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「キング・クリムゾン最後の来日公演になるだろう」トニー・レヴィンが語るバンドの現在地

Rolling Stone Japan / 2021年11月25日 17時30分

キング・クリムゾン、右から2人目がトニー・レヴィン(Photo by Dean Stockings)

キング・クリムゾンの来日ツアー「MUSIC IS OUR FRIEND JAPAN 2021」が、11月27日〜12月8日にかけて東京・名古屋・大阪5会場にて開催される。バンド一行はすでに日本到着。ベーシストのトニー・レヴィンは自身の日記で、ホテルで隔離生活を行なっていること、移動中の飛行機で俳句を詠んだことなどを綴っている。ツアーを間近に控える彼に、バンドの現状と未来、大きな影響を受けたエメット・チャップマンの功績について語ってもらった。


—まずは、今回の日本ツアーを実現してくださり本当にありがとうございます。日本では、2020年3月以降は殆ど海外アーティストの公演が実現しておらず、SUPERSONIC 2021など少数のフェスが開催されるのみで、予定されていた単独公演も延期を繰り返すか中止になるものばかりでした。従って、今回のキング・クリムゾン日本ツアーは、コロナウイルス蔓延以後の日本においては、あらゆる音楽ジャンルにおいて実質的に最初の単独公演ツアーとなります。今回のツアー企画が実現した経緯、延期せず実行するという判断に至った経緯などを教えていただけますでしょうか。

トニー:バンドにとって日本でプレイすることは重要なんだ。数年おきにしかプレイするチャンスがないし、実際いつも何かしらの問題があって簡単には実現できないからね。だがもちろん、今年は例年以上に大変だった。我々のマネージメントチームや日本側のプロモーターが頑張って手筈を整え、新たな規制をすべてクリアしてくれた。万事上手くいってここまで来れたのがうれしいよ。日本でショウができるのが楽しみだ。

The first King Crimson rehearsal since the band arrived in Japan is underway.
The first show in Tokyo is on 27th November. Full tour details herehttps://t.co/iXHmcJ5Uli pic.twitter.com/QalxfKHVCF — KING CRIMSON (@DGMHQ) November 24, 2021

—「MUSIC IS OUR FRIEND」というツアータイトルはどんな意図のもと決定されたのでしょうか。

トニー:はは、残念だが僕にもわからないんだ! 時にバンドというのはそういうものなんだ……ツアーでどこを回るのか、どのぐらいの期間回るのか、必ずしもメンバー全員が知っているわけじゃない。ツアータイトルに込められた理由もね!
 
—直近のアメリカツアーについて、「これは最後のアメリカツアーになる可能性が高い」という話が広まっていますが、これは本当なのでしょうか。また、日本のツアーも今回が最後になるのでしょうか。

トニー:その通り、今年はバンドにとって歴史的な1年になる。今回の日本公演も僕らにとって歴史的なものになるだろう。先ごろ行われた全米公演は最後の全米ツアーという触れ込みだったし、ロバート・フリップも今回のツアー全行程を「日本で幕を閉じる」と説明していた。だからこれがクリムゾン最後の日本公演になるだろう。僕個人はバンドで最初に来日したのが1981年で、それ以来何度も来日しているが、ひとつの節目を迎えることになる。いつもバンドを温かく迎えてもらったし、いろいろな意味でとても楽しかったよ。 

新作アルバムはもう作らない?
 
—ライヴでの選曲の基準はあるのでしょうか。こういうアンサンブルやサウンドを試したいからこういう曲を持ってくる、という意図に基づいた選曲が行われることはあるのでしょうか。それとも、まず「この曲をやりたい」という判断があった上で、それを今の7人編成クリムゾン用にアレンジする、という方式が多いのでしょうか。

トニー:いい質問だね。セットリストは何種類もあって、その日のコンサートの朝になるまでどれを演奏するかは決まっていないんだ(その会場の前回の公演で演奏した曲とか、前日の公演で演奏した曲を参考にしながら、ロバート・フリップが朝食の席で決める)。だからどんな曲が出てくるか僕にも予想がつかないが、キング・クリムゾンにはレパートリーが豊富だから選びたい放題だね。


トニー・レヴィン(Photo by Claudia Hahn) 

—キング・クリムゾンの楽曲には、1つのフレーズを分解し複数人で担当するアレンジ(「Level Five」など)や、ポリリズミックなアンサンブルなど、演奏するのが非常に難しいものが多いですが、バンドとして特に気を付けている曲はありますか。また、トニー個人として、キング・クリムゾンの楽曲の中で特に好きなものは何でしょうか。

