BTS、LA公演最終日レポート 満員のスタジアムで見せつけた「圧倒的な実力」
Rolling Stone Japan / 2021年12月7日 18時25分
12月6日に長期休暇に入ると発表したBTS。彼らはその数日前、約2年ぶりにアメリカでの有観客コンサートを実施し、世界を制覇することの楽しさを表現した。12月2日に開催された「PERMISSION TO DANCE ON STAGE」LA公演最終日のレポートをお届けする。
【画像】多幸感に満ちたBTSのステージ
BTSのストーリーは、行く手を阻むありとあらゆる障害を一つひとつ乗り越えていく物語にたとえられる。英語の楽曲で全米シングルチャートのトップに立ち、韓国語の楽曲でも全米1位に輝いた。グラミー賞にもノミネートされた。さらには、交通網が悪夢のように混乱するホリデーシーズンにもかかわらず、米カリフォルニア州ロサンゼルスに新たにオープンしたSoFiスタジアムの4公演のチケットをソールドアウトさせた。彼らは、あらゆる壁を破ってきたのだ。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、BTSは「MAP OF THE SOUL」ツアーを中止せざるを得なかった。ツアーのキャンセルは、韓国発人気ボーイズグループに深い傷を残した。だが彼らは、11月27・28日、12月1日・2日(米現地時間)に開催された「PERMISSION TO DANCE ON STAGE」LA公演とともに、約2年ぶりに観客の前でカリフォルニア州ロサンゼルスの南西にあるイングルウッドのSoFiスタジアムの舞台に立った。4日間の公演は、私たちがすでに知っていることを裏付ける結果となった。BTSは、もはや実力を証明する必要がないほどの地位を確立したものの、それでも彼らは努力を決して怠らないということを。
BTSは、ARMYと呼ばれるファンのために最新アルバムの収録曲を披露する場としてワールドツアーを活用することが多かった。だが先日のロサンゼルス公演では、『BE』や『MAP OF THE SOUL: 7』(共に2020年)といった近年のアルバムの楽曲をピックアップする代わりに、彼らを世界的なスターダムへと押し上げた「I NEED U」から「My Universe」に至るまでのめくるめく楽曲を披露した。メンバーは、すべてのエイトカウントをぴったり決めることよりも、全体の雰囲気とファンとの交流に重きを置いているように見えた。
事前に収録されたコンサートのオープニング映像では、「We dont need permission(僕たちに許可なんて必要ない)」というサインを掲げるJUNG KOOKが映し出された。「踊るのに許可はいらない」という新曲「Permission to Dance」を想起させるこのメッセージがコンサートの雰囲気を物語っている。結局のところ、BTSは全米屈指の大都市であるロサンゼルスにある6万人が収容できるスタジアムを4日にわたって満員にすることができたのだ。だが、これがBTSのキャリアの頂点だと誰が言い切ることができるだろう? だからこそ、彼らはこのチャンスを利用して自らの実力を改めて表明し、ファンとともに盛大に祝うのだ。
パーティーのような多幸感
コンサートは、主に4つのアクトで構成された。パワフルなパフォーマンスとともに始まったコンサートは、よりダークなテーマへと移り、ゆっくりと遊び心あふれるムードに進んだかと思えば、エネルギッシュなアンセム曲で幕を閉じた。ベージュトーンのシックな衣装をまとったRM、JIN、SUGA、J-HOPE、JIMIN、V、JUNG KOOKによる「On」のパンチの効いたパフォーマンスとともにコンサートは幕を開け、続けて彼らは「Fire」や「Dope」といった定番ヒットを披露した。
Courtesy of BIGHIT MUSIC
観客は、序盤のタイミングを利用して12月4日に29歳の誕生日を迎えるJINのために初の「バースデー・プロジェクト」を行った。スタジアムに集まったARMYが「JIN」と書かれたサインを掲げたのだ。だが、当の本人は「世界屈指のイケメン」ネタを披露するのに忙しかったのか、メンバーに促されて赤いハートの海と化した観客席にようやく気づいた。心から驚いたJINはARMYに感謝の気持ちを述べた。その後、ファンたちがARMY BOMB(BTSの公式ペンライト)に紫色の月の形のカバーを付けると、JINは「I love you」というメッセージを送った。
