンジしてみて、気づいたことはありますか?
AKINA:FAKYで英語・日本語で歌ってるときには気づかなかったんですけど、一曲まるごと日本語だと声のトーンが明るくなることに気づきました。日常会話でも言われたことがあるんです。英語だとチルで低い声を自然に出すんですけど、日本語だと「きゃ↑」って明るい声になって、言語によって別人になるってめちゃくちゃ言われます。歌声にもそういうのが出るのは面白いなって思いました。
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恋愛体験をさらけ出して書いた「Stupid, Careless, Dumb」
—AKINAさんが書いた「Stupid, Careless, Dumb」は歌詞がけっこう暗いじゃないですか。
AKINA:暗いです(笑)。
—海外のR&B歌手に多いですけど、ある種セラピー的な感じで己の痛みを歌にしてるような。
AKINA:R&Bは普段からよく聴くんですけど、相手のせいにする曲が多いなって思ったときがあって。この曲のストーリーは、自分が悪かったってところがベースにあるんです。「自分のせいだった」って言ってる曲って、私はあまり聴いたことなかったので。この曲は自分が悪かった、自分のしたことは間違っていたと言っている曲です。
—自分を大事にしてあげてっていうよりは、とにかく私のせいなんだって自分を責める曲というのが面白くて。
AKINA:そうですね(笑)。
—自分の中でここまでさらけ出して書くのは、勇気がいったんじゃないですか?
AKINA:FAKYで先日出した新曲「Sayonara My Ex」で、メンバーみんなで自分の過去の恋愛経験を書いたんです。私のセクションは、実は今回の曲と同じ人について書いた歌詞なんですけど、「Sayonara My Ex」の方は私らしい歌詞で、割と明るい。ビタースウィートで、素敵な恋愛だったってことを表現したくて。今回の曲も同じ恋愛について書きたかったんですけど、素敵な恋愛だったけどあの時は気づけなくて、全部私が悪かったっていう側面について書いてみました。内容は違うんですけど同じ人について書いてる歌詞で、一つの恋愛の両面が見せられるような内容にしたいなって思ったんです。
─なるほど。リリックを考える際は、楽しかった思い出を浮かべるより、悲しかった出来事の方が浮かびやすいですか?
AKINA:歌詞にしたその恋愛は本当に楽しいことしか浮かばなくて、だからこそうまくいかなくなってしまったのが、ほんとにしんどかったっていう。今になってから気づけたことなんですけど。
—深いですね(笑)。
AKINA:深いんです(笑)。
—楽しいことしかなかったからこそ、別れた今になってみて、なんて自分は馬鹿だったんだと気づく。でもその気持ちを歌にすることによって、自分の中でクリアにできた部分があるんじゃないですか?
AKINA:めちゃくちゃあります。頭の中では、ああ馬鹿だったって思えるんですけど、それを人の前で出すのはちょっと恥ずかしいじゃないですか。私と同じような気持ちを味わってる人に聴いてほしいです。
プロデューサーとのコラボレーションから生まれる刺激
—「FUTURE」の作詞はKai Takahashiさんですよね。事前にこの曲の歌詞はこういう内容だよ、って伝えられたんでしょうか?
AKINA:Kaiさんのことはもちろん知っていて曲も好きだったので、一緒に何かできないかなってお願いをして、この曲のデモを送ってもらったんです。最初に聴いたときから大好きで、歌詞の内容もスッと入ってきました。
—この曲はラブソングとは違うのかな?
AKINA:リスナーによって捉え方は人それぞれ違うと思うんですけど、個人的には人生すべてにおいての話だと思ってます。人生がうまくいかなくて、一歩前に進みたいけど、そこまでのモチベーションがないから迷ってる、っていう間のフィーリングの曲だなって捉えてます。
—歌い方とかヴォーカルのレコーディングに関して何かアドバイスはありましたか?
AKINA:そこまでお願い事はなかったんですけど、ソロで歌ってるときの私の声ってジャジーっていうか、海外のシンガーっぽい暗めの歌声なので、この曲に関してはKaiさんと相談しながら、海外と日本の中間を探しました。フラットにしすぎないように、でも激しく歌います!って感じでもなく。
—「FUTURE」はJ-POP的な要素もあって。
AKINA:そうですね。せっかく日本語で歌ってるので、チャレンジしてみたいな、と思って。
—ソロ活動では、Kaiさんもそうだし、HAYASHIさん、Yaffleさんと、いろんなプロデューサーの方と一緒にお仕事されていますよね。それぞれタイプが違うプロデューサーさんだと思いますが、一緒にお仕事してみてどうですか?
AKINA:私が自分でデモをつくるときは全部GarageBandでシンプルにつくってるから、それをプロデューサーさんに渡して戻ってきたとき、毎回めちゃくちゃ感動してます(笑)。皆さんリスペクトしてますし、憧れます。曲をつくるときに、大体どういうジャンルにしたいのかを決めて、だったらこの方がいいんじゃない?ってスタッフさんと相談をするんです。デモをプロデューサーさんにお渡しして、トラックが戻ってきたときに、曲の雰囲気がいい意味で全然違うこともあるから、私も歌い方を少し変えてみたり、サプライズがいろいろ出てくるので、そのプロセスも含めて楽しいです。
—コラボレーションの面白いところですよね。
AKINA:セッションっぽくていつも勉強になります。
—ちなみにAKINAさんは生バンドをバックに歌ったことはあるんですか?
