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ローリングストーン誌が選ぶ、2021年の年間ベスト・アルバム50選

Rolling Stone Japan / 2021年12月9日 11時0分

Photo by Louis Browne; Ebru Yildiz; Kelia Anne MacCluskey; Charlotte Rutherford

米ローリングストーン誌が2021年の年間ベスト・アルバムTOP50を発表。アデルの勇敢な復活、ラウ・アレハンドロの予想外のブレイク、リル・ナズ・Xによるウィニングランまで、今年の音楽界を牽引したアルバムをランキング形式で振り返る。

【一気にチェック】2021年の年間ベスト・アルバム上位10作

2021年、音楽シーンは話題が満載だった。アデルやビリー・アイリッシュ、リル・ナズ・Xといったスーパースターたちはみな内面を深く掘り下げたアルバムをひっさげて足固めをした。それら特大リリースが業界の期待に応えた一方で、今年は嬉しいサプライズにも溢れた一年だった。我が道を行くラップ界の先見者、タイラー・ザ・クリエイターは自分史上もっとも研ぎ澄まされたパフォーマンスで世界と折り合いをつけ、ジャパニーズ・ブレックファーストのミシェル・ザウナーはアナログな夢想家から未来志向のニューウェイブ系マキシマリストに転身した。そして、最大の驚きはオリヴィア・ロドリゴだ。どこからともなく(ディズニー・チャンネルから)現れて、定番入り間違いなしのデビューアルバム『Sour』をひっさげ、アルバムチャートの常識を覆した。

物語風の楽曲がギターと同じくらい強く響くインディー界のシンガーソングライター(ルーシー・ダッカス、スネイル・メイル)、スペイン語圏から生まれたポップ合成マシン(アフロキューバン・ヒップホップのフュージョニストCimafunk、全方向性のレゲトン・ショウマンことラウ・アレハンドロ)にとっても最高の一年だった。おそらくもっともエキサヒティングだったのは、いまだ変化し続ける世界のヒップホップ/R&B/グライム/アフロビーツから流れ着いた、真実を語る女性たちの秀作が相次いでリリースされたことだ(ジャズミン・サリヴァン、ピンクパンサレス、ドーン・リチャード、リトル・シムズ、Temsなど他多数)。フー・ファイターズや(80年代メタル・キッズのお待ちかね)アイアン・メイデンといったベテラン勢も至極の逸品を送り込み、かつてないほど聴き逃せない楽曲が目白押しだった。

50. セイント・ヴィンセント『Daddys Home』



49. ジェームズ・マクマートリー『The Horses and the Hounds』



48. ドレイク『Certified Lover Boy』



47. Jhay Cortez『Timelezz』



46. TOMORROW X TOGETHER『The Chaos Chapter: Fight or Escape』



45. ボールディ・ジェイムス&アルケミスト『Bo Jackson』



44. アイアン・メイデン『Senjutsu』



43. マイク・タワーズ『Lyke Mike』



42. Illuminati Hotties『Let Me Do One More』



41. ミッキー・ゲイトン『Remember Her Name』



40. フー・ファイターズ『Medicine at Midnight』



39. トーパス・ジョーンズ『Dont Go Tellin Your Momma』



38. ヨラ『Stand for Myself』



37. Pooh Shiesty『Shiesty Season』



36. リトル・シムズ『Sometimes I Might Be Introvert』



35. シルク・ソニック『An Evening With Silk Sonic』



34. アダルト・マム『Driver』



33. サマー・ウォーカー『Still Over It』



32. スネイル・メイル『Valentine』



31. マッドリブ『Sound Ancestors』



30. ムスタファ『When Smoke Rises』



29. ヤング・サグ『Punk』



28. Mabiland『Niñxs Rotxs』



27. ザ・ウェザー・ステション『Ignorance』



26. エムドゥ・モクター『Afrique Victime』



25. カーリー・ピアース『29』



24. ドライ・クリーニング『New Long Leg』



23. Cimafunk『El Alimento』



22. ドーン・リチャード『Second Line』



21. ドージャ・キャット『Planet Her』



20. レオン・ブリッジズ『Gold-Diggers Sound』



19. アーロ・パークス『Collapsed in Sunbeams』



18. ホールジー『If I Cant Have Love, I Want Power』



17. Tems『If Orange Was a Place』



16. ロウ『Hey What』



15. ビリー・アイリッシュ『Happier Than Ever』



14. ポロ・G『Hall of Fame』



13. モーガン・ウェイド『Reckless』



12. ピンクパンサレス『To Hell With It』



11. プレイボーイ・カーティ『Whole Lotta Red』



10. ジャパニーズ・ブレックファスト『Jubilee』



9. C・タンガナ『El Madrileño』



8. ターンスタイル『Glow On』



7. ジャズミン・サリヴァン『Heaux Tales』



6. リル・ナズ・X『Montero』



5. ルーシー・ダッカス『Home Video』

ルーシー・ダッカスは30秒とかからずに、『Home Video』の核心に迫る。「目を逸らそうとしても逸らせない」と、オープニングトラック「Hot & Heavy」で彼女はこう歌う。「立ち去ろうとしても、振り出しに戻ってしまう」。彼女のこうした見方はアルバム全編に貫かれている。バージニア州リッチモンドで過ごした日々の物語をぎゅっと織り込んだアルバムは、テイラー・スウィフト『フォークロア』の遠い親戚とも言えるだろう。ダッカスは公園のベンチ、地下室、二段ベッドへ聴き手を誘い、10代の傷心や友情をテーマに、キャリア最高のソングライティングを見せつける珠玉の作品を紡ぎ出した。サウンドやアレンジは幅広く(至福に満ちたインディーフォーク「VBS」、ニール・ヤングの『トランス』を思わせるオートチューンを駆使した「Partner in Crime」など)、それでいて炉端の居心地の良さは損なわない。「私は自分が思う人間とはかけ離れている。だからそういう曲が書けるの」と、本人もローリングストーン誌に語っている。「大事なのは、できるだけ昔の自分に優しくすること。だって、自分では選べなかったことってたくさんあるでしょ」