「僕らは、この瞬間を待ち望んでいました」とJUNG KOOKは「Blue & Grey」を披露する前に観客に語りかけた。「Blue & Grey」はメンバーの人生における悲しい時期をテーマにした楽曲で、それに呼応してステージ演出もダークなものになった。コンサートを通じてさまざまな色やパターンを披露するよう設定されているARMY BOMBも、ここでは灯されなかった。その代わり、スマホの光がスタジアム全体を包み込み、幸せになりたいと歌うメンバーを明るく照らした。
この演出は、コンサートのハイライトと呼ぶにふさわしい、荘厳な「Black Swan」にぴったりのイントロダクションとなった。BTSのメンバーは、ダンサーとともに卓越した正確さと技術を披露し、白鳥の翼の動きを見事に表現したのだ「Fake Love」では、スタジアムの音響の都合上、観声が一体となって響き渡ることはなかったものの、シンクロされたペンライトの動きがARMYの存在感を際立たせていた。
コンサートの”シリアスな”部分が終わると、とびきり大きな笑顔が似合う「Boy With Luv」や大きなスクリーンに映し出されたコミカルなポーズで遊ぶ「Life Goes On」といった楽曲とともに楽しい時間が訪れた。「Dynamite」から「IDOL」に至るまで、10数曲を披露したBTSのコンサートはまるでパーティーのようだった。「ARMYの皆さんに囲まれて、本当に幸せです」とJ-HOPEは観客に言った。
公演を目撃したファンの声
53歳のゲルト・アグアスさんは、そんなARMYのひとりだ。49歳の妹キム・キャタップさんとともに、ふたりは「Dynamite」を機にファンになった「ダイナマイト級のARMY」である。「3人の息子たちも大きくなったので、自由に自分を甘やかすことができます。大好きなグループのコンサートに何度も足を運ぶこともできるんです」とアグアスさんは言った。さらに彼女はパンデミックを機に、いまこそ一度きりの人生を楽しむべきだと気づいたと言う。「BTSは、世界中の何百万人ものARMYに喜び、癒し、インスピレーションを与えてくれます。また生で彼らの姿を見られる日が待ち遠しいです」
ロサンゼルス公演のアンコールは4日とも違っていた。最終日には、ファンに人気の「HOME」や「Mikrokosmos」といった楽曲が選ばれた。「Permission to Dance」とともに誰もがコンサートの終わりを予想すると、BTS Tシャツ姿のクリス・マーティンがサプライズで登場し、コールドプレイとのコラボ曲「My Universe」を披露した。
スタジアムの外では、BTSに向けられた称賛を疑う声も少なくなかった。そのなかには、BTSファンを”ボット”と呼んだり、ストリーミング回数を操作するためにAIを利用しているとまで言う者もいたほどだ。だが、アメリカの観客にとって外国語である韓国語の楽曲を聴いて観客が大歓声を上げる満員のスタジアムの中にいると、こうした声は言いがかりにすぎないと感じられる。SoFiスタジアムは、世界屈指のグループへと成長した大好きなBTSを観るためにチケットを購入したファンでいっぱいだった。この流れは、今後もそう簡単には変わらないだろう。
【関連記事】Rolling Stoneインドによる2020年版「BTSスペシャルムック」日本語完全翻訳版の発行が決定
BTS・PERMISSION TO DANCE ON STAGE
セットリスト
・On
・Fire
・Dope
・DNA
・Blue & Grey
・Black Swan
・血、汗、涙
・FAKE LOVE
・Life Goes On
・Boy With Luv
・Dynamite
・Butter
・Airplane pt. 2
・Silver Spoon
・Dis-ease
・Telepathy
・Stay
・So What
・I NEED U
・Save Me
・IDOL
アンコール
・HOME
・Mikrokosmos
・Permission to Dance
・My Universe
From Rolling Stone US.
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