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ヤング・マーブル・ジャイアンツを構成する5枚 アリソンが語るポストパンクという青春

Rolling Stone Japan / 2021年11月25日 17時45分

『Colossal Youth』ジャケット、写真中央がアリソン・スタットン

パンク・ロックという革命がロック・シーンに衝撃を与えていた1978年。スコットランドのカーディフで3人の男女がバンドを結成した。スチュワートとフィリップのモクサム兄弟、紅一点のアリソン・スタットンによるヤング・マーブル・ジャイアンツ(以下、YMG)は、音を極限まで削ぎ落とし、ギター、ベース、オルガンが織りなす幾何学的なアンサンブルとチープなリズムボックスで唯一無二のサウンドを作り出した。そのミニマルなサウンドはパンクとは対極の静寂を漂わせながらも、そこにはパンクのエネルギーが圧縮されていた。しかし、彼らは1stアルバム『Colossal Youth』(1980年)を発表して解散。『Colossal Youth』はカート・コバーンを始め様々なミュージシャンに影響を与えながら、ポスト・パンクの名盤として聴き継がれていくことになる。

そして今年、40周年記念盤が国内盤リリースされるにあたって、ヴォーカルのアリソン・スタットンにインタビューを敢行。彼女のお気に入りのアルバム5枚を選んでもらい、YMGについての話はもちろん、彼女の音楽的背景、YMG解散後に結成したウィークエンドについてなど幅広く話を訊く、というヴォリュームたっぷりの内容だ。取材はアリソンの心のこもった挨拶で和やかに始まった。

※もう一人の中心人物、スチュワート・モクサムが選ぶ10枚も後日掲載予定。



アリソン:(日本語で)こんにちは、元気ですか?

―元気です(笑)。今回はインタビューのためにアルバムをリストアップして頂きありがとうございました。

アリソン:どういたしまして。

―まずは、今回選んで頂いた5作品について伺いたいのですが……。

アリソン:5枚に絞るのは本当に大変な作業だったわ。候補は何百枚もあって、昔からずっと好きなアルバムもあるし、最近よく聴いている新しいお気に入りもある。でも、企画の趣旨を考えると新しい作品は少し違うかなと思って、思い切って削ることにしたの。だから、今回選んだ5枚のアルバムは、何年もの間、何度も繰り返し聴いる私の”レギュラーアルバム”ともいえるものよ。この5枚の他にも昔からずっと聴いているアーティストの作品はたくさんある。ブライアン・イーノ、デヴィッド・ボウイ、ジョニ・ミッチェル、トム・ウェイツとかね。だから5枚に絞るのは本当に難しかったわ。

―セレクトは大変だったと思いますが、YMGファンとしては興味深いラインナップです。最初に選んで頂いた5作品についてコメントを頂いて、その後にYMGやあなた自身の音楽活動について話を聞かせてください。

アリソン:問題ないわ。ベストを尽くすわね!

―ではまずは、コンゴスの『Heart of The Congos』。レゲエの名盤ですね。

アリソン:このアルバムを聴いた瞬間に、そのハーモニーの美しさにすっかりやられてしまったの。それに、リズムが素晴らしい作品だと思うわ。このアルバムはスタジオ録音で、リー・スクラッチ・ペリーがミックスを務めたんだけど、彼がプロダクションを務めた作品の中でも最高峰と言っていいんじゃないかしら。曲の完成度もとても高いし、リズムも素敵だけど、特に私はハーモニーの素晴らしさに惹かれた。このアルバムを聴く度に、心に迫るものがあるのよ。このアルバムが発売されたのは1978年だけど、当時は数量限定のヴァイナルで発売されたんじゃなかったかな。それを傷むまで繰り返し繰り返し聴いたから、後から再発盤も買った。だから今、私の家には同じアルバムが2枚あるのよ。



―レゲエやダブはパンク・シーンに影響を与えましたが、このアルバムがYMGやあなた個人の音楽作りに影響を与えたところはありますか?