【関連記事】ルーシー・ダッカスが語る、「暗く悲しいシンガーソングライター」を卒業するまでの日々



4. タイラー・ザ・クリエイター『Call Me If You Get Lost』

本作に収録されているグラミー賞ノミネートシングル「Wusyaname」で、ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインとタイ・ダラー・サインは鮮やかな色彩とロマンティックな趣向に満ちたタイラー・ワールドに飛び込み、かつてないほど自由気ままにエンジョイしている。同じことは、このタイラーの最高傑作となったアルバム全体についても当てはまる。タイラーは『Call Me If You Get Lost』で無数の人物を自分の世界に招き入れ、うまくバランスを取りつつも、ふと気付けば自らの才能を成熟させている。ヒップホップのレジェンドDJ Dramaが全体のまとめ役を務めている。



3. ラウ・アレハンドロ『Vice Versa』

オールドスクールなレゲトン満載のデビューアルバム『Afrodisiaco』の後、プエルトリコの新星ラウ・アレハンドロは方向性を変え、本作ではマッド・サイエンティストさながらの破天荒ぶりを披露した。想定外にビートを変えたり、ハウスやボレロやブラジリアンファンクを突然挟んだり、といったことがすし詰め状態になったこの作品は森羅万象のごとく姿を変える。極めつけは、80年代にインスパイアされたミラーボール煌めく「Todo de Ti」。ディスコの活気と輝きは、やがて陰鬱な楽曲へと続く。悲観的な失恋のバラード「Cuando Fue」は、やがてドラムンベースが烈火のごとく炸裂する。こうしたひとつひとつのヒネリは、もっとも洗練された商業的ラテンポップですら型にはまらない――はまってはならない――ということを思い起こさせてくれる。

【関連記事】ラウ・アレハンドロがもたらす新たな多様性 ポスト・レゲトンへと突入するラテン音楽の今



2. アデル『30』

「どうしてこんなに肩身が狭く感じるの/何かを感じようともがいているのに?」と、アデルは『30』の中で歌う。彼女はこうした葛藤を、音楽人生でもっともパワフルなアルバムに落としこんだ。『25』を経て、彼女はシンガーとしてさらに成長した。ひとつの音節を豊かに広げ、時にオリンピック選手のごとく音階を飛び越えながら不可能なまでの感情の起伏と格闘しつつ、R&Bの歴史を自らの理念に当てはめた――夜更けのバラード「ストレンジャーズ・バイ・ネイチャー」に始まって、アレサ・フランクリンが乗り移ったかのような「ホールド・オン」、明るく穏やかなスウィング「クライ・ユア・ハート・アウト」。これは自身の離婚をテーマにしたアルバムだが、彼女が胸に抱いたであろう恨み節は微塵もない。代わりにアデルはあふれる感情を掘り下げて、悟りと、そしておそらくは信仰を見出した――名曲間違いなしの「アイ・ドリンク・ワイン」で本人も歌っているように、「犠牲の中の均衡」を。世界各国の指導者にもこうした英知を身に着けてほしいものだ。

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1. オリヴィア・ロドリゴ『Sour』

たしかに音楽業界は弱肉強食。オリヴィア・ロドリゴは2021年最初の週に、驚くほど完璧な失恋バラード「ドライバーズ・ライセンス」をリリース。だが彼女の勢いは1年中ずっと止まらなかった。オリヴィアのデビュー作『Sour』は、いきなり傑作ヒット満載のアルバムとなり、非の打ちどころのないメガポップモンスターは堂々のヘヴィローテーション入り。10代の厄介な悩みについてロドリゴは胸の内を吐露し、「鼻っぱしを折られるのって超辛い!」と叫ぶ。だが彼女は弱冠18歳にしてすでにあらゆる技を駆使する敏腕ソングライター。「ドライバーズ・ライセンス」では、元恋人の家の前を車で走り去るという行為を壮大な冒険絵巻として描き、「グッド・フォー・ユー」は90年代ポップパンクの怒りを代弁する。「デジャヴ」では、どっちが先にビリー・ジョエルを好きになったかでZ世代の恋人が喧嘩するという歌詞に、クラッシュ風のギターとフィル・コリンズ風のドラムをかき鳴らす(どこかでブレンダとエディが微笑んでいることだろう)。オリヴィアは混沌とした状態を望んでいる――だが『Sour』を聴く限り、彼女こそ時代が待ち望んでいた混沌だ。

【関連記事】オリヴィア・ロドリゴの音楽的魅力 伝統と革新が共存するソングライターとしての凄み



From Rolling Stone US.

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