トニー:そうだな、後半の質問に関して言うと、僕自身はクリムゾンのショウでもどんなコンサートでも「特に好きな曲」というのはないんだ。中には、質問にもあったように、他よりも演奏するのが難しい曲もある。だけど比較的簡単な曲でも、かなりの集中力を要して、ノンストップで音楽に集中しなくちゃいけない。すると難しいことで知られている曲と同じくらい、コンサートで演奏すると盛り上がる場合があるんだ。今まで一緒にツアーした他のバンド以上に、このバンドでは全員がしっかり休養を取って体調を整え、音楽から求められる課題と向き合う必要がある。複雑な曲をミスなく演奏するだけじゃなく、その都度ユニークなものを作りださなくちゃいけないんだ。技術的に難しいというのもあるけれど、毎晩スペシャルなものに仕上げるのも同じくらい大変なんだよ。
 
—スタジオ録音の新しいアルバムはもう作らないという話がありますが、これは本当なのでしょうか。

トニー:スタジオアルバムの計画はないし、次回作が出る見込みもない(ただしキング・クリムゾンに関しては読めないな――なんてったって、僕は1985年に解散すると思っていたんだから!)。すべてはロバートの考え次第だ。この件について彼と話したことはないが、僕の知る限り、毎回ツアー前に十分リハーサルをして、公演では毎回「スタジオ収録」のクオリティで演奏して、公演内容を全部収録して、ショウのさなかに魔法が起きたら今後のリリースに取っておく。昔からそうしてきたわけじゃない。昔はスタジオアルバムを作って、アルバムをひっさげてツアーしてしていた――でも新しいやり方のほうが、大規模なアルバムがリリースされるまで待たせずに僕らの音楽をリスナーに届けられるし、僕らにもそのやり方が合っている。
 
—定期的に発表されているライヴアルバムはいずれも素晴らしい内容で、年を経るほどにクオリティが高くなり続けていると感じます。キング・クリムゾンのライヴはサウンドチェックやリハーサルも含め全て録音されていると聞きますが、そこから音源を選ぶ基準はありますか。また、その作業を担当するのは誰なのでしょうか。

トニー:どの音源がベストかを選ぶのはロバートと、マネージャーのデヴィッド・シングルトンだ。彼は全てのステージに立ち会っていて、バンドの歴史についても精通しているからね。


2021年の公演を収録したライヴアルバム

—キング・クリムゾンは全ての時期を通して様々な音楽ジャンルに大きな影響を与えてきました。70年代までのクリムゾンには、いわゆるプログレッシヴロックに留まらず、メタルやハードコアパンクの領域にも決定的な影響を受けたバンドが多いですし、あなたが参加した80年代以降の作品群も、ポストロックやマスロックといったジャンルの主要なインスピレーション源になっています。そして昨今も、ブラック・ミディをはじめ多くのバンドがクリムゾンからの影響を公言していますし、キング・クリムゾンの存在感はここにきて更に高まり続けているように思われます。こうした状況をクリムゾンのメンバーは意識されていますか? また、2001年に開催されたトゥールとのツアーのように、ライヴでの共演やコラボレーションに関するオファーや予定はありますか?

トニー:そうだね、他のミュージシャンから「あなたの音楽に影響を受けました」と言ってもらえるのは光栄だ。もちろん僕自身も他のプレイヤーから影響を受けている(キング・クリムゾンの歴代ベーシストも含めてね!)。トゥールとは一緒にツアーする計画があったんだが、2020年にツアーでできる選択肢が変わってしまった。それでツアーを再開できるまで待って、それからツアー開催地の選定をしなくちゃならなかったんだ(全米ツアーを終えて、今度は日本だ)。
 
—キング・クリムゾンは、SpotifyやApple Musicのようなサブスクリプション・サービスで一度は音源を公開したものの、その殆どの配信を停止し、その後にYouTubeでは大部分を公開し、現在もその状況が続いています。このような判断に至った主な理由はどんなものなのでしょうか。

トニー:これも決めるのはロバートとマネージメントだ。僕は関わっていないし、このことについては何も知らない。 

チャップマン・スティックの創始者について

—80年代以降のキング・クリムゾンのアンサンブルにおいては、あなたの貢献が極めて大きいと思います。ファンクやソウル・ミュージックに通じるタイトなリズムコントロールがなければ、『Discipline』以降の路線およびその発展は実現不可能だったと考えられます。こうしたジャンルはプログレッシヴロックのファンからはあまり興味を持たれない傾向があると思われますが、あなた個人としては影響を受けているのでしょうか。また、そういうジャンルや他プロジェクト(Liquid Tension Experimentなど)の演奏感覚をキング・クリムゾンに意識的に持ち込もうとしたことはありますか。