アリソン:はっきりとわかる影響はないかもしれないけれど、雰囲気というのかしら、そういうものは私たちのサウンドに反映されていると思う。私の個人的な音楽作りにも、そうした雰囲気のようなものは込められていると思うわ。

―続いて、ファニア・オールスターズ『Our Latin Thing』。ニューヨークのラテン・ミュージシャン、ニューヨリカンたちが集結したグループですね。

アリソン:確かニューヨークで1971年頃にレコーディングされたものだと思う。パッションに溢れていて素晴らしい作品よ。私が持っているのはCDとDVDがセットになっていて、DVDもとても見応えがあるの。私はラテン音楽が大好きなんだけど、このアルバムにはラテン音楽のすべてが詰まっていて、私にとって本当に大きな意味を持つ作品ね。ラテン音楽が持つパッションやドライヴ感がとても好きなの。私の子供達はこのアルバムを聴いて育ったから、ラテン音楽が身体に染みついているんじゃないかしら(笑)。



フェラ・クティの影響とリズムボックス

―フェラ・クティ『The Best of the Black President 2』。アフロ・ファンクを代表するフェラ・クティのベスト盤です。

アリソン:このアルバムは良い曲がたくさんあるから選んだの。もし当時に戻れるんだったら、伝説のLake OffとかFly on the Wallといったショーをこの目で観てみたかったわ。さっきのファニア・オールスターズもそうだけど、あの頃に戻って彼らのショーをぜひ生で観てみたい。当時の空気感を身体中で感じて、自分の中に取り込みたいわ。とにかく、フェラを中心としてこのアルバムに参加したアーティストは誰もが、人権や政治的な公平性というものに対してとても情熱的で、信念をもった素晴らしい人たちだと思う。彼とセッションしたミュージシャンは、音楽的にも人間的にも優れた人が多かった。トニー・アレンやデイビット・サラもその一人ね。フェラは本当に情熱に溢れた、素晴らしいアーティストだと思うわ。特にこのアルバムに収録されている「Sorrow Tears and Blood」は名曲よ。



―あなたは最近のインタビューで「アフリカのドラムが好き」と発言していますが、どんなところに惹かれますか?

アリソン:リズムがとても原始的で、まるで心臓の鼓動ように感じるの。ゴーディ・ライアンというカナダ生まれのアフリカン・ドラムの教師がいるんだけど、彼はババトゥンデ・オラトゥンジと一緒に演奏したミュージシャンなの。以前からよくアフリカの音楽は聴いていたんだけど、彼のワークショップに参加したことがきっかけで友人になって、そこからたくさんのアフリカン・アーティストと出会ったのよ。色々なアーティストと様々なアフリカン・ドラムについて語り合うなかで、アフリカのリズムやドラムをより深く理解できるようになった。私はプロのドラマーじゃないから、スキルを高めるというよりも、みんなで集まって一緒に演奏したり、音を出したりするのが楽しかったの。そうやって、みんなで楽しめるのがアフリカの音楽やリズムの魅力だと思う。

―コンゴス、ファニア・オールスターズ、フェラと、リズムに特徴がある作品が目につきますが、あなたにとってリズムは重要なものなのでしょうか?

アリソン:純粋に音楽を聴くうえではそうね。ただ、私には自分でリズムを創り出す才能がなかったし、子供の頃はまだアフリカの音楽を聴いていなかったので、最初は単純なリズムの曲を作っていた。でも、10代の終わり頃にアフリカの音楽に出会って、どんどんリズムに惹かれていった。そして、自分のソロ作品にいろんなリズムを取り入れることができるようになったのよ。


Photo by Andrew Tucker

―YMGはドラムの代わりにリズムボックスに使っていましたね。そこには何かこだわりがあったのでしょうか。

アリソン:YMG時代は、ライブやツアーで各地を廻ることが多かったから、運搬が大変なドラムセットを使うことに躊躇していたし、大きな音を出すために必要なドラムは、私たちのミニマルなスタイルには必要なかったの。それに当時の私たちはクラフトワークやイーノのようなエレクトロニックミュージックを聴いていたから、ドラムセットよりドラムマシーンを使ってサウンドをコントロールする方が自然だったのかもしれない。ドラムマシーンを導入したのは、ある意味アクシデントのようなものだったの。スチュアートのいとこのピーター・ジョイスがドラムマシーンを作ってくれたのよ。今でこそ、ドラムマシーンなんかの機材は楽器店にいけば簡単に手に入る時代だけど、あの頃は入手すること自体が難しかったから、ドラムマシーンは曲の中のもうひとつの歌声というような位置づけで捉えていたの。

