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電子音楽とデジタルアートのフェスティバル「MUTEK.JP 2021」、全貌を徹底解説

Rolling Stone Japan / 2021年12月2日 20時15分

「MUTEK.JP」メインビジュアル

電子音楽とデジタルアートのフェスティバル「MUTEK.JP」が12月8日〜12日の5日間、日本科学未来館ドームシアターとLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)、そして渋谷ストリームホールにて開催される。

MUTEKは2000年にモントリオールで始まり、現在では他にバルセロナ、ブエノス・アイレス、ドバイ、メキシコシティ、サンフランシスコ、東京の世界7都市で開催されていて、モントリオールでは約3万人を集めるイベントに成長している。フェスティバルでは、デジタル・クリエーション、電子音楽、オーディオ・ビジュアルアート等の先端的・創造的・実験的な表現が発表され、そこから次世代の表現に大きな影響を与えるようなアーティストやツールも生まれてきた。

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「先端的・創造的・実験的」と聞くと、敷居が高いように感じたり、一部のコアな人向けのものと思ってしまったりする人もいるかもしれないが、例えば私たちの多くがスマートフォンやパソコンの成り立ちや原理をほとんど知らなくても、それを使いこなし、そこから何か新しい感覚やアイデアを得ることができるように、ここでもまずはただそのまま表現を感じることだけでも「新しい何か」を得られるだろう。実際、グルーヴィで身体的に響くダンス・ミュージック的な表現も多々発表されていて、知識を持っている人はもちろんだが、感覚的に参加しても安心して充分に楽しめるフェスである。MUTEKは「Music & Technology」の略と思われることが多いようだが、実際には「Mutating Technology」の略で、「このフェスティバルの全体的なアイデアと精神は、人間がテクノロジーとともにどのように突然変異していくのか、人間とテクノロジーの間のフィードバック・ループのようなもの」だという。そのように、発表される様々なプログラムを身をもって体験することで、多様な感情が生まれ、何か新しい可能性を手にすることができるフェスなのだ。



またMUTEKは、トップ・ダウンの人工的なフェスではなく、地元のコミュニティーとのつながりのあるプラットフォームとしてのフェスがアートの後押しには必要だという考えから、半分が海外アーティスト、半分は地元アーティストになるようにガイドラインが決められている。そして、たとえばCorneliusや常田大希のソロプロジェクトDTMP(Daiki Tsuneta Milleninium Parade)、真鍋大度(Rhizomatiks Research)のような著名な人も出演している一方で、無名ではあってもクリエイティブで強いアイデンティティを持ったアーティストも積極的に後押しし、国内のみならず世界に発信し続けている。そうした「ここでしか出会えない新しい刺激や発見」があるということも大きな特徴であり魅力のひとつと言えるだろう。

それでは、各開催日の内容を見てみよう。



12月8日(水)は日本科学未来館ドームシアターにて、最先端のデジタルアートに没入できる体験型イベント『A/Visions 1』が各回(2公演)限定50名にて開催される。1部公演では、カナダ・モントリオールに拠点を置くアートセンターSociety for Arts and Technology (SAT) のキュレーションしたオーディオビジュアル5作品が上映され、2部公演では、第22回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出された、Synichi Yamamoto + Seiichi Sega & Intercity-Expressによるオーディオビジュアル作品『Noesis』最新版(4K3D+8.1chサラウンド)の、3D映像によるスペシャルライブが行われる。

各方面で注目されている新進気鋭の音楽家、原摩利彦のライブ

12月9日(木)はLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて、芸術音楽と舞台芸術がシアター形式で体験できるイベント『A/Visions 2』を限定1000名で開催。新進気鋭の音楽家、原摩利彦のライブコンサートが行われる。

原摩利彦は、ダンサーに森山未來を迎えて京都の建仁寺両足院で撮影された2020年リリースのソロアルバム『PASSION』の表題曲のMVが話題となり、さらにその森山未來の東京五輪開会式でのパフォーマンスに楽曲提供したことでも大きな注目を集めた。他にも、野田秀樹演出の舞台『Q:A Night At The Kabuki』のサウンドデザイン、彫刻家・名和晃平によるプロジェクト『Vessel』での坂本龍一との劇伴の共作、日本を代表するアーティスト・コレクティブDumb Type(ダムタイプ)のメンバーとしての活動、サニーデイ・サービスの『さよならプールボーイ』のリミックス、桐谷健太の『香音-KANON-』の作編曲、AppleのCM『Macの向こうからー新海誠』への楽曲提供など多岐にわたって活躍しており、今非常に注目されているアーティストだ。



今回はピアノ、シンセサイザー、弦楽アンサンブルにペルシャの楽器サントゥールを加えた特別編成のライブで、映像はDumb Typeにも参加し、高谷史郎、池田亮司、名和晃平をはじめとした多くのアーティストの作品制作にも携わる白木良。さらに、ダンサー東野祥子と音楽家カジワラトシオが結成した京都拠点のパフォーマンス・アーティスト・コレクティブAntibodies Collective(アンチボディズ・コレクティブ)による舞台芸術作品『あらゆる人のための、誰のためでもない世界』が劇版として発表される。これには今年9月に「水曜日のカンパネラ」の脱退を発表したばかりのコムアイがダンサーとして参加。彼女の新たな展開のひとつとしても注目だ。





12月10日(金)、11日(土)、12日(日)の3日間は「渋谷ストリームホール」にて、オーディオビジュアル、サウンドインスタレーション、アンビエント/エクスペリメンタルミュージックのライブパフォーマンスを大音量&スタンディングで堪能できるイベント『Nocturne』が各日300名の限定人数で開催される。