トニー:お褒めの言葉をありがとう。僕もたくさんの音楽や大勢のプレイヤーから影響を受けてきた。とくにベーシストに関しては若い時のジャズプレイヤーにまでさかのぼる。いろんなジャンルの音楽に携わってきたが、意識的にクリムゾンの作品の解釈に取り入れようと思ったことはない。たぶん音楽の専門家なら、僕の演奏法やルーツを分析したりできるかもね。でも僕自身はただ新しい音楽にどっぷり浸かって、その音楽に最適なベースパートを作ろうとしているだけなんだ。子供の頃に聴いて育ったR&Bみたいにシンプルな演奏をする時もあれば、新しいテクニックを模索してみたくなったり、僕のベースで新しいサウンドを作りたくなったりすることもある。僕にとっては音楽全体が大事で、そこに一番力を入れている。気持ちの赴くままに、正しいと思われるものを拾い上げているんだよ。


 
—チャップマン・スティックの創始者であるエメット・チャップマンが今月初めに亡くなられました。世界中の音楽に大きな影響をもたらした彼の功績や、個人的な思い出などについて、差し支えなければお話いただけますと幸いです。

トニー:そうなんだ、エメットとは長年の友人でね。最初にチャップマン・スティックを手にした1976年からずっと、彼の画期的な楽器から大きな影響を受けてきた(おそらく、僕は最初にチャップマン・スティックを使い始めた1人じゃないかな)。以下、先週追悼式のために書いた弔辞を紹介しよう。

 * * *

今日という陽の悲しみは、世界中の大勢の人々が共有していることでしょう――エメットがもたらした影響とインスピレーションはそれほど大きかったのです。

私は人生の価値を、その人が世間に求められているという感覚に導かれ、それを追求して人生をどう送ったかという点から考えることがあります。

私たちの友エメットをおいて、この点を見事に体現化した人間は他にいません。彼こそ、以前の人々にはない先見の明を持ち、それに息を吹き込んだだけでなく、あらゆる障壁を乗り越えてその理念を導いた人物です。裏表がなく、集中力があり、けれど友情や家族愛、各自の音楽創作といった他の人生観を除外することはありませんでした。

人間はみな直感的に、自らの音楽を突き詰める人物に惹かれるものです。私たちミュージシャンは、今まで見たことのない扉を開けてくれる人、今まで聞いたことのない音楽を作りたいと思わせてくれる人に強く惹かれます。

彼がこの世を去って以来、私はエメットとの友情がどれほど貴重だったか、エメットのような人物の功績に思いをはせています――これほど大勢の人々が、これほど深い影響を彼から受けてきました。そして彼の影響を受けた人々がさらに大勢をインスパイアし、そうした流れは今後もずっと受け継がれてゆくでしょう。

先見の明を持った人物の影響力はそれほど偉大なのです。私たちの友にして指導者だったエメット・チャップマンという男の影響力も、未来永劫続いていくでしょう。
 


キング・クリムゾン
MUSIC IS OUR FRIEND JAPAN 2021

東京2021年11月27日(土)東京国際フォーラム ホールA
東京2021年11月28日(日) 東京国際フォーラム ホールA
各OPEN 17:00 / START 18:00 SS指定席¥20,000 | S指定席 ¥16,000(税込/全席指定)

名古屋2021年11月30日(火) 名古屋市公会堂 大ホール
OPEN 17:30 / START 18:30 SS指定席¥20,000 | S指定席 ¥16,000(税込/全席指定)

大阪2021年12月2日(木)フェスティバルホール
大阪2021年12月3日(金)フェスティバルホール
各OPEN 17:30 / START 18:30 SS指定席¥20,000 | S指定席 ¥16,000(税込/全席指定) 

東京2021年12月5日(日)立川ステージガーデン
OPEN 17:00 / START 18:00 SS指定席¥20,000 | S指定席 ¥16,000(税込/全席指定) 

追加公演:東京2021年12月7日(火)Bunkamuraオーチャードホール
追加公演:東京2021年12月8日(水)Bunkamuraオーチャードホール
各日共にOPEN 17:30 / START 18:30 SS指定席¥20,000 | S指定席 ¥16,000(税込/全席指定)

各公演共にチケット発売中!
※未就学児(6歳未満)入場不可

出演メンバー
ロバート・フリップ(Gt)
ジャッコ・ジャクジク(Gt,Vo)
メル・コリンズ(Sax,Fl)
トニー・レヴィン(Ba,Stick,Backing Vo)
パット・マステロット(Perc)
ギャビン・ハリソン(Perc)
ジェレミー・ステーシー(Perc,Key)

詳細:https://www.creativeman.co.jp/artist/2021/01kingcrimson/

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