シンガー・ソングライターやジャズからの影響

―ではリストに戻って、サン・キル・ムーン『Benji』(2014年)。今回のリストで唯一のシンガー・ソングライターです。

アリソン:レッド・ハウス・ペインターズの創立メンバーだったマーク・コズレックのソロ・ユニットね。彼の書く曲には、とにかく嘘がないの。飾り立てた言葉ではなくて、心の奥底から沸き上がってくるような感情をそのまま曲に込めているアーティストよ。彼の書く歌詞は本当に素晴らしくて、とても優れたストーリーテラーだと思う。自意識過剰なところのないアーティストと言うのかしら。きっと、複雑なプロダクションやマスタリングを繰り返して出来上がったサウンドなんでしょうけど、聴き手にそれを感じさせない。ただ部屋の中で黙々と作った曲にストーリーを込めて、それを私たちに語りかけてくれるような感じがする。そのストーリーは時にはとてもパワフルなの。主に彼の人生について書かれているんだけど、すごく心に響く曲が幾つもあって、特に私が好きなのは 「I Cant Live Without My Mothers Love」。何度も聴いてそのストーリーについて知っているのに繰り返し聴きたくなるの。



―スチュワートが選んだ10枚にはジョニ・ミッチェル『Hejira』(逃避行)が入っていましたが、YMGのパーソナルな空気感はシンガー・ソングライターの作品に通じるところがありますね、

アリソン:私もジョニ・ミッチェルは大好きで、今回のセレクトにも入れようか迷ったのよ。私たちはこうしたシンガー・ソングライターの曲をたくさん聴いていたから、無意識のうちに影響を受けたところはあるかもしれないわね。

―最後の一枚は、フローティング・ポインツ、ファラオ・サンダース&ロンドン交響楽団『Promises』。今回のリストのなかでは一番新しい作品です(2021年)。

アリソン:このアルバムがリリースされるより前に、彼らのライブ音源をよく聴いていたの。ちょうどロックダウンの頃ね。元々サム・シェパード(=フローティング・ポインツ)の音楽がとても好きでよく聴いていた。このアルバムはミックスが素晴らしいし、ファラオ・サンダースも最高のアーティスト。ある意味、静寂が心地良いアルバムなの。よく覚えているのは、キッチンで作業をしていた時に彼らのライブストリーミングが流れてきて。思わず手を止めて聴き入ってしまって、結局座って最後までじっくり聴いてしまったのよ。彼らの音楽は、座って静かに聴かなければと思わせてくれた。そういう時間を与えてくれて、とても感謝したわ。このアルバムは忙しない気持ちを落ち着かせてくれる効果があるの。たまには忙しい手を止めてじっくり音楽に浸ることが、なによりも癒しになることに気づかせてくれたわ。ちょっと気持ちが乱れていて心を落ち着かせたい時にお薦めしたいアルバムよ。



―ジャズでは他にどんなアーティストが好きですか?

アリソン:好きなアーティストはたくさんいるわ。例えばトニー・アレン。フェラのアルバムを通して彼のことを知ったの。それからもちろん、ヌバイア・ガルシア。新しいアーティストはいつでエキサイティングだし、積極的に新しい人たちも聴くようにしている。いまロンドンを中心にすごく面白いことをやっている若くてフレッシュなミュージシャンが出て来ていて、そういう若いアーティストに刺激を受けることが多いわ。そうした人たちがお互いにコラボレーションしていて、それがとても上手くいっているの。