10日の『Nocturne 1』は、アーティストのSaskiaが舞踏家のKana Kitty、Yumi Sagara、ライティングのHitoshi Satoとチームを組んだパフォーミングアート作品『ロウ』の初上演。また、ドイツやオランダのレーベルから作品をリリースし、ヨーロッパツアーも行っている栃木在住のプロデューサーLemnaと、2021年に作成したアニメーション映画『浮寝島』がローマ、ニューヨーク、ミュンヘンの三つの国際短編映画祭で最優秀アニメーション賞を受賞した映像作家Kaori Yasunagaのコラボによるオーディオビジュアルライブパフォーマンス、そして海外の主要クラブでも活躍しているWata Igarashiの、d & b Soundscapeを用いた没入型サウンド体験を生み出すスペシャルライブ『FLOW』が行われる。また、MUTEK.JPが実施した若手クリエイターが集うオープンコールから選出されたJACKSON kakiが、自作VRゲームをプレイしながら音楽を創造するという画期的なライブパフォーマンスを発表する。

11日の『Nocturne 2』では、気鋭の現代音楽家・日野浩志郎によるソロプロジェクトYPYのライブに加え、『美術手帖』が選ぶ「2020年代を切り開くニューカマー・アーティスト」に選出された才気溢れるミュージシャンNTsKiと、ビジュアルアーティストSaeko Eharaのコラボレーションライブが行われる。また、ビジュアルプログラミングのワークショップ/イベントを開催しているクリエイターコミュニティ、TDSW (Tokyo Developers Study Weekend) のキュレーションにより、Masayuki Azegami & komakinex、dhrma & Yuki Ishidaの2組がオーディオビジュアルライブで参加する。

最終日12日の『Nocturne 3』では、Ricardo Villalobos、Richie Hawtin,John Tejadaら、シーンを代表するDJ達から評価されてきたAiko Kiyamaの、広範なエレクトロニック・ミュージックを体現するプロジェクトAalko名義によるライブパフォーマンス、ワールドワイドに活躍しているアンビエント作家Chihei HatakeyamaとメディアアーティストSeiichi Segaのコラボレーションライブのほか、エレクトロニックダブの要素も取り入れたアルバム『Bird Ambience』を発表したヴィブラフォン/マリンバ奏者でありコンポーザーのMasayoshi Fujitaの複数の楽器を使ったライブパフォーマンスが行われる。そして、1979年Aunt Sally(アーント・サリー)でデビューし、その後のソロ活動で常に先鋭的な存在であり続け、今年10月にはMUTEから新作アルバム『New Decade』をリリースしたばかりのレジェンド、Phewがライブで出演する。


<開催概要(各プログラム)>

「MUTEK.JP 2021 [A/Visions 1](1部公演)」

2021年12月8日(水)東京・日本科学未来館ドームシアター
時間:START 18:30 / CLOSE 19:15終演
料金:前売 2000円 / 当日 3000円
上映作品:
Axel Helios [CA/QC] - Drichtel
Baron Lanteigne & Bobby Tank [CA+UK] - Anthologie
Desaxismundi & Terminal Wolf [CA/QC] - Inertia
Past Video & Deathvox [CZ+DK] - C0R3-C0LL4PS3
susy.technology [CA/QC] – Indivisible

「MUTEK.JP 2021 [A/Visions1](2部公演)」

2021年12月8日(水)東京・日本科学未来館ドームシアター
時間:START 20:15 / CLOSE 21:00
料金:前売 2000円 / 当日 3000円
出演:
Synichi Yamamoto + Seiichi Sega & Intercity-Express [JP] - Noesis (2021version) – LIVE

「MUTEK.JP 2021 [A/Visions 2]」

2021年12月9日(木)東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
時間:OPNE 17:30 / START 18:30 / CLOSE 20:30
料金:前売 4500円 / 当日5500円
出演:
Marihiko Hara & Ryo Shiraki [JP](Cb: Hiroki Chiba, Vn: Anzu Suhara, Vc: Masabumi Sekiguchi, Vc: Yumiko
Iwao, Santur: Kazune Iwasaki)
Antibodies Collective [JP] -『あらゆる人のための、誰のためでもない世界』

「MUTEK.JP 2021 [Nocturne 1」

2021年12月10日(金)東京・渋谷ストリームホール
時間:OPEN 18:00 / START 18:30
料金:前売 3500円 / 当日4500円
出演:
Saskia, Kana Kitty & Yumi Sagara, Hitoshi Sato [JP] - ロウ
Lemna & Kaori Yasunaga [JP]
Wata Igarashi [JP] – FLOW
JACKSON kaki [JP]

「MUTEK.JP 2021 [Nocturne 2」

2021年12月11日(土)東京・渋谷ストリームホール
時間:OPEN 18:00 / START 18:30
料金:前売 3500円 / 当日4500円
出演:
YPY [JP]
NTsKi & Saeko Ehara [JP]
Masayuki Azegami & komakinex [JP]
dhrma & Yuki Ishida [JP]

「MUTEK.JP 2021 [Nocturne 3]」

2021年12月12日(日)東京・渋谷ストリームホール
時間:OPEN 18:00 / START 18:30
料金:前売 3500円 / 当日4500円
出演:
Aalko aka Akiko Kiyama [JP]
Chihei Hatakeyama & Seiichi Sega [JP]
Masayoshi Fujita [JP]
Phew [JP]
※12月9日(木)~12日(日)までの公演すべてに入場いただけるパスポートチケット12000円(100枚限定)もございます。12月8日(水)の「日本科学未来館ドームシアター」にはご入場いただけません。
チケット購入URL:https://tokyo.mutek.org/jp/tickets

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