自殺した米富豪の胸中、非公開ファイルで明らかに
Rolling Stone Japan / 2021年11月25日 6時45分
未成年の少女らを性的人身取引したとして起訴された後、勾留中に自殺をはかって死亡した米富豪のジェフリー・エプスタイン。ニューヨーク・タイムズ紙が新たに入手した書類によると、エプスタインは亡くなる数日前、自殺の意思はないと主張していたという。
【写真】エプスタインの少女調達役だった元恋人
これまで非公開だった連邦刑務所局の書類には、医師や囚人仲間のメモおよび報告書が含まれている。これらの書類からは、未成年者を含む性的人身売買容疑で2019年7月に逮捕された後、エプスタインがメトロポリタン矯正センターで過ごした36日間の新たな一面が伺える。伝聞によれば、書類にはエプスタインの死因が自殺ではないとほのめかす陰謀論の信憑性を裏づけるものは何もない。その代わり、勾留中のエプスタインの胸の内や、刑務所職員が最重要受刑囚の監視と保護を怠っていた様子が垣間見える。
検視官の報告書によれば、エプスタインは2019年8月10日、監房内のベッドシーツで首を吊って自殺した。数週間前にも同じ方法で自殺を試みたが、7月9日付の1回目の心理評価で(メトロポリタン矯正センターに入所してから3日後)、自殺には関心がないかのようにふるまっていた。
第1回心理評価での医師のメモには、「エプスタインはいかなる自殺願望も、その意思や計画も激しく否定した」とある。医師はエプスタインを自殺監視棟に置く必要はないと述べた一方で、「万全の注意を払って」精神観察の継続を推奨した。ほどなく行われた2回目の評価で精神医は、「彼は笑みを浮かべながら、『なぜ私が自殺をすると思うのですか? 私は自殺するような人間ではないし、この先もそんなことはありません』と言った」と書いている。
エプスタインが最初に自殺未遂をしたのは7月23日。その数日前には、新たな保釈請求が判事から却下されていた。裁定の後エプスタインは自殺監視棟に移されたが、31時間後には別の棟に移されている。自殺未遂の後、エプスタインは「素晴らしい人生」を送っていると述べ、再び自ら命を絶つことはしないと否定した。刑務所付の精神医にも「自殺には関心がない」と語り、自分は痛みに弱い「臆病者」で、ユダヤ人だから自殺は宗教に反する、とも付け加えていたようだ。
エプスタインは再び自殺リスクを判定するための心理評価を受けた。7月31日に彼を法廷に連行した連邦執行官が、「自殺傾向」が見られるという「受刑囚保護警告」を提出したためだ。だが書類によればエプスタインは再び精神医を説き伏せ、自殺するつもりはなく、裁判で勝訴して「普通の生活」に戻ることに専念している、と思い込ませた。
「シーツを裂いている音が聞こえた」
また書類からは、エプスタインが自殺した夜についても新たな情報も判明した。彼は「社交上の」電話をかけ、恋人のカリーナ・シュリヤークと15分間話をしたと言われているが、通話履歴には彼女の電話番号は記載されていなかった。看守班長には母親に電話をすると伝えたようだが、彼の母親は2004年に他界している。
書類には、エプスタインの死から2か月後に刑務所の精神医学部門に送られたメールも含まれている。メールの送り主は、エプスタインの隣の房にいた受刑囚と話をしたという受刑囚で、隣の房の受刑囚はエプスタインが「自殺する前にシーツを裂いている」音を聞いたので、彼が自殺したのは間違いないと思う、と話していたそうだ。
刑務所での詳細な心理評価に加え、書類にはエプスタインの動向を伺っていた「受刑囚仲間」からのコメントも含まれている。堕ちた金融家は知人のセレブや「エスコート業」、金融業界の事柄について延々と話をしていたそうだ。またオレンジ色の囚人服や、監房のトイレを流した時の騒音について不満も口にしていたらしい。映画『レインマン』のダスティン・ホフマン演じる人物も騒音が嫌いだったことを挙げ、自分も自閉症なのでは、と疑っていたそうだ。
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