―今回選んだ5作品はロック以外のジャンルの作品が多いですが、もともとあなたはロックよりこうしたワールド・ミュージックやジャズをよく聴かれていたのでしょうか。

アリソン:ずっとロックを聴いてきたし、決して敢えてロックを遠ざけるようなつもりはないのよ。ロック音楽の恩恵をすごく受けていると思うし。ただ、私はモータウンをたくさん聴いて育ったから、リズミックなものを選んでしまうのかもしれない。今回は選んでいないけど、モータウンは私の最も好きなジャンルのひとつ。もちろん、ビートルズのような60年代のポップ・ミュージックも聴いていた。当時はそうした音楽がラジオでもいつもかかっていたから、ペトゥラ・クラークやサンディ・ショーといった女性シンガーもよく聴いたわ。でも、やっぱりモータウンがいちばん好きだったかな。歌っている内容はごくありふれていて、失恋だとか男の子のことだとか、そこまで深い内容ではないけれど、それでもストーリーを頭の中で想像するのが楽しかったの。イーノなんかの曲はもっと実験的で、より抽象的なストーリーがあるから曲を聴きながら頭の中で映像を思い浮かべたりするけれど。私はミュージック・ビデオを観て育った世代じゃないから。自分の頭の中で自分なりに映像やサウンドトラックを創り上げていたの。

―YMGの曲も、聴き手の想像力を掻きたてますね。

アリソン:そうかもしれない。曲のほとんどはスチュワートが書いていて、彼のパーソナルな経験に基づいた内容なんだけれど、私はそのストーリーを自分なりに解釈して歌っていたわ。私は歌詞を書くという作業には関わっていなかったけれど、違う角度から彼の書いた詞を歌で表現していたと思う。

―YMG活動時にはどんな音楽を聴かれていましたか?

アリソン:クラフトワーク、ディーヴォ、ボウイ、イーノ、トム・ウェイツ、プリテンダーズもよく聴いていたわ。80年代に入る頃には、レインコーツやキャバレー・ヴォルテールといったバンドもよく聴くようになった。

―いろんなアーティストを幅広く聴かれていたんですね。

アリソン:ええ、その通りよ。

「レインコーツに加入したかった」

―では、ここからは少しYMGについてお訊きしたいと思います。まず、YMG結成当時、あなたはパンク・シーンをどのように見ていましたか?

アリソン:パンク以来、音楽シーンでは本当に色々なことが起こっていると思うけれど、当時のパンク・シーンはとても劇的なものだったわ。カーディフやニューポートにパンク・バンドのライブを観に行ったけれど、若かった私にはとても刺激的だったわ。それまでに見たことがないような過激な服装やピアスや……まるで夢の国に迷い込んだみたいだった。主張の激しいヘアスタイルとかメイクとか、どこか芝居がかっているような感じでエキサイティングだったの。そこには荒々しいエネルギー、情熱、政治があった。若者が当時の政治に不満を持っていた理由はとてもよくわかるけど、私にはその男性的なパワーが痛々しくて強すぎるように感じた。だから、ライヴとして体験するのは面白かったけど、家でターンテーブルに乗せて聴きたい音楽ではなかったの。

―そんな男性的なパンク・シーンの中から、レインコーツやスリッツといった女性バンドが登場して独自のサウンドを生み出していきます。YMGの繊細で独創的なサウンドは、彼女たちの音楽に通じるところもありますね。

アリソン:YMGがラフ・トレードと契約してロンドンに行くことになって、ほかの所属アーティストともオフィスで会う機会があったの。レインコーツとはそこで出会って、一緒にライブをしたりもしたわ。私の地元のウェールズでは、カーディフ以外では女性シンガーはほとんどいなかったし、女性がインストの曲をやったり、メインのソングライターとして曲を書いているバンドはまったくと言っていいほどいなかった。だからメンバーが全員女性で、自分たちで曲を書いているバンドはすごく新鮮だったの。しかも、レインコーツはトラディショナルなロックではなくて、ほかとは全然違う音楽をやっていたでしょう? 彼女たちのサウンドは確固とした個性を持っていて、本当にエキサイティングで大好きだったわ。今すぐYMGをやめてレインコーツに加入したかったくらいだった(笑)。彼女たちがきっかけとなって、ジェフ・トラヴィスがYMGと契約を結ぶことになったと思っているの。



―スリッツも聴いていました?