AKINA:ないです。
—絶対合いそうですけどね。
AKINA:本当ですか? FAKYでも生バンドはないですね。やってみたいです(笑)。
—デモつくるときもギターとピアノを使ってるわけだから、生バンドでやっても全然違和感ないですよね。
AKINA:そうですよね。いつかできれば。
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歌詞やダンスで音楽を伝えられる
—さっき「海外と日本の中間」と話してくれましたけど、AKINAさん自身はバイリンガルだから、その両方の感覚が表現できますよね。そのへんは意識してますか? 洋楽っぽいもの、J-POPっぽいもの、みたいな。
AKINA:正直そこまでプランニングはしてなくて、今こういう曲を表現したいからやるって感じです。純粋に自分がつくったものを出したいって気持ちの方が強いですね。自然と出てくるのは、やっぱり「Stupid, Careless, Dumb」みたいな曲なんですけど、ソロアーティストとしていろんなジャンルを試していきたいと思っているので、J-POPのような曲も全然やっていきたいし、幅広く皆さんに伝えやすい曲をつくっていきたいです。
—ソロデビューしたばかりだから、いろいろできますね。
AKINA:そうですね。でも「Stupid, Careless, Dumb」までのシングルは、けっこう暗かった(笑)。ダウナー系の曲の流れが続いてたんですけど、「FUTURE」でまた違った顔を見せられたんじゃないかなと思います。この曲があったから新しい一歩を踏み出せた気もしますし、明るい曲をこれから自分でもつくれる自信を持てるようになりましたし。
—ソロデビューに至るまでFAKYでもずっと活動してきたわけだし、アーティスト活動は長いわけじゃないですか。それも強みになりますね。
AKINA:ファンの皆さんからよく言われるのが、「AKINAって明るい子なのにこんな曲歌ってるの?」って。FAKYの私はめちゃくちゃ明るくて、いつも元気な子。そう思われてるからこそ、こうやって自分が一番描きやすいちょっと暗めの曲を出したときに、そのギャップに驚くみたいで。私もその点、ちょっと不安な気持ちが正直あって。曲をリリースする度に「みんなどう思ってるんだろう?」って思います。
—なるほど。AKINAさんはダンスも得意だし、AKINAさんといえばエネルギッシュなダンス!と思ってるファンもいるでしょうしね。
AKINA:実は「Stupid, Careless, Dumb」と「FUTURE」は、YouTubeで自分で振り付けしたダンス動画もアップしてるんです。口で言いづらいことは歌詞だったり、体の動きで伝えられるので、音楽にいろんな表現の仕方があるのはすごくいいなって思います。
【Dance Movie】AKINA / Stupid, Careless, Dumb
【Dance Movie】AKINA / FUTURE
—AKINAさんのInstagramを見ると、インフルエンサーっぽさが全然ないですよね。日常の記録というよりは、アーティスト活動の記録みたいな。どういう曲をつくろうかとか、どういうダンスにしようかとか、そういうことを考えてる方が楽しいというか。
AKINA:そうですね。その通りです(笑)。
—FAKYだとHinaちゃんとかは、ライフスタイルの投稿をたくさんするけど、それが自然な感じですもんね。
AKINA:キャラはみんな、一人ひとり全然違いますからね。
—でも今後はワクワクしかないですね。自分で作詞・作曲して、歌も歌ってダンスの振り付けもできる。もう全部自分でできますね。
AKINA:ありがとうございます! でも、もっともっと頑張りたいです。
【関連記事】FAKYが語るコロナ禍での変化、皆で紡いだ新曲への想い
<INFORMATION>
「Stupid, Careless, Dumb」
AKINA
エイベックス
絶賛配信中
https://avex.lnk.to/StupidCarelessDumb
「FUTURE」
AKINA
エイベックス
絶賛配信中
https://avex.lnk.to/FUTURE
PROFILE
カリフォルニアに生まれ沖縄とアメリカで育った、東京在住のシンガーソングライター。アメリカと日本のハーフで幼少期から世界各地を転々、多様なカルチャーに触れながら育つ。2015年、ガールズ・ユニオンFAKY(フェイキー)のメンバーとして活動するため来日、15歳の時にグループとしてメジャーデビュー。2020年に、オリジナリティに溢れる唯一無二の音楽性と、15歳から世界を舞台に培ってきた歌唱力・表現力の高さを活かし万を持してソロデビュー。力強さと繊細さの双方を持ち合わせる歌声が評価され、彼女がカバーした「Amazing Grace」は、吉永小百合が主演を演じた映画『いのちの停車場』の特報曲にも起用。2021年は、東京発トラックメイカーによる2人組バンド・The Burning Deadwoodsの新曲にkiki vivi lily、PEARL CENTERのMATTON/inuiに続いて参加。自身で作詞作曲した「Stupid, Careless, Dumb」「FUTURE」はSpotifyの主要プレイリストを占拠し、そのクリエイティブが評価され、日本の女性アーティストではじめて、米・Rolling StoneのTwitch生配信に出演するなど、新人としては異例の快挙を果たす。
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