アリソン:もちろん! 彼女たちが従来の女性アーティストの殻を破ってくれたと思っているのよ。当時の私は大人しくてシャイで、自分に自信がないタイプだった。そんな時に彼女たちをみて、『ワオ!』って思ったわ。何も恐れずに、堂々と前に出て行って、自分たちのやりたいことをやりたいようにやる。批判されることや拒絶されることを恐れない彼女たちの姿勢が、今の私の基盤になっていると思う。自分自身を鼓舞して、リスクを恐れないという考え方を与えてくれたのよ。YMGはある意味、リスクの大きいバンドだったと思うの。従来の枠からはみ出した静かな音楽をやっていたから。表現の形は違うけれど、スリッツと私たちは立ち位置が似ていたんじゃないかな。だから、スリッツのような勇敢なバンドには敬意を感じていたのよ。



―ミニマルで繊細で強靭、そんなYMG独自のスタイルはバンド結成時からヴィジョンとしてあったのでしょうか? それとも試行錯誤しながら生み出されたものですか?

アリソン:結成当初からずっとこのスタイルだったわ。それは、スチュワートとフィリップと私、そして、ドラムマシーンが創り出したコンビネーションから生まれたものだと思う。ちょっとチューニングの狂ったオルガンも私たちのサウンドを個性的なものにしていたと思うわ。それにスチュワートの切り裂くようなギターとベース、スタッカートの効いたドラムマシーンが乗ることで狙いすぎないレシピが完成したの。

アリソンが自分の歌声を見つけるまで

―YMGに加入する前、あなたは何か音楽活動をしていましたか?

アリソン:曲作りは昔からずっとやっていた。両親に聞かせるために歌詞を書いていたけれど、他の誰かに聞かせることはなかったわ。学生時代にはカヴァー・バンドを組んでいて、その時に一緒にバンドをやっていたルイーズ・ポーターを通してスチュワートとフィルに出会ったの。ルイーズが、私をベッドルームから引っ張り出して、歌うように背中を押してくれた。YMGに加入するまでは、バンドのために曲作りをしたことはなかったの。

―カヴァー・バンドではヴォーカルをやっていたのでしょうか?

アリソン:そう。ルイーズと一緒に歌っていたの。彼女の歌声は私とは全然違ってとても力強かったけど、一緒に歌うのは楽しかったわ。ハモりを楽しんだりしていたのよ。

―若い頃から歌うことは好きだったんですね。

アリソン:ええ。とても楽しんでいたわ。

―あなたの抑制された歌声がYMGの曲に重要な役割を果たしていました。歌唱法や感情表現など何か意識していたことはありますか?

アリソン:自然にこういう歌声になったの。ヴォーカルとして歌唱トレーニングを受けていたわけでもないし、ただ自分の歌い方を続けている、という感じ。私の歌い方は、私自身のパーソナリティが反映されたものだと言えるかもしれないわね。この歌い方こそが、私自身を表現するものだから。



―あなたが惹かれるヴォーカリストがいたら教えてください。

アリソン:またジャズの話に戻るけど、ビリー・ホリデイやエラ・フィッツジェラルドといった真実の声を持つ人たちね。それと、ヴォーカリストとして認識している人は少数派かもしれないけど、ロバート・ワイアットの声がとても好き。ストーリーテラーとして説得力のある声を持っていると思うわ。イーノもとても良い声質だと思う。綺麗な声をしているし、彼もやっぱり、物語を語る人の声をしているわ。歌詞も素晴らしいと思う。ジョニ・ミッチェルもとても好きよ。彼女のように歌おうと試みたことが何度もあるの。それに、ラテンの女性シンガーの歌声にも惹かれるわね。それからトム・ウェイツにニック・ケイヴ。トム・ウェイツは荒々しい感じで物語ってくれるし、ニック・ケイヴはメロディと歌詞と歌い方のもコンビネーションが素晴らしいと思う。彼らは詩人と言ってもいいでしょうね。この辺にしておかないと、もうどんどん出て来ちゃって収集がつかなくなりそう(笑)。

―あなたが好きなシンガーは、ストーリーテラーとしての魅力を兼ね備えている人たちなんですね。

アリソン:そう思う。人と違った個性を持った、力強いヴォーカリストに多大な尊敬の念を抱いているの。そういうスタイルを確立するまでには、たくさんの経験が必要だと思うから。違ったバンドで、違うスタイルの曲を歌っていたとしても、聴いてすぐに「あの人が歌っている」とわかるような個性を持ったヴォーカリストが好きなのよ。流れるような流暢な歌い方には魅力を感じない。聴き流してしまうから。どこかひっかかりのある、人間らしい声が好き。その人が賛同出来ないようなことを歌っていても、どこか不快に感じるような歌い方でも良いと思うの。それがチクリと胸に刺さることで心に残るから。人間らしさ、泥臭さがあることで、生の声を聴いている感覚を呼び覚ましてくれるのよ。私はそういう歌声がとても好き。じっくりと座ってレコードを聴きながら、チクリと胸に刺さる瞬間が来るのを待ち受けているの。

ウィークエンドと「Final Day」

―YMG解散後、あなたが結成したウィークエンドではジャズやラテン音楽を消化してYMGよりポップで洗練されたサウンドに取り組んでいますよね。今回選んでくださった5枚は、YMG以上にウィークエンドのルーツのような気もしました。

アリソン:そうね。YMGにはジャズの要素はそれほどなかったと思うし、ウィークエンドの方がその影響は色濃く出ていると思うわ。サイモン(・エマーソン。当時はサイモン・ブースと名乗っていた)が、私がそれまで聴いたことのなかったジャズのレコードをたくさん聴いていたから。ロンドンに移住してサイモンと一緒に音楽作りを始めた頃は、サイケから始まってジャズも色々と聴くようになった。サイモンを通して家族とも言えるようなロンドンのジャズ・ミュージシャンに出会えたことは大き買ったわね。ラリー・スタビンズもそうだし、ドーソン・ミラーもそう。ドーソンは残念ながら亡くなってしまったけど、素晴らしいパーカッショニストだったわ。彼の持つ感性を私たちの音楽に持ち込んでくれたのよ。どちらかと言うと、ラテンジャズ・パーカッションという感じね。それに、ロイ・ドッズのドラムもすごく素敵だったし、彼も亡くなってしまったけど。ハリー・ベケットのジャズトランペットも最高だった。こうした要素は、YMGの後に出て来たものなのは間違いないわね。



―ウィークエンド唯一のアルバム『La Variete』(1982年)はイギリスのインディー・シーンで、ジャズやブラジル音楽が再評価されるきっかけになった名作ですが、今振り返ってみてどんな感想を持たれますか?

アリソン:『La Variete』の何曲かは、サイモンと出会う前に私が既に書いていたものなの。当時は、YMGのサウンドを踏襲したミニマルなベースラインと歌詞だけ出来ていた感じだった。それに、(ウィークエンドのメンバーである)スパイクがギター・パートを書き足してくれたのよ。静謐で行間がたっぷりあるような雰囲気の曲だった。その後、サイモンに出会って、彼がたくさんのミュージシャンをレコーディングに招いたんだけど、まるでお祭りのような賑やかな雰囲気で、それで明るくて楽しいサウンドに変化していったんじゃないかしら。内省的な部分は鳴りを潜めて、もっと外に向かっているサウンドになったの。物静かで思慮深くて瞑想的で行間のあるサウンドは自然と消滅していったのね。もっと別のものへと変身を遂げたのよ。ロビン・ミラーがプロデュースに加わってくれたんだけど、彼はとても優秀だったわ。振り返ってみると、まるで自分の子供が成長して、より大きな家族の一員として成長する姿を見ているような感覚だった。参加したミュージシャンはみんな経験豊富で、この大きな集団の中で自分の立ち位置を見極めるというとても良いレッスンになったと思う。ライブに関して言えば、YMGよりずっとやりやすかったかもしれないわ。YMGはとても静かな音楽で、観客もどうやって受け止めるかというある種の実験の場のような感じだったけれど、ウィークエンドの曲はダンサブルで、ただ楽しめばよかったから。2つのバンドで対極的なライブを経験出来たことは、とても実りあるものだったと思う。



—今、YMG時代を振り返って見て、自分たちの音楽を作り出そうと試行錯誤していた3人の若者たちをどのように思われますか?

アリソン:あの頃はみんな本当に若かったわ(笑)。自分たちの世界に閉じこもって、頭の中だけで完結していたようなものだったんじゃないかしら。音楽的にはとても上手くいっていたけれど、ユニットとしては機能していなかったかもしれないわね。みんなそれぞれ考え方も性格も違うし、モクサム兄弟と私は全く異なるバックグラウンドで育ったし、経験してきたことも全然違ったから。精神的にもっと成熟していて、上手に妥協したり協力したりしながら、異なるパーソナリティをバンドとしてひとつの人格へとまとめられたらもっと上手くいったのかもしれない。3人とも、あの年代特有の壊れ方をしていたのよ。それを上手に操って、性格の違いからくる衝突を回避したり、修正したりしてバンドとしてのまとまりを作り出すことができなかった。

メンバーとの関係性については、私もとても悩んだわ。苦しい思いをしていたの。でも、スチュワートやフィルも同じように悩んでいたことは理解していたし、彼らに対しては特別な思いがある。あの頃、彼らがどんなことで悩んでいたのか、自分はなぜ苦しんでいたのか、今ならよくわかるわ。なぜ私たちが長くYMGを続けられなかったのか、それもわかる。あの頃は、まず自分たちが何者なのかを理解する時間が必要だったの。ユニットとして機能する方法を模索する前に、まず自分自身を見つけなければならなかったんだと思う。それをしない限り、バンドとして先に進むことはできなかったんじゃないかしら。

―あなたにとってYMGは青春そのものだったんですね。最後に、YMGの好きな曲を1曲選んで頂けますか?

アリソン:毎回同じ曲を選んでしまうんだけど、やっぱり「Final Day」がいちばん好きなの。原子力というのは、今の時代に避けて通れない問題だと思うから。日本も原子力発電所の事故という惨劇を経験しているでしょう? それに、気候変動も世界の終わりを現実のものとして肌で感じさせる脅威になっている。こうした問題について、ずっと議論したり問題提起したりしてきた人たちはいるのに、良くなるどころか悪い方向へと加速しているように思える。核戦争の恐怖が一旦収まったと思ったら、今度は気候変動の問題が深刻化しているし。世界中で大雨などの異常気象が起こっているでしょう。この歌で歌われているような核戦争の脅威は鳴りを潜めているとしても、原子力がどこかへいってしまったわけではなく、依然として私たちは原子力と共に生きているわ。そのうえ、今度は気候変動が緊急事態を迎えているのよ。この地球が手遅れになる前に、早く状況が改善するように何か手を打たなければと強く思っているの。

―確かに。日本で深刻な原発事故が起こったのは10年以上も前のことですが、いまだに何も解決していません。

アリソン:その通りね。毎日次々に新しいニュースが飛び込んでくるから、人々は問題を簡単に忘れてしまう。それに人間は経済のことばかり気にして根本的な問題から目をそらしている。でも、原子力や環境破壊の問題は、今後も何代にも渡って受け継がれていくことになるから声を大にして語り継いでいなかければならないし、原子力反対のキャンペーンも地道に継続していくべきだと思うわ。それを経験者が先頭に立って声を上げていくことも大切だと思う。こうした様々な問題が今まさに自分たちの身に起こっていることを、私たちは決して忘れてはいけないの。





ヤング・マーブル・ジャイアンツ
『Colossal Youth 40周年記念盤』
2021年11月26日リリース

●国内盤2枚組CD
●ライナーノーツ対訳、歌詞対訳、日本版解説、1980年当時の冊子をモチーフとしたイラスト入りのスペシャル・ブックレットを封入
●Disc 2『Loose Ends And Sharp Cuts』にはEP/シングル/コンピレーションの楽曲を収録
●Tシャツ付セットも発売(数量限定)

詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